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看護教員のための 問題と解説で学ぶ教育評価力トレーニング

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評価は教員にとって非常に重要な働きですが、自らが評価された経験をもとにするだけでは十分に対処できないことは、日々感じられておられるでしょう。本書では、問題形式と解説で、教育評価の知識を学びやすく構成しています。I部では教育評価力向上のメリットを説き、II・III部で教育評価の具体的な場面を設定したうえで問題と解説を取り上げています。初心者もベテランも、本書でトレーニングしてみてください。

シリーズ 看護教員のための教育力トレーニング
監修 佐藤 浩章
編集 大串 晃弘
発行 2022年12月判型:A5頁:152
ISBN 978-4-260-05060-9
定価 2,640円 (本体2,400円+税)

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  • 著者による本書の紹介
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はじめに

 看護師と看護教員の違いは何でしょうか.厚生労働省の職業分類に従えば,両者とも「専門的・技術的職業」に位置づけられますが,そのなかでも,看護師は「保健師,助産師,看護師」に,専門学校教員や大学教員は「教育の職業」に分類されています.看護師になるためには,法令で定められている必要な教育を受け,看護師国家試験に合格せねばなりませんが,看護教員になるためには何が必要でしょうか.
 看護専門学校等の教員には,厚生労働省のガイドラインに基づき,「現場経験5年以上」に加え「専任教員として必要な研修を修了」することなど,または「現場経験3年以上」と「大学または大学院で教育に関する科目を履修」することが求められています.
 一方で,看護学を教える大学教員には,このような研修は必須化されていません.これは不思議なことです.大学がエリートのための高等教育機関であった時代はともかく,現代のように大衆化した高等教育機関において,大学教員の教育能力を育成するための研修は不要であるとする根拠を説明できる人はいないでしょう.
 多くの大学や専門学校では,教育能力を育成するための研修を提供できていません.また教育能力について悩みや課題があったとしても,それを支援する専門スタッフも配置されていません.
 このような状況では,看護教員各自が自己啓発として,自らの教育能力を伸ばさざるを得ません.まず授業の設計に問題があったのか,それとも,授業の方法に問題があったのか,あるいは,学生を評価するところに問題があったのかというように,自らの教育を振り返る必要があります.その振り返りの助けとなるのが本書です.類書と比較しても,本書はユニークな特徴をもっています.
 まず,教育学と看護学の専門家が共同で執筆している点です.教育学の専門家の書いたものは理論ばかりで読みにくい,看護学の専門家の書いたものは経験論に陥りがちという弱みを克服し,双方の強みを掛け合わせることで,看護教育という文脈において,教育学の基礎を学べる書籍となっています.
 次に,問題集形式で執筆されている点です.看護教員にとって馴染み深い国家試験に近い形式にしています.説明を読むだけでは理解や記憶の定着に不安を感じることもあるでしょう.本書では問題を解いたり,解説を読んだりすることを通して,自然に内容が理解・定着していくという工夫がなされています.
 本書が,教育についてもっと学びたい,目の前の学生の学びをもっと支援したいと考えている看護教員にとっての愛読書になることを期待しています.

 2022年11月
 佐藤浩章

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はじめに
本書の目指すところと使い方

I部 教育評価力を向上させる意義
 教育評価力はなぜ必要なのか
  的確な教育評価は学生の成長を促す
  社会の変化に対応した評価ができる
 教育評価力が向上すると何ができるようになるのか
  教員の教育観や看護観に合わせて学生の学習を導くことができる
  学生の到達度を的確に評価することができる
  授業を改善することができる
  明確な評価基準を学生に提示することができる

II部 教育評価力向上のための基礎問題と解説
 教育評価の基礎知識を身につける
  学習者中心の教育と学習成果の評価
  教育評価の構成要素
  多様な学習評価
 教育評価の方法を理解する
  学習目標
   必須問題① 形成的評価
   必須問題② 診断的評価
   必須問題③ 評価基準
   必須問題④ 認知バイアス
   必須問題⑤ シラバスへの成績評価の記載方法
   必須問題⑥ 評価の適切性
   必須問題⑦ ルーブリック
   必須問題⑧ フィードバックの方法
   必須問題⑨ 筆記試験の出題形式
   必須問題⑩ 不正行為

III部 教育評価力向上のための応用問題と解説
 講義に関する教育評価力を向上させる
  学習目標
   一般問題① 出題形式と認知的領域
   一般問題② 成績評価で用いる統計
   一般問題③ オンラインを用いた評価
   一般問題④ リアクションペーパー
   状況設定問題① 合理的配慮が必要な学生への対応
   状況設定問題② ミニテスト
   学びを深めるコラム(1) よいルーブリックを作る
 演習に関する教育評価力を向上させる
  学習目標
   一般問題① 精神運動的領域の評価
   学びを深めるコラム(2) 評価方法の組み合わせ
   一般問題② 複数教員による評価
   一般問題③ 評価方法の提示
   一般問題④ 情意的領域の評価
   状況設定問題① チェックリストとルーブリック
   状況設定問題② グループワーク
   学びを深めるコラム(3) 評価者としての力を自覚する
 実習に関する教育評価力を向上させる
  学習目標
   一般問題① 実習における学習目標の評価
   一般問題② フィードバックの種類
   一般問題③ 主体性の評価
   一般問題④ 実習の評価に影響する認知バイアス
   状況設定問題① 実習場面での評価
   状況設定問題② 実習科目の成績評価
   学びを深めるコラム(4) フィードバックを使い分ける
 卒業研究に関する教育評価力を向上させる
  学習目標
   一般問題① 卒業研究の学習目標
   一般問題② 文献検索能力の評価
   一般問題③ 批判的思考の評価
   一般問題④ 倫理的な視点の評価
   状況設定問題① 卒業研究の評価
   状況設定問題② 卒業研究におけるグループワークの評価
   学びを深めるコラム(5) 学生の内発的動機づけを高める卒業研究指導

おわりに
索引

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問題を解きながら教育評価力を高めることができる“骨太な”良書
書評者:服部 律子(奈良学園大学保健医療学部看護学科教授)

 「どのように評価されるかによって学生の学習が変化する」と言われるくらい、評価は大きな力をもっています。しかし、評価に関する悩みは尽きることがない、というのも正直なところです。この本は、そんな教育評価に特化した書籍です。教育評価力を問題と解説で“トレーニング”するというタイトルを見て、「問題を解きながらどのように教育評価力を高めるのだろう?」と興味を抱きながら本書を手に取りました。

 読み始めると、意外や意外、タイトルから抱いたイメージをいい意味で覆す“骨太な”内容でした。教育学と看護学の両分野の著者が執筆されている本書は、しっかりとした教育学の基礎をふまえながら、講義、演習、実習、そして卒業研究までの看護教育の場面ごとに評価の考え方や方法が解説されており、それでいて教育学の教育評価法の書籍のような難解さはなく、看護教育に活用するために教育評価について学びたい教員にはとてもよい本だと思いました。

 この本のユニークなところは、基礎的なことを学んだ後に、その知識を使って問題を解くという展開になっている点です。問題は、教育評価を実践するうえで基礎となる知識を「必修」、看護教育の場面に即した内容を「一般」「状況設定」と、まるで看護師国家試験のように区分されています。最初に読んだときはまるで学生になったような気分でしたが、「一般」や「状況設定」では具体的な場面を挙げて設問されており、実際をイメージしながら評価について理解できるようになっています。

 また、それぞれの問題の解説が、単に最初の基礎的な説明の復習だけではなく、実際の看護教育の場面に即して理解を深めることができるよう工夫されていて、タイトルの「問題と解説で学ぶ」というのはこういうことかと納得しました。

 問題集のようなユニークなスタイルは好みの分かれるところかもしれませんが、各問題には「評価基準」や「認知バイアス」「主体性の評価」などといった見出しがつけられているので、「ちょっと調べたい」ときに、この見出しを索引のようにして、その部分だけを読むというような使い方もできる本だと思います。さらに、問題がさまざまな出題形式で作成されているので、テストのつくり方の参考にもなります。

 「評価の仕方がよくわからない」「評価って難しい」「なんだかうまく評価できていないような気がする」、看護教員の誰もが一度はこのような思いを抱いたことがあるのではないでしょうか。この本は、そんなときに特にお勧めの1冊です。

(「看護教育」 Vol.64 No.2 掲載)



問題の答え合わせをすることで教育評価力の理解が深まる
書評者:赤池 雅史(徳島大大学院教授・医療教育学)

 授業の教育方法にいろいろ工夫を凝らしても,結局のところ,学生は試験に合わせて学習してしまうことに行き詰まりを感じた経験はないだろうか。あるいは,教育評価の方法を学ぶためにFDに参加しても,聞き慣れない教育専門用語に戸惑い,具体的に何をどうすればよいかよくわからなかったという経験はないだろうか。本書は看護教育における教員の教育評価力のトレーニングを目的としたもので,日々の教育活動において,看護教員が感じているこれらの課題や疑問に答えてくれるものである。

 I部では「教育評価力を向上させる意義」と題して,教育評価力はなぜ必要なのか,教育評価力が向上すると何ができるようになるのかにつき,わかりやすく解説されている。II部では,学習者中心の教育と学習成果の評価についての解説から始まり,近年重要視されている3つのポリシー(ディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシー,アドミッション・ポリシー)と学習成果との関係性が明確に示されている。さらに,学習成果の理解に不可欠であるコンピテンス(コンピテンシー),「能力」の入れ子構造モデル,ブルーム・タキソノミー,ミラーのピラミッドについて,それぞれの説明とそれらがどのような関係にあるかを明確に示している。これらの関連性が今ひとつわからず,もやもやされている方も,この章を読むと「そういうことか」と必ずやふに落ちるであろう。

 この章では,診断的評価,形成的評価,総括的評価からなる教育評価の分類と,直接評価・間接評価と量的評価・質的評価の2軸によって分類される4つのタイプの学習評価方法も解説されている。そして,近年,医療教育で重視されているパフォーマンス評価とその評価基準法であるルーブリックの説明が続くことで,教育評価力の全体像の理解が自然に深まるように仕組まれている。

 さらに,その次からが本書の特筆すべき真骨頂なのであるが,読者の理解度を確認する多肢選択問題が次々と登場する。この問題に解答し,答え合わせをしていくことで,なんとなくわかったつもりになっていた教育評価力について,さらにその理解が深まる「学びほぐし」となるように仕組まれている。さらにIII部では,応用編として,講義,演習,実習,卒業研究に関する教育評価力の向上について,実践的な解説とその理解度チェックの試験問題が続いている。そこではフィードバック,認知バイアス,不正行為,合理的配慮が必要な学生への対応などについても触れられており,日々教育を実践している教員の視点に沿った内容である。

 本書は看護教育のみならず,全ての医療教育に共通する内容が満載である。医療教育にかかわる全ての方にお薦めしたい。

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