PT・OT・STポケットマニュアル
リハ現場での「これは困った!」に応える、先輩療法士からのベストアドバイス
もっと見る
入職したて~数年の若手の理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)にとって、毎日の臨床は不安と戸惑いの連続といえる。本書は、PT・OT・STの3職種が共通して使える内容を基本とし、この1冊を持っていれば、リハビリテーション医療の常識はもとより、患者さん対応や疾患ごとの評価、治療のコツについて、困った時に手軽なサイズで容易に調べることができる。評価に必要な重要スケールも豊富に収載。
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。
- 序文
- 目次
- 書評
序文
開く
序
晴れてリハビリテーション科療法士,すなわち理学療法士(PT),作業療法士(OT),言語聴覚士(ST)となり一人の医療者として働き始めると,患者と初めて接する毎日のなかで,様々な困惑と不安が一気に押し寄せてくる.その結果として,先輩療法士に少なからずの質問を浴びせて,現場で役立つアドバイスを求めることになるのであろう.多くのことを学ばねばならない療法士においては,このような“困惑と不安の時期”が2年,3年と続くことも珍しくない.本書は,そのような時期にあるキャリアの浅いPT・OT・STの皆様に,リハビリテーション・プロフェッショナルとしての道標を与えたい,羅針盤を与えたい,これから進む道に光を当てたいとの思いで企画された.本書に目を通してもらうことで,若き療法士の皆様の困惑と不安が少しでも払拭されることを私は切望する.
本書の執筆陣のなかには,臨床経験が豊富なベテラン療法士のみならず,比較的キャリアが浅い若手療法士も含まれている.彼らは本書の執筆のために繰り返しグループミーティングを開き,異なる観点からその内容を練りに練った.そして,本書のなかでまずベテラン療法士は,数多の症例と対峙してきた熟練者のみぞ知る“臨床のコツ”を惜しみなく紹介してくれた.次いで若手療法士は,まだ新人であった数年前の自分自身が戸惑ったことを,当時のことを思い出しながらやさしく解説してくれた.つまりは多くの先輩療法士たちが,自分たちと同じ道を歩むこととなった後輩療法士たちにアドバイスを送るような気持ちで,それぞれの立場から筆を進めてくれたのである.
本書は,ポケットの中に潜ませておくことで,“困ったときには,いつでもすぐに助けてくれる”先輩療法士からのアドバイス集といえる.また本書は,PT・OT・STとして備えておくべき臨床的知識のみならず,一医療人として肝に銘じておくべきこと,一社会人として知っておくべきことにまで言及している.若き療法士の皆様が本書を読むことで,まるで“職場の先輩に相談しているような安心感”を抱いてもらえれば,それは私としてはまさに“願ったり叶ったり”なのである.
夢多き,そして将来性に満ちた若き療法士の皆様のキャリアアップに本書が一役買うことができれば,私たち執筆陣にとって最大の喜びである.
2023年3月
角田 亘
目次
開く
I リハビリテーション・プロフェッショナルとしての常識
1 リハビリテーション医療の考えかたを理解しよう
2 リハビリテーション科療法士に求められるもの
3 なぜチーム医療が重要なのか──医師とも上手に連携しよう
4 患者とよい関係を築き,ゴール・ニーズ・ホープを確認しよう
5 身だしなみ・言葉遣い・接遇マナー・報連相には最大限の注意を
6 診療記録の記載や文書(サマリー,申し送りなど)作成のポイント
7 患者説明でこれだけは忘れない
8 キャリアアップ(大学院進学を見据えて)を夢見よう
II リハビリテーション医療の基礎知識
1 ICFってなんだろう
2 急性期リハビリテーションの基本を理解しよう
3 回復期リハビリテーションの基本を理解しよう
4 生活期リハビリテーションの基本を理解しよう
5 介護保険サービスと身体障害者手帳を適切に活用しよう
6 リスク管理はリハビリテーション医療の最重要事項である
7 急変時対応に強くなろう
8 診療報酬システムのポイント
III リハビリテーション評価の基本
1 問診と面接・バイタルサイン・フィジカルアセスメント(観察含む)
2 関節可動域の評価
3 筋力・麻痺・筋緊張・協調運動・反射の評価
4 姿勢・歩行障害・バランス機能の評価
5 上肢機能の評価
6 感覚・痛みの評価
7 心肺持久力の評価
8 意識・認知機能(高次脳機能)の評価
9 言語機能(発声機能を含む)の評価
10 摂食嚥下機能の評価
11 ADL・IADLの評価
12 QOLの評価
13 神経発達の検査
14 血液検査
15 心電図検査
16 心機能検査(心エコー検査)
17 呼吸機能検査
18 X線検査
19 脳画像検査
20 筋電図検査
IV リハビリテーション治療の基本
1 関節可動域訓練・ポジショニング
2 筋力増強訓練
3 麻痺に対する促通手技
4 基本動作訓練・座位訓練
5 移乗訓練・車椅子移乗訓練
6 立位歩行訓練・バランス訓練
7 上肢機能訓練
8 心肺持久力訓練
9 呼吸訓練
10 認知訓練(認知症,高次脳機能障害に対する訓練)
11 言語訓練(失語症に対する訓練,発声訓練)
12 摂食嚥下訓練(栄養管理を含む)
13 ADL・IADL訓練
14 物理療法
15 義肢・装具・車椅子
16 就学支援・就労支援
V 疾患ごとのリハビリテーション診療
1 脳卒中
2 パーキンソン病・脊髄小脳変性症
3 認知症
4 脊髄損傷
5 大腿骨近位部骨折(頸部骨折・転子部骨折)
6 変形性股関節症・膝関節症
7 腰部脊柱管狭窄症・腰痛症・脊椎症
8 前十字靭帯損傷・アキレス腱損傷
9 肩関節周囲炎
10 関節リウマチ
11 橈骨遠位端骨折
12 下肢切断
13 サルコペニア・フレイル・ロコモティブシンドローム
14 急性心筋梗塞・狭心症
15 慢性心不全
16 誤嚥性肺炎
17 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
18 慢性腎不全
19 糖尿病・メタボリックシンドローム
20 肺がん・消化器がん・頭頸部がん(手術後,緩和ケアを含む)
21 リンパ浮腫
22 廃用症候群
23 筋ジストロフィー
24 脳性麻痺
25 発達障害・精神遅滞
VI 重要評価スケール
1 ASIA Examination Sheet:米国脊髄損傷協会診察シート
2 ASIA Impairment Scale(AIS):米国脊髄損傷協会障害スケール
3 Barthel Index(BI):バーセル指数
4 Berg Balance Scale(BBS):バーグ・バランス・スケール
5 Borg Scale:ボルグ・スケール
6 Brunnstrom Recovery Stage(BRS):ブルンストローム回復ステージ
7 ECOG Performance Status(PS):ECOGパフォーマンス・ステータス
8 Euro QOL(EQ)
9 Evans Classification:エバンス分類
10 Frankel Classification:フランケル分類
11 Frenchay Activities Index(FAI):フレンチャイ活動指数
12 Fugl-Meyer Assessment(FMA):ヒューゲル・マイヤー評価法
13 Functional Independence Measure(FIM):機能的自立度評価法
14 Garden Classification:ガーデン分類
15 Glasgow Coma Scale(GCS):グラスゴー・コーマ・スケール
16 Hasegawa's Dementia Scale-Revised(HDS-R):改訂長谷川式簡易知能評価スケール
17 Hoehn and Yahr(HY) Scale:ホーン・ヤール重症度分類
18 Japan Coma Scale(JCS):ジャパン・コーマ・スケール
19 Kellgren-Lawrence grade:ケルグレン・ローレンス分類
20 Manual Muscle Testing(MMT):徒手筋力テスト
21 modified Ashworth Scale(MAS):改訂アシュワース・スケール
22 New York Heart Association functional classification(NYHA Classification):ニューヨーク心臓協会心機能分類
23 NIH Stroke Scale(NIHSS):NIH ストローク・スケール
24 Scale for the Assessment and Rating of Ataxia(SARA)
25 Stroke Impairment Assessment Set(SIAS):脳卒中機能障害評価法
26 Zancolli Classification:ザンコリー分類
索引
書評
開く
順を追って理解が深まる若手療法士の必携マニュアル
書評者:山本 伸一(一般社団法人日本作業療法士協会会長/山梨リハビリテーション病院リハビリテーション部副部長)
手元に『PT・OT・STポケットマニュアル』が届いた。本書は,リハビリテーションの3職種が共通して使える内容をベースとしており,常識や基礎知識はもとより,患者対応や疾患ごとの評価・治療・介入のコツまでもが容易に調べることができる内容となっている。しかも白衣などのポケットに入るサイズであり,困ったときにいつでも活用できるという特徴がある。私が作業療法士として就職したころは,そのような類の本は存在しなかったので,勤務先の図書室に走っては数少ないジャーナルなどを読みあさったり,はたまた先輩療法士に聞きに行ったりと,四苦八苦していたこともあり,そんな夢のような書籍があるのかと期待大でページをめくった。
目次構成は,I リハビリテーション・プロフェッショナルとしての常識,II リハビリテーション医療の基礎知識,III リハビリテーション評価の基本,IV リハビリテーション治療の基本,V 疾患ごとのリハビリテーション診療,VI 重要評価スケール,となっている。非常に読みやすい展開だ。I章では,リハビリテーション医療の考え方から療法士に求められるもの,チームの重要性,接遇や記録などの作成ポイントまでまとめられている。療法士として,そして医療人,さらには社会人としての「知っておくべきこと,その心構え」など,職員教育には欠かせない内容である。II章は,ICF,急性期・回復期・生活期のリハビリテーション,各種制度など,患者の診療にかかわる前に知っておくべきことが網羅されている。III章は,評価全般について。関節可動域,筋力・麻痺・筋緊張・協調運動・反射,上肢機能や感覚など,各種の基本的な評価のあり方が解説されている。それを理解したところで,IV章の治療というつながりとなっている。関節可動域訓練,筋力増強訓練,促通手技,基本動作訓練,移乗訓練,立位バランス訓練などなど。基本からポイント,実際場面に至るまで述べられており非常にわかりやすい。頭の中に整理されて入ってくる印象だ。そしてV章は疾患ごとの解説となっている。脳卒中,パーキンソン病,認知症,脊髄損傷,骨折などの整形疾患,内部障害や難病,小児疾患まで網羅されている。疾患ごとの解説は,きっと読者の実臨床に生かされることと思う。さらに最後のVI章では,重要な評価スケールが26種類掲載されている。これらを知っておけば,おおよその疾患の評価が可能である。知っておくべき評価ツールを一覧でき,「あの評価は,どんな内容だっけ?」「どのように評価するの?」と思ったときに,さっと見ることができる優れものといえる。また,本書の全ての項目の冒頭には「Focus Point」が提示されてあり,目標として何を理解するのか,何を学ぶのかが明確に示されている。本当にありがたい。
私は臨床経験が37年。この短くも長い期間,多くの療法士が臨床を積み重ねてきたことでできあがった本だと思う。若い療法士の方々に必須のポケットマニュアル。心から薦めたい。
日々の臨床で悩む療法士や臨床実習に臨む学生の羅針盤
書評者:庄本 康治(畿央大教授・理学療法学/学科長)
本書『PT・OT・STポケットマニュアル』が発刊されました。ポケットに収まるサイズでありながら広範囲を網羅,かつわかりやすい内容になっています。
I章の「リハビリテ―ション・プロフェッショナルとしての常識」では,プロフェッショナルとしての在り方,認知・非認知能力の重要性,診療記録,キャリアパスへの示唆まで論述されています。まさに,新人セラピストが最初に目を通すべき内容だと感じましたし,診療参加型臨床実習に参加中の学生が熟読すべき内容であるとも思いました。II章「リハビリテ―ション医療の基礎知識」では,ICF,病期ごとのリハビリテ―ション,リスク管理,診療報酬システムなどについて論述されています。III章「リハビリテ―ション評価の基本」では,問診と面接から広範囲の基本的評価について論述されていますが,図表や画像所見も豊富で,大変わかりやすくなっています。IV章「リハビリテ―ション治療の基本」では,関節可動域訓練やポジショニングなどのベーシックな治療はもちろんですが,エビデンスに基づく最新治療についても簡単に紹介されていて,本書から論文や書籍などの検索に進むことも可能でしょう。V章「疾患ごとのリハビリテ―ション診療」では,さまざまな疾患に対する推奨治療が多くの図表を使用してコンパクトに論述されています。VI章「重要評価スケール」では,代表的評価方法がコンパクトにまとめられています。
若手セラピストは,当初はプロフェッショナルとしての覚悟が低い場合が多く,日々の臨床で悩み,問題点を解決し,成長していく経験こそが重要になります。そのための羅針盤的存在のポケットマニュアルとして本書が大変有効であり,On-the-Job Trainingの手助けをする一冊となってくれることでしょう。同時に,診療参加型臨床実習に参加される学生さんが,エビデンスに基づいた評価・治療を実践していくにあたり大きな影響を与えることができ得る書籍であることは間違いないと思います。