がん薬剤師外来マニュアル

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がん薬物療法体制充実加算で注目を集めている「がん薬剤師外来」(医師の診察前に行う面談)にフォーカスを絞ったマニュアル。実際にがん薬剤師外来の立ち上げを経験し、外来業務を行っている薬剤師が患者への丁寧な説明、医師への支持療法薬提案、支持療法薬の使い方の説明といったよりきめ細やかな対応を行うためのエビデンスとコツを余すところなく具体的に解説。実際にがん薬剤師外来を始めたい人たちにベストな1冊。

編集 川上 和宜 / 松井 礼子
発行 2025年03月判型:B6変頁:464
ISBN 978-4-260-05982-4
定価 4,400円 (本体4,000円+税)

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編集の序

 私ががん薬剤師外来を始めて少しずつ自信がついていた頃です.何年も抗がん薬治療を継続していた高齢患者から思いがけないことを言われました.「この薬剤師外来っていいシステムだよね.やる方は大変だと思うけど,薬の話を中心にできるからとても安心して治療を受けられるよ」.いつも口数少なく,症状だけにフォーカスして話す患者からの言葉であり,とても嬉しくて自信を持てた出来事でした.
 がん薬剤師外来を実践していて思うことは,「薬剤師は薬のことはよく知っているが病態のことを理解せずに対応していることが多い」ということです.例えば食道がんの患者の症状の訴えに対応するために錠剤を医師に処方提案したものの,その患者は食道がんの病状が進行しているために錠剤を内服するのは難しかったというケースがあります.また膵臓がんの患者に対して吐き気のコントロールができていなかったので,ステロイドの投与期間延長やオランザピンの追加を医師に処方提案したものの,高血糖のため抗がん薬治療自体が延期したケースもあります.膵臓がんの病態として患者は高血糖になりやすいことを知っておくべきで,これは私自身の教訓となったケースです.そこで,本書ではがん種ごとにがん薬剤師外来の実施時に知っておきたい「〇〇がんの病態生理」という項目を作成しました.そして,レジメン別の項目には「抗がん薬治療や支持療法薬の提案に関わること」として具体的に薬剤師が関与できる工夫を記載しました.読者の皆さんには,薬だけでなく患者の病態も考えて,適切な薬物療法を提供できるようになっていただきたいと思います.
 2024年6月より算定可能となったがん薬物療法体制充実加算は,医師の診察前に薬剤師が患者と面談することが条件となっています.すなわち,薬剤師が患者と面談して,抗がん薬の副作用を評価して,抗がん薬の休薬・減量や支持療法薬の追加や変更などを医師に提案することが求められます.外来でがん薬物療法を行う患者はさまざまなことで困っていることが多く,薬剤師がそのような患者に関わり,支えることが正式に認められたという捉えかたもできます.薬剤師が本質的に行うべきことを理解して,本書を参考に多くの患者に質の高いがん薬物療法を提供していただければと思います.
 なお,本書はがん薬剤師外来で求められる薬物療法の知識を中心に記載しました.これに加えて,がん薬剤師外来を院内で立ち上げてうまく運営していく際のコツや課題の解決といったマネジメントに関する情報は,私も参加した医学界新聞の座談会の記事が参考になると思います.こちらもぜひご覧ください.
 本書の発刊には多くの方々のご尽力をいただきました.臨床現場で日々忙しく奮闘する中で時間を作って原稿を執筆いただいた先生方,企画段階から関わっていただいた医学書院の西村僚一氏に深く御礼申し上げます.

 2025年3月
 がん研究会有明病院薬剤部
 川上和宜

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略語一覧
レジメンを構成する医薬品の略名一覧(主に抗がん薬)

第1章 薬学的ケアの実践

第2章 外来診察時のイロハ──医師のチェックポイント

第3章 がん薬剤師外来における薬剤師ならではのスキル

第4章 経口抗がん薬のアドヒアランス評価の重要性

第5章 がん薬物療法の副作用の重症度評価の重要性

第6章 患者との面談時に引き出すステップ

第7章 免疫チェックポイント阻害薬
 1 ICIの薬理とirAEの特徴
 2 ニボルマブ療法(NIV療法)
 3 デュルバルマブ+トレメリムマブ療法

第8章 乳がん
 4 乳がんの病態生理
 5 カペシタビン療法(CAP療法)
 6 dose-denseエピルビシン+シクロホスファミド療法(ddEPI+CPA療法,ddEC療法)
 7 dose-denseパクリタキセル療法(ddPTX療法)
 8 ドセタキセル+シクロホスファミド療法(DTX+CPA療法,TC療法)
 9 アベマシクリブ+内分泌療法
 10 パルボシクリブ+レトロゾール or フルベストラント療法

第9章 肺がん
 11 肺がんの病態生理
 12 オシメルチニブ療法
 13 ロルラチニブ療法
 14 ペムブロリズマブ+カルボプラチン+ペメトレキセドfollowed by ペムブロリズマブ+ペメトレキセド療法

第10章 胃がん
 15 胃がんの病態生理
 16 S-1+オキサリプラチン+ニボルマブ療法(S-1+L-OHP+NIV療法,SOX+NIV療法)
 [column] S-1の流涙障害のメカニズムと指導のポイント
 17 ラムシルマブ+nab-パクリタキセル療法(RAM+nab-PTX療法)
 18 トリフルリジン・チピラシル療法(FTD/TPI療法)
 19 トラスツズマブ デルクステカン療法(T-DXd療法)
 20 ゾルベツキシマブ療法

第11章 食道がん
 21 食道がんの病態生理
 22 パクリタキセル療法(PTX療法)

第12章 大腸がん
 23 大腸がんの病態生理
 24 カペシタビン+オキサリプラチン療法(CAP+L-OHP療法,CAPOX療法)
 25 フルオロウラシル+レボホリナート+イリノテカン療法(5-FU+l-LV+CPT-11療法,FOLFIRI療法)
 26 トリフルリジン・チピラシル+ベバシズマブ療法(FTD/TPI+BEV療法)
 27 レゴラフェニブ療法(REG療法)

第13章 肝細胞がん
 28 肝細胞がんの病態生理
 29 アテゾリズマブ+ベバシズマブ療法(Atezo+BEV療法)

第14章 胆道がん
 30 胆道がんの病態生理
 31 ゲムシタビン+シスプラチン+デュルバルマブ療法

第15章 膵臓がん
 32 膵臓がんの病態生理
 33 nab-パクリタキセル+ゲムシタビン療法(nab-PTX+GEM療法,GnP療法)
 34 オキサリプラチン+イリノテカン+レボホリナート+フルオロウラシル療法(L-OHP+CPT-11+l-LV+5-FU療法,FOLFIRINOX療法)
 35 S-1+ゲムシタビン療法(S-1+GEM療法,GS療法)

第16章 卵巣がん
 36 卵巣がんの病態生理
 37 パクリタキセル+カルボプラチン療法(PTX+CBDCA療法,TC療法)
 38 オラパリブ+ベバシズマブ療法

第17章 甲状腺がん
 39 甲状腺がんの病態生理
 40 レンバチニブ療法

第18章 腎細胞がん
 41 腎細胞がんの病態生理
 42 ソラフェニブ療法
 43 パゾパニブ療法
 44 カボザンチニブ療法(Cabo療法)
 45 ペムブロリズマブ+アキシチニブ療法

第19章 前立腺がん
 46 前立腺がんの病態生理
 47 エンザルタミド療法(EZ療法)
 48 アビラテロン+プレドニゾロン療法(Ab+PSL療法)
 49 カバジタキセル+プレドニゾロン療法(CBZ+PSL療法)

第20章 血液がん
 50 悪性リンパ腫の病態生理
 51 ポラツズマブ ベドチン+リツキシマブ+シクロホスファミド+ドキソルビシン+プレドニゾロン療法(Pola+R-CHP療法)
 52 リツキシマブ+ベンダムスチン療法(RB療法)
 [column] 自宅での抗がん薬曝露対策
 53 オビヌツズマブ+ベンダムスチン療法

索引

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