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看護にいかすリーダーシップ 第3版
ティーチングとコーチング,チームワークの体験学習

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リーダーシップとは、力強くスタッフを引っ張っていくだけではなく、スタッフの成長段階にそった対応をすることでもある。本書では、リーダーシップの理論を説明しつつ、状況に応じて指示、助言、コーチングを使い分けられるリーダーになるためのトレーニングを紹介している。この1冊で理論を理解し、基本スキルが身につく。施設内研修や勉強会などにも最適。

諏訪 茂樹
発行 2021年02月判型:A5頁:172
ISBN 978-4-260-04330-4
定価 2,200円 (本体2,000円+税)

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第3版発行にあたって

 看護界の管理職研修やリーダー研修を30年ほどお手伝いしてきて,不思議な現象にたびたび直面しました.特定の考えや方法が突然にブームとなり,皆で熱中した後に消えていくのです.ブームの大半は商業主義的に仕掛けられたものですが,学術分野の人でさえブームに振り回されることもあります.いうまでもなく,職場の問題はブームで解決しませんし,特定の考えや方法をつまみ食いするかのように,単品で学んでも役に立ちません.にもかかわらず,管理職やリーダーがブームに振り回されると,スタッフをブームで振り回すことになり,無駄な作業を強いることにもなるのです.
 目新しいブームを追いかけるのではなく,どのような医療を実現するのかというグランドデザインと,そのためにどのような看護師を育てるのかというビジョンとを,歴史の大きな流れの中で考え,まずは明確にしなければなりません.そのうえで,必要となる知識と技術を体系的に学び,職場で着実に展開していくことが何よりも大切なのです.
 多職種協働によるチームワークを通して,患者中心の安全で質の高い医療を実現するという考えは,単なるブームではなく,時代の趨勢だといえます.そこで問われるのがチームに関する正しい理解と,チームワークの実践力です.野球チームにおいて,ピッチャーとキャッチャーとでは視野が異なり,それぞれに強みと弱みがあります.そこで互いに強みを発揮して,互いの弱みを補い合うことで,チームワークが実践されるのです.ですから,野球チームにおいてピッチャーとキャッチャーは対等であり,そこに上下関係はありません.同じチームのメンバーとして,どちらにもリーダーシップとフォロワーシップとが求められるのです.
 患者中心の安全で質の高い医療を実現するためにも,看護師はほかの医療職と対等な関係を結び,ときには自らの専門性に基づいて医療チーム内でリーダーシップを発揮する必要があります.そして,そのような自立した看護師を育てるのが,ティーチングとコーチングを使い分けながらスタッフを育てる看護チーム内でのリーダーシップなのです.自立した看護師が一人でも多く育ち,真の意味でのチーム医療が実現されるための一助として,本書第3版がいかされるならば,筆者としては幸いです.

 2020年12月
 諏訪茂樹

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I 理論編 これまでのリーダーシップ論の流れ
 1 看護界におけるリーダー像の多様化
  リーダーシップとヘッドシップ
  リーダーシップとマネジメント
   看護界でみられるリーダー
   暴君タイプのリーダー
   縁の下の力持ちタイプ
   機関車タイプ
 2 支配・統制するリーダーから育てるリーダーへ
  科学的管理主義
  X-Y理論
  ホーソン工場の実験
  レヴィンの作業実験
  個人のパーソナリティとリーダーシップ
 3 「これか,あれか」から「これも,あれも」へ
  マネジリアル・グリッド
  PM理論
  コンピテンシー論
 4 柔軟なリーダーシップ・モデルの登場
  発達対応モデル
   シチュエーショナル・リーダーシップ・セオリー
   自立に至る階段モデル
   自立を目指す理由
   依存のフォロワーへの指示(積極的ティーチング)
   半依存のフォロワーへの助言(消極的ティーチング)
   半自立のフォロワーへの支持(コーチング)
   自己決定を引き出すコミュニケーション技法
   自己決定の支持(コーチング)の限界
  チームワークのための場面対応モデル
   患者中心のチーム医療
   交流分析
   場面に応じたかかわり方

II トレーニング編 リーダーシップの体験学習
 1 リーダーシップ研修の実際
  リーダーシップ学習の重要性
  意識と行動を変化させる体験学習
  振り返りと気づき
  研修の企画
  学習効果の測定
 2 発達対応モデルに基づくトレーニング
  発達対応モデルとは
   指示(積極的ティーチング)について学ぶ ブラインド・ワーク I
   助言(消極的ティーチング)について学ぶ アドバイザー・トレーニング
   支持(コーチング)に必要な熱意を学ぶ サイレント・トーク
   支持(コーチング)に必要な受容を学ぶ 価値交流学習
   支持(コーチング)に必要な技法を学ぶ 1 うなずき・相づち・繰り返しトレーニング
   支持(コーチング)に必要な技法を学ぶ 2 要約トレーニング
   支持(コーチング)に必要な技法を学ぶ 3 共感トレーニング
   支持(コーチング)に必要な技法を学ぶ 4 質問トレーニング
   フォロワーとのやりとりを振り返る プロセス・レコードによるグループワーク
   フォロワーの満足度を知り,自分の接し方を改善する リーダーシップのフィードバック
 3 場面対応モデルに基づくトレーニング
  場面対応モデルとは
   チームワークについて学ぶ 協力ゲーム
   会議時の関係を学ぶ カンファレンス・トレーニング
   危機対処時の関係を学ぶ ブラインド・ワーク II
   通常時の関係を学ぶ ブレーン・ストーミング
   フォロワーから見た自分を学ぶ 性格フィードバック

文献
索引

Questions
 1 どのリーダーが優れていたでしょうか?
 2 管理職のリーダーシップ・スタイルは?
 3 あなたが必要としたのは?
 4 あなたのエゴグラムは?
 5 フォロワーから見たあなた(リーダー)のエゴグラムは?

Topics
 1 目的と目標の違いと関係
 2 ドラッカーが提唱した本来の目標管理
 3 やる気・やりがいと目標管理
 4 「5分前集合」は軍隊用語
 5 カリスマ制・世襲制・民主制
 6 ベルトコンベアの廃止
 7 キャリアラダー
 8 新人の頃に,指示して/任せてほしかったこと
 9 ピラミッド組織から逆さまのピラミッドへ
 10 コーチングの原点
 11 嫌いな人の意見だから反対?

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コンパクトでありながら,リーダーシップの理論とスキルを学べる充実した書
書評者:林 千冬(神戸市看護大教授・看護管理学)

 2002年の初版から第3版を重ねた諏訪茂樹氏のベストセラーである。170ページ程度のコンパクトな一冊が,「理論編」と「トレーニング編」の2本立てとなっていて,“一冊で2度美味しい”点が本書の大きな特徴である。

 前半の「I 理論編 これまでのリーダーシップ論の流れ」は,「Question」と「Topics」(コラム的な読み物)を挟みながら,理解が深まる仕掛けとなっている。看護管理学のさまざまなテキストを眺めてみても,これほど原書に忠実に,しかもコンパクトにバランスよく,リーダーシップ論の流れを解説した本はまずないと評者は思う。初心者はもとより,リーダーシップ論を読みこんできたベテランにもお薦めしたい。

 社会学を専門とする著者ゆえに,コンパクトにするためには,多くを削ぎ落とさざるをえない苦労があっただろう。しかしだからこそ,リーダーシップ論の発展過程がストーリーとしてよくのみ込める。リーダーシップは,ピラミッド組織のヘッドだけではなく,一人ひとりのスタッフに必要であること。そして,それを育み強化していくための方策こそがコーチングだという結論に至り,トレーニング編に移っていく。初版の序で述べられた「自分の意思で自己決定した主体的な行為には,やりがいと責任を伴い,質の高いパフォーマンス(看護)へと結びつく」という著者のメッセージは,版を重ねても一貫している。

 「II トレーニング編 リーダーシップの体験学習」は,誰にでも実践可能な丁寧な手引書となっている。ここには,看護職,介護職をはじめとする対人援助職の間で大好評の,著者の研修のエッセンスが埋め込まれ,これらを用いた1日研修や2日研修の組み方まで説明されている。ここまで懇切丁寧なのも,「(リーダーシップは)受動的な座学だけで身につくものではなく,体験を通して自らが主体的に学ぶアクティブラーニングにより,はじめて手にすることができる」という,今日のようにアクティブラーニングが喧伝されるずっと前からの著者の主張ゆえだろう。

 トレーニング編の前半は,「発達対応モデルに基づくトレーニング」で,「指示(積極的ティーチング)」と「助言(消極的ティーチング)」を学び,「支持(コーチング)」に必要な「熱意」「受容」「技法」と続き,最後に「振り返る」「改善する」で終わる。後半は,「場面対応モデルに基づくトレーニング」として,「チームワーク」「会議(カンファレンス)時の関係」「危機対処時の関係」「通常時の関係」を学び,最後は「フォロワーから見た自分を学ぶ」という重要な(でも,なかなかできない)フィードバックで終わる。

 「リーダーシップを『目的を実現するために目標を設定し,目標を達成するために個人や集団に影響を及ぼすこと』と定義すると,実は看護行為そのものがリーダーシップである」と著者はいう。その言葉に背中を押されながら,学習に実践に本書を活用していきたい。

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