看護学教育における授業展開 第2版
質の高い講義・演習・実習の実現に向けて
看護学教育の特質を踏まえ、より良い授業の実践に必要な基礎知識を網羅
もっと見る
より良い授業の実践に必要な教育学の基礎知識を看護学教育の特質を踏まえて整理し、講義・演習・実習それぞれの特徴を反映した授業計画案や評価尺度などの豊富な具体例を示しながら網羅的に解説。この第2版では、ICTの教育への導入・普及、パフォーマンス評価・ポートフォリオ評価・アウトカム評価など新たな評価方法の視点、実習指導者の理解と連携、学生による医療事故の防止といった看護教育現場での今日的課題の記述が充実。
監修 | 舟島 なをみ |
---|---|
発行 | 2020年09月判型:B5頁:312 |
ISBN | 978-4-260-04248-2 |
定価 | 3,740円 (本体3,400円+税) |
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。
- 序文
- 目次
- 付録・特典
序文
開く
第2版の序
本書の初版出版は,2013年のことである。2013年は,2020年の夏季オリンピックの東京開催が決定した年であった。また,気象観測史上,記録的な出来事が相次ぎ,竜巻,台風,猛暑など異常気象に見舞われ,多くの貴重な人命が奪われ,人々の生活に甚大な被害が及んだ年でもあった。その7年後,第2版の出版が実現した。この7年間,日本の看護師養成教育の高等教育化はさらに進み,2013年に211校であった看護系大学は2020年に275校となった。また,看護系大学院を併設している大学も2013年の145校から2020年は187校となった。
第2版の執筆者らも初版同様,そのほとんどが看護系大学の教員であり,看護教育学を専攻した千葉大学大学院博士後期課程の修了生である。この修了生らは2013年以降も各自の研究を着実に進め,看護学教育に関わる重要な研究成果を産出し続けている。具体的には,「実習中の学生が直面する問題」や「実習指導者が直面する問題」などの解明,「教授活動自己評価尺度―看護学講義用―」や「実習安全のための教授活動自己評価尺度―看護学教員用―」などの開発である。また,今回は執筆者とはならなかったが修了生の伊勢根尚美さんの看護学実習指導に携わる看護師の行動を解明した研究も第2版出版に向けた大きなエネルギー源になった。本書は版を重ねても「研究成果に基づく知の体系でありたい」という筆者の思いに変化はない。本書第2版は様々な研究成果に基づく論述が各章に加筆され,より一層充実したと確信している。
本書第2版は全6章から構成され,そのうち「第1章 授業とは何か」の「IV-②授業と情報通信技術(Information and Communication Technology;ICT)」は新たに加筆した内容である。折しも,2020年,本書の再校段階にCOVID-19が世界的に蔓延し,日本の教育機関の多くがオンライン授業を余儀なくされ,ICTを活用した教育は必然となった。本書第2版は,ICTを活用した教育の解説にとどまったが,今後,この側面の研究は看護教育学の重要な課題となることを確認している。
また,「第6章 看護学実習と教授活動・学習活動」の「III-③実習目標達成に向けた教員と実習指導者の連携」も新たに加筆した内容であり,連携の定義や連携モデルを提示できた。看護学実習は,教員と実習指導者の連携なくして実現しない。「連携」とは何か,どのようにすれば連携できるのか,この問いに対する解の必要性は筆者の脳裏に40年近く,こびりついていた。しかし,前述の伊勢根尚美さんが原著論文として公表して下さった「看護学実習指導に携わる看護師の行動」の研究成果は,筆者の脳裏にこびりついていた問いを一気に融解し,連携の定義の成文化,連携モデルの提示という形となって解をもたらした。同時にこの論述の実現は筆者のみならず本書執筆者全員が研究成果の力を実感する経験となった。さらに,実習指導に携わる教員や実習指導者にとって最大の関心事である「学生による医療事故防止」に関する内容も,第6章に新たに論述できた。全国の看護職養成教育機関が展開している実習のほとんどが教員,実習指導者,学生の努力によって安全に進められている。しかし,ひとたび,何らかの事故が発生すると学生の看護の対象となる人々の安全・安楽が脅かされるだけでなく,学生にとってもそれは大きな外傷体験となる。このような事態を回避するために有用な方法や知識を提示できたと確信している。
本書第2版は改訂決定当初,看護基礎教育と看護卒後教育両者を視野に入れ,それぞれを別の章立てにより執筆することを構想した。しかし,看護教育学における看護卒後教育に関する研究は緒に就いたばかりであり,書籍として論述には不十分であることを認めざるを得ず,第2版の構想を大きく変更した。現在,看護卒後教育に関する研究を急ピッチで進めており,第3版には必ずその内容を包含する書へと改訂したい。
本書初版の出版年である2013年頃より際立ってきた異常気象は,それ以後,毎年のように日本に苦しみを与え続け,異常が通常へと変化し,そこに追い打ちをかけるように新たな感染症が世界中の人々を苦しめる。
このような状況下,ますます,看護職養成教育の責務は増大し,その責務の遂行を支援できる研究を継続したいと執筆者一同,考えている。
本書第2版の出版に向け,多くの方々にご支援を賜った。中でも,望月美知代さんは毎月1回開催される会議に必ず参加し,本書の完成に向け尽力して下さった。また,医学書院の北原拓也氏は丁寧な編集により本書の完成度を向上させて下さった。お二人とも緊急事態宣言の中も期限通りの本書出版に向け活動して下さっており,完全なる感染予防対策実施下での活動,さぞやご不便であったと推察する。心から感謝申し上げる。
2020年7月
舟島なをみ
本書の初版出版は,2013年のことである。2013年は,2020年の夏季オリンピックの東京開催が決定した年であった。また,気象観測史上,記録的な出来事が相次ぎ,竜巻,台風,猛暑など異常気象に見舞われ,多くの貴重な人命が奪われ,人々の生活に甚大な被害が及んだ年でもあった。その7年後,第2版の出版が実現した。この7年間,日本の看護師養成教育の高等教育化はさらに進み,2013年に211校であった看護系大学は2020年に275校となった。また,看護系大学院を併設している大学も2013年の145校から2020年は187校となった。
第2版の執筆者らも初版同様,そのほとんどが看護系大学の教員であり,看護教育学を専攻した千葉大学大学院博士後期課程の修了生である。この修了生らは2013年以降も各自の研究を着実に進め,看護学教育に関わる重要な研究成果を産出し続けている。具体的には,「実習中の学生が直面する問題」や「実習指導者が直面する問題」などの解明,「教授活動自己評価尺度―看護学講義用―」や「実習安全のための教授活動自己評価尺度―看護学教員用―」などの開発である。また,今回は執筆者とはならなかったが修了生の伊勢根尚美さんの看護学実習指導に携わる看護師の行動を解明した研究も第2版出版に向けた大きなエネルギー源になった。本書は版を重ねても「研究成果に基づく知の体系でありたい」という筆者の思いに変化はない。本書第2版は様々な研究成果に基づく論述が各章に加筆され,より一層充実したと確信している。
本書第2版は全6章から構成され,そのうち「第1章 授業とは何か」の「IV-②授業と情報通信技術(Information and Communication Technology;ICT)」は新たに加筆した内容である。折しも,2020年,本書の再校段階にCOVID-19が世界的に蔓延し,日本の教育機関の多くがオンライン授業を余儀なくされ,ICTを活用した教育は必然となった。本書第2版は,ICTを活用した教育の解説にとどまったが,今後,この側面の研究は看護教育学の重要な課題となることを確認している。
また,「第6章 看護学実習と教授活動・学習活動」の「III-③実習目標達成に向けた教員と実習指導者の連携」も新たに加筆した内容であり,連携の定義や連携モデルを提示できた。看護学実習は,教員と実習指導者の連携なくして実現しない。「連携」とは何か,どのようにすれば連携できるのか,この問いに対する解の必要性は筆者の脳裏に40年近く,こびりついていた。しかし,前述の伊勢根尚美さんが原著論文として公表して下さった「看護学実習指導に携わる看護師の行動」の研究成果は,筆者の脳裏にこびりついていた問いを一気に融解し,連携の定義の成文化,連携モデルの提示という形となって解をもたらした。同時にこの論述の実現は筆者のみならず本書執筆者全員が研究成果の力を実感する経験となった。さらに,実習指導に携わる教員や実習指導者にとって最大の関心事である「学生による医療事故防止」に関する内容も,第6章に新たに論述できた。全国の看護職養成教育機関が展開している実習のほとんどが教員,実習指導者,学生の努力によって安全に進められている。しかし,ひとたび,何らかの事故が発生すると学生の看護の対象となる人々の安全・安楽が脅かされるだけでなく,学生にとってもそれは大きな外傷体験となる。このような事態を回避するために有用な方法や知識を提示できたと確信している。
本書第2版は改訂決定当初,看護基礎教育と看護卒後教育両者を視野に入れ,それぞれを別の章立てにより執筆することを構想した。しかし,看護教育学における看護卒後教育に関する研究は緒に就いたばかりであり,書籍として論述には不十分であることを認めざるを得ず,第2版の構想を大きく変更した。現在,看護卒後教育に関する研究を急ピッチで進めており,第3版には必ずその内容を包含する書へと改訂したい。
本書初版の出版年である2013年頃より際立ってきた異常気象は,それ以後,毎年のように日本に苦しみを与え続け,異常が通常へと変化し,そこに追い打ちをかけるように新たな感染症が世界中の人々を苦しめる。
このような状況下,ますます,看護職養成教育の責務は増大し,その責務の遂行を支援できる研究を継続したいと執筆者一同,考えている。
本書第2版の出版に向け,多くの方々にご支援を賜った。中でも,望月美知代さんは毎月1回開催される会議に必ず参加し,本書の完成に向け尽力して下さった。また,医学書院の北原拓也氏は丁寧な編集により本書の完成度を向上させて下さった。お二人とも緊急事態宣言の中も期限通りの本書出版に向け活動して下さっており,完全なる感染予防対策実施下での活動,さぞやご不便であったと推察する。心から感謝申し上げる。
2020年7月
舟島なをみ
目次
開く
第1章 授業とは何か
I 授業の定義
II 授業内容の区分を表す用語「授業科目」
III 授業成立の要件
1 授業成立に向けた「教授者」の要件
2 授業成立に向けた「学習者」の要件
3 授業成立に向けた「教育内容」の要件
IV 看護学教育における授業
1 看護学における授業形態(講義・演習・実習)とその特徴
2 授業と情報通信技術(Information and Communication Technology;ICT)
◉用語「修得」について
第2章 授業展開のための基礎知識
I 授業展開を支える理論
1 学習心理学の特徴
2 教育心理学の特徴
3 学習理論
4 学習意欲
5 成人学習理論
6 学習のレディネス
II 授業展開に必要な基礎知識
1 授業設計と授業の組織化
2 教育目的・目標の設定
3 授業計画案作成に必要な知識
4 授業における教授活動と学習活動の評価に必要な知識
5 学習成果の評価方法
第3章 看護学の授業に臨む学習者と教授者の理解─看護基礎教育に着眼して
I 学生の理解
1 成人学習者としての特徴
2 看護学の初学者としての特徴
3 編入学生の特徴
4 男子看護学生の特徴
II 教員の理解
1 授業展開に際し看護学教員が直面する問題
2 看護系大学・短期大学に所属する新人教員の特徴
3 看護専門学校に所属する教員の特徴
4 看護学教員と倫理的行動
III 実習指導者の理解
1 実習指導者の背景
2 実習指導者が直面する問題
第4章 看護学の講義と教授活動・学習活動
I 看護学の講義の特徴
1 講義の利点と欠点
2 講義における教授活動上の留意点
3 看護学の講義の特徴
II 看護学の講義における教授活動
1 講義の目標達成に向けて授業計画の全容を学生に提示する
2 形成的評価を適宜行い授業計画を修正する
3 学生の目標達成度向上に向けて教授技術や教具を工夫する
4 学生の発言を促すとともに学生の反応や発言内容に適切に対応する
5 講義中の問題発生を未然に防ぐとともに発生した問題に適切に対処する
6 学生の課外学習に関心を持ち学習課題や学習資源の提示,学習方法の推奨を行う
7 講義を通した学生のプライバシーの披瀝を回避する
8 「学生は学習の主体者であり,教員の補助者ではない」ことを念頭に行動する
III 講義,その授業設計と展開
IV 講義における教授活動・学習活動とその評価
1 教授活動の評価
2 学習活動とその成果の評価
第5章 看護学演習と教授活動・学習活動
I 看護技術演習
1 看護技術演習,その利点と欠点
2 看護技術演習における教授活動
3 看護技術演習における学習活動
4 看護技術演習,その授業設計と展開
5 看護技術演習における教授活動・学習活動とその評価
II 看護学のグループワーク
1 グループワークの特徴
2 グループワークを支援する教授活動
3 グループワーク,その授業設計と展開
4 グループワークの教授活動・学習活動とその評価
第6章 看護学実習と教授活動・学習活動
I 看護学実習の特徴
1 看護学実習の定義
2 看護学実習の特質
II 看護学実習に取り組む学生の理解
1 看護学実習中の学習活動
2 看護学実習中の学生の「行動」と「経験」の関連
3 看護学実習中の学生が直面する問題
III 看護学実習の教授活動
1 看護実践場面の教授活動
2 看護学実習カンファレンスの教授活動
3 実習目標達成に向けた教員と実習指導者の連携
IV 看護現象の教材化
1 学習活動査定による必須指導内容の選別と焦点化
2 必須指導内容教授のための現象の確定と再現
3 現象への教授資源投入によるモデル現象の作成
4 現象からの重要要素抜粋と連結による必須指導内容への誘導
V 看護学実習,その授業設計と展開
VI 看護学実習中の医療事故防止
1 学生による医療事故防止に向けた教員の役割
2 学生による医療事故防止に向けた実習指導者の役割
3 教員と実習指導者の医療事故防止行動の診断
VII 看護学実習の評価
1 教授活動の評価
2 学習活動の評価
3 学習成果の評価
付録
1 使用許諾手続きの流れ
2 測定用具別問い合わせ先
索引
I 授業の定義
II 授業内容の区分を表す用語「授業科目」
III 授業成立の要件
1 授業成立に向けた「教授者」の要件
2 授業成立に向けた「学習者」の要件
3 授業成立に向けた「教育内容」の要件
IV 看護学教育における授業
1 看護学における授業形態(講義・演習・実習)とその特徴
2 授業と情報通信技術(Information and Communication Technology;ICT)
◉用語「修得」について
第2章 授業展開のための基礎知識
I 授業展開を支える理論
1 学習心理学の特徴
2 教育心理学の特徴
3 学習理論
4 学習意欲
5 成人学習理論
6 学習のレディネス
II 授業展開に必要な基礎知識
1 授業設計と授業の組織化
2 教育目的・目標の設定
3 授業計画案作成に必要な知識
4 授業における教授活動と学習活動の評価に必要な知識
5 学習成果の評価方法
第3章 看護学の授業に臨む学習者と教授者の理解─看護基礎教育に着眼して
I 学生の理解
1 成人学習者としての特徴
2 看護学の初学者としての特徴
3 編入学生の特徴
4 男子看護学生の特徴
II 教員の理解
1 授業展開に際し看護学教員が直面する問題
2 看護系大学・短期大学に所属する新人教員の特徴
3 看護専門学校に所属する教員の特徴
4 看護学教員と倫理的行動
III 実習指導者の理解
1 実習指導者の背景
2 実習指導者が直面する問題
第4章 看護学の講義と教授活動・学習活動
I 看護学の講義の特徴
1 講義の利点と欠点
2 講義における教授活動上の留意点
3 看護学の講義の特徴
II 看護学の講義における教授活動
1 講義の目標達成に向けて授業計画の全容を学生に提示する
2 形成的評価を適宜行い授業計画を修正する
3 学生の目標達成度向上に向けて教授技術や教具を工夫する
4 学生の発言を促すとともに学生の反応や発言内容に適切に対応する
5 講義中の問題発生を未然に防ぐとともに発生した問題に適切に対処する
6 学生の課外学習に関心を持ち学習課題や学習資源の提示,学習方法の推奨を行う
7 講義を通した学生のプライバシーの披瀝を回避する
8 「学生は学習の主体者であり,教員の補助者ではない」ことを念頭に行動する
III 講義,その授業設計と展開
IV 講義における教授活動・学習活動とその評価
1 教授活動の評価
2 学習活動とその成果の評価
第5章 看護学演習と教授活動・学習活動
I 看護技術演習
1 看護技術演習,その利点と欠点
2 看護技術演習における教授活動
3 看護技術演習における学習活動
4 看護技術演習,その授業設計と展開
5 看護技術演習における教授活動・学習活動とその評価
II 看護学のグループワーク
1 グループワークの特徴
2 グループワークを支援する教授活動
3 グループワーク,その授業設計と展開
4 グループワークの教授活動・学習活動とその評価
第6章 看護学実習と教授活動・学習活動
I 看護学実習の特徴
1 看護学実習の定義
2 看護学実習の特質
II 看護学実習に取り組む学生の理解
1 看護学実習中の学習活動
2 看護学実習中の学生の「行動」と「経験」の関連
3 看護学実習中の学生が直面する問題
III 看護学実習の教授活動
1 看護実践場面の教授活動
2 看護学実習カンファレンスの教授活動
3 実習目標達成に向けた教員と実習指導者の連携
IV 看護現象の教材化
1 学習活動査定による必須指導内容の選別と焦点化
2 必須指導内容教授のための現象の確定と再現
3 現象への教授資源投入によるモデル現象の作成
4 現象からの重要要素抜粋と連結による必須指導内容への誘導
V 看護学実習,その授業設計と展開
VI 看護学実習中の医療事故防止
1 学生による医療事故防止に向けた教員の役割
2 学生による医療事故防止に向けた実習指導者の役割
3 教員と実習指導者の医療事故防止行動の診断
VII 看護学実習の評価
1 教授活動の評価
2 学習活動の評価
3 学習成果の評価
付録
1 使用許諾手続きの流れ
2 測定用具別問い合わせ先
索引