内部障害のリハビリテーション医学・医療テキスト
内部障害者の「活動を育む」ためのスタンダードテキスト
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循環器・呼吸器・腎臓・内分泌代謝疾患という従来の内部障害に加え、悪性腫瘍(がん)やその治療によって引き起こされる内部障害、超高齢社会において増加する重複障害例への対応も重要事項として取り上げた。各疾患の病態・治療の基本的知識から、「活動を育む」視点によるリハビリテーション診断・治療・社会活動支援の対応まで、この1冊で、内部障害のリハビリテーション医学・医療の基本がわかる。
シリーズ | リハビリテーション医学・医療 |
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監修 | 一般社団法人 日本リハビリテーション医学教育推進機構 / 公益社団法人 日本リハビリテーション医学会 |
総編集 | 久保 俊一 / 海老原 覚 |
編集 | 上月 正博 / 牧田 茂 / 伊藤 修 / 角田 亘 |
発行 | 2022年03月判型:B5頁:288 |
ISBN | 978-4-260-04591-9 |
定価 | 4,620円 (本体4,200円+税) |
更新情報
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2022.07.15
- 序文
- 目次
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序文
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はじめに
Rehabilitationという言葉が医学的に使用され始めたのはおよそ100年前のことである.第一次世界大戦によって生じた膨大な数の戦傷者を,いかに社会に復帰させるかが大きな課題となった.この課題に応えるべく,米国では陸軍病院にphysical reconstruction and rehabilitationというdivisionが設けられた.これが最初の事例であるとされている.そのとき,rehabilitationは医学的治療と並行して進めるものであるという位置づけであった.そして,第二次世界大戦でさらにその有用性が認められ,1949年,米国で専門領域として確立され,American board ofphysical medicine and rehabilitationとして重要な診療科となった.
日本にrehabilitationという概念が導入されたのは1950年代で,1963年に日本リハビリテーション医学会が設立された.日本ではphysical medicine and rehabilitationがリハビリテーション医学として総括された.国際リハビリテーション医学会の名称もInternational Society of Physical and Rehabilitation Medicine(ISPRM)であり,physical medicineとrehabilitation medicineがセットになっている.日本ではこの2つを合わせて「リハビリテーション医学」としている.Physical medicineにあたる部分は名称として入っていないが,当然それも含めていることを念頭におくべきである.
超高齢社会となった日本において,リハビリテーション医学・医療の範囲は大きく広がっている.小児疾患や切断・骨折・脊髄損傷に加え,脳血管障害,運動器(脊椎・脊髄を含む)疾患,循環器・呼吸器・腎臓・内分泌代謝疾患,神経・筋疾患,リウマチ性疾患,摂食嚥下障害,聴覚・前庭・顔面神経・嗅覚・音声障害,がん,スポーツ外傷・障害などの疾患や障害が積み重なっている.また,周術期の身体機能障害の予防・回復,フレイル,サルコペニア,ロコモティブシンドロームなども加わり,ほぼ全診療科に関係する疾患,障害,病態を扱う領域になっているといっても過言ではない.しかも,疾患,障害,病態は複合的に絡み合い,その発症や増悪に加齢が関与している場合も少なくない.リハビリテーション医学・医療の果たすべき役割は大きい.
日本リハビリテーション医学会では2017年度に,リハビリテーション医学を「活動を育む医学」と再定義している.すなわち,疾病・外傷で低下した身体的・精神的機能を回復させ,障害を克服するという従来の解釈の上に立って,ヒトの営みの基本である「活動」に着目し,その賦活化を図り,よりよいADL(activities of daily living)・QOL(quality of life)を目指す過程がリハビリテーション医学の中心であるとする考え方を示している.「日常での活動」としてあげられる,起き上がる,座る,立つ,歩く,手を使う,見る,聞く,話す,考える,衣服を着る,食事をする,排泄する,寝る,などが組み合わさり,掃除・洗濯・料理・買い物などの「家庭での活動」,就学・就労・スポーツ活動・地域活動などの「社会での活動」につながっていく.ICFにおける参加は「社会での活動」に相当する.
リハビリテーション医学という学術的な裏づけのもとにエビデンスが蓄えられ根拠のある質の高いリハビリテーション医療が実践される.リハビリテーション医療の中核がリハビリテーション診療であり,診断・治療・支援の3つのポイントがある.急性期・回復期・生活期(維持期)を通して,ヒトの活動に着目し,病歴,診察,評価,検査などから活動の現状を把握し,問題点を明らかにして,活動の予後予測をする.これがリハビリテーション診断である.そして,理学療法,作業療法,言語聴覚療法,義肢装具療法など各種治療法を組み合わせてリハビリテーション処方を作成して活動を最良にするのがリハビリテーション治療である.さらに,リハビリテーション治療と並行して,環境調整や社会資源の有効利用などにより活動を社会的に支援していくのがリハビリテーション支援である.
リハビリテーション診療を担うリハビリテーション科は2002年,日本専門医機構において18基本診療科(現在19基本診療科)の1つに認定され,臨床における重要な診療科として位置づけられた.その専門医育成が2018年度からスタートしている.Physical medicineが含まれているリハビリテーション医学をしっかりとバランスよく教育していくことはきわめて重要な事柄になっており,そのために体系立ったテキストとして,日本リハビリテーション医学教育推進機構と日本リハビリテーション医学会が企画して『リハビリテーション医学・医療コアテキスト』『急性期のリハビリテーション医学・医療テキスト』『回復期のリハビリテーション医学・医療テキスト』『生活期のリハビリテーション医学・医療テキスト』『総合力がつくリハビリテーション医学・医療テキスト』『社会活動支援のためのリハビリテーション医学・医療テキスト』『脳血管障害のリハビリテーション医学・医療テキスト』が発刊されている.本書は,それらに続くものである.
リハビリテーション医学・医療において,内部障害の占める割合は急速に増加しているにもかかわらず,その障害が外部から認識されにくいということもあり,理解が進んでいない部分も少なからず存在する.本書は,内部障害に対するリハビリテーション医学・医療の全般がバランスよく記載されるように企画されている.また,大きな課題となっている重複障害に関しても章を立ててまとめている.
編集および執筆はこの分野の指導的役割を果たしている先生方にお願いした.本書の作成にご尽力いただいた先生方に深謝する.医師・専門職をはじめとしたリハビリテーション医学・医療に関係する方々にぜひ活用していただき,質の高いリハビリテーション医学・医療の普及に貢献することを心から願っている.
2022年2月
一般社団法人 日本リハビリテーション医学教育推進機構 理事長
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会 理事長
久保 俊一
一般社団法人 日本リハビリテーション医学教育推進機構 理事
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会 特任理事
海老原 覚
目次
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Ⅰ.リハビリテーション医学・医療と内部障害
1 リハビリテーション医学・医療総論
1 リハビリテーション医学・医療の意義 ─活動を育む医学─
2 「活動を育む」とは
3 リハビリテーション医学・医療における内部障害の位置づけ
2 リハビリテーション診療の概要
1 リハビリテーション診断
2 リハビリテーション治療
3 リハビリテーション支援
3 内部障害の概要
1 内部障害の定義と種類
2 内部障害の推移
3 内部障害に対するリハビリテーション医学・医療の課題
4 内部障害のリハビリテーション診療
1 内部障害のリハビリテーション診断
2 内部障害のリハビリテーション治療
3 内部障害のリハビリテーション支援
4 医療保険制度
5 介護保険制度
Ⅱ.内部障害のリハビリテーション医学・医療
1 循環器疾患のリハビリテーション医学・医療
1 循環器の構造と生理
2 循環器疾患のリハビリテーション診療のポイント
3 虚血性心疾患
4 心不全
5 大血管疾患
6 末梢動脈疾患
2 呼吸器疾患のリハビリテーション医学・医療
1 肺の構造と生理
2 呼吸器疾患のリハビリテーション診療のポイント
3 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
4 間質性肺炎
5 肺炎
3 腎疾患のリハビリテーション医学・医療
1 腎臓の構造と機能
2 腎疾患のリハビリテーション診療のポイント
3 急性腎障害(AKI)
4 慢性腎臓病(CKD)
4 代謝性疾患のリハビリテーション医学・医療
1 代謝性疾患の概要
2 代謝性疾患のリハビリテーション診療のポイント
3 糖尿病
4 メタボリックシンドローム
5 肥満症
6 肝疾患
5 悪性腫瘍(がん)のリハビリテーション医学・医療
1 悪性腫瘍(がん)の概要
2 悪性腫瘍(がん)のリハビリテーション診療のポイント
3 固形腫瘍(がん)
4 血液腫瘍
5 転移性骨腫瘍
6 重複障害のリハビリテーション医学・医療
1 重複障害の概要
2 重複障害の現況
3 重複障害に対するリハビリテーション医学・医療
4 重複障害のリハビリテーション診療の実際(症例)
慢性腎臓病と慢性心不全
解離性大動脈瘤と対麻痺
間質性肺炎と変形性膝関節症
悪性腫瘍(がん)と摂食嚥下障害
7 その他
1 加齢と生理機能・臓器予備能力
2 サルコペニア・フレイル
3 高次脳機能障害・認知機能障害(認知症)
4 ポリファーマシー
内部障害のリハビリテーション医学・医療便覧
1 用語解説
2 リハビリテーション診療における評価法
索引
正誤表
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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。