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日本うつ病学会診療ガイドライン 双極症2023

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従来の「治療」ガイドラインの内容に、疾患情報や臨床疑問、心理社会的支援、周産期、薬物療法に関する安全性とモニタリングなどの情報が加わり、実臨床に一層役立つ「診療」のためのガイドラインとして大改訂。一部の臨床疑問ではシステマティックレビューも行い、書籍版限定の解説や資料も掲載している。当事者・治療者双方が正しい知識に基づき納得して治療を選択できる、双極症診療の羅針盤となる一冊。

監修 日本うつ病学会
編集 気分障害の治療ガイドライン検討委員会 双極性障害委員会
発行 2023年07月判型:B5頁:256
ISBN 978-4-260-05317-4
定価 5,500円 (本体5,000円+税)

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発行にあたり

 2011年,日本うつ病学会は,わが国のどの精神医学関連の学術団体よりも先駆ける形で,おそらく日本初の学会による精神疾患の治療ガイドラインとなる「日本うつ病学会治療ガイドラインI.双極性障害」を発表した.その後,2012年に第2回改訂,2017年に一部修正,そして2020年6月に小改訂が行われ,現在に至っている.いずれの改訂・修正も,専門家による世界中の研究論文のナラティブなレビューに加え,わが国の治療環境を加味して作成したものを,ガイドライン作成委員会による吟味の過程を経て決定した.このガイドラインは世界に向けて情報を発信するため英語化し,Psychiatry and Clinical Neurosciences誌に掲載され,広く引用されている.
 しかしながら,昨今,システマティックレビューやメタ解析が重視されるようになり,時代に合ったガイドラインの策定が求められるようになってきた.そこで,今回の大改訂では,日本医療機能評価機構のMindsの治療ガイドライン作成マニュアルに沿って作成を行うこととなった.本ガイドラインでは,従来の躁エピソード,抑うつエピソード,維持療法に加え,双極症についての基本情報や,適切に診断・治療していく上で大切な情報をまとめた「疾患の特徴」,薬物療法とは車の両輪の関係にある「心理社会的支援」,そして「周産期」,薬物療法に関する「副作用とモニタリング」の章を加え,内容も大幅に充実させることとした.そのため,本学会の気分障害の治療ガイドライン検討委員会と双極性障害委員会が合同して作成を行うこととなった.また,このようにスコープを広げたことに伴い,ガイドラインの名称も,「治療」ガイドラインから「診療」ガイドラインへと変更した.
 また,臨床疑問を設定し,その内容について詳細に説明するような構成とした.この臨床疑問については,執筆メンバーで検討した上で,公認心理師,薬剤師,看護師,精神保健福祉士などの医療従事者や当事者,家族を交えた議論に基づいて選定し,いくつかについてはシステマティックレビューを行った.最終的な推奨内容は,システマティックレビューの結果の検討をもとに,投票を行って決定した.投票においては,日本医学会の診療ガイドライン策定参加資格基準ガイダンスに基づいて利益相反のマネジメントを行い,当該臨床疑問に関して利益相反がある場合は委員長を交代し,あるいは投票を行わないなどの対応を行った.
 エビデンスの乏しい領域,例えば双極症II型の維持療法や混合状態の薬物療法などについては,無理にシステマティックレビューを行うことはしなかった.しかしながら,エビデンスのない領域こそ,日々,医療従事者が治療に難渋しており,無味乾燥な内容だけでは,双極症にかかわる医療従事者だけでなく,当事者やその家族のニーズに応えることはできない.そのため,従来のガイドラインと同様に,専門家の経験に基づく情報についても丁寧に記載した.
 日本うつ病学会ホームページに掲載されているWEB版の診療ガイドラインと比べ,この書籍化版は詳細な解説および補足資料も追加されている.
 本ガイドラインは,当事者と医師が共に判断する共同意思決定(shared decision making:SDM)を行う際にも,当事者の現状に合った治療選択肢を,その長所・短所,さらには費用や実現可能性などを含めて提示・説明するためのよい資料となることであろう.
 なお,本ガイドラインは,臨床場面における双極症診療の支援を目的に作成されたものであり,医師の治療裁量権を制限するものではなく,法的拘束力もない.
 本ガイドラインが,当事者・医師・医療従事者が正しい知識に基づいて納得する治療を選択する一助となり,一人でも多くの双極症の当事者がリカバリーにつながることを願っている.

 2023年5月31日

 日本うつ病学会理事長
 前気分障害の治療ガイドライン検討委員会委員長
 双極症診療ガイドライン改訂ワーキンググループ作成統括
 渡邊衡一郎

 双極性障害委員会委員長
 双極症診療ガイドライン改訂ワーキンググループ作成統括
 加藤 忠史

 双極症診療ガイドライン改訂ワーキンググループ実務統括
 松尾 幸治

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ナラティブ(エキスパート)レビューした項目は[  ]
システマティックレビューした項目は《  》

第1章 疾患の特徴
 [CQ1-1] 双極症はどのような疾患なのか
 [CQ1-2] 双極症の診断基準はどのようなものか
 [CQ1-3] 双極症の症状・経過の多様性はどのように診断に反映されるのか
 [CQ1-4] 双極症と他の精神疾患の鑑別をどのように考えるのか
 [CQ1-5] 治療方針の決定に際して望ましい態度とはどのようなものか
 [CQ1-6] 双極症の治療において,どのような場合に入院を検討すべきか
 [CQ1-7] 治療中の自殺リスクに,どのように対処することが望ましいか
 [CQ1-8] 双極症の治療において,どのような生活習慣が望ましいか
 [CQ1-9] ライフステージごとにどのような配慮が必要か(小児・若年・労働年齢・高齢者)
 [CQ1-10] 双極症に併存する身体疾患にはどのような配慮が必要か
 [CQ1-11] どのような社会資源を利用できるのか

第2章 躁エピソード
 [CQ2-1] 躁エピソードの治療開始時にはどのように対応するのか
 [CQ2-2] 精神運動焦燥・興奮を伴う躁エピソードにはどのように対処するのか
 [CQ2-3] 躁エピソードの選択薬・治療法はなにか
 《CQ2-4》 躁エピソードに対して,気分安定薬や第2世代抗精神病薬の単剤療法と両者の併用療法はどちらが推奨されるか
  《CQ2-4.1》 躁エピソードに対して,気分安定薬単剤療法と,第2世代抗精神病薬との併用療法はどちらが推奨されるか
  《CQ2-4.2》 躁エピソードに対して,抗精神病薬単剤療法と,気分安定薬との併用療法はどちらが推奨されるか
 [CQ2-5] さまざまな特徴を伴う躁エピソードの選択薬・治療法はなにか

第3章 抑うつエピソード
 [CQ3-1] 抑うつエピソードの治療開始時にはどのように対応するのか
 [CQ3-2] 抑うつエピソードの標準的な薬物療法とはどのようなものか
 《CQ3-3》 双極症抑うつエピソードでは,第2世代抗精神病薬の単剤療法は気分安定薬の単剤療法より有用(推奨される)か
 《CQ3-4》 双極症抑うつエピソードでは,気分安定薬・第2世代抗精神病薬の併用療法は,単剤療法より有用か
 《CQ3-5》 双極症抑うつエピソードでは,気分安定薬もしくは第2世代抗精神病薬と抗うつ薬の併用は,併用しない場合より有用(推奨される)か
 [CQ3-6] 抑うつエピソードの非薬物療法にはどのようなものがあるか
 [CQ3-7] 抑うつエピソードの治療反応性に影響を及ぼす要因はどのようなものがあるか
 [CQ3-8] 抑うつエピソードのタイプ・特徴ごとに有効な治療法があるか
  [CQ3-8.1] 不安(不安症)を伴う抑うつエピソードに対して有効な治療はなにか
  [CQ3-8.2] 混合性の特徴を伴う抑うつエピソードに対して有効な治療はなにか
  [CQ3-8.3] 精神症症状を伴う抑うつエピソードに対して有効な治療はなにか
  [CQ3-8.4] 双極症II型の抑うつエピソードに対して有効な治療はなにか

第4章 維持療法
 [CQ4-1] 維持療法はなぜ行い,再発・再燃のリスクはどの程度あるのか
 [CQ4-2] 維持療法の選択薬はなにか
 《CQ4-3》 気分安定薬か第2世代抗精神病薬の単剤療法で臨床的に安定した双極症患者は,その単剤療法を中止した場合に比べて,その単剤療法の維持群のほうが28日後の再発・再燃を予防することができるか
 《CQ4-4》 気分安定薬と第2世代抗精神病薬の併用療法で臨床的に安定した双極症患者は,その第2世代抗精神病薬を中止した場合に比べて,その併用療法の維持群のほうが28日後の再発・再燃を予防することができるか
 [CQ4-5] 維持療法で抗うつ薬を使用してよいか
 [CQ4-6] 治療抵抗性を示すときには,どのように対応するのがよいか
 《今後の検討課題CQ》 双極症維持期治療において,抗精神病薬の持効性注射薬はその経口薬より有用性に優れているのか

第5章 心理社会的支援
 [CQ5-1] 各病期〔治療導入期,急性期(躁エピソード/抑うつエピソード)や維持期など〕に対して,どのような心理社会的介入が予後改善に寄与するのか
 [CQ5-2] 通常臨床で実施可能であり,患者が日常生活で実践可能な,エビデンスに基づいた有用な心理教育や精神療法に共通のミニマムエッセンスはなにか
 [CQ5-3] 現状の日本における双極症に対する心理的支援として,心理教育と専門的な精神療法をどのように使い分けるか
 [CQ5-4] 専門的な精神療法や心理教育が受けられない環境下の患者や家族に対して,有用とされている心理社会的支援はどのようなものか
 [CQ5-5] 家族などのケアラー(プライベートでケアにかかわる方々)へのサポートには,どのようなことが役立ち,ケアラーと患者にとってどのようなベネフィットがあるか

第6章 周産期
 [CQ6-1] 妊娠を考える双極症の患者・家族に共有すべき情報はなにか
 《CQ6-2》 妊娠中の双極症に対する気分安定薬のリスクとベネフィットはなにか
 《CQ6-3》 産後(授乳婦を含む)の双極症に対する気分安定薬のリスクとベネフィットはなにか

第7章 副作用とモニタリング
 [CQ7-1] リチウムの血中濃度の測定はなぜ必要なのか,いつ・どのように測定するのがよいか
 [CQ7-2] ラモトリギンの開始時,増量時などに用法・用量をなぜ守らなければならないのか
 [CQ7-3] 双極症の治療に用いられる抗精神病薬(特にオランザピン,クエチアピン)などによる耐糖能異常と脂質異常症には,どのように気をつければよいのか
 [CQ7-4] 定期的に心電図を測定することは必要か
 [CQ7-5] 双極症治療薬の使用時に聞くべきこと,モニタリングすべきことにはどのようなものがあるか
 [CQ7-6] 特にどのような人に対して,副作用の注意をすべきか
 [CQ7-7] 複数の薬剤を併用するときには,どのようなことに注意したらよいのか
 [CQ7-8] 嗜好品,サプリメント,食品などにも注意が必要か

巻末付録 システマティックレビュー資料

利益相反情報
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