がん薬物療法のひきだし 第2版
腫瘍薬学の基本から応用まで
「まずはここから」。がん薬物療法の入門教科書がアップデート!
もっと見る
若手薬剤師や薬学生に向けてがん薬物療法に必須の基礎知識を整理・解説した教科書。日常で直面する疑問点を解決するための「ひきだし」(=応用力)もしっかり身に付く。初版の内容をアップデートし、さらなる使いやすさを目指してブラッシュアップ! 目次は「1. 総論」「2. 抗がん薬各論」「3. がん薬物療法」「4. 支持療法」「5. 緩和ケア」で、各章の情報・解説が相互につながって理解が深まるように工夫した。
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。
- 序文
- 目次
- 書評
序文
開く
第2版の序
本書『がん薬物療法のひきだし』は,薬剤師の臨床業務のうち,腫瘍薬学に関する様々な疑問や課題を解決するための基本から応用を網羅した書籍を目指して,2020年4月に初版が刊行されました。それから既に4年の歳月が流れ,これまでがん薬物療法に興味がある多くの方々に本書を手に取っていただくことができました。ご好評を受けて,このたび第2版を発刊できたことに深く感謝申し上げます。
ご存じのように,がん薬物療法で用いる薬剤は,古くから使用されている殺細胞性抗がん薬やホルモン療法薬,さらに2000年代以降に登場した分子標的治療薬にとどまらず,近年は免疫チェックポイント阻害薬へと広がりを見せています。特に初版刊行以降の4年間では,免疫チェックポイント阻害薬ががん薬物療法における新たな地位を確立し,従来の単独での施行のみならず,殺細胞性抗がん薬などとの併用および免疫チェックポイント阻害薬同士の併用療法へと進歩しています。しかし治療の進歩はこれまで以上に副作用の複雑化をまねき,かつ長期間の施行後管理が必要となる要因となりました。それに伴って,医師だけでがん薬物療法の管理を行うことは難しくなり,薬剤師ががん薬物療法に貢献する必要性が増しています。合わせて医療チームにおける薬剤師の立ち位置が明確になり,その役割も必然的に重要になっています。
このような現状で,安全で安心ながん薬物療法を施行するには,薬剤師が「がんとはどのような疾患か」および「各種の抗がん薬」を熟知し,合わせて「各がん種に対して実施される薬物治療」およびそれらの薬剤が原因となる「副作用への対策」,さらにがんとは切り離せない「緩和医療」に関する知識が必須です。それらの知識を駆使しながら,薬剤師にしかできない適切な薬学的管理を担っていくことが,がん薬物療法の施行下での患者の生活の質を上げ,治療効果を確実なものにすることに寄与するはずです。
それらを加味して,この第2版も初版と同じく5つのセクション(いわゆる「部」に相当,タイトルの「ひきだし」にちなんで「段目」と名付けた)で構成されています。1段目「総論」は新たに「わが国のがん対策」を加えた8章で,2段目「抗がん薬各論」は5章,3段目「がん薬物療法」は13章で構成されています。さらに4段目「支持療法」は臨床推論を学ぶ意味で「副作用の見方・考え方」および最近注目されている「がん悪液質」の2章を新たに加えた18章で,5段目「緩和ケア」は「鎮痛補助薬」に関する項目を加えました。また第2版では,各項目において初版より詳しい解説,多くの図説,さらに治療ガイドラインに基づく薬物療法アルゴリズムを可能な限り掲載するようにしました。
本書が安全で安心ながん薬物療法を提供し,患者さんのために役立ちたいと願う多くの薬剤師のための指南書となれば,編者としてこれ以上の喜びはありません。
2024年3月
初桜を心待ちにして日々を過ごす時節に
編者を代表して 松尾宏一
目次
開く
1段目 総論
1 がんの疫学と病因
1 疫学
2 病因
2 がんとは
A がんの特徴
1 がんの種類
2 がん細胞
3 がんと免疫の関係
B がんの病期
1 固形がんの病期(TNM分類)
2 造血器腫瘍の分類と病期
3 がん診断と効果判定
1 診断のアプローチと考え方
2 画像診断
3 内視鏡診断
4 腫瘍マーカー
5 病理診断
6 遺伝子・染色体診断
7 治療効果判定
4 わが国のがん対策
1 がん対策基本計画に掲げられた内容とその推移
2 がん医療における薬剤師の役割
3 AYA世代の医療
5 がん治療の考え方
1 がん治療の考え方
2 がん医療チームのスタッフの役割
3 集学的治療
4 外科手術
5 内視鏡治療
6 放射線療法
6 レジメン管理
1 レジメンとは
2 レジメンの作成と記載内容
3 レジメン申請・審査・登録
4 レジメン評価と更新
7 投与管理・調製
1 抗がん薬調製・調剤前の処方・レジメンチェック
2 併用支持薬の処方チェック
3 抗がん薬の調剤
4 抗がん薬投与中の注意
8 曝露対策
1 HD(Hazardous drugs)とは
2 HDリストと危険性の分類
3 職業性曝露
4 曝露予防対策
5 抗がん薬調製
6 汚染時の対応
2段目 抗がん薬各論
9 殺細胞性抗がん薬
1 アルキル化薬
2 代謝拮抗薬
3 抗腫瘍性抗生物質
4 プラチナ製剤
5 微小管阻害薬
6 トポイソメラーゼ阻害薬
7 その他
10 分子標的治療薬
A 低分子薬・遺伝子組換え融合蛋白質製剤
1 キナーゼ阻害薬
2 mTOR阻害薬
3 CDK4/6阻害薬
4 プロテアソーム阻害薬
5 PARP阻害薬
6 HDAC阻害薬
7 EZH2阻害薬
8 BCL-2蛋白阻害薬
9 VEGF阻害薬(遺伝子組換え融合蛋白質製剤)
B 抗体薬
1 抗VEGF抗体
2 抗EGFR抗体
3 抗HER2抗体
4 膜状分化抗原標的薬
11 ホルモン療法薬
1 LH-RHアゴニスト
2 LH-RHアンタゴニスト
3 抗エストロゲン薬
4 アロマターゼ阻害薬
5 黄体ホルモン薬
6 CYP17阻害薬
7 抗アンドロゲン薬
8 卵胞ホルモン薬
12 免疫チェックポイント阻害薬
1 総論
2 抗CTLA-4抗体
3 抗PD-1/L1抗体
13 免疫調節薬(IMiDs)
3段目 がん薬物療法
14 がん薬物療法総論
1 がん薬物療法とは
2 臓器障害等のハイリスク患者におけるがん薬物療法
3 薬剤耐性のメカニズム
15 乳がん
1 乳がんとは / 2 治療法 / 3 代表的なレジメン / 4 副作用管理
16 肺がん
1 肺がんとは
A 小細胞肺がん
2 治療法 / 3 代表的なレジメン / 4 副作用管理
B 非小細胞肺がん
2 治療法 / 3 代表的なレジメン / 4 副作用管理(小細胞がん,非小細胞がん)
17 食道がん
1 食道がんとは / 2 治療法 / 3 代表的なレジメン / 4 副作用管理
18 胃がん
1 胃がんとは / 2 治療法 / 3 代表的なレジメン / 4 副作用管理
19 大腸がん
1 大腸がんとは / 2 治療法 / 3 代表的なレジメン / 4 副作用管理
20 肝・胆・膵がん
A 肝臓がん
1 肝臓がんとは / 2 治療法 / 3 代表的なレジメン / 4 副作用管理
B 胆道がん
1 胆道がんとは / 2 治療法 / 3 代表的なレジメン / 4 副作用管理
C 膵がん
1 膵がんとは / 2 治療法 / 3 代表的なレジメン / 4 副作用管理
21 婦人科がん
A 子宮頸がん
1 子宮頸がんとは / 2 治療法 / 3 代表的なレジメン / 4 副作用管理
B 子宮体がん
1 子宮体がんとは / 2 治療法 / 3 代表的なレジメン / 4 副作用管理
C 卵巣がん
1 卵巣がんとは / 2 治療法 / 3 代表的なレジメン / 4 副作用管理(子宮頸がん,子宮体がん,卵巣がん)
22 泌尿器がん
A 腎細胞がん
1 腎細胞がんとは / 2 治療法 / 3 代表的なレジメン / 4 副作用管理
B 膀胱がん
1 膀胱がんとは / 2 治療法 / 3 代表的なレジメン / 4 副作用管理
C 前立腺がん
1 前立腺がんとは / 2 治療法 / 3 代表的なレジメン / 4 副作用管理
23 頭頸部がん,甲状腺がん
1 頭頸部がん,甲状腺がんとは
A 頭頸部がん
2 治療法 / 3 代表的なレジメン / 4 副作用管理
B 甲状腺がん
2 治療法 / 3 代表的なレジメン / 4 副作用管理(頭頸部がん,甲状腺がん)
24 悪性リンパ腫
1 悪性リンパ腫とは / 2 治療法 / 3 代表的なレジメン / 4 副作用管理
25 白血病
1 白血病とは
A 急性骨髄性白血病(AML)
2 治療法 / 3 代表的なレジメン / 4 副作用管理
B 急性リンパ性白血病(ALL)
2 治療法 / 3 代表的なレジメン / 4 副作用管理
C 慢性骨髄性白血病(CML)
2 治療法 / 3 代表的なレジメン / 4 副作用管理
D 慢性リンパ性白血病(CLL)
2 治療法 / 3 代表的なレジメン / 4 副作用管理(AML,ALL,CML,CLL)
26 多発性骨髄腫
1 多発性骨髄腫とは / 2 治療法 / 3 代表的なレジメン / 4 副作用管理
4段目 支持療法
27 副作用の見方・考え方
1 有害事象と副作用
2 有害事象の評価
3 病歴
4 因果関係を考察する
28 がん薬物療法の副作用
1 抗がん薬で起こる副作用
2 副作用対策の重要性
3 副作用評価の方法
4 副作用マネジメント
5 副作用症状の患者教育
29 支持療法薬
1 支持療法とは
2 予防的支持療法薬と治療的支持療法薬のマネジメント
30 貧血(赤血球減少症),血小板減少症
A 貧血(赤血球減少症)
1 定義 / 2 原因となりうる主な抗がん薬 / 3 アセスメント / 4 支持療法
B 血小板減少症
1 定義 / 2 原因となりうる主な抗がん薬 / 3 アセスメント / 4 支持療法
31 好中球減少症と感染症(発熱性好中球減少症)
1 定義 / 2 原因となりうる主な抗がん薬 / 3 アセスメント / 4 FNの治療(支持療法)
32 消化器症状
A 口内炎
1 定義 / 2 原因となりうる主な抗がん薬 / 3 アセスメント / 4 支持療法
B 悪心・嘔吐
1 定義 / 2 原因となりうる主な抗がん薬 / 3 アセスメント / 4 支持療法
C 下痢
1 定義 / 2 原因となりうる主な抗がん薬 / 3 アセスメント / 4 支持療法
D 便秘
1 定義 / 2 原因となりうる主な抗がん薬 / 3 アセスメント / 4 支持療法
33 皮膚障害
A 血管外漏出
1 定義 / 2 原因となりうる主な抗がん薬 / 3 アセスメント / 4 支持療法
B 皮膚障害
1 定義 / 2 原因となりうる主な抗がん薬 / 3 アセスメント / 4 支持療法
C 脱毛
1 定義 / 2 原因となりうる主な抗がん薬 / 3 アセスメント / 4 支持療法
34 腎毒性
1 定義 / 2 原因となりうる主な抗がん薬 / 3 アセスメント / 4 支持療法
35 心毒性
1 定義 / 2 原因となりうる主な抗がん薬 / 3 アセスメント / 4 支持療法
36 肝障害
1 定義 / 2 原因となりうる主な抗がん薬 / 3 アセスメント / 4 治療
37 神経障害
1 定義 / 2 原因となりうる主な抗がん薬 / 3 アセスメント / 4 支持療法
38 味覚障害
1 定義 / 2 原因となりうる主な抗がん薬 / 3 アセスメント / 4 支持療法
39 過敏症
A アレルギー反応
1 定義 / 2 原因となりうる主な抗がん薬 / 3 アセスメント / 4 支持療法・治療
B Infusion reaction
1 定義 / 2 原因となりうる主な抗がん薬 / 3 アセスメント / 4 支持療法
40 腫瘍崩壊症候群
1 定義 / 2 原因となりうる主な抗がん薬 / 3 アセスメント / 4 支持療法
41 間質性肺炎
1 定義 / 2 原因となりうる主な抗がん薬 / 3 アセスメント / 4 治療
42 高血圧
1 定義 / 2 原因となりうる主な分子標的治療薬 / 3 アセスメント / 4 支持療法
43 免疫関連有害事象(irAE)
1 定義 / 2 原因となりうる主な薬剤 / 3 アセスメント / 4 支持療法
44 がん悪液質
1 定義 / 2 原因となりうる主な要因 / 3 アセスメント / 4 支持療法
5段目 緩和ケア
45 疼痛緩和と鎮痛薬
1 緩和ケアとは
2 痛みの種類と評価
3 鎮痛薬の種類と投与方法
4 オピオイド鎮痛薬の使い方と注意点
5 オピオイド鎮痛薬の副作用
6 鎮痛補助薬の種類と投与方法
付録 抗がん薬の略名一覧
索引
書評
開く
最新のがん薬物療法の知識とスキルを最大限に引き出す!
書評者:福土 将秀(札幌医大教授・医療薬学/病院薬剤部長)
近年,新規作用機序を有する分子標的抗がん薬や免疫チェックポイント阻害薬が次々に開発されてきている。また,がん治療レジメンについても複雑化・多様化しており,単剤治療ではなく殺細胞性抗がん薬や分子標的薬などと組み合わせたがん免疫療法も臨床で広く用いられている。このように,抗がん薬の研究開発と臨床現場におけるがん薬物療法は日進月歩であり,薬剤師をはじめとするがん医療に従事している医療スタッフは,常に最新の情報にアクセスし知識をブラッシュアップしていかなければならない。
最近,2024年度の診療報酬改定において,「がん薬物療法体制充実加算」が新設された。その算定のためには,外来がん診療において病院薬剤師が医師の診察前に,患者さんの服薬状況や副作用発現状況などを確認して,服薬指導や副作用に対する適切な支持療法を医師に処方提案することが必要とされている。このように,入院のみならず外来腫瘍化学療法においても,薬剤師が活躍できるさまざまなフィールドと場面が着実に増えてきたことを踏まえると,がん薬物療法における薬剤師の職能と存在価値が,これまで以上に高められることが期待される。
本書は,5つのセクション「ひきだし」で構成されており,総論からはじまり,抗がん薬の各論,各がん種の概要とがん薬物療法,副作用に対する支持療法と緩和ケアに分けて,全体を通して箇条書きとして,また効果的な図表が取り入れられて,内容を理解しやすくまとめられている。特に,18章から成る4段目の支持療法については,先述のがん薬物療法体制充実加算の算定で求められている支持療法の処方提案能力や服薬指導スキルを高めることに役立つと考える。
最後に,がん治療にかかわる医師・薬剤師や看護師をはじめとする全ての医療スタッフにおいて,本書が,最新のがん薬物療法の知識とスキルを最大限に引き出すための一助となり,がん患者さんに対する安全な薬物療法の提供に貢献することを願ってやまない。
がん薬物治療の基礎から応用までを網羅
書評者:山口 正和(公益財団法人がん研究会有明病院院長補佐・薬剤部長)
本書はがん薬物療法に関するさまざまな疑問や課題を解決するため,腫瘍薬学の基本から応用までを網羅した一冊である。がん薬物療法の最新情報や実践的な知識について学びたい薬剤師にとって欠かせない重要な参考書である。
第2版の最大の特徴は,最新のエビデンスや臨床研究の成果を余すところなく反映している点にある。がん治療の分野は急速に進化を続けており,治療法や薬剤の選択に関する知見も日々更新されている。その中で,本書は最新の研究データに基づき,より効果的かつ安全ながん薬物療法の実践を導くための具体的な指針を提供している。
また,執筆陣はがん治療の第一線で活躍する薬剤師であり,そのため内容の信頼性と実用性が非常に高い。本書はタイトルの「ひきだし」から,大分類を「段目」と名付け,1段目「総論」,2段目「抗がん薬各論」,3段目「がん薬物療法」,4段目「支持療法」,5段目「緩和ケア」で構成されており,読者はその流れに沿って,最新の薬剤の特性や治療法,副作用管理に関する知識を深めることができる。加えて,各章のポイントが冒頭の「はじめのひきだし」で簡潔にまとめられており,学習の際の道標となるであろう。
本書の魅力はそれだけにとどまらない。薬剤師向けの専門書として深い内容を持つ一方で,言葉遣いはわかりやすく,また図表を多用することで,がん薬物療法の初学者や医学知識がまだ豊富でない学生の読者に対しても,彼らの理解を助けるための工夫がされている。これは,がん薬物療法の基盤となる情報をより多くの人々に届けるための配慮である。
さらに,新薬の開発動向やがん薬物療法に関する最新の臨床試験について言及されている点にも注目したい。読者はこれらの情報によって,今後の治療の方向性や新たな選択肢について想定しておくことができる。これらの情報は,日々変化する医療環境に迅速に対応し,患者に対する最適な治療を提供するためには欠かせない。
総じて,『がん薬物療法のひきだし 第2版』は,がん治療に携わる医療専門職にとって必携の書である。徹底した情報収集と実践的なアプローチから,がん薬物療法のあらゆる側面を網羅している点で,本書は幅広い読者に有益なリソースとなるだろう。薬剤師にのみならず医療専門職が日々の診療で直面する疑問や課題を解決し,患者に最高のケアを提供するための強力なツールとなる本書を,ぜひ手に取っていただきたい。
臨床能力を高めたい薬剤師の貴重な情報源
書評者:池田 龍二(宮崎大病院教授・薬剤部長)
本書『がん薬物療法のひきだし』は2020年の初版に続き,このたび第2版が発刊されました。初版を手に取った多くの方々から,多様化・複雑化・高度化するがん治療をキャッチアップした改訂版の要望があったと推察します。
この第2版も初版と同じく5つのセクション(総論,抗がん薬各論,がん薬物療法,支持療法,緩和ケア)から構成されており,がん薬物療法を学ぶために必要な知識を修得したり教育を行ったりする上で,大いに期待できる内容となっています。
・「総論」では,がんの疫学と病因,がん診断と効果判定,がん治療の考え方,レジメン管理,曝露対策などがんの特徴や抗がん薬の管理,がん医療における薬剤師の役割など基本的なことを網羅的に学ぶことができるよう工夫されています。
・「抗がん薬各論」では,殺細胞性抗がん薬,分子標的治療薬,ホルモン療法薬,免疫チェックポイント阻害薬などについて,それぞれの薬剤の作用機序,主な適応がん腫と治療レジメン,特徴的な副作用,薬物動態・相互作用など薬剤ごとに構造式と共にわかりやすく解説されています。
・「がん薬物療法」の項目では,乳がん,肺がん,食道がん,胃がん,大腸がん,肝・胆・膵がん,婦人科がん,泌尿器がん,頭頸部がん,甲状腺がん,悪性リンパ腫,白血病,多発性骨髄腫の治療法,代表的なレジメン,副作用管理について,がん腫別に理路整然とまとめられており,治療の有効性・安全性を確保する上で大いに役立ちます。
・「支持療法」の項目では,貧血,血小板減少症,好中球減少症,消化器症状,皮膚障害,腎毒性,心毒性,肝障害,神経障害,味覚障害,過敏症,腫瘍崩壊症候群,間質性肺炎,高血圧,免疫関連有害事象,がん悪液質の定義,原因となる薬剤,アセスメント,支持療法が記載されており臨床現場で働く際に活用できる一冊です。
・「緩和ケア」の項目では,痛みの種類と評価,鎮痛薬の種類と投与方法などがん患者へのQOL向上に寄与できる内容が盛り込まれています。
本書全体を通して図や表がふんだんに使用されており,読者の知識がさらに深まる工夫がされている点も魅力的であり,臨床能力を高めたい薬剤師には貴重な情報源となるでしょう。また,基本的な項目として記載のある「はじめのひきだし」や一歩踏み込んだ「スキルアップのひきだし」では,初心者から専門的知識を有する方々にも大変魅力的な内容が記載されており,包括的に臨床能力を高めたい薬剤師にお薦めの一冊です。