症例から学ぶ小児脊柱変形
基礎から難治性疾患まで

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脊柱変形は病態・治療・経過が複雑で、医師には高度な知識と柔軟な判断力が求められる。本書は日本のトップランナーが、基礎的知識と基本手技の確実な習得こそが、高度変形など複雑な症例への理解と治療戦略の構築につながるとの信念に基づき、臨床現場で培った豊富な知識と経験を惜しみなく開示。希少疾患を含む150以上の症例と42点の動画で臨床の“リアル”を体感できる。脊柱変形に携わるすべての医師の羅針盤となる1冊。

川上 紀明
発行 2025年10月判型:A4頁:308
ISBN 978-4-260-06225-1
定価 19,800円 (本体18,000円+税)

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 脊柱変形の治療に携わるようになって,まもなく37年が経過しようとしています.この間,診察した患者数は13,000人を超え,執刀した脊柱変形手術は延長術を含めず延べ3,000件以上に及びます.
 私が側弯症治療に取り組み始めた当初,所属大学にはこの分野の指導者が不在で,まさに手探りのなかで日々の診療を続けていました.そうした中で支えとなったのは,他施設での手術見学,学会やジャーナル・専門書を通じた知見の蓄積,そして学会でご活躍されていた諸先輩方からの助言とご指導でした.
 若い頃は,まず基礎知識と基本技術の習得に注力することが重要です.私自身も多くの医師と同様に,経験豊富な先生方が分担執筆した教科書から学び始めました.これらは知識の習得には非常に有用でしたが,執筆者ごとの治療方針に違いがみられることも少なくなく,診療現場で症例ごとの治療方針を決定する際には,迷うことも多々ありました.
 こうした経験を踏まえ,本書の企画にあたっては,小児脊柱変形における基礎的知識と基本的手技の習得を重視しながら,高度変形症例にも対応可能な治療戦略を,体系的かつ実践的に理解できるようにすることを目指しました.主な読者としては,これから脊柱変形治療に携わる若手医師から中堅医師を想定しています.
 本書は,総論と各論の2部構成としました.総論では,脊柱変形を伴う多様な疾患に対し,診断・評価・治療方針の立て方という共通の原則や基本的アプローチを解説しています.また,特に重要と考えられる治療技術については,理解を深めやすいように動画を用意し,QRコードを添付しました.視覚的な情報を通じて,読者の臨床実践への応用が容易になることを期待しています.各論では,可能な限り多くの症例を提示し,同一疾患であっても異なる経過をたどること,ならびに治療選択が治療結果にどのような影響を及ぼすのかについて,治療内容と長期経過を含めて具体的に記述しています.
 文献の網羅性については,近年急速に普及している人工知能(AI)の能力には到底及びません.そのため本書では,私自身の治療方針に特に影響を与えた文献のみに限定して紹介する方針としました.
 本書を通じてもっともお伝えしたいのは,30年以上にわたり,一貫して変えることのなかった私の治療スタイルと方針です.20世紀後半から今日に至るまで,さまざまなインプラントや矯正技術が登場しては消えていきましたが,私は常に基本に忠実な姿勢を貫いてきました.その結果として,各症例の治療成果を評価する際にも,改善点や課題が明確に見えてくるようになったと感じています.
 脊柱変形は症例ごとの差が大きく,また希少疾患も多いため,拠り所となったのは経験豊富な医師の助言と治療成績の報告でした.中でも,恩師である Robert B Winter先生,そして私に胸郭の重要性を教えてくださった友人でもある Robert M Campbell Jr.先生には,筆舌に尽くしがたいご指導と励ましをいただきました.私が今日あるのは,このお二人との出会いがあったからにほかなりません.その他にも側弯症治療に専念するようになってから本当に多くの方々にお世話になりました.本書はそのような方々のサポートがなければ書き上げることができなかったと感じています.
 また,長年にわたりデータ整理や画像収集に尽力してくださった秘書の平岩沙智子さんにも,深く感謝申し上げます.さらに,私が臨床に専念できるよう環境を整えてくれた妻明希子には,言葉では尽くせないほどの支援を受けました.この場を借りて,心より感謝の意を表したいと思います.
 最後に,本書が脊柱変形治療に携わる医療従事者の一助となり,脊柱変形によって身体的・精神的な困難を抱える子どもたちが,少しでも幸せな人生を歩めるようになることを願ってやみません.

 2025年9月
 川上紀明

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総論
 第1章 治療方針に必要な診断学
  I 骨成熟度の評価
   1 評価方法
   2 各評価方法による骨成熟度と側弯の悪化
  II 成長時期からみた治療方針
   1 発症時期による分類
   2 早期発症・晩期発症側弯症
   3 “tweener”(8~12歳)
   4 筆者の考える成長時期と手術時期の決定
  III 全身状態の評価
   1 神経併存疾患の評価
   2 既往疾患の存在(心肺機能,内分泌・代謝異常)
   3 精神発達遅延
  IV 弯曲のタイプの評価と治療方針決定への影響
   1 なぜ弯曲のタイプを評価する必要があるのか
   2 どの分類を用いて評価すべきか
   3 脊柱の評価方法

 第2章 保存治療の考え方とその実際
  I 経過観察
  II 装具治療
   1 成長期における装具治療
   2 成長終了後の装具治療
  III ギプス治療
  IV 理学療法の問題点と意義,考え方
   1 Physiotherapeutic Scoliosis-Specific Exercise(PSSE)
   2 成人後の加齢変化
   3 手術施行症例に対するケア

 第3章 手術治療の考え方とその実際
  I 手術アプローチ
   1 後方アプローチ
   2 前方アプローチ
   3 胸腔鏡視下手術
  II 固定術と骨移植
   1 椎間関節部への骨移植
   2 椎体間固定
   3 前方支柱再建
  III 背椎骨切り術
   1 Posterior column osteotomy(PCO)と癒合骨塊骨切り術(FMO)
   2 椎体楔状骨切り(PSO)
   3 椎骨全周性骨切り(VCR)
   4 骨切りの部位とタイプの決定
  IV 成長温存手術
   1 Growing rod
   2 VEPTR
   3 Shilla growth guidance system
   4 Luque-Trolly法
  V インプラントとインストゥルメントの特徴
   1 椎弓根スクリュー
   2 フック
   3 椎弓下ワイヤー,ケーブル
   4 Profileとサイズ
   5 フック,ケーブル,スクリューの組み合わせと使い分け
  VI 基本的な矯正手術手技:インストゥルメントの使い方
   1 Distractionとcompressionを用いた側弯変形矯正
   2 ロッド回旋操作による側弯変形矯正
   3 Cantilever操作による側弯/後弯変形矯正(後弯,側弯)
   4 仙骨(骨盤)前方回旋による腰仙椎後弯変形矯正(Jackson intrasacral fixation)
  VII 脊椎外科手術の基本的な手技と手術器具の使い方
   1 剥離操作における Cobb elevatorの使い方
   2 剥離子の使い方
   3 ケリソン鉗子(Kerrison rongeur)の使い方
   4 鋭匙,鋭匙鉗子(Curette rongeur)の使い方
   5 ノミの使い方
   6 電気メス,バイポーラーの使い方

 第4章 合併症への対応と発生予防
  I 脊柱変形治療における合併症
   1 保存治療における合併症
   2 手術治療における合併症
   3 経過観察中に生じる合併症

 第5章 長期経過観察の必要性とポイント
  I 長期成績の重要性とその臨床的意義
   1 経過観察の必要性
  II 内容のある長期経過観察を可能にするために
   1 経過観察における取り決め
   2 医師と患者の意思疎通

各論
 第6章 特発性側弯症
  I 特発性側弯症とは
   1 原因解明の歴史
   2 特発性側弯症診断における課題
   3 特発性側弯症に合併する腰仙椎異常
   4 特発性側弯症の発症年齢と悪化
   5 特発性側弯症の臨床症状
  II 特発性側弯症の保存治療:運動療法
   1 Physiotherapeutic Scoliosis-Specific Exercise(PSSE)
   2 Barcelona Scoliosis Physical Therapy School
  III 特発性側弯症の手術治療
   1 悪化症例に対する手術方針の決定

 第7章 先天性側弯症
  I 先天性側弯症とは
   1 疾患の概要
   2 先天性側弯症の診断におけるルールの提言
   3 先天性側弯症の分類
   4 自然経過
   5 先天性側弯症に合併した脊柱管内異常とその対応
   6 肋骨異常と胸郭不全症候群
   7 その他の合併異常
   8 手術適応の判断
   9 手術方法の決定
  II 先天性後弯症
   1 先天性前弯症
  III その他の症例に対する手術治療の具体的内容

 第8章 神経線維腫症
  I 神経線維腫症とは
  II 神経線維腫症に生じる側弯,後側弯変形
   1 Non-dystrophic type
   2 Dystrophic type
  III Dystrophicタイプの脊柱変形症例の治療方法とその結果
   1 幼小児期に悪化を示した側弯や後側弯の場合
   2 思春期以後に悪化した側弯や後側弯
   3 特異な脊柱変形
   4 頚椎部角状後弯
  IV 合併症の発生と問題点
  V 将来の展望

 第9章 Marfan症候群
  I 四肢に認められる特徴と臨床上の問題点
  II 体幹に認められる症状と特徴
  III 脊柱変形
   1 脊柱変形の治療前評価
   2 脊柱変形の治療

 第10章 神経筋原性側弯症
  I 神経筋原性側弯症とは
   1 側弯の発生率
   2 側弯の特徴
   3 臨床症状
   4 他覚的所見と診断学的評価
  II 治療
   1 保存治療
   2 手術治療
   3 合併症と治療上の問題点
   4 Chiari奇形,脊髄空洞症を合併した側弯症

 第11章 骨系統疾患
  I 骨系統疾患とは
  II 骨系統疾患の特徴
   1 骨形成不全症
   2 軟骨無形成症
   3 2型コラーゲン異常症
   4 鎖骨頭蓋異骨症
   5 点状軟骨異形成症
   6 屈曲肢異形成症
   7 変容性骨異形成症
   8 脳肋骨下顎症候群

 第12章 二分脊椎に合併した脊柱変形
  I 二分脊椎とは
   1 二分脊椎・脊髄髄膜瘤に伴う脊柱変形のタイプ
   2 脊柱変形の発生頻度
   3 体幹変形の問題点
   4 胸郭変形とそれに伴う呼吸機能への影響
   5 脊髄係留
  II 手術戦略における重要ポイント
   1 係留の確認
   2 水頭症の状態とVPシャントチューブの位置確認
   3 背部の皮膚切開部の確認
   4 手術アプローチにおける前方手術の必要性
   5 矯正固定方法と骨移植
   6 成長温存手術
  III 二分脊椎に伴う脊柱変形に対する手術の問題点
  IV 腰仙椎無形成
   1 治療

 第13章 その他の症候性脊柱変形
  I Sotos症候群
  II Prader-Willi症候群
  III 先天性心疾患に生じた側弯症
   1 先天性心疾患患者への側弯症手術
   2 Fontan手術症例

 第14章 高度腰椎すべり症
  I 高度腰椎すべり症とは
  II 高度すべり症に対する外科的治療
   1 Intrasacral fixationによる高度腰椎すべり症に対する矯正固定術

 第15章 小児後弯症:Scheuermann病
  I 成長過程における矢状面配列の変化
  II 病的な矢状面配列の臨床上の問題点
  III Scheuermann病の診断
  IV 装具治療
  V 手術治療

 第16章 側弯症術後の再手術
  I 再手術を決断する要因
  II 再手術の手術戦略からみた要因
   1 初回手術後の予期せぬ再手術
   2 近い将来に追加手術が必要となる可能性が残ることを覚悟して行った手術
   3 将来,加齢変化が生じれば追加手術が必要となる可能性のある手術
  III 再手術における留意点
   1 術後の悪化
   2 感染予防
   3 インプラントの再設置
   4 偽関節の再設置

コラム 新しい治療法の開発とその採用
索引

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実臨床例に即して病態から治療の流れを解説してくれる
書評者:清水 敬親(榛名荘病院群馬脊椎脊髄病センター名誉センター長)

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 26年前に初めて川上紀明先生と言葉を交わし,以後さまざまな脊柱変形症例について幾度となく教えを乞い意見を求めてきたが,初めの数年間は川上先生のおっしゃることに私の理解が追いつかないことが多々あった。そんな私が本書の書評を書くのは大いに気が引ける。まずは一気に読破してから書評を――,となりそうなものだが,読み始めたら川上先生から個別指導を受けているような錯覚にとらわれ,内容を真に理解しようと幾度も立ち止まり,自分の経験した類似症例と比較したり,と多くの時間を要することとなった。

 私の脊椎外科人生39年間を振り返る時,「その専門性の有無にかかわらず,全整形外科医はもっと小児整形外科疾患に目を向けるべき」,「成人脊柱変形の診療には,小児脊柱変形の基礎知識が必要不可欠」と反省すべき幾多の経験がよみがえる。その原因は個の努力の問題のみではなく(少なくともわが国における)整形外科教育のあり方にも問題があったのではないかとも思えるときもある。
 本書はまさにこの2点を改めて鋭く指摘し,知識の押し売りではなく,実臨床例に即して病態から治療の流れを解説してくれているように感じた。多くの動画がより理解を深めてくれる。

 本書中にちりばめられた珠玉のお言葉の中から特に心に残ったものを列挙する。

1)「筆者は自分が関わった患児の将来について無責任ではいられない」
 一般的な疾患で,さほど難易度の高くない手術を行った患者の術後不具合すら十分にフォローしない(できない)脊椎外科医にだけは決してなるまい! 椎弓根スクリューが使いにくい場面において,他の手段(フックや椎弓下ワイヤーなど)をいつでも駆使できる能力は,術者にとっても患者にとっても明らかにメリットである。

2)「よほど体力・精神力があり肝の据わった脊椎外科医でない限り,前向きに手術の必要性を説明し,全責任を負い,手術を勧めることは難しい。(中略)ICUが整い,術後ケアが専門家によりカバーされる環境がない限り,今後も本疾患(神経筋原性側弯症)の手術は広く普及しないのではないか」
 まさに将来を憂えておられる川上先生の不安な気持ちが伝わってくる。

 最終章で「側弯症術後の再手術」について記載されたのは秀逸である。再手術例こそが自らの反省や,世間で起こりがちな不具合(不手際)の原因を知る大きなヒントを与えてくれる。ここから逃げているようではいかなる進歩もない。共感すること大である。

 読み終えてみると(たとえ私には実行不能な手術でも),本書に書かれているコンセプト・アイデアなどが,全部とはいかないまでもかなり理解できるようになっている自分に気付き,26年という歳月の流れを感じ,思わずほほ笑んでしまった。多くの脊椎外科医,整形外科医,小児整形外科医の先生方に,この分野における世界の偉人のお一人である川上紀明先生の知識・技量・情熱の全てを感じ取っていただけたらと心の底から思う次第である。


側弯症診療の新たなバイブル
書評者:南 昌平(聖隷佐倉市民病院)

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 川上紀明著『症例から学ぶ小児脊柱変形―基礎から難治性疾患まで』は脊柱側弯症について,隅々まで全てを網羅した内容の記述・描画・動画にあふれております。まさに川上先生が現在まで診療・研究に当たられた,その数々の経験に基づいた知見の集大成であるといっても過言ではないと思います。

 以前,私どもの世代が側弯症診療に携わることになった頃には,脊柱変形診療の唯一のバイブルともいわれていたMoe, Winter, Bradford, Lonstein共著による『Scoliosis and Other Spinal Deformities』(1978年初版発刊)がありました。時代の変遷により,側弯症の診断・治療が大きく様変わりし,診療に携わる者にとって知識量も膨大なものとなっておりますが,本書は,当時私どもが思い描いていたもの以上に,大きく超えて,最新の知識をもたらしてくれる,新たなバイブルとなるものと確信しております。

 本書は総論と各論に分かれており,総論では診断,保存治療,手術治療について,基本的な考え方,方法・手技がこと細かく記され,基礎から難治性疾患までの副題のとおり,大変重要な部分を占めております。手術治療の考え方とその実際の項では基本的な手術手技の説明から高度な技術を必要とする脊椎骨切り術,先生がわが国における開発・普及に大きく貢献した,難度の高い成長温存手術についてまで解説されております。各論では特発性側弯症をはじめとして,症候性側弯症,先天性側弯症,骨系統疾患に伴う脊柱変形など,希少疾患を含めた全てのあらゆる疾患についての記述がみられ,それぞれの疾患については,ご自身で経験された多くの症例呈示を組み込み,さらに治療技術についての動画での解説を加味することにより,非常に理解しやすく,示唆に富む内容となっております。また,長期経過を含めて,治療選択・結果について考察していますが,特に難治例への取り組みは秀逸で,治療戦略への解説は読者にとって,非常に有益となるものと思われます。

 脊柱変形治療の歴史はHarrington instrumentationを嚆矢とする脊椎instrumentationの歴史ともいわれ,大きく進歩しています。川上先生の,時代を先取りするかのような,革新的な発想と長年にわたって築かれた多くの経験と相まって,最新の構想・知見が綴られている感があります。序文に脊柱変形治療に携わる若手医師から中堅医師を想定していると記されていますが,まさに本書が格好の指南書となっており,多くの方々に役立つものと思われます。


脊柱変形診療に携わる医師の座右の書に
書評者:松本 守雄(慶大教授・整形外科学)

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 本書の著者である川上紀明先生のことを初めて知ったのは今から20年以上前,私が初めて日本側彎症学会学術集会に出席したときであった。当時,同学会は脊柱変形診療に一家言を持つ重鎮の先生方が大勢いらして,会場はいつもピリピリした雰囲気であった。その中で堂々とご自身の考えをフロアからおっしゃる比較的若い先生が,川上先生であった。以来,川上先生には手術手技の指導も含め,脊柱変形診療に関してさまざまなことを教えていただき,また,診療成績の向上に資する数々の臨床研究も一緒に行わせていただいた。

 川上先生の下には脊柱変形の診療を学ぶために国内外から多くの医師が訪れ,川上イズムを学び,その後それぞれの地元で活躍している。川上先生は脊柱変形診療に関して常にブレない基本方針を持たれており,本書にもその哲学が貫かれている。小児の脊柱変形は乳幼児から思春期までの成長過程で治療が行われるが,その結果は患児のその後の人生を左右すると言っても過言ではなく,医師は患児の一生に責任を持つ覚悟で診療に携わる必要がある。本書には川上先生のその覚悟が随所に見て取れる。

 本書は総論と各論に分かれているが,総論には小児脊柱変形の診断学,保存および手術治療,合併症対策などの基本的事項が川上先生の考え方とともに詳細に記載されている。手術の基本手技も丁寧な解説付きのビデオとともに学ぶことができ,これから脊柱変形診療に携わる若手医師にとっては大変参考になる内容である。また,各論では川上先生がこれまで経験された貴重な症例の数々が治療のコンセプトとともに詳細に提示されている。普段はなかなか経験できないような極めて希少な疾患も数多く取り上げられており,脊柱変形診療の経験をある程度積んだ中堅医師のみならずベテラン医師にとっても非常に役立つ構成になっている。新しい手術手技の導入時には技術的困難,手術機器・周辺環境の不備,医療行政上の障壁などのさまざまな問題が存在する。川上先生はそれらを一つひとつ解決され,例えば患児の生命予後にも悪影響を及ぼす胸郭不全症候群に対するVEPTRを非常に苦労されながらも人道的立場から日本に導入され,普及活動に取り組み,多くの患児の脊柱のみならず命をも救ってこられた。本書にはそのような川上先生のご努力についても記述されており,本邦における脊柱変形診療の進歩の歴史も学ぶことができる。

 本書は脊柱変形診療に携わる医師にとって大変貴重な座右の書になると考える。ぜひご一読いただきたい。

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