標準精神医学 第9版
精神医学のスタンダードテキスト,DSM-5-TRの用語に準拠し改訂
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精神医学の多様なアプローチを網羅的に解説する定番教科書の第9版。2023年に改訂されたDSM-5-TR日本語版の用語に準拠して記載を刷新した。社会的関心の高い、発達障害を含む児童期の精神疾患や、物質関連症・嗜癖症群なども実臨床に応じた内容に更新している。理解の助けとなる具体的な症例提示や症状を図示したイラストを多く盛り込み、日々の学習や臨床実習、試験対策をサポートする実用的な1冊に。
● | 『標準医学シリーズ 医学書院eテキスト版』は「基礎セット」「臨床セット」「基礎+臨床セット」のいずれかをお選びいただくセット商品です。 |
● | 各セットは、該当する領域のタイトルをセットにしたもので、すべての標準シリーズがセットになっているわけではございません。 |
更新情報
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2024.03.22
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序文
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第9版 序
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な広がりは,われわれの日常生活を大きく変えた.精神医学への関心は以前から高まっていたが,COVID-19によるメンタルヘルスの問題や後遺症という新たな課題が浮き彫りになった.精神医学の重要性は,今後さらに増すであろう.
「21世紀は脳とこころの時代」との言葉があるように,脳科学やゲノム科学,AI(人工知能)といった先端科学が進むなか,いみじくもCOVID-19が露わにした不確実性のなかで,精神医学のテキストへの需要はこれまで以上に高まっている.
さて,本書は2001年発行の第2版より「精神医学のおもしろさ,奥深さを伝える教科書」を目指すという編集方針を貫いてきた.第9版では,米国精神医学会の診断基準DSM-5のテキスト改訂版であるDSM-5-TRが2022年に出版されたのを受け,このDSM-5-TRで大幅に変更となった疾患名の日本語訳を反映させた.具体的には,disorder(s)の訳を「障害」から「症」に変更した.
この他,「精神医学的診察と診断」において,髄液・血液・尿検査の記述を充実させた.「発達障害(神経発達症群)およびその他の児童期の精神疾患」では,発達障害の対応と治療についてより具体的な記述を加えた.社会的な注目を集めることの多い「物質関連症及び嗜癖症群」は,DSM-5-TRの構成に準じ,記載を大幅に拡充させた.
なお,今回の改訂でもアンケートや読者モニターを実施し,読者にとっての有用性をさらに高める努力をした.第9版における主な改訂点は以下のとおりである.
- 各章の冒頭に設けた「この章で学んでほしい要点」と「知っておきたい最近のトピックス」は,好評のため継続している.「一目でわかる本書の構成」は各章の全体像を把握しやすいよう,視認性と広範な一覧性を志向し,総論と各論の冒頭にそれぞれ掲載した.
- 症例提示と,症状や徴候を図示したイラストも一部新しくした.初学者にはイメージしにくい病像も,具体性を増すことで学習の助けになればと考えている.
- 編集体制は第9版では明智龍男が新たに参画し,尾崎紀夫,三村 將,水野雅文,村井俊哉,明智龍男の5名が編集者としてかかわった.また,各章の執筆担当者も世代交代を図り,10名の新たな執筆者を迎えた.
今回も執筆者の先生方には,臨床や研究,教育などでご多忙のなか本書の執筆に参画いただき,豊富な経験に根ざした臨床のエッセンスを惜しみなく盛り込んでいただいた.この場を借りて厚く御礼申し上げる.
本書が,精神医学を学ぼうとする多くの読者にとって有用な教科書であり続けるために,今後も3年に1回を目安とした改訂を行い,常に最新の情報をお届けできるよう努力したい.読者の皆さまからご意見をいただければ幸いである.
2024年1月
編者
目次
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総論
一目でわかる本書の構成 [総論]
第1章 精神医学とは
I 精神医学とは何か
II 正常と異常
III 精神医学の方法論
IV 精神医学の歴史
V 精神疾患の分類と診断
第2章 脳科学と精神医学
第3章 精神機能とその異常
I 意識
II 知覚
III 記憶
IV 見当識
V 睡眠
VI 知能
VII 言語
VIII 思考
IX 感情
X 意志,欲動,行動,精神運動
XI 自我意識
XII 人格(パーソナリティ),性格
第4章 精神発達
I 総論
II 発達段階とその特徴
第5章 精神医学的診察と診断
I 面接法
II 検査法
第6章 精神科治療学
I 身体療法
II 薬物療法
III 精神療法
第7章 コンサルテーション・リエゾン精神医学
第8章 精神医療と社会
I 精神保健
II 地域精神医療
III 災害精神医学
IV 精神保健福祉法
V 司法精神医学
各論
一目でわかる本書の構成 [各論]
第9章 発達障害(神経発達症群)およびその他の児童期の精神疾患
I 児童期の診察の留意点
II 発達障害
III その他の児童期の精神疾患
第10章 統合失調症
第11章 うつ病
第12章 双極症
第13章 不安症・解離症・身体症状症
I 概念・歴史・分類
II 不安症群
III 解離症群
IV 身体症状症及び関連症群
第14章 強迫症
I 総論
II 各論
第15章 心的外傷及びストレス因関連症
I 総論
II 各論
第16章 摂食症
第17章 睡眠・覚醒障害
I 総論
II 各論
第18章 物質関連症及び嗜癖症群
I 物質関連症
II 嗜癖症群
第19章 認知症
I 総論
II 各論
第20章 てんかん
I 総論
II 各論
第21章 パーソナリティ症
第22章 精神科で対応することのある他の疾患および状態
I 秩序破壊的・衝動制御症群
II 性別違和
III パラフィリア症群(性嗜好障害)
IV 性機能不全群
第23章 精神疾患の原因となりうる他の医学的状態および医薬品,化学物質
I 精神疾患の原因となりうる医学的状態
II 精神疾患の原因となりうる医薬品,化学物質(乱用・依存性物質を除く)
付録 精神科臨床実習の手引き
A 臨床実習の目的と意義
B 臨床実習の実際
C 精神科における医療面接──予診のとり方を通じて
人名索引
和文索引
欧文索引
▪ こころの病を描いた映画
統合失調症 『ビューティフル・マインド』
病気不安症 『ハンナとその姉妹』
パニック症 『アナライズ・ミー』
統合失調症 『シャイン』
うつ病 『セント・オブ・ウーマン 夢の香り』
解離性健忘,とん走 『パリ,テキサス』
強迫症 『恋愛小説家』
PTSD 『再会の街で』
アルコール使用症 『男が女を愛する時』
認知症 『電話で抱きしめて』
ボーダーラインパーソナリティ症 『17歳のカルテ』
正誤表
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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。