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看護教員のための 問題と解説で学ぶ教育指導力トレーニング

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学生の学習を促進する実践的な関与を通じて、効果的かつ効率的に指導する能力を教育指導力といいます。本書では、問題とその解説という形式で、教育指導の知識を学びやすく構成しています。I部では、教育指導の必要性とメリットを説き、II・III部で教育指導力向上に適した具体的な場面を設定したうえで問題と解説を取り上げています。初心者もベテランも、本書でトレーニングしてみてください。

シリーズ 看護教員のための教育力トレーニング
監修 佐藤 浩章
編集 大串 晃弘
発行 2023年12月判型:A5頁:168
ISBN 978-4-260-05361-7
定価 2,640円 (本体2,400円+税)

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  • 著者による本書の紹介
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はじめに

 看護師と看護教員の違いは何でしょうか.2022年改訂の厚生労働省の職業分類に従えば,看護師は「医療・看護・保健の職業」に,専門学校教員や大学教員は「保育・教育の職業」に分類されています.看護師になるためには,法令で定められている必要な教育を受け,看護師国家試験に合格せねばなりませんが,看護教員になるためには何が必要でしょうか.
 看護専門学校等の教員には,厚生労働省のガイドラインに基づき,「現場経験5年以上」に加え「専任教員として必要な研修を修了」することなど,または「現場経験3年以上」と「大学または大学院で教育に関する科目を履修」することが求められています.
 一方で,看護学を教える大学教員には,このような研修は必須化されていません.これは不思議なことです.大学がエリートのための高等教育機関であった時代はともかく,現代のように大衆化した高等教育機関において,大学教員の教育能力を育成するための研修は不要であるとする根拠を説明できる人はいないでしょう.
 多くの大学や専門学校では,教育能力を育成するための研修を提供できていません.また教育能力について悩みや課題があったとしても,それを支援する専門スタッフも配置されていません.
 このような状況では,看護教員各自が自己啓発として,自らの教育能力を伸ばさざるを得ません.まず授業の設計に問題があったのか,それとも,授業の方法に問題があったのか,あるいは,学生を評価するところに問題があったのかというように,自らの教育を振り返る必要があります.その振り返りの助けとなるのが本書です.類書と比較しても,本書はユニークな特徴をもっています.
 まず,教育学と看護学の専門家が共同で執筆している点です.教育学の専門家の書いたものは理論ばかりで読みにくい,看護学の専門家の書いたものは経験論に陥りがちという弱みを克服し,双方の強みを掛け合わせることで,看護教育という文脈において,教育学の基礎を学べる書籍となっています.
 次に,問題集形式で執筆されている点です.看護教員にとって馴染み深い国家試験に近い形式にしています.説明を読むだけでは理解や記憶の定着に不安を感じることもあるでしょう.本書では問題を解いたり,解説を読んだりすることを通して,自然に内容が理解・定着していくという工夫がなされています.
 本書が,教育についてもっと学びたい,目の前の学生の学びをもっと支援したいと考えている看護教員にとっての愛読書になることを期待しています.

 2023年11月
 佐藤浩章

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はじめに
本書の目指すところと使い方

I部 教育指導力を向上させる意義
  教育指導力はなぜ必要なのか
   授業の質は教員の教育指導力に左右される
   学生の可能性を最大限に引き出す指導力が求められる
   生涯学び続ける看護師を育成する必要がある
  教育指導力が向上すると何ができるようになるのか
   効果的な授業ができる
   最適な教育指導法を使い分けることができる
   医療従事者と協働できる看護師を育成することができる

II部 教育指導力向上のための基礎問題と解説
  教育指導の基礎知識を身につける
   教育指導のための学習の原理
   講義法
   アクティブラーニング
   ICTを活用した教育指導法
  動機づけの理論と方略
   動機づけの理論
   動機づけを促すための方略
  教育指導の検証
   学生からのフィードバック
   同僚からのフィードバック
   自己評価
  教育指導法を理解する
   学習目標
    必修問題① 理解を促す説明
    必修問題② 教科書や参考書の選定と活用
    必修問題③ スライドの活用
    必修問題④ コーチング
    必修問題⑤ 教室マネジメント
    必修問題⑥ 動機づけ
    必修問題⑦ 記憶保持のための学習方略
    必修問題⑧ 優れた教育実践のための7つの原則
    必修問題⑨ ICTを活用した教育
    必修問題⑩ 多用な教育指導法

III部 教育指導力向上のための応用問題と解説
  講義に関する教育指導力を向上させる
   学習目標
    一般問題① 板書
    一般問題② スライド
    一般問題③ 発問
    一般問題④ オンライン授業
    状況設定問題① 大人数講義とチーム基盤型学習(TBL)
    状況設定問題② 反転授業
    学びを深めるコラム(1) 自分の教育実践を研究にする
  演習に関する教育指導力を向上させる
   学習目標
    一般問題① スキル習得におけるフィードバック
    一般問題② ディスカッションの活性化
    一般問題③ 自己評価とピア評価
    一般問題④ 関心や態度の指導
    状況設定問題① ジグソー法の実践
    状況設定問題② ロールプレイ
    学びを深めるコラム(2) マイクロ・ティーチングの効果を高める
  実習に関する教育指導力を向上させる
   学習目標
    一般問題① 実習におけるグループ学習
    一般問題② ディスカッションの展開方法
    一般問題③ コーチングを用いた実習指導
    一般問題④ 実習記録へのフィードバック
    状況設定問題① 実習科目における教育指導法
    状況設定問題② 実習科目における個別指導
    学びを深めるコラム(3) 臨地実習で発問を活用する
  卒業研究に関する教育指導力を向上させる
   学習目標
    一般問題① リサーチクエスチョンの設定
    一般問題② ディスカッションに活用できる教育指導法
    一般問題③ 文献検索・読解の指導
    一般問題④ 研究計画書作成時の指導
    状況設定問題① 卒業研究の個別指導
    状況設定問題② 研究発表会と論文作成の指導
    学びを深めるコラム(4) 卒後研究における指導方法を考える

おわりに
索引

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「3」 ──教育の質を構成する「評価力」「設計力」そして「指導力」
書評者:山内 豊明(放送大学大学院教授/名古屋大学名誉教授)

 「3」という数字には不思議な力があるように感じています。3本の矢、三すくみの関係、論理的なパラグラフライティングの際の「序論・本論・結論」、芸事を学ぶ際の「守破離」などなど。単独でもなく、相対し続けることでもない「3」、不思議な数字です。
 基礎教育では「守破離」に相当する場面は少なくないでしょう。しかし、こうも考えられます。「学ぶ」は「まねぶ」から派生した言葉であり、まずは「雛形」が必要です。基本の「形」がなければ「形無し」ですが、いつまでもそれに縛られず、いずれ「型破り」と発展すべしという思いは教える者・学ぶ者の両者にあることでしょう。そのことからしても基礎教育というものは、いずれ「破」られる宿命にある「形」を提供し、「離」への道筋を示す役割があると思っています。
 医療の質を構成する「3つ」の側面がドナベディアンによって提唱されています。構造(ストラクチャー)・過程(プロセス)・成果(アウトカム)です。これは医療にかかわらず、質をとらえる場合に普遍的なものです。教育でいえば、どのようなカリキュラムを立て、どのように教育し、その成果をどう測るか、に相当します。とするならば、本書で取り上げられた「教育指導」は過程に相当し、先に刊行されている姉妹書の「教育設計」は構造に、「教育評価」は成果に、それぞれ対応するものと思われます。すなわち今回『教育指導力トレーニング』が刊行されたことは教育の質を構成する「3側面」が整ったことになり、その意義・価値は非常に大きいと考えます。
 本書は姉妹書である『教育評価力トレーニング』『教育設計力トレーニング』と同様に「3部構成」になっています。Ⅰ部では教育指導力の必要性とメリットを学び、Ⅱ部で教育指導に関する基礎的な用語と基礎知識をおさえ、最後のⅢ部で講義、演習、実習、卒業研究に関する実務的な場面を想定して学びます。あたかも「3段飛び競技」の【ホップ】【ステップ】【ジャンプ】のようなものであり、すでに順調に走り出している教育経験豊富な者には【ステップ】から臨み、見事な【ジャンプ】と仕上げていくこともよいでしょう。教育経験がまだ多くない場合や助走に不安を覚えるようならば、落ち着いて適切な【ホップ】から、あるいは適宜【ホップ】を振り返りながら取り組むとよいでしょう。
 本書ならびに姉妹書に共通する特徴は、問題集形式を用いていることです。これによって一方向的な知識の伝達ではなく、読者に考える機会を提供し、著者・読者間の双方向の対話が成り立つようになっています。それからしても書籍によるFD(ファカルティ・ディベロップメント)が可能になったと言えましょう。その意味でも本書ならびに本シリーズの完成の意義は大きなものであると思われます。

(「看護教育」Vol.65 No.2 掲載)


問題を解きながら読むことで教育指導力の学びにつながる書
書評者:小山田 恭子(聖路加国際大大学院教授・看護学)

 本書はファカルティ・ディベロップメントの世界で広く活躍されている佐藤浩章先生を監修に迎え,看護教育系学会でワークショップなどを継続的に開催しておられる大串晃弘先生が編集をされた,ユニークな書籍です。どこがユニークかというと,教育学と看護学の専門家が共同で執筆されている点,さらに問題を解きながら解説を読んで学習する,というスタイルをとっている点にあります。

 著者らは「教育力」を「教育評価力」「教育設計力」「教育指導力」の3つで構成されると定義しています。本書では,そのうちの「教育指導力」を学ぶものであり,それは授業にアクティブラーニングを取り入れたり,学生のモチベーションを高めるかかわりを行ったりして,効果的に学修支援をする能力であると論じています。

 構成はいきなり問題形式でわれわれを脅かすことなく,まずは「教育指導力」概論や教育指導に必要な基礎知識を押さえた上で,基礎的な問題「教育指導法を理解する」に挑みます。続いて,発展的な問題を通して「講義」「演習」「実習」「卒業研究」それぞれの教育指導力向上について学んでいくというように,しっかり「足場掛け」を行いながら学習をファシリテートしてくれます。基礎的な問題やその解説は,教員になったばかりの方にはとても参考になるのではないかと思いました。

 ちなみに,筆者も問題を解きながら拝読しましたが,8割は自信を持って選択でき,残りは「たぶんこれかな?」と恐る恐る回答を確認していきました。そして1問「知らなかった!」と思ったものもありました。また,著者も述べておられますが,応用問題では状況次第で別の正解もあるのでは,と思うものもありました。こうした問題を仲間の教員と話し合うことは,お互いの教育観や経験の言語化につながり,その点でも学びにつながるのではないかと思い,問題形式の良さを感じました。

 コンパクトで短時間で読める書籍ですので,取り上げる教育手法(反転授業やチーム基盤型学習,ジグゾー法など)などを十分理解するためには,別途専門書を当たる必要がありますが,参考文献も豊富に紹介されていますので,学習には困らないと思います。「学びを深めるコラム」もあり,特に新任教員の方には教育実践の全体像を理解したり,ちょっとした困惑を感じたときなどにさっと読み返したりすることで,次に進む勇気が得られる本だと思います。

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