臨地実習ガイダンス 第2版
看護学生の未来を支える指導のために
看護学生の臨地実習指導と支援のための教員・指導者必携ガイドブック、待望の改訂版
もっと見る
患者との出会いとふれあいが初学者を現場ではたらく看護師に変貌させていく。学習者が「その場に立ちどまって」考えられるような活き活きとした学びを導くために、睡眠不足になりがちの学生たちを指導者が萎縮させずに支えられるように、教員は何を考え学びをしかけ、指導者は何を望み学生を受け入れるのが効果的か。熟練の編者のもと中堅若手の3世代の教える人が結集した好評書、第5次指定規則改正に対応した待望の第2版に。
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。
- 序文
- 目次
- 書評
序文
開く
はじめに(第2版)
本書の初版刊行から5年が経ちました。数多くの看護学校の先生がたや実習指導に携わっていただいている病院等施設のみなさまに読んでいただくことができ、多数の感想もお寄せいただきました。心よりお礼申し上げます。
初版刊行時の思いは、今も変わりません。看護基礎教育において、最も効果的な授業形態は「臨地実習」であり、臨地実習で看護学生は大きく成長し「看護師」になって巣立っていきます。筆者も、今でも実習で出会った患者さんのことはよく覚えていますし、受け持ち時にいただいたお礼や励ましの言葉などを時々思い出して、心を奮い立たせて、現場に向かったこともありました。そのような貴重な機会は、看護師としての「宝物」として、心に刻まれます。ですが、臨地実習のさなかの看護学生は、緊張の連続ですし、時には臨地実習は苦しいものです。それを乗り越えるから、価値ある経験になるのだと思いますが、周りのサポートの重要性は間違いなく大きなものです。看護学生が価値ある経験を積み重ねられるように、継続して支えていきたいと思います。
この5年の間で、臨地実習を取り巻く環境は大きく変わりました。
1つは、2019年末から世界を席巻する新型コロナウイルス感染症の拡大です。想定を超える感染の拡大、長引く影響が今も続きます。コロナ禍がはじまった2020(令和2)年度の入学生は今年度、卒業します。医療のひっ迫に伴い、臨地実習が計画通り実施できず臨床現場での経験が少ない学生が、これから実社会に羽ばたいてゆきます。当然ですが、誰が悪いわけでもありません。教育現場にいる者も含めて、新人看護師をサポートしていく必要性を感じています。しかしその一方で、臨地実習が従来の計画通り進まないことで、教育現場に情報通信技術(ICT)の導入が加速度的に進みました。シミュレーション教育もさまざまな現場に即した検討が進みました。そのようななかにあってこそ、臨地実習の意義、臨地実習でしか学べないものもまた浮きぼりになって見えてきました。
もう1つは、保健師助産師看護師学校養成所指定規則(指定規則)の第5次改正による教育が2022年度からスタートしたことです。臨地実習の総時間数は、学校・養成所の判断で大幅に減少するところがあります。時間数が減少するなら、その時間をどう効果的に使うかを検討し、その実を挙げる取り組みが必要です。同時に、臨地実習の総単位数のうち6単位は学校・養成所の特徴が出せるようになりました。したがって今後は、学校・養成所の特徴が現れる臨地実習になります。ということは、学校差も出てくるということです。学校・養成所はその成果に責任を持たなければなりません。臨地実習をどう設定し、どう効果的に行うかは、学校・養成所の存続にもかかわる重要なことであると筆者は思います。学生たちを社会の現場で活躍できる看護師にする、その支える指導こそが私たちに望まれる使命だと考えています。
この大きな2つの変化を受けて、本書を改訂させていただきました。初版同様、一人でも多くの先生方や実習指導に携わっていただいている方々に読んでいただけると嬉しいかぎりです。看護基礎教育に欠かせない臨地実習に関わってくださる多くの方々の道案内役――ガイダンスになればと願っています。
刊行にあたり、ご協力いただいた(専)京都中央看護保健大学校の実習施設の皆さま、そして、収載させていただいたリモート代替実習、地域・在宅看護論実習及び実習評価表を作ってくださった鹿児島医療技術専門学校の濱川孝二先生、鹿島三千代先生をはじめ教員のみなさまに心よりお礼を申し上げます。今版も継続して尽力された医学書院編集部の青木大祐、制作部の阿部将也の両氏に深甚の謝意を表します。
これからも、ともに、地域の保健・医療を担う看護師を育てていきましょう。
2022年8月
編者・執筆者を代表して 池西靜江
目次
開く
第1部 教える人の準備
1 臨地実習の意義 学生が飛躍する現場での教育
2 臨地実習の現状と課題 時間数増加は望めず地域重視の時代に
3 授業としての臨地実習 講義・演習と同じ「しかけ」を
4 臨地実習指導に求められる能力 現場で活きる4つの力
5 「看護過程」の本来を活かす実習指導 臨床判断につなげるために
第2部 施設との協働・運営
1 実習施設との連携のあり方
2 実習施設の受け入れ体制
3 臨地実習指導の実際
4 新人看護教員の実習指導 どこにつまずいたか
5 経験豊かな教員の実習指導 なぜ焦らないか
第3部 実習指導者が心がけている学生の学び グループインタビュー
第4部 臨地実習の評価
1 臨地実習評価の考え方と方法
2 臨地実習評価 チェックリスト、ルーブリックの活用
3 実習総括 教育実践の改善のために
執筆者紹介
索引
書評
開く
実習現場で学生の学ぶ力を支える,教員必携の指南書
書評者:八尾 雅子(公益社団法人兵庫県看護協会教育認定部)
コロナ禍が続く2022年現在,看護学生にとって重要なトレーニングの場である臨地実習の機会が損なわれ,新たな学びを模索する時代にあります。学生を現場の実習に送り出す教育機関も,それを受け入れる施設も,従来の計画通りには実施できなくなり,それぞれ戸惑いながらも対応せざるを得ない,大きな変革期にあります。同時に,わが国の保健医療を取り巻く超高齢社会の進展や国の施策の変化,そして看護基礎教育の第5次指定規則改正を踏まえて,臨地実習のあり方そのものを考える大切な時期が来ていました。
2017年に初版が刊行されて以来,私は,県の専任教員養成講習会や実習指導者講習会でのガイダンス,講習生の指導といった臨地実習の学びにかかわるあらゆる局面で,本書をそれらの道案内役として活用し,迷ったときのよりどころとしてきました。それから5年を経て,上述のように現場が揺らぎ,新たな方向性を模索しているまさにそんなときに第2版を世に出されたことが非常に意義深く感じられました。
「看護学生の未来を支える指導のために」と副題が添えられた第2版の構成として,初版と同様,看護を教える人向けに,実習指導をどう考えて準備し,見守り,支え,評価するかについて,編者たちの実地の具体例を織り交ぜながら綿密な記載がなされています。そうした教育観や看護観に興味が尽きず,自然と次のページを開きたくなります。特に,新カリキュラムの趣旨である「臨床判断につなげるための実践的思考力の育成」について,具体例やスキルを示しながらその思考のプロセスが細かく紹介されています。さらに,昨今注目されている臨床判断モデルを可視化するための記録の重要性と実習記録の様式なども提案されています。読者がすぐ行動に移せるレベルで活用しやすく,それらを使った指導をしてみたいと思わせられる内容です。また,あたらしい臨地実習のかたちとしてリモートによる代替実習や,カリキュラム改正の主眼である「地域・在宅看護論」の実習の実際が紹介されていることも,初版からアップデートされた点として注目しました。
編者が述べられるように,「教育とは,学生の学ぶ力を支援すること」(p.43)だと,私も賛同します。臨地実習という緊張の連続の中で,価値ある経験が積み重ねられるよう支えるのが教員の役割です。そうした主張を実地で裏付けるコラム「学生が看護師になるとき」(p.4)なども章の合間に掲載されるなど,教育の醍醐味といえるエピソードも惜しみなく紹介されています。実習指導のやりがいや面白さ,奥深さを実感でき,その指導を通して「看護の価値」に気付く方向へ導いてくれる構成となっています。また本書からは,時代の変化に応じて,これまでの指導方法に固執するのではなく,教員こそが変わることが必要であるという編者の力強いメッセージを受け取ることができます。
新任教員や初めて実習指導を担う方はもちろん,実習指導にかかわる全ての人にぜひとも手に取って読んでいただきたい一冊です。