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看護教育のためのオンライン活用エッセンス 【Web動画付】
授業・研修に使える仕掛け

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今や対面と同じくらい重要になったオンラインでの教育。どちらが優れているかを議論する段階は終わり、いかに使いこなすかを先生方自身が検討し実践することが求められています。本書は、「知識を届ける」「思考・コミュニケーションを鍛える」「実践につなげる」「学びの効果(成果)を測る」という4つの教育のコアに焦点を当て、オンラインを使いこなすためのエッセンスを散りばめました。Web付録もお役立てください。

編著 政岡 祐輝 / 北別府 孝輔 / 山田 修平
池辺 諒
発行 2023年05月判型:B5頁:184
ISBN 978-4-260-05047-0
定価 2,860円 (本体2,600円+税)

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  • 編著者による本書の紹介
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  • 付録・特典

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はじめに オンラインでも変わらない教育の軸――必要な4つのコア

 本書を手にとっているみなさんは,すでにオンライン教育を導入している方,もしくは興味はあってこれから挑戦してみようと思っている方,あるいは環境や周りからの指示で余儀なくオンライン教育をやらざるを得ない方……などさまざまでしょう。そんなみなさんの周りではおそらく,“対面vsオンライン”論争が繰り広げられているのではないでしょうか。「対面のほうが双方のコミュニケーションが密にとれる!」「いやいや,オンラインのほうが手軽で便利!」と,どちらの熱い声も聞こえてきます。
 本書には看護教育に効果的なオンライン教育のエッセンスが散りばめられていますが,決してオンラインには一切欠点がないと謳(うた)っているわけではありません。大切なのは,“対面vsオンライン”という二極化した構図から脱却し,対面でもオンラインでも変わらない教育のコア(中核)を教育者が認識したうえで,限られた環境のなかで最大限の学習効果を発揮することです。

4つの教育のコア
 本書は,「知識を届ける」「思考・コミュニケーションを鍛える」「実践につなげる」「学びの効果(成果)を測る」という4つの教育のコアに焦点をあてて構成されています。対面でもオンラインでも,この4つは教育に欠かせない軸となります。

○知識を届ける
 教育の大きな目的の1 つに,知識の伝達が挙げられます。教育(Education)にはさまざまな定義がありますが,“the knowledge, skill, and understanding that you get from attending a school, college, or university(学校,大学機関に通うことで得られる知識,スキル,および理解)”[1]とあるように,学習者に知識を獲得してもらうことは教育の大切な要素の1つです。
 第1章では,知識を効果的に学習者に届けるため押さえておくべきことと,オンライン活用のコツをご紹介します。一概にオンライン活用といっても,オンデマンドやリアルタイム,その両方をかけ合わせたハイブリッド型と多岐にわたるので,それぞれの特徴を理解し,最も適した方式の選択が必要です(p.9)。また,“対面vsオンライン”で対面擁護派から聞かれる声に「オンラインは集中できない」というのがありますが,その真実についても説いていきます。さらに,対面でもオンラインでも鍵となる講義スライド(p.39)や配付資料(p.44),理解度テスト(p.49),課題(p.56)についても解説します。
 本書では,オンラインで活用するためのコツを紹介していきますが,対面・オフライン式の授業や研修においても重要なことがたくさんありますのでご活用ください。

○思考・コミュニケーションを鍛える
 知識伝達以外に教育の重要な意義は,学習者の思考力やコミュニケーション力を鍛えることです。
 第2章では,みなさんが授業でよく取り入れられているグループワークを円滑に実施するためのさまざまな方略について述べています。初めにグループワークを行う意義や目的について見つめ直し(p.64),グループワークの活性化に欠かせない「心理的安全性」(p.67)と集団効力感について説明します。そして,学習者が主体的にかつ楽しく取り組めるようなラーニング・アクティビティを事例とともに紹介します(p.98)。
 一方,オンラインの環境は社会的相互作用に欠け,学習者に孤独感が生まれやすいという研究結果があります[2]。そうした弱点を乗り越えるためには,「見える化」を意識すること(p.91)や,授業時間以外の学びにも注力していくこと(p.115)を念頭に置いて,学びの環境を整える必要があります。一見すると閉鎖的な空間になりやすいオンラインの環境も,読者のみなさんの工夫次第でプラスに働きかけることができます。

○実践につなげる
 「知識を届ける」の冒頭で紹介した定義のなかには,知識の他に「スキル」もあげられています。看護教育にとって実践的スキルを養うことは中核であるといえます。おそらく,“対面vsオンライン”の対比の構造が最もできやすく,みなさんの懸念点となるのが,オンラインでどのように実践力を伸ばすかだと思います。しかし,現代のICTは凄まじいスピードで発展し,さまざまなことができるようになっていますので,活用しないのはもったいないです。第3章では,シミュレーション演習(p.126)やロールプレイ演習(p.135)の授業設計を解説しています。

○学びの効果(成果)を測る
 教員が「教えたつもり」,学生が「学んだつもり」に陥らず,授業を改善していくためには,学習の成果をきちんと測定することが重要です。第4章で紹介する学習成果の測定(p.146)やフィードバック(p.150)については,オンラインに限らずどのような形式の授業にも活用できます。評価をして,改善点を抽出し,よりよい学びへと次に活かしていく方法をご紹介します。

オンライン教育はもはや“トレンド”ではない
 オンラインは一時のブームではなく,私たちの日常に溶け込み,より身近なものとして浸透しています。そこで本書では,オンラインがより身近で有益なものとなるよう,さまざまなコツも紹介します。また,パソコン操作は苦手という方に,巻末付録(p.159)を設けました。

 教育も看護と同じように,絶対解はありません。看護で「患者目標を設定し,看護計画を立案し,患者目標達成に向けて最善のケアを実施・評価する」といったように,教育においても「学習目標を設定し,学習目標の到達に向けて最適な学習支援計画を立て,実施・評価する」というシステム的アプローチが欠かせません。本書には,授業設計や研修設計のエッセンスが詰まっています。さらにエッセンスをイメージしてもらいやすいように,事例も併せて紹介しているので,教育実践の再設計の参考にしてください。

○引用・参考文献
1. “education”. The dictionary by Merriam-Webster, https://www.merriam-webster.com/dictionary/education(2023/4/1 accessed)
2. McInnemey JM, Roberts TS : Online Learning : Social Interaction and the Creation of a Sense of Community. J Educ Techno Soc 7(3):73-81, 2004.

 2023 年2月1日
 執筆者一同

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はじめに オンラインでも変わらない教育の軸――必要な4つのコア
付録Web動画のご案内
動画一覧

序章 オンラインの活用に向けて
 オンライン教育の伸びしろを知ろう――もっとよくなる! あなたの実践
  ・情報を届ける「場所」だけではなく,「タイミング」を検討する
  ・授業間・後の余韻
  ・デジタルを活かす

 授業の位置づけと構造を捉えておく
  ・逆向き設計で考える
  ・学習目標や学習内容の構造化は図に描いて考える
   ワンポイント講座 学習目標達成に必要な要素の洗い出し方のイメージ

 「届け方」を選ぶ――オフライン,オンライン,ハイブリッドのメリット/デメリット
  ・対面オフライン型
  ・オンライン型
  ・ハイブリッド型(ブレンド型,ハイフレックス型)
   [事例] ハイブリッド型の授業例
    ・ブレンド型授業例:看護技術演習
    ・ハイフレックス型授業例:看護過程演習

 機器・通信トラブルを想定した対策とは――支援体制について考える
  ・オンライン教育における機器・通信トラブル
  ・オンライン教育開始前にできる対策・支援体制
  ・オンライン教育実施時の対策と支援体制
   [事例] オンライン教育における“あるある事例”紹介

1章 知識を届ける
 集中できないのはオンラインのせいじゃない――講義構成を考える
  ・集中できない原因
  ・知識はある程度の塊に分けて伝える
   ワンポイント講座 学びのプロセスを支援する枠組
   [事例] 集中力を保つオンデマンド教材

 「流される知識」から「残る知識」さらに「生きる知識」へ――長期記憶化する方法
  ・人の記憶メカニズム
  ・感覚記憶から短期記憶へシフトさせるポイント
  ・短期記憶から長期記憶へシフトさせるポイント
   ワンポイント講座 知識の定着を助ける学び方
   [事例] 終末期にある対象への看護としての,「全人的苦痛」について学習するオンライン講義の1コマ
    ・情報過多にならないようにする
    ・実際の看護場面でどのように知識を使うかを考える(リハーサル)機会を与える
    ・知識を使いこなせることの価値を,エピソードを交えて伝える

 「見ながら聞ける」理想のスライドとは――スライドづくりの実践ポイント
  ・認知的負荷を考える
  ・学習に不要な負荷をなくす工夫

 学習効果を高める配付資料――講義スライドだけでは効果が薄い?
  ・情報量を考える
  ・配付資料のつくり方
  ・閲覧方法による違い
   [事例] 授業後に使ってもらうことを意図した配付資料のつくり方

 「教えたつもり」から脱却せよ!――効果的な理解度テストのつくり方
  ・定期試験で起こること
  ・理解度テストのススメ
  ・オンラインでの理解度テストの実施
  ・さまざまなテスト形式
   [事例] 学生も教員もその場で回答を確認できるオンラインテスト

 学びの「入口」と「出口」を整える――学習効果を高める事前・事後課題
  ・「入口」と「出口」の整え方
  ・学習内容の前後の時間数を捉え直す
   [事例] 授業に向けての知識習得度をそろえる事前課題
    ・事前課題で授業前に目標を共有
    ・課題の内容は授業と連動
   コラム 便利なオンラインだからこそ注意が必要な著作権

2章 思考・コミュニケーションを鍛える
 「とりあえずグループワーク」に潜むワナ――アクティブなグループワークにするために
  ・グループワークの落とし穴と回避策
  ・グループワークのよさと実施のコツ
  ・そのグループワークは本当に効果的なのか

 「不安」「緊張」を和らげる――心理的安全性を確保する
  ・授業にも欠かせない心理的安全性
  ・緊張や不安を緩和し,心理的安全性を確保する工夫

 グループワークに欠かせない一体感――集団効力感を育む
  ・「自分にもできそうだ」と思えること
  ・集団効力感の醸成に向けた方略
   [事例] グループワーク活性化に向けた演習導入
    ・チェックイン:グループメンバー間の挨拶
    ・アイスブレイクを兼ねたチームビルディング・ゲーム
    ・グランドルールの設定

 学習者全員が意欲的に取り組むには――エンゲージメントを高めるポイント
  ・オンラインではより重要なエンゲージメント
  ・エンゲージメントの大事な3つの促進要因
   ワンポイント講座 言語情報は教えないという学ばせ方
   [事例] 授業に向けての知識習得度をそろえる事前課題
    ・授業目標は共通言語を用いて具体的に
    ・授業の導入で全体像を見せる
    ・学習者が無記名で意見を表明できる場を用意する

 主体的で深い学びを実現!――「問いかけ」の道筋
  ・問いで聞き手を困らせない
  ・問いかけは繰り返すもの
   ワンポイント講座 アクティブラーニングの本来の意味
   [事例] 戦略的な問いで学習目標に誘う授業
    ・具体的な問いかけ
    ・問いかけの解説

 オンラインだからこそ「見える化」を意識する――学習者の様子をつかむ方法
  ・状況をつかみにくいオンライン
  ・オンラインでの見える化手法
   コラム カメラのオン・オフと「おもしろさ」
   [事例] Webワークシートを用いて学習者の学びを見える化する授業
    ・オンラインの多人数授業の例
    ・ワークシートをWeb上で共有

 事例で学ぶラーニング・アクティビティ5選――学習目的に合わせて使い分けよう
  ・汎用性の高いラーニング・アクティビティ
  ・学習プロセスが構造化されたラーニング・アクティビティ
   ワンポイント講座 学習成果の質的な差に基づいた目標分類
   [事例] 手軽に導入できるシンク・ペア・シェア
    ・Think:考える
    ・Pair:2人組
    ・Share:共有する
   [事例] 創造性を養うブレーンストーミング
    ・創造力を養うことを目的とした設計
    ・ルールはしっかり提示して,質より量であることを強調
    ・グループメンバーは普通のワークより少し多めに
   [事例] 学習者同士の関わりを通して,個人の学びも深めるジグソー法
    ・第1段階:ホームグループの作成
    ・第2段階:エキスパートグループでの学習
    ・第3段階:ジグソー活動
    ・第4段階:クロストーク
   [事例] 論理的思考を養うディベート
   [事例] 学習者の学びを確認しながら進めるピア・イントスラクション
    ・導入
    ・Mentimeter Test
    ・講義
    ・ConcepTest 1st
    ・ConcepTest 2nd
    ・まとめ

 授業外における学習――雑談が将来につながる学びとなり得る
  ・オンラインにより失われやすいもの
  ・インフォーマルの価値
  ・意図的に“つながる”時間をつくる
   コラム ナースに求められる人間性とは

3章 実践につなげる
 実践とオンラインの融合――質担保につなげるオンライン技術
  ・実技トレーニングにおけるオンライン活用
  ・実習・OJTの限界とオンラインの可能性
  ・学習目標に応じたマルチメディア教材の選択
   コラム IPEにもオンラインを

 シミュレーション演習の実際――押さえておきたい要素と理論
  ・効果的なシミュレーションの用い方
  ・シミュレーション演習の構成
  ・シミュレーション演習に欠かせない要素
  ・大人数に対するシミュレーション演習
   [事例] 消化器疾患の術後急性期の看護におけるシミュレーション演習
    ・胃切除術を受けた患者の術後の観察

 本気で取り組むロールプレイ演習――オンラインでもできる方法
  ・ロールプレイの効果と種類
  ・シナリオづくりのポイント
  ・オンラインで実施時の注意点
   [事例] 心不全患者を演じる
    ・ロールプレイの事例
    ・ロールプレイ演習の設計

 締めて,戻って,次につなげる――あらためてリフレクションを考える
  ・あらためてリフレクションとは
  ・リフレクションで将来に生きる力を養う
  ・授業終了時のリフレクション実施のポイント
   ワンポイント講座 学習・記憶・省察と看護実践との関係性

4章 学びの効果(成果)を測る
 教育評価の意義と必要性――学生全員を学習目標へ到達させるための評価
  ・教育評価のあり方
  ・看護実践評価に欠かせないパフォーマンス評価
  ・オンラインを利用して評価を行うメリット
   ワンポイント講座 理解度テストやチェックリスト作成のポイント

 学習評価とフィードバックは必ずセットで――評価が未来につながる
  ・フィードバックのポイント
  ・授業でも重要なフィードバック

 学習者同士が互いに評価する――新感覚のピア評価
  ・何ができたら「合格」なのかを客観的に示す
  ・ピア評価の注意点

 リフレクションシートをしっかり活用
  ・満足度調査になっていないか?
  ・授業時間内に書き込める内容のシートにする
  ・理解できなかったことにはしっかりと応える

付録 これさえあればもう安心 オンライン授業お助けセット
 これだけ押さえるPC操作
  ・基礎操作
  ・アプリの基本的知識・操作
 もっと早く知りたかったオススメアプリ,Webサイト

おわりに
著者紹介
索引

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看護の学習目標に合わせたオンライン活用のヒントが満載
書評者:篠原千鶴子(東京都立広尾看護専門学校校長)

 2019年から始まったコロナ感染対策が緩和し始め、教育機関では通常の対面授業が行われるようになりました。対面授業が行えるのはよいことですが、コロナ禍を契機に整備されたオンライン教育の環境や、教員たちが覚えたICTスキルを埋もれさせてしまうのはもったいない。学習目標に合わせてオンラインを効果的に活用した教育ができないものかと、新たな欲求が出てきました。そのような時、本書に出会いました。

 本書は、単にオンライン授業の方法論を解くのではなく、オンラインを活用した授業設計ができるように構成されています。パフォーマンス評価や逆向き設計論、協同学習の考えも取り入れ、オンライン授業のみならず、対面授業でも授業の質を上げるために活用できる一冊となっています。

 序章では、学習目標からその授業で到達させたいレベル、すなわち、評価すべきことは何かを明確にし、第1章「知識を届ける」では、知識を効果的に学習者に届けるためのオンライン活用と資料作成の工夫、第2章「思考・コミュニケーションを鍛える」では、グループワークを効果的に進めるためのさまざまな方略について、第3章「実践につなげる」では、オンラインで実践力を伸ばすためのシミュレーション演習やロールプレイ演習の具体例、第4章「学びの効果(成果)を測る」では、次の学びにつながる学習成果の測定やフィードバックの方法について紹介されています。

 また、本書には、34本のWeb動画付録がついています。この「おまけ」が実に充実しています。オンライン授業で活用できる便利なデジタルツールの紹介から、今さら人に聞けないパソコンの基本操作、Word・Excel・PowerPointの活用法、アンケートや小テスト機能で使えるGoogleフォームの使い方、オンライン教材の作成事例等々、幅広い内容の動画を本書で内容を確認しながら視聴できるようになっています。

 なかでも、本文に掲載されている「消化器疾患の術後急性期の看護におけるシミュレーション演習」は、Web動画として実際のオンライン演習風景が紹介されており、大掛かりな機材がなくても、「オンライン演習はこんなふうにすればよいのか」「できる、やってみよう!」と思える内容になっています。

 オンライン教育に関する書籍がたくさん出回るなか、看護教育の現状を理解した著者らが執筆されているものにはなかなか巡り合いません。本書は、オンライン教育の充実を図りたいと考えている看護教育に携わる先生方に大いに役立つお薦めの一冊です。

(「看護教育」 Vol.64 No.4 掲載)


看護教育のコアをオンライン活用により再考する
書評者:西村 礼子(東京医療保健大准教授・看護学)

 本書には,オンライン活用により学びを実践につなげるためのデザインや具体的な方法・戦略が詰まっている。本書では4つの教育のコアを挙げ,看護教育において,「何をめざすか?」「到達のための方法や工夫や戦略は?」「到達を保証するための学習成果の測定は?」「学習成果のフィードバックは?」を改めて考える機会になる。

 看護教育において,明確に定めた学習目標・評価・方略は,学力とめざすべきコンピテンシーに直結する。学習者が到達するための授業設計,人(教職員・学習者・組織)・物・金・技術・時間・情報・自己管理観点からの教育デザインの検討は必須である。本書は教育デザインを多角的にとらえ,臨床看護の人材育成・看護実践から継続・基礎教育を改善するための道しるべとなる。

 序章では,「オンラインの活用」に向けた伸びしろについて書かれている。さまざまなオンラインの方法や教材が登場したが,めざすべき到達点は変わらない。他の媒体・教材同様「何をめざすためのものか?」をとらえた上で,オンラインが持つ魅力と限界を知ることが活用の第一歩である。

 1章「知識を届ける」では,授業の構成,長期記憶化・学習効果を高める・学習者のレディネスや理解度を確かめるための方法,実際の授業事例や無料で使用できるツールがまとめられている。2章「思考・コミュニケーションを鍛える」では,読者が最も教育現場で苦戦しているであろう「学習者の状況がわからない」という課題を解決する方法について述べられる。心理的安全性や集団効力感,エンゲージメント,主体的で深い学び,見える化を高めるための方法が詰まっている。特に,これまでは対面で行われたであろうアクティブラーニングが,オンラインでより効果的に実現できることが示されている。3章「実践につなげる」でも,実技トレーニング,シミュレーションの対面とオンラインの融合,多人数からグループ単位を活用し,本書の特徴でもある「理論に基づいた」説明が豊富である。4章「学びの効果(成果)を測る」では,教育評価とパフォーマンス評価,ピア評価やリフレクションシートなどの活用,評価基準・規準まで具体的に示されている。

 本書の魅力はテキスト部分だけではない。付録Web動画では,執筆者による実際の教材の説明や授業方法,基本的なPC操作,Word・Excel・PowerPoint・Web会議システム・Googleフォームなどの説明が視聴できるため,今からオンライン活用を始める方も必見である。

 教育のパラダイムシフトにより技術革新や価値創造,情報の批判的吟味やコンピテンシー獲得が求められているが,看護教育の成果は学修成果・看護実践から生み出されるという本質は変わらない。看護教育者は,看護学が生み出す知を科学技術活用により,言語・構造・共通認識化して「教育」「学習」に落とし込み,促進・保障することを今後もめざす。

 本書は,「オンライン」という現代社会の特徴を踏まえた看護教育のコアを再考する機会を提供してくれるだろう。

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