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がん薬物療法副作用管理マニュアル 第3版

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がん薬物療法で直面する有害事象をテーマに、その早期発見、重症度評価、原因薬の中止や減量、支持療法など、臨床で役立つポイントをギュッと凝縮。原因薬と発現割合、好発時期、リスク因子の他、irAEの情報も充実。症状別の各論では「抗がん薬の副作用が疑われた症例」「それ以外の原因が疑われた症例」の2パターンを掲載。総論では新たに「生殖機能(妊孕性)低下」と「外見の変化(アピアランスケア)」の章を立項した。

監修 吉村 知哲 / 田村 和夫
発行 2024年03月判型:B6変頁:416
ISBN 978-4-260-05367-9
定価 4,400円 (本体4,000円+税)

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第3版 監修の序

 本書『がん薬物療法副作用管理マニュアル』は,2018年3月に初版を,2021年3月に第2版を発刊してから約3年の歳月が流れ,この度,第3版が発刊されることになりました.第3版まで発刊できたのも,がん薬物療法に携わる多くの方々に本書を手に取って活用していただけたおかげだと深く感謝申し上げます.
 がん薬物療法を安全・安心に行うには,薬剤の適正な使用および患者の副作用マネジメントが重要となります.患者を十分に観察し,関連する臨床検査値や画像データも参考にして,副作用を早期に発見し重篤化を防止することが治療効果向上にもつながります.副作用の重症度評価,原因薬剤の中止や減量,支持療法などの適切な対応が必要になります.しかし,抗がん薬の副作用は,従来の殺細胞性抗がん薬以外に分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬の登場によって一層複雑化しており,そのマネジメントは容易ではありません.必要な情報を収集し,適切に判断するスキルが必要であり,多職種が協働して抗がん薬治療に関わっていくことがより求められる時代になっています.
 第3版では,新たに総論として「治療による生活への影響──生殖機能低下と外見の変化を例に」を設け,がん薬物療法の生殖機能への影響,妊孕性,脱毛などの外見の変化について執筆していただきました.前版でも取り上げた「抗がん薬の副作用」「患者のみかたと捉えかた」「副作用の考えかたと伝えかた」「副作用のDIとRMPの活用」「有害事象から副作用への判断手順──症例を題材に」の総論とも合わせて読んでいただくことにより,副作用の考えかたや抗がん薬の副作用情報の収集・活用方法について網羅的に整理していただけるものと考えています.
 各論では,抗がん薬の副作用マネジメントとして,特に重要と考えられる「悪心・嘔吐・食欲不振」「下痢」「口内炎(口腔粘膜炎)」といった患者が自覚できる副作用から,「甲状腺機能障害」「電解質異常」「栄養障害」など患者が自覚しづらい項目まで,全部で25項目を取り上げました.副作用の原因となる抗がん薬および副作用の発現割合・好発時期・リスク因子・特徴をまとめ,また,評価のポイントとして,症状・検査値,問診,重症度,抗がん薬以外の原因を考慮すべき疾患や病態,対策(解決への道標)を記載しました.さらに,症例として抗がん薬の副作用が疑われた症例と抗がん薬以外の原因が疑われた症例を提示しました.すべての項目で,最新の情報を取り入れ,症例も新たな内容に差し替えてブラッシュアップを図りました.前版をお持ちの方であっても,この第3版を手にすればきっと臨床業務に役立つ新たな情報に触れていただけるはずです.
 本書が,がん薬物療法に携わるみなさんにとって,臨床現場における積極的な患者支援の一助になれば幸いです.

 2024年1月
 岐阜薬科大学教授・病院薬学研究室
 吉村 知哲

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欧文略語一覧

1 抗がん薬の副作用
2 患者のみかたと捉えかた
3 副作用の考えかたと伝えかた
4 副作用のDIとRMPの活用
5 有害事象から副作用への判断手順──症例を題材に
6 治療による生活への影響──生殖機能低下と外見の変化を例に
7 悪心・嘔吐・食欲不振
8 下痢
9 口内炎(口腔粘膜炎)
10 味覚障害
11 発熱
12 疲労・倦怠感
13 発疹
14 浮腫
15 関節痛・筋肉痛
16 過敏症
17 手足症候群
18 末梢神経障害
19 視覚異常・流涙
20 心機能障害
21 高血圧
22 肺障害
23 肝障害
24 腎障害
25 蛋白尿
26 出血性膀胱炎
27 甲状腺機能障害
28 電解質異常
29 高血糖
30 血小板減少
31 栄養障害

索引

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副作用を制して化学療法を制するためにお薦めのマニュアル本
書評者:末永 光邦(東京医歯大准教授・臨床腫瘍学)

 本書は,がん薬物療法における副作用マネジメントにおいて貴重な情報源となると確信する。がん薬物療法の進歩に伴い,副作用マネジメントは年々複雑化している。すでに本書の初版が登場してから6年の歳月が流れた。その間に殺細胞性薬剤,分子標的薬の開発が進む中で,免疫チェックポイント阻害薬の開発の勢いはとどまる気配がない。免疫関連有害事象においては,より臓器横断的なチーム医療の必要性が求められている。

 評者はがん薬物療法専門医として長年がん患者の薬物療法に携わってきたが,薬剤師外来や化学療法室所属の薬剤師による服薬指導,投与スケジュール・副作用マネジメントに関する指導,また経口剤アドヒアランスの確認,支持療法に関する提案などにおいて日々活躍されている薬剤師の存在は,外来通院治療を安全に行うにおいて欠かせない存在である。

 本書は,総論と各論の大きく2つのパートに分かれており,薬剤師を中心とした薬剤のスペシャリストによる監修や執筆により充実した内容が提供されている。各論は25項目におよび日常診療で遭遇する有害事象がほぼ網羅されている。構成については,原因となり得る薬剤については殺細胞性抗がん薬,分子標的治療薬,免疫チェックポイント阻害薬ごとに詳細にまとめられ,評価のポイント,抗がん薬以外の原因との鑑別,対策,症例提示と解説までがコンパクトに収載され,一副作用ごとに充実した内容になっている。

 マニュアル本はいつも手元に置き,必要な時に使用するため,見やすさと読みやすさは大切な要素である。本書は冒頭にPOINTを設けており,こちらを一読しておくことで全体への理解が深まるよう工夫がなされ,次の原因となり得る薬剤情報をまとめた表は視覚的に有効なデフォルトになっている。臨床の現場では,起きた事象について使用中の薬剤との因果関係をまず探ることからスタートする。発症時期,リスク因子などからさらに絞り込んだ上で,後出の表を使って他の原因について鑑別する流れは論理的思考において大変使いやすいと思う。

 これまでも今後もがん薬物療法はチーム医療として行わなくてはならない。その中心は医師,看護師,そして薬剤師である。多職種が薬物療法における共通のコンセンサスを持って安全で効果的な治療の実践,また総論にもある治療における生活への影響を最小限にしてQOLを低下させない工夫がチームとしてのミッションである。これからもとどまることのない薬物療法の進歩に挑んでいく医療従事者のための必携アイテムとして本書をぜひ活用いただきたい。

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