内部疾患理学療法学 第3版

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循環器疾患、呼吸器疾患、内分泌代謝疾患の3つの領域を「病態理解」→「評価」→「介入」の順で学べるよう項目内容を大幅に見直して改訂。養成校でのカリキュラムを意識し、学生が学びやすく、教員が教えやすい教科書を追求した。標準シリーズならではの第一線の執筆陣が、内部疾患に対する理学療法学を分かりやすく解説する。理学療法の実際はもちろん、予防的アプローチも視野に入れた最新のスタンダードを提示する!

*「標準理学療法学」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 標準理学療法学 専門分野
シリーズ監修 奈良 勲
編集 高橋 哲也 / 神津 玲 / 野村 卓生
発行 2025年12月判型:B5頁:472
ISBN 978-4-260-06182-7
定価 5,720円 (本体5,200円+税)

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第3版 序

 今版より,本書の名称を「内部障害理学療法学」から「内部疾患理学療法学」へと改めた.これは,理学療法士が対象とする範囲が,従来の「障害」概念にとどまらず,疾患の発症から治療,回復,再発予防,そして未病・健康管理に至るまで,より広く深い医療プロセスに関与する専門職であるという認識に基づく変更である.内部臓器機能の異常は,臨床症状として外観に現れにくく,病態の理解には生理学・病態生理学・臨床医学の統合的視点が求められる.ゆえに,疾患を正確に理解し,病態に応じたリハビリテーション介入と健康指導を行う能力こそ,内部領域に携わる理学療法士に不可欠な資質である.本書名には,理学療法の守備範囲が疾患治療を基盤としつつ,予防・管理・指導へと拡張し続ける現代的役割を明確にする意図が込められている.
 超高齢社会を迎えた日本では,循環器・呼吸器・代謝疾患をはじめとする内部疾患の罹患率が増加し,複合疾患を有する患者が多数を占める.循環器疾患患者に呼吸器疾患が併存し,さらに糖尿病や腎機能障害をかかえるといったケースは決して稀ではない.理学療法士が「私は神経系だけ」「私は内部だけ」と狭義の専門領域に閉じこもることは,複雑で横断的な病態を有する患者に対して不十分な対応しかできないことを意味する.むしろ,臓器横断的な病態把握,システムとしての身体理解,生体反応と生活機能の統合的評価こそが,理学療法士のプロフェッションを支える基盤である.
 内部疾患領域は近年,著しい発展を遂げた.慢性心不全や慢性呼吸不全,糖尿病性足病変,腎臓リハビリテーション,さらにはサルコペニア・フレイル対応など,理学療法士が重要な役割を担う分野は急速に拡大している.同時に,理学療法士国家試験では内部疾患領域の出題比重が高まり,十分な基礎学習と臨床応用能力が強く求められている.今版では,国家試験出題領域を1つの指標としつつ,臨床での重要性や将来の発展性を考慮し,各章の分量と構成を再構築した.各領域は「病態理解→評価→介入」という臨床推論の流れで統一し,読者がそのまま臨床実践に応用できる体系性と実用性を担保した.
 加えて,今版では糖尿病性足病変,腎臓リハビリテーションなど,今後理学療法士が専門的に関与すべき領域について,分量を十分に確保し解説を加えた.これは,急性期から生活期,在宅医療,地域包括ケアまで,理学療法士が切れ目なく患者を支えていくための知識と視点を提供するという本書の役割を象徴している.
 近年,デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展,遠隔リハビリテーションの普及,感染症危機管理の重要性など,医療をとりまく環境は大きく変化した.しかし,どれほど技術が進歩し,医療制度が変わろうとも,理学療法士がいだくべき不変の原理は,「病態を深く理解し,症状を正しく観察し,患者の生活と人生に寄り添う」ことである.内部疾患領域の理解は,その原理を実践するための最も重要な礎の1つである.
 本書が,将来の医療を担う学生にとって学習の指針となり,また臨床で研鑽を重ねる理学療法士にとって,知識を更新し自己研磨を続けるための確かな道標となることを願う.内部臓器への深い理解と科学的思考に基づいた理学療法の実践が,患者1人ひとりの生活の質を支え,理学療法士という専門職の価値をより高めることにつながると確信している.

 2025年10月
 高橋哲也

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I 序論
 第1章 内部障害とは
  A 定義
  B 歴史
  C 内部障害者数の推移
  D 障害者認定と等級

II 循環器疾患の理学療法
 第1章 なぜ理学療法士が循環器疾患のことを学ぶのか
 第2章 循環器の解剖
  A 心臓の構造と役割
  B 脈管の構造と役割
 第3章 循環器の生理学
  A 心拍出量
  B 血圧
  C 運動時の循環生理
  D 酸素搬送系の理解
 第4章 代表的疾患の理解
  A 心不全
  B 虚血性心疾患
  C 弁膜症
  D 大動脈疾患
  E 下肢閉塞性動脈疾患
  F 不整脈,埋め込み型心臓電気デバイス(CIED)
 第5章 心電図
  A 心電図の基本,徐脈・頻脈
  B 不整脈(期外収縮,心房細動,心房粗動,ブロック)
  C ST変化
 第6章 画像
  A 胸部X線
  B 胸部CT
  C 冠動脈造影
 第7章 心エコー
  A 壁運動異常の評価
  B 左室収縮能
  C 左室拡張能
  D 弁機能
  E 右心系の評価
 第8章 血液検査
  A 血液検査の位置づけ
  B 心不全の重症度や病態の悪化を把握するための指標
  C 心筋梗塞の診断や重症度を把握するための指標
  D そのほかの循環器に関連する血液検査の結果
 第9章 血圧
  A 正常血圧・高血圧
  B 足関節上腕血圧比(ABI),皮膚灌流圧(SPP)
 第10章 運動負荷試験
  A 運動負荷試験の位置づけ
  B 運動負荷試験の目的
  C 運動負荷試験の禁忌
  D 運動負荷試験の種類
  E 運動負荷装置(エルゴメータ)を用いて行う運動負荷試験
  F 6分間歩行試験
  G 心肺運動負荷試験の基本
  H 運動負荷試験の結果からの運動プログラム作成
 第11章 標準的理学療法評価
  A 身体計測・体組成
  B バイタルサイン
  C 聴診
  D 視診,触診
  E 問診・情報収集
  F NYHA心機能分類
  G フレイル
  H FSS-ICU,PFIT-s
  I 心理,抑うつ,認知機能,QOL
 第12章 肺動脈カテーテルによる評価
  A 肺動脈カテーテルの適応
  B 肺動脈カテーテルで評価可能な指標
  C 肺動脈カテーテル管理中の注意点
 第13章 急性期の理学療法
  A 適応と禁忌
  B 離床開始基準
  C 中止基準
  D 離床プログラム
  E PICS,ICU-AW
  F プレハビリテーション
 第14章 前期回復期の理学療法
  A 典型的な病棟リハビリテーションプログラム
  B フレイルを考慮した入院リハビリテーションプログラム
 第15章 後期回復期の理学療法
  A トレーニング種類の選択方法
  B ウォームアップ
  C 有酸素運動
  D レジスタンストレーニング
  E 高強度インターバルトレーニング
  F 呼吸筋トレーニング
 第16章 生活期の理学療法
  A 訪問リハビリテーションの準備,手順,在宅運動療法の実際
  B 在宅療養支援,緩和ケア
 第17章 疾患管理と包括的リハビリテーション
  A 再発予防のための教育的指導
  B 心理,認知
  C ウェアラブルデバイスの利用,遠隔心臓リハビリテーション

III 呼吸器疾患の理学療法
 第1章 なぜ理学療法士が呼吸器疾患のことを学ぶのか
 第2章 呼吸器系の解剖
  A 呼吸器系の構造とその特徴
  B 駆動系の構造:胸郭と呼吸筋
  C 気道系の構造
  D 肺実質系の構造
  E 体表解剖について
 第3章 呼吸器系の生理学
  A 換気
  B ガス交換(拡散,血流)
  C 運動時の呼吸器系(換気)の応答と適応
  D 運動時の循環,末梢骨格筋との関連性
 第4章 代表的疾患の理解
  A 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  B 間質性肺疾患
  C 気管支拡張症
  D 肺炎
  E 呼吸器合併症
  F 急性呼吸不全
 第5章 呼吸機能
  A 肺機能検査
  B 動脈血液ガス検査
  C 呼吸筋力
 第6章 画像
  A 胸部単純X線写真
  B 胸部CT
 第7章 血液検査
  A 血液・生化学検査(炎症,肝機能,腎機能など)
  B 微生物学的検査
 第8章 運動負荷試験
  A 心肺運動負荷試験
  B 時間内歩行試験:6分間歩行試験
  C フィールド歩行試験
 第9章 標準的理学療法評価
  A 医療面接
  B 呼吸困難(間接的評価,直接的評価)
  C 酸素化(低酸素血症)
  D バイタルサイン
  E 身体診察
  F 栄養状態と体組成
  G 筋力(四肢筋力,MRCスコア)
  H 精神心理
  I 日常生活活動
  J 健康関連QOL
 第10章 呼吸器疾患に対する理学療法(総論)
  A 呼吸器疾患に対する理学療法とは
  B 呼吸器疾患に対する理学療法の特徴
  C 多様な理学療法のアプローチ
 第11章 急性期の理学療法
  A 急性期の理学療法とは
  B 開始基準,中止基準
  C 理学療法の実施に必要な呼吸管理の基礎知識
  D 急性期の理学療法の実際
  E 回復期(一般病棟)の理学療法
 第12章 周術期の理学療法
  A 目的,目標,対象(適応と禁忌),基本的な考え方
  B 術前の理学療法
  C 術後の理学療法(近接期と回復期)
  D おわりに
 第13章 安定期の理学療法
  A 目的,目標,対象(適応と禁忌),基本的な考え方
  B 開始基準,中止基準
  C コンディショニング
  D 運動療法
  E 呼吸筋トレーニング
  F ADLトレーニング
  G セルフマネジメント支援
 第14章 生活期・終末期の理学療法
  A 目的,目標,対象(適応と禁忌),基本的な考え方
  B 在宅での理学療法の継続,ADLトレーニング,身体活動性,緩和ケアにおける理学療法

IV 内分泌代謝疾患の理学療法
 第1章 なぜ理学療法士が代謝疾患(糖尿病)のことを学ぶのか
 第2章 代謝系の解剖と生理・生化学
  A 膵臓・肝臓・腎臓の解剖と生理学
  B 内分泌腺の解剖と生理学
 第3章 代謝系の適応と運動
  A 3大栄養素と代謝回路
  B 糖質代謝とホルモンの働き
  C 脂質代謝,アミノ酸代謝とホルモンの働き
  D 運動時のエネルギー代謝
  E 運動による代謝改善のメカニズム
 第4章 代表的疾患の理解
  A 糖尿病の疫学と病態
  B 糖尿病の基本治療
  C 糖尿病の急性合併症とリスク管理
  D 糖尿病の慢性合併症と医学的管理
 第5章 臨床検査値と自己血糖測定
  A 糖尿病に関する臨床検査値
  B 腎障害に関する臨床検査値
  C 肝疾患に関する臨床検査値
  D 肥満症・メタボリックシンドロームに関する臨床検査値
 第6章 ATの推定法(Karvonen法と自覚的運動強度)
  A ATを推定すべき理由
  B ATの推定法
 第7章 ライフスタイル(24時間行動)
  A ライフスタイルを評価すべき理由
 第8章 標準的理学療法評価
  A 基本的なメディカルチェック
  B 三大合併症
  C 足病変
  D その他の評価
 第9章 糖尿病基本治療としての運動療法とリスク管理
  A 運動療法の基本
  B 2型糖尿病に対する理学療法介入
 第10章 糖尿病合併症に対する理学療法とリスク管理
  A 神経障害
  B 糖尿病網膜症
  C 腎症,CKD
  D 足病変
 第11章 糖尿病患者の心理と行動,その支援
  A 心理と行動の特徴
  B 心理と行動の評価
  C 心理と行動の支援

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