臨床直結!解剖学講義&深掘りディスカッション 上肢編
解剖学者×理学療法士 対話から生み出される「今」必要な臨床解剖学 第2弾!!
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解剖学のエキスパートである荒川先生が、ポイントを厳選して講義。運動器PTのスペシャリストから鋭い質問がとぶ。臨床で直面する複雑な病態や難治例にどう向き合えばいいのか? 深掘りディスカッションを通して、解剖学を臨床に落とし込む過程が見えてきて、患者の見え方が変わる。第2弾となる「上肢編」では、神経と筋の位置関係を利用した新たな治療アプローチを提案。解剖学で臨床が変わる! このダイナミズムを体感せよ!
| 著 | 荒川 高光 |
|---|---|
| 発行 | 2026年07月判型:B5頁:192 |
| ISBN | 978-4-260-06539-9 |
| 定価 | 5,280円 (本体4,800円+税) |
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- 目次
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序文
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序
形態学を突き詰めると,人体の本当の姿が見えてくる
私は臨床経験のある理学療法士であると同時に,解剖学を研究する教育・研究者である。私は常々,臨床で患者さんと向き合っているセラピストにとって,本当の意味で役に立つ解剖学を突き詰めたいと考えてきた。その結果として,臨床家の疑問に十分に応えるためには,解剖学をひと通り理解し,さらに研究レベルで考え,肉眼レベルから組織学レベルまで網羅して理解しないといけない,ということを実感してきた。
この課題を克服するべく,本書での解剖学的な解説はかなり網羅的であり,詳細すぎるところもあるかもしれない。しかし,臨床家とのディスカッションをみてほしい。その内容は,詳細な解剖学の裏付けが必要であることを物語っているのではないだろうか?
解剖学の知識が臨床でどのように活かされるのか? 臨床家にとって「今」必要とされている解剖学とは何か? これらを掘り下げた「深掘りディスカッション」により,読者は単なる知識の習得にとどまらず,実践に結びつく視点を養うことができるだろう。
本書は,前作『下肢編』の構成を踏襲している。実際の解剖学の講義動画を文字起こししたものをベースとし,各章に臨床のスペシャリストたちとの「深掘りディスカッション」を挿入し,最後に総論的内容の「第5章 解剖学を臨床に直結させるには?」を配した。まず,臨床に携わるセラピストが知りたい解剖学を提示し,その根拠となる総論を必要に応じて参照できるようにすることで,学び始める段階から「解剖学で何が重要なのか」が見えてくることを意図した。これは「臨床に直結する形で解剖学を学んでほしい」という私の思いによるものである。
講義のライブ感を重視し,読み物としての面白さを優先したため,教科書や参考書にあるようなまとめや表がない点も同様である。読者のみなさまにもご理解いただければ幸いである。
一方で,本書『上肢編』ならではの違いもある。上肢では特に「動かしたらどうなるのか」という動的な視点を重視した。さらに,第5章の総説に具体的な治療アプローチ(166頁,第5章内 疎性結合組織を治療対象としたアプローチ)とそれを裏付ける解剖学的な説明を充実させた。
セラピストにとっての臨床の充実に貢献できたら幸いである。
さて,「臨床経験のある理学療法士」かつ「解剖学の教育・研究者」という2つの立場を同時に存立させることはなかなか難しい。「私は理学療法士であり,解剖学を研究・教育しています」と言うと,ややもすると,「理学療法士に“わかりやすい”解剖学を教える人」や,「理学療法士“レベル”の解剖学を研究する人」というイメージが先行し,研究レベルを疑われることも多く経験してきた。
そもそも私は,解剖学を「わかりやすくする」ためにこの道に入ったのではない。解剖学そのものを研究し,形態学的な事実を積み重ねてきた者として,臨床の考え方を根本から見直すために研究をしてきたのである。私の話す内容や研究内容は,解剖学に主軸を置く研究者からみればかなり臨床寄りにみえるかもしれない。理学療法学に軸足を置く研究者からみれば,かなり基礎寄りにみえるだろう。私はそのどちらでもなく,「形態学を突き詰めると,人体の本当の姿が見えてくる。それこそが患者を理解する出発点である」という立場に立っているのである。
読者のみなさまには,「研究レベルで形態学に向き合うと,臨床と直結する」ということを実感していただきたい。そして,形態学を深く理解することこそが,患者さんに対する治療レベルの向上につながるということを,心から実感していただきたい。
本書の執筆にあたっては,私とともに学び,研究を一緒にやってきた学生や仲間たちからのたくさんの指摘や,臨床家からのレベルの高い質問が大きな刺激となった。本書の至る所で,私の記載内容の裏付けとして支えてくれたことを伝えておきたい。また,本書の構想段階から耳を傾け,出版に向けて多くの助言をくださった医学書院の金井真由子氏には深く感謝申し上げたい。
そして,いつも変わらぬまなざしで支えてくれた家族に,その存在の大きさを思いながら,深い感謝を捧げたい。
2026年5月
荒川 高光
目次
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第1章 頸部・脊柱──筋と神経の位置関係を生かした新しい治療アプローチ
1 頸部・脊柱を構成する骨
1 前弯と後弯の役割は何か?
2 脊椎の基本形と頸椎の特徴
3 各頸椎の特徴
4 鈎状突起と鈎椎関節
2 頸部を支える関節と靱帯
1 頸椎を支える靱帯は臨床で問題になる
2 椎間関節の動くところに靱帯がある
3 頭部と頸部の境目はどうなっているのか?
4 項靱帯は頸椎だけにある
3 頸部・脊柱を動かす筋
1 脊柱起立筋は頸部を起こすのか?
2 その他の頸部の筋
3 頸部の筋群の特徴とは?
4 臨床で役立つ頸部の筋のとらえ方
4 頸部・脊柱を通る神経・血管
1 頸部を通る神経の走行
2 後頭動脈の走行と後頭下三角
3 前斜角筋周囲の神経と血管
第2章 肩関節──肩の問題を改善するには肩関節以外を知るべし
1 肩関節を構成する骨
1 肩関節ってどこ?
2 関節上結節と関節下結節は全く違う
3 上腕二頭筋長頭腱の起始は関節唇?!
2 肩関節を支える関節と靱帯
1 肩甲骨上角周囲には何があるのか?
2 2つの「烏口上腕靱帯」
3 肩関節を動かす筋
1 上腕二頭筋
2 回旋筋腱板
3 棘下筋の起始は2つなのか,3つなのか?
4 棘上筋と棘下筋と腱板断裂の関係
5 小胸筋と大胸筋の間
4 肩関節を通る神経・血管
1 長胸神経と肩甲背神経は同じもの?
2 肩甲胸郭関節の重要部位?
3 肩甲上神経には知覚枝がある?!
4 腋窩神経の新知見
5 内側胸筋神経と外側胸筋神経
第3章 肘関節──靱帯と筋の本当の関係を知ると臨床が変わる部位
1 肘関節を構成する骨
1 上腕骨の各部位
2 前腕を構成する骨
2 肘関節を支える関節と靱帯
1 肘関節は2つの靱帯がカギを握る
2 肘関節は3つの関節からできている
3 肘関節を動かす筋
1 肩からつながる上腕筋群
2 前腕の屈筋群
3 尺側側副靱帯に関わる筋群
4 肘関節を通る血管と神経
1 肘関節を通る神経
2 肘関節を通る動脈
3 橈骨神経の圧迫部位
4 肘筋周囲の神経・血管
第4章 手関節・手部──「診断名の奥には何が?」痛みの真因を見抜く解剖学
1 手関節・手部を構成する骨
1 なぜ,私たちの手指は5本なのか?
2 手根骨と足根骨の決定的に違うところ
2 手関節の構造・手部を支える関節
1 橈骨が構成する関節
2 三角線維軟骨複合体(TFCC)って何だ?
3 密性結合組織と疎性結合組織の境界とは?
3 手関節・手部を動かす筋
1 前腕屈筋群
2 前腕伸筋群,浅層
3 前腕伸筋群,深層
4 ややこしい伸筋群とその作用
5 解剖学的嗅ぎタバコ入れと伸筋支帯
6 手掌の筋
7 指背腱膜
4 手関節・手部を通る神経・血管
1 橈骨動脈
2 尺骨動脈
3 正中神経
4 尺骨神経
5 橈骨神経
第5章 解剖学を臨床に直結させるには?
1 組織学はセラピストの臨床基盤である
1 組織学の概要
2 結合組織とは
3 骨
2 靱帯をきちんと定義してみよう
1 関節とは?
2 靱帯とは?
3 筋の付着部と関節包の実体は?
1 ミクロからみた筋の付着
2 筋と密性結合組織
3 筋と骨膜
4 腱-靱帯-骨膜は連続している
4 疎性結合組織を治療対象としたアプローチ
1 可動域を変えられる組織とは?
2 末梢神経と血管
3 可動域制限と痛みが同時に生じるのはなぜか?
4 新しい治療アプローチの提案
5 筋膜はすべて同じではない
1 筋膜の実体
2 すなわち「筋膜」とは何か?
索引
書評
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目の前の患者さんを救うための,あなたの地図となる一冊
書評者:斉藤 究(さいとう整形外科リウマチ科院長)
解剖は臨床という荒波を航海する上での地図だ。
荒川高光先生は言う。「筋の細かいことをセラピストが気にしなかったら,どの職種が気にするのか?」
自分の頭の中の地図に自信がなければ,何も見ずに骨,筋の起始・停止,神経・血管の絵を描いてみるといい。記憶が曖昧な部分は描けない。記憶に入った解剖は必ず臨床で生きる。
本書はタイトルの示す通り,理学療法士で解剖学者の荒川先生の解剖学講義があり,自分が曖昧にしか理解できていなかった構造を明確化してくれる。続いて工藤慎太郎先生,川村和之先生,森田竜治先生ら臨床現場のプロフェッショナルたちが,解剖と臨床をつなぐ深掘りディスカッションを繰り広げる。
日常の臨床で理学療法的に評価と触診を行い,エコー下ハイドロリリースを行う私としては,筋や神経の解剖もそれなりに知っているつもりでいたが,この本を読んでいるとまだ知らないことがたくさんあることに気付かされる。
第1章では特に鈎椎関節(ルシュカ関節)についてマニアックに深掘りされており,エキスパートの臨床的経験と論文の掘り下げが読者の知的好奇心をくすぐる。これこれ,こういうやつなのだ,求めていたのは。まるで工藤先生のオンラインセミナー「運動器リハ部」を再現したかのような,このディスカッションなのだ。
エキスパートたちのディスカッションを基に,自分なりに新たな治療アプローチを妄想するのも楽しい。初学者が教科書から守破離の「守」を学ぶ段階を過ぎ,臨床経験を積んで解剖と臨床のつながりに疑問を持つころ,すなわち「破」や「離」の段階に来た人に刺さる内容だ。もちろん初学者が読んでも,正しい解剖と臨床症状につながるポイントが学べる。
解剖を知るほど診断・治療能力は上がる。どの筋が短縮するとどこが引っ張られてアライメントはどう変わり,周囲の環境にどのような影響を及ぼすのか。どこで神経や血管が圧迫・牽引されるのか。臨床は,疼痛部位だけを治療すれば治るような単純なものではない。逆に,痛くない場所から治療することで痛みが取れる経験からは,解剖的なつながりが,疼痛部位に影響していると考えないほうが不自然だ。
上腕二頭筋長頭腱の起始は肩甲骨の関節上結節でよいのか? 棘上筋・棘下筋の停止腱の解剖と腱板断裂部位の関係をどう読み解くのか? 神経・血管周囲や筋間に多く存在する疎性結合組織が持つ臨床的意義は? 理学療法士が行う徒手療法はどこにどのような影響を及ぼしているのか?
その答えは本書にある。
さらっと読み流すことのできる本ではない。噛み締め,味わいながら,何度も本文と解剖図を行き来しながら脳に刻み込む。
本書を読みながら,15年前に開業して運動器エコーに入門したときに,『プロメテウス解剖学アトラス』を片手にエコー解剖を一生懸命学んだころを思い出した。今の自分はあのころよりもはるかに多くの痛みを取れるようになった。しかし,今でも治しきれない患者さんはいる。だから学ぶのだ。
本書は必ず目の前の患者さんを救うための,あなたの地図となる。




