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6ステップで実現する
看護マネジメント・質改善につなげるデータ分析入門

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看護をデータで示すことを求められ、悩んだ経験はありませんか?本書は、病棟レベルの質改善や業務改善につながる、正しい数字の読み方・示し方や、データの基礎的な分析方法を身につけるための入門書。データ分析に取りかかる段階から改善活動までの流れを6ステップ(①思考の整理、②分析計画の立案、③分析の実施、④分析結果の解釈、⑤改善策の提案、⑥改善活動評価のための継続的なモニタリング方法の検討)で解説します。

シリーズ 看護管理まなびラボBOOKS
森脇 睦子 / 林田 賢史 / 梯 正之
発行 2024年09月判型:A5頁:200
ISBN 978-4-260-05458-4
定価 2,750円 (本体2,500円+税)

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はじめに

“看護をデータで示す”ことに苦手意識を持つ方に
 「“看護をデータで示す”なんて、どうやればいいのだろうか? でも、避けて通れない……」と苦しんでいる方々のために、少しでも数字やデータの扱いに対する苦手意識を軽減できたらという思いから本書を企画しました。
 近年、データに関する学びのニーズが急速に高まっています。それは、看護管理者のみならずスタッフにも病棟のマネジメントや日々提供する看護を可視化・評価し、それに基づく改善活動を行うことが求められているからでしょう。世の中は高度情報社会となり、医療機関においても、医療情報システムが急速に普及し、院内には膨大な量の医療用実データが蓄積され、それを利活用することでさまざまな観点から新たな知見が生まれています。
 このデータ利活用の流れはもちろん看護の世界にも大きく影響を与えています。とは言うものの、「データ分析をしなければ」と思うと妙に構えたり、小難しい検定をしないと格好がつかないと思ったり、「統計」という言葉に苦手意識を持っている方も多いのではないでしょうか? それらを払拭すべく、本書では、小・中学校で習った算数や数学の知識で正しく丁寧に数字を読み取ることを身につけ、分析力の向上を目指します。「小・中学校レベルの算数や数学はマスターしている」「そのレベルで何が言えるんだ」と思う方もいるかもしれませんが、自施設のマネジメントや医療・看護の質の可視化には十分有用です。

 本書では、以下のようなお悩みや苦手意識の解消をお手伝いします。
 ▪ 数字や統計に苦手意識があり、データを読み解く自信がない
 まずは、数字に慣れてみることが大切です。小・中学校の算数や数学で習った数字の読み方や示し方を思い出すことからはじめると、数字に対する苦手意識が払拭でき、読み解く自信を持てると思います。
 ▪ データ分析に挑戦してみたいが、どこから手をつけてよいかわからない
 「Excelを上手に使いこなせないため、分析ができない」と思っている方が意外と多いのですが、そうではありません。最も重要なのは、「何を明らかにしたいか」と分析目的を明確にすることです。分析のスキルは後からついてきます。
 また、どこから手をつけてよいかわからない時に考えられる原因として、「分析目的が壮大」ということがあります。私たちがデータ分析の相談を受ける際、分析目的が「看護の質を評価したいんです」「入退院支援の効果を評価したいんです」といったように、1つの分析では解決できないような壮大な分析目的を掲げているケースが見受けられます。分析目的が壮大になっていないか、より具体的にできないかを考えてみるとよいでしょう。
 ▪ データを集めてみたものの、問題解決につながる分析結果が見出せない
 「何を明らかにしたいか」が明確になっていないのにデータを集めると、このような苦しみに直面します。データ分析の手法の中には、膨大なデータから何かを導き出すという方法もありますが、臨床業務を主としている看護師が行うには、その方法は少しそぐわないと思います。まずは、「何を明らかにしたいか」という分析目的を明確にし、それに適したデータを集めることが正攻法です。
 ▪ とりあえず、集計して図表を作成したものの、何を示せているのかわからない
 なんとなくきれいな図表を作成しただけでは集計したにすぎず、分析したことにはなりません。問題解決や意思決定につながる結論が導き出せてはじめて分析したことになります。そのためには、まずは、「何を明らかにしたいか」「そのために必要なデータは何か」を明確にしてから、図表を作成します。

 このようなお悩みを解決すべく、本書では、臨床的疑問からデータ収集・分析、結果の解釈、改善策を導き出す一連の流れ(Chapter I・III)、ならびに、数字の読み方や代表的な基本統計量(Chapter II)を学ぶことができます。

本書の活用にあたって
 本書は、データ分析に取り掛かる段階から改善活動までを6ステップでお伝えします。各Chapterで扱う範囲は、下記の通りです。

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 「Chapter I データ分析を行うために『必要な思考』 6ステップで考える」では、データ分析に基づく看護マネジメント・質改善を行うための基本的な流れを説明します。前述した通り、最も重要なのは、「何を明らかにしたいか」です。言い換えると、提供している看護をどのように数字で表現したいかです。そのためには、臨床的疑問を問題提起の形にし、何にフォーカスするか、何を計測するかを決めていく「①思考の整理」が必要になります。次に、「②分析計画の立案」「③分析の実施」を、続けて「④分析結果の解釈」を行い、数字が何を示しているのか、示された数字をどう捉えるのか、そして臨床的な判断を加味して「⑤改善策の提案」を検討します。最後に、「⑥改善活動評価のための継続的なモニタリング方法の検討」へとつなげていきます。一連のプロセスを構成する、6つのステップを説明します。

 「Chapter II データ分析を行う前におさえておきたい『データの見方・捉え方』」では、データ分析の結果の“数字”が何を示しているのかを読み解くために必要な基本的知識を説明します。小・中学校で習った算数や数学の知識で数字を正しく丁寧に読み取ると見えてくることを、医療に関連したデータを例に示します。加えて、各項目の最後には問題(統計検定3・4級の問題を参考に作成)を設けています。「こういう時って折れ線グラフは使わないのか」「これってそもそも比較すべきものではないんだ」といった具合に、これまで何となく使っていた数字への認識を新たにし、臨床活動に活用していただくことを目指します。

 「Chapter III 事例で学ぶ 臨床的疑問から改善策立案までの一連のプロセス」では、Chapter I・IIの学びをもとに、日常の看護の現場で湧き上がる臨床的な疑問について、最終的な質改善活動とその評価に至るまでの流れ(6ステップ)を、事例を用いて説明します。

 なお、Chapter IとIIIにおいて、「③分析の実施」では、Excelの画面等を用いての詳細な解説はしていません。統計や個々のソフトウェアの使用方法は、すでに多くの書籍が発刊されていますので、それらを参考にしてください。
 また、「⑤改善策の提案」「⑥改善活動評価のための継続的なモニタリング方法の検討」では、個々の病院の背景・状況によって改善策やモニタリング方法が異なりますので、あくまで一例を記しています。

 本書を読み終えた後、数字やデータ分析への苦手意識が少し和らぎ、「私たちが提供している看護の何かをデータで示してみよう」と思っていただけたら幸いです。

 最後になりますが、本書をまとめるにあたり、細部にわたり著者を支援してくださった染谷美有紀さんをはじめとする医学書院の皆さまに心より感謝申し上げます。

 2024年8月
 著者を代表して
 森脇睦子

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Chapter I データ分析を行うために「必要な思考」6ステップで考える
 1-1 データ分析に基づく看護マネジメント・質改善を行うために
  医療・看護界を取り巻く環境の変化
  優れた看護管理者はデータ分析をマネジメントにどのように活かしているのか?
  データ分析のプロセス
  分析実施前の計画段階の重要性
 1-2 データ分析から改善活動まで:はじめに
 1-3 データ分析から改善活動まで:ステップ① 思考の整理
  データ分析の「目的」と「問い」を抽象的なイメージから
  具体的な表現に変換する
  具体的で分析可能な「問い」にするために
 1-4 データ分析から改善活動まで:ステップ② 分析計画の立案
  対象期間や対象者の確定
  分析で使用するデータの確定
   1──データ項目(変数や指標)の確定
   2──データソースの確定
  分析方法(表・グラフ化、統計検定など)の確定
   1──データ全体の特徴を把握するために単純に記述する分析
   2──分析目的(事実確認や原因解明)達成のために実施する分析
   3──使用するグラフの選択方法
   4──使用する統計検定方法の選択方法
 1-5 データ分析から改善活動まで:ステップ③ 分析の実施
  分析の手順
   1──データの入手
   2──表計算、統計ソフトの実行
  分析を実施する際の留意点
   1──分析データの前処理
   2──分析方法の調整(再検討)
 1-6 データ分析から改善活動まで:ステップ④ 分析結果の解釈
  解釈の手順
   1──結果(の値)の信用度についての検証
   2──結果から読み取れる傾向についての理解
   3──結果の本質的意味の理解
  解釈における留意点
   1──比較の重要性と比較妥当性の担保
   2──数値の意味するところの理解
   3──実質的な影響度の検討
   4──客観的で公平な判断
 1-7 データ分析から改善活動まで:ステップ⑤ 改善策の提案
 1-8 データ分析から改善活動まで:ステップ⑥ 改善活動評価のための継続的なモニタリング方法の検討
 1-9 データ分析から改善活動まで:まとめ
 1-10 ワーク:疑問を分析できる形に整理しよう

Chapter II データ分析を行う前におさえておきたい「データの見方・捉え方」
 2-1 データの種類
  質的変数と量的変数
  連続変数と離散変数
  1次データと2次データ
   問題
 2-2 統計グラフ
  グラフによるデータの集約
   1──数量の大小や時間的な変化を示すグラフ
   2──割合を示すグラフ
   3──積み上げ棒グラフ
   4──複合グラフ
  誤解を招きやすいグラフ表現
   問題
 2-3 データの集計──①度数分布表
  度数分布表で全体像が把握できる
  度数分布表に関連する用語をおさえよう
   問題
 2-4 データの集計──②ヒストグラム
  ヒストグラムとは
  ヒストグラムの形状
  ヒストグラムからわかること
   問題
 2-5 データの要約──①代表値
  平均値
  中央値
  最頻値
  3つの代表値の関係
   問題
 2-6 データの要約──②箱ひげ図
  箱ひげ図で用いる用語
  箱ひげ図でわかること
  箱ひげ図を使う時の注意点
   問題
 2-7 2変量のデータ
  単純集計とクロス集計
  クロス集計表
  クロス集計におけるポイント
   1──可能な限り度数と割合の両方で結果を表示する
   2──その条件に合致する度数を一定程度確保する必要がある
   問題
 2-8 時系列データの基本的な見方
  時系列データとは
  時系列データを用いたトレンド把握方法の実際
   1──各時点のそのままの数値を表現することでトレンドを把握する場合
   2──基準時点の値との比較でトレンドを把握する場合
   3──各時点のそのままの値、基準時点との比較値、どちらを用いるのか
   4──基準時点をどのように設定するか
  時系列データを用いたトレンド把握における留意点──移動平均とは
   問題
 2-9 標本調査
  母集団と標本
  全数調査と標本調査
  標本誤差と無作為抽出
   問題
 2-10 総合テスト

Chapter III 事例で学ぶ臨床的疑問から改善策立案までの一連のプロセス
 事例1 入退院支援のスクリーニングに関する実態調査
  ステップ① 思考の整理
   1──臨床的疑問点を問題提起の形にする
   2──何にフォーカスするか──分析の目的を明確化する
   3──何を計測するかを決める
  ステップ② 分析計画の立案
   1──分析の対象期間と対象者を決める
   2──変数とデータソースの決定
   3──分析方法
  ステップ③ 分析の実施
  ステップ④ 分析結果の解釈
   1──数字が何を示しているのか
   2──示された数値をどう捉えるのか
  ステップ⑤ 改善策の提案
  ステップ⑥ 改善活動評価のための継続的なモニタリング方法の検討
  まとめ:実態把握はできていますか
 事例2 COVID-19感染拡大期の忙しさと患者像の可視化
  ステップ① 思考の整理
   1──臨床的疑問点を問題提起の形にする
   2──何にフォーカスするか──分析の目的を明確化する
   3──何を計測するかを決める
  ステップ② 分析計画の立案
   1──変数とデータソースの決定
   2──分析の対象期間と対象者を決める
   3──分析方法
  ステップ③ 分析の実施
  ステップ④ 分析結果の解釈
   1──数字が何を示しているのか
   2──示された数値をどう捉えるのか
   3──この分析の強みと限界
  ステップ⑤ 改善策の提案
  ステップ⑥ 改善活動評価のための継続的なモニタリング方法の検討
  まとめ:感覚的・経験的な印象を数値で確認する

Column
 外れ値や欠損値への対応方法(アドバンスト編)
 分析結果と持論
 算数・数学的思考に慣れよう
 データの粒
 公表データも活用してみよう
 データに基づく意思決定をしている姿をスタッフに見せる
 「実践家」と「分析屋」が協同する体制を夢見て

問題の解答・解説
引用・参考文献
おわりに

索引

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