マイスター直伝! 「心電図」が「臨床」とつながる本
その「心電図」の勉強、ちゃんと「臨床」に応用できていますか?
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その心電図の勉強、ちゃんと臨床に応用できていますか? 心電図マイスターが贈る、「心電図」と「臨床」がつながる本! 勉強が苦手だった、薬剤師時代の自分でもわかるように、書きました。大人気のKagawaECG、待望の初書籍!
| 著 | 松永 圭司 |
|---|---|
| 発行 | 2025年11月判型:A5頁:168 |
| ISBN | 978-4-260-06244-2 |
| 定価 | 3,300円 (本体3,000円+税) |
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- 目次
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序文
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はじめに
本書を手に取っていただきありがとうございます.2023年度の心電図検定でマイスターを取得したことをきっかけに,このような執筆の機会をいただくことができました.心電図に魅せられた一人として,とても嬉しく思っています.
現在,心電図検定が大ブームとなり,それに伴って系統的に学習できる優れた教科書や問題集が数多く出版されています.そのような状況のなかで,私らしい一冊をどのように作るべきか悩んだ結果,本書は既存の書籍と少し異なるアプローチを取ることにしました.それは「私が長年続けてきた心電図勉強会で,さまざまな学習段階の方々に教えた際に特に評判が良く,『勉強になった』『理解が深まった』と言っていただけた内容を厳選して集める」というアプローチです.
このような勉強会での経験から生まれた本書は,過去に心電図勉強会に参加した“仲間”と一緒に勉強しているような臨場感を味わっていただきながら,「知識がつながった瞬間の喜び」を大切にし,「わかりやすさ」と「楽しさ」を実感できる一冊になったのではないかと思っています.
一緒に作りあげる一冊
この本は読者の方と一緒にそれぞれの一冊を作りあげたくて,各章の末尾にメモ欄を設けました.わからないことがあっても立ち止まらず,「何がわからないのか」をぜひ言語化してメモしておいてください.また,本書を読み進めるなかで「ここが足りない」「もっと詳しく知りたい」と気づいたところも,ぜひメモしておいてください.そうしたメモは,きっとあなた自身の心電図学習の大切な財産になります.理解が深まったときに振り返ることで,自分なりの学習の道筋が見えてくるはずですし,その過程を経て作りあげた一冊は今のあなただけでなく,将来のあなたが仲間に心電図を教える際にもきっと大きな力を貸してくれます.
心電図への憧れを大切に
「憧れるのをやめましょう」という名言がありますが,私は逆に「憧れるのを続けましょう」と考えています.最初に心電図に興味をもったときのことを思い出してみてください.ついつい目の前の勉強を頑張っていると,初心を忘れて勉強がしんどくなってしまうことがあります.でも,そもそも勉強を始めたのは壮大な目標ではなく,単純な「憧れ」や「楽しさ」ではなかったでしょうか?
自分には全く理解できない12誘導心電図の波形から,先輩方がさまざまな情報を読み取り,それを治療に活かしていく姿への憧れ.楽しそうに心電図について語る人の輪に,自分も入ってみたいという純粋な気持ち.私自身も,そんな楽しそうな会話の内容がわかるようになりたい,その輪にぜひ入りたいという理由で心電図の勉強を始めました.そしてその気持ちは今も変わっていません.そして,この本は,心電図を学び始めた“仲間”たちの声から生まれているため,そんな気持ちを改めて振り返るきっかけにもきっとつながると信じています.
最後になりますが,デジタル化が進む現代において,心電図の勉強をした仲間の声から生まれた本とあなたの書き込みで完成した“一冊”が,あなたの心電図への「学び」につながるだけでなく,「憧れ」と「楽しさ」を大切にしながら心電図を勉強する旅の,最高のパートナーとなることを願っています.
2025年9月
松永圭司
目次
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はじめに
0章 心電図の勉強を始める前に知っておいてほしいこと
1章 入門編:まずおさえておくべき「AAAA-BBB-QTとST変化」
A:Anatomy(解剖学)
A:cAVB(完全房室ブロック)
A:AF/AFL(心房細動と心房粗動)
A:Abnormal Q wave(異常Q波)
BBB:Bundle Branch Block(脚ブロック)
QT時間:特に電解質異常について
ST上昇:心筋梗塞の部位推定
2章 発展編:さらに治療へつながる「PHS」
P:Premature contraction(期外収縮の起源診断)
H:Hemiblock(ヘミブロック)
S:SVT(上室頻拍)
練習問題の解説
索引
臨床に役立つミニコラム
答えは患者さんが教えてくれる
循環器は100年以上前からつながっている
書評
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“自分だけの一冊”に作り上げる最高のパートナー
書評者:瀬古 征志(主体会病院総合リハビリテーションセンター)
近年,心電図検定が大ブームとなり,心電図関連の教科書や問題集が数多く出版されています。興味を持って勉強を始めたものの,難解な波形にぶつかったり,成果が実感できなかったりして挫折した方も多いのではないでしょうか。私もその一人でした。最初はワクワクしていたはずの心電図学習が,いつの間にか負担に感じる時期もありました。
そんな方にぜひ手に取っていただきたいのが,本書です。
私は理学療法士で,医師や臨床検査技師ほど日常的に心電図を読む機会は多くありません。しかし,心疾患患者の運動療法では,(1)心ポンプ能,(2)心筋虚血リスク,(3)不整脈リスクの評価が不可欠です。このうち(2)(3)の評価には一定の判読力が求められます。また,過去の心筋梗塞や肺高血圧など,介入前に把握すべき病態を知るためにも心電図の知識は欠かせません。読めるようになると評価の選択肢が増え,より安全で効果的なリハビリテーションを提供できると実感しています。
本書の最大の魅力は,心電図マイスターである松永圭司先生が「薬剤師時代の自分でもわかるように」と書かれた平易な文章です。講義やSNSで人気の内容を厳選し,惜しみなく公開されています。
構成も初学者に優しく,0章では「心電図の勉強を始める前に知っておいてほしいこと」がまとめられています。「何のために心電図を見るのか」を再確認でき,見落としを防ぐ思考法や,松永先生の実践的な判読手順が詳しく解説されています。
1章以降は本格的な内容に入りますが,「楽しく,もっと知りたい」と思える順序が意識されています。誰もがつまずく心臓の解剖や興奮伝導は,豊富な写真とイラストで視覚的に理解可能です。その後の不整脈・波形異常の解説も,先生の経験談や文献に基づき,まるで隣で教えてもらっているような親しみやすさです。
実践的テクニックも満載で,「QRS波やT波に隠れたP波の探し方」「AFとAFLの見分け方」など,すぐに現場で使えるコツが学べます。また「安全と思われがちな疾患の落とし穴」など,目からウロコの知識も豊富です。
特に印象的だったのは,タイトルにも込められたメッセージ――「臨床とつながる」には「人とつながる」ことも含まれる――という言葉です。心電図をきっかけに他職種とコミュニケーションを取ったり,一緒に勉強する仲間が増えたりすれば,異常波形の発見率が上がり,患者さんの予後改善につながります。
ページをめくるたびに心電図の意義と楽しさを再発見させてくれる本書は,初心者から中級者まで,全ての人に新たな気付きを与えてくれる必読の一冊です。心電図学習に行き詰まっている方は,ぜひ手に取ってみてください。きっとまた「読みたい」気持ちが蘇ります!




