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君はどんな看護師になるのだろう
多様な価値観と向き合う、これからの看護師に必要な知識と教養

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多様な価値観への理解と共感が求められる現在の医療現場では、看護師は自ら気づき、自ら判断し、そして自らを変革していく力が求められます。本書は漫画を読み医療現場を疑似体験することで(全25場面)、問題を発見し考え続ける態度のトレーニングに活用できます。実習を控えた看護学生、現場の壁を感じている新人看護師、そして学生・新人を指導する看護教員、指導者の皆さまへ。

編著 高橋 優三
岡本 華枝 / 宮田 靖志 / 藤野 ユリ子 / 内藤 知佐子
発行 2024年05月判型:B5頁:120
ISBN 978-4-260-05378-5
定価 2,420円 (本体2,200円+税)

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はじめに

君はどんな看護師になるのだろう
 さまざまな夢や希望を抱いて看護学校に入学してきた学生たちは、卒前教育そして卒後教育を通じて徐々に理想の看護師へと成長していきます。学生はそれぞれ異なる理想を持っていると思いますが、自分の求める理想と社会から求められる理想をうまく調和させ、自分自身と社会の両方が満足する看護師になっていかなければなりません。
 また、現在はVUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代と言われ、医療現場にも多種多様な課題があふれている状況です。そのようななか、看護師は何を学び、何を身に付けなければならないのかを考え、自らを高め続ける必要があります。

看護師に必要とされる多様な能力を備える
 2017(平成29)年に提示された“看護学教育モデル・コア・カリキュラム”(以下、コアカリ)では、看護系(看護職)として求められる基本的な資質・能力として、次の9つが挙げられています。①プロフェッショナリズム、②看護学の知識と看護実践、③根拠に基づいた課題対応能力、④コミュニケーション能力、⑤保健・医療・福祉における協働、⑥ケアの質と安全の管理、⑦社会から求められる看護の役割の拡大、⑧科学的探究、⑨生涯にわたって研鑽し続ける姿勢です。
 このコアカリの改訂作業が2022(令和4)年から始まっており、2024(令和6)年12月に公開される予定です。この改訂は日本社会の変化、それに伴う医療現場の変化に向けての非常に重要な対応になると考えます。既に、医学・歯学・薬学教育では、2022年度改訂版のコアカリが発表されています。そして、医学、歯学、薬学、看護のような、すべての医療専門職に求められる基本的な資質・能力は共通したものであり、なかでも最も重要なのがプロフェッショナリズムです。

多様な価値観に向き合おう
 医療専門職のプロフェッショナリズムとは、専門家、専門職集団として患者・社会からの信頼を維持するための価値観・行動・関係性と定義されています(Royal college of physicians, 2005)。また、しばしば引用されるモデルで提示されるプロフェッショナリズムの重要な要素は、卓越性、人間性、説明責任、利他主義の4つですが(Arnold L, Stern DT,2006)、ここでは特に、人間性と説明責任について言及します。
 人間性の要素は、尊敬、共感、思いやり、敬意、誠実です。個々の患者さんに対してこのような人間性を保って看護を実践するには、患者さんの多様な価値観を認識し、それを受け入れる必要があり、多様な価値観に向き合う姿勢は看護倫理、共同意思決定などの場面で大きな役割を果たします。そして、説明責任とは、看護師の活動を正当化しその責任を取ること、つまり患者さんや社会のニーズに応えるという、社会的説明責任のことです。
 VUCAの時代、何が正解なのか、何が患者さんや社会にとっての幸福でありウェルビーイングなのかを判断することは難題ですが、これに応えるためには、患者さんや社会の価値観を的確に拾い上げ、その多様性を認識し、それらを調和させて看護実践にあたる必要があります。特に、超高齢社会が進む日本の医療現場では、地域社会でどのような看護実践が求められているのか、極めて多様な価値観に満ちているその状況に真摯に向き合い、地域住民の健康を守るという社会的説明責任を果たす態度が必要とされます。

自由な発想で考える基礎としての教養
 このように、複雑なこと、予期しないことが次々に生じてくる社会と医療の現場に生きる私たちには、プロフェッショナリズムの獲得とともに、固定的な考えにとらわれず、変化に適応しながら、自分のパフォーマンスを改善する力が求められます。そのためには、自由(リベラル)に柔軟な思考ができること、つまりリベラルアーツ(教養)が必要なのです。
 本書で提示している多様な医療現場の場面を通じて、看護学生や新人看護師が、課題を敏感に見出す感受性と、課題に対し柔軟な発想で考える力を身に付け、真のプロフェッショナルになる第一歩を踏み出すことができれば幸いに思います。

 2024年3月
 宮田靖志

・ Royal college of physicians. (2005)Doctors in society. Medical professionalism in a changing world. Report of a Working Party.
・ Arnold L, Stern DT.(2006)“What is medical professionalism?” Measuring medical professionalism, Stern DT ed, 15-37, Oxford university press.

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はじめに
著者一覧

プロローグ 本書の目的と読み方、使い方
 第1節 漫画を用いた医療学習教材の原理
 第2節 看護におけるシミュレーション教育および実習前教育の必要性とそこで求められる教材

第1章 看護業務編
 第1話 患者さんとのコミュニケーション──距離感と尊重の気持ち
 第2話 認知症の方のニードを考える──相手の立場に立ってみる
 第3話 エビデンスと看護──正しい情報はどこにあるの?
 第4話 優秀な電子カルテをどう使う?
 第5話 それって本当に安全のためですか?
 第6話 患者さんに何もしてあげられない苦悩──急性期病棟にて
 第7話 緩和ケア病棟での家族看護
 第8話 右片麻痺患者さんへの食事介助──何をどこまで整えるか
 第9話 リハビリ期の患者心理
 第10話 患者さんから連絡先を聞かれたら?

第2章 教育・研究編
 第11話 研修にはいきません、委員会もいたしません
 第12話 看護研究ってやる必要あるの?
 第13話 患者情報の取り扱い──あなたの意識は大丈夫?

第3章 進路・キャリア編
 第14話 看護師の働き場所って病院だけ?──活躍の場の広がり
 第15話 給料さえもらえれば、それでいいの?──2、3年目のキャリア・プランニング
 第16話 こころの性とからだの性が異なる学生

第4章 患者理解編
 第17話 病気の裏に潜むこと
 第18話 マタニティブルーズの母
 第19話 病気の受け入れと治療への参加意識

第5章 チーム医療編
 第20話 退院か、それとも入院継続か
 第21話 カンファレンスで発言ができない
 第22話 専門性への敬意と関心

第6章 医療体制・制度編
 第23話 コロナ禍での面会禁止──看護はどこへ?
 第24話 医療の地域性──必要とされる医療の違い
 第25話 退院後の生活と安心の確保

授業設計に使える学習の到達目標一覧
おわりに
索引