授業設計と教育評価
授業設計、教育評価、授業改善を関連させながら原則と方策を学ぶ
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授業設計、教育評価、授業改善の3つは、それぞれが関連し合っていて切り離して考えることはできない。授業を設計する際には評価の視点が必要であり、評価により授業の改善点が明確になってくるからである。本書は、それぞれの基本的な考え方を説明しながら、学習目標の立て方、学習配列の考え方、評価のしかたなど実践的な内容を提示。これから授業を組み立てる方にも、これまでの授業を見直したい方にも参考になる1冊。
*「看護教育実践シリーズ」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ | 看護教育実践シリーズ 2 |
---|---|
シリーズ編集 | 中井 俊樹 |
編集 | 中井 俊樹 / 服部 律子 |
発行 | 2018年03月判型:A5頁:200 |
ISBN | 978-4-260-03544-6 |
定価 | 2,640円 (本体2,400円+税) |
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- 目次
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序文
開く
「看護教育実践シリーズ」刊行にあたって(中井俊樹)/はじめに(中井俊樹・服部律子)
「看護教育実践シリーズ」刊行にあたって
看護教員を対象とした研修を担当すると,参加者の教育に対する情熱に圧倒されることがあります。学生が就職してからも困らないように,教室の内外においてさまざまな試行錯誤をしていることがわかります。教育に対する思いや情熱は最も重要なのかもしれません。しかし,思いや情熱だけでは効果的に教育することはできません。
「看護教育実践シリーズ」は,看護教育に求められる知識と技能を教育学を専門とする教員が中心となって体系的に提示することで,よりよい授業をしたいと考える看護教員を総合的に支援しようとするものです。つまり,教育学という観点から,看護教員の情熱をどのように学生に注げばよいのかを具体的にまとめたものです。
読者として想定しているのは,第一に看護学生を指導する教員です。加えて,看護教員を目指す方,看護教員の研修を担当する方,病院で看護学生を指導する方にも役立つと考えています。看護分野の授業文脈で内容はまとめられていますが,他分野の医療職教育などにかかわる方にとっても役立つ内容が含まれています。
看護教育のシリーズ本はこれまでにも刊行されてきました。医学書院で刊行された「わかる授業をつくる看護教育技法」や「看護教育講座」のように看護教育の方法を体系的にまとめたシリーズ本です。これらは,看護教員の教育実践の質を高めることに大きく寄与しました。本シリーズは,これらの貴重な成果を踏まえ,近年の教育学や看護教育学の理論と実践の進展に対応することで,新たな形にまとめたものです。
本シリーズは全5巻で構成されています。『1 看護教育の原理』『2 授業設計と教育評価』『3 授業方法の基礎』『4 アクティブラーニングの活用』『5 体験学習の展開』です。それぞれが,1冊の書籍としても読めるようになっていますが,全5巻を通して読むことによって看護教育の重要な内容を総合的に理解できます。
本シリーズを作成するにあたって,各巻の全執筆者との間で執筆の指針として共有したことが3点あります。第一に,内容が実践に役立つことです。読んだ後に授業で試してみたいと思うような具体的な内容を多数盛り込むようにしました。第二に,内容が体系的であることです。シリーズ全体において,看護教育にかかわる重要な内容を整理してまとめました。第三に,内容が読みやすいことです。幅広い読者層を念頭に,できるだけわかりやすく書くことを心がけました。つまり,役立つという点では良質な実用書であり,網羅するという点では良質な事典であり,読みやすいという点では良質な物語であるようなシリーズを提供したいと考えて作成しました。
本シリーズが多くの読者に読まれ,読者のもつさまざまな課題を解決し,看護教育の質を向上させる取り組みが広がっていくことを願っています。
「看護教育実践シリーズ」編集
中井俊樹
はじめに
本書の特徴は,授業設計,教育評価,授業改善という3つの重要な要素を1冊にまとめていることです。授業設計,教育評価,授業改善はそれぞれで1冊の書籍になりえるほどの大きなテーマですが,この3つの要素が密接に関連しているため1冊にまとめることにしました。
まず,授業設計には,学生の学習をどのように評価するのかという教育評価の視点が重要になります。そして,教育評価は授業の学習目標に沿って適切な基準と方法を選択する必要があり,授業設計の段階からその評価の基準と方法を十分検討しなければなりません。したがって,授業設計と教育評価は切り離せないということです。また,教育評価は単に学生の学習を評価するためだけでなく,教員自身の授業の進め方を評価し改善するためにも活用されることから,教育評価が授業改善に影響してきます。さらに,授業改善は以後の授業設計に反映されます。つまり,授業設計,教育評価,授業改善の3つの要素は,授業全体のPDCAサイクルの重要な役割を担い,相互に密接にかかわっているのです。そのことを示すために本書でまとめて解説することにしました。
また,本書を通して大切にしているのは授業をコースとしてとらえる視点です。コースは15回などから構成される授業全体であり,シラバスを作成し成績を判定する単位です。看護教育の分野では,90分の各回の授業の計画を授業設計と呼ぶ文献が多くみられます。しかし,本書がコースの視点で授業を設計し,改善することに重点をおいたのは,90分の授業の設計と比較して,15回分の授業全体の設計のほうがはるかに難しいからです。単に学習時間が長くなることによって設計がより難しくなるだけでなく,カリキュラムや学生の実態にあわせて学習目標をどのように設定するのか,授業時間外の学習をどのように設計するのか,成績評価の基準と方法をどのように設計するのかなどの授業全体のマネジメントを検討しなければならないからです。
本書は,自身の授業をよりよくしたいと考える教員に向けて,授業設計,教育評価,授業改善の3つの視点から効果的な指針と具体例を提供するものです。実践に役立つように,さまざまな工夫を記し,看護教育の具体例を組み込みましたが,すべてを一度に授業に取り入れる必要はありません。まずは自分の授業で試してみたいと思う内容から少しずつ取り入れてください。そして,その効果を授業のなかで確認してください。このような試行錯誤をするなかで授業は改善されるものです。
本書の刊行にあたり,多くの方々からご協力をいただきました。青芝映美氏(河原医療大学校),吾郷美奈恵氏(島根県立大学),内村美子氏(九州医療センター附属福岡看護助産学校),岡多枝子氏(人間環境大学),片上貴久美氏(愛媛大学),川原千香子氏(愛知医科大学),齋藤希望氏(愛媛大学),白鳥さつき氏(愛知医科大学),新原将義氏(徳島大学),高橋平徳氏(愛媛大学),寺尾奈歩子氏(愛媛大学),豊場沢子氏(中京病院附属看護専門学校),内藤知佐子氏(京都大学医学部附属病院),成瀬尚志氏(長崎大学),野本ひさ氏(愛媛大学),増永悦子氏(一宮研伸大学),水戸優子氏(神奈川県立保健福祉大学),森千鶴氏(筑波大学),山下奈緒子氏(愛媛大学),横山千津子氏(松山看護専門学校)には,本書の草稿段階において貴重なアドバイスや各種資料を提供していただきました。また,宮崎裕子氏および野村夏奈氏(愛媛大学医学部看護学科学生)には,資料の作成や書式の統一などにご協力いただきました。そして,医学書院の藤居尚子氏,木下和治氏,大野学氏には,本書の企画のきっかけをいただいただけでなく,何度も松山まで足を運んでいただき,多岐にわたる有益なアドバイスを伺うことができました。この場をお借りして,ご協力いただいた皆さまに御礼申し上げます。
2018年2月
編者 中井俊樹・服部律子
「看護教育実践シリーズ」刊行にあたって
看護教員を対象とした研修を担当すると,参加者の教育に対する情熱に圧倒されることがあります。学生が就職してからも困らないように,教室の内外においてさまざまな試行錯誤をしていることがわかります。教育に対する思いや情熱は最も重要なのかもしれません。しかし,思いや情熱だけでは効果的に教育することはできません。
「看護教育実践シリーズ」は,看護教育に求められる知識と技能を教育学を専門とする教員が中心となって体系的に提示することで,よりよい授業をしたいと考える看護教員を総合的に支援しようとするものです。つまり,教育学という観点から,看護教員の情熱をどのように学生に注げばよいのかを具体的にまとめたものです。
読者として想定しているのは,第一に看護学生を指導する教員です。加えて,看護教員を目指す方,看護教員の研修を担当する方,病院で看護学生を指導する方にも役立つと考えています。看護分野の授業文脈で内容はまとめられていますが,他分野の医療職教育などにかかわる方にとっても役立つ内容が含まれています。
看護教育のシリーズ本はこれまでにも刊行されてきました。医学書院で刊行された「わかる授業をつくる看護教育技法」や「看護教育講座」のように看護教育の方法を体系的にまとめたシリーズ本です。これらは,看護教員の教育実践の質を高めることに大きく寄与しました。本シリーズは,これらの貴重な成果を踏まえ,近年の教育学や看護教育学の理論と実践の進展に対応することで,新たな形にまとめたものです。
本シリーズは全5巻で構成されています。『1 看護教育の原理』『2 授業設計と教育評価』『3 授業方法の基礎』『4 アクティブラーニングの活用』『5 体験学習の展開』です。それぞれが,1冊の書籍としても読めるようになっていますが,全5巻を通して読むことによって看護教育の重要な内容を総合的に理解できます。
本シリーズを作成するにあたって,各巻の全執筆者との間で執筆の指針として共有したことが3点あります。第一に,内容が実践に役立つことです。読んだ後に授業で試してみたいと思うような具体的な内容を多数盛り込むようにしました。第二に,内容が体系的であることです。シリーズ全体において,看護教育にかかわる重要な内容を整理してまとめました。第三に,内容が読みやすいことです。幅広い読者層を念頭に,できるだけわかりやすく書くことを心がけました。つまり,役立つという点では良質な実用書であり,網羅するという点では良質な事典であり,読みやすいという点では良質な物語であるようなシリーズを提供したいと考えて作成しました。
本シリーズが多くの読者に読まれ,読者のもつさまざまな課題を解決し,看護教育の質を向上させる取り組みが広がっていくことを願っています。
「看護教育実践シリーズ」編集
中井俊樹
はじめに
本書の特徴は,授業設計,教育評価,授業改善という3つの重要な要素を1冊にまとめていることです。授業設計,教育評価,授業改善はそれぞれで1冊の書籍になりえるほどの大きなテーマですが,この3つの要素が密接に関連しているため1冊にまとめることにしました。
まず,授業設計には,学生の学習をどのように評価するのかという教育評価の視点が重要になります。そして,教育評価は授業の学習目標に沿って適切な基準と方法を選択する必要があり,授業設計の段階からその評価の基準と方法を十分検討しなければなりません。したがって,授業設計と教育評価は切り離せないということです。また,教育評価は単に学生の学習を評価するためだけでなく,教員自身の授業の進め方を評価し改善するためにも活用されることから,教育評価が授業改善に影響してきます。さらに,授業改善は以後の授業設計に反映されます。つまり,授業設計,教育評価,授業改善の3つの要素は,授業全体のPDCAサイクルの重要な役割を担い,相互に密接にかかわっているのです。そのことを示すために本書でまとめて解説することにしました。
また,本書を通して大切にしているのは授業をコースとしてとらえる視点です。コースは15回などから構成される授業全体であり,シラバスを作成し成績を判定する単位です。看護教育の分野では,90分の各回の授業の計画を授業設計と呼ぶ文献が多くみられます。しかし,本書がコースの視点で授業を設計し,改善することに重点をおいたのは,90分の授業の設計と比較して,15回分の授業全体の設計のほうがはるかに難しいからです。単に学習時間が長くなることによって設計がより難しくなるだけでなく,カリキュラムや学生の実態にあわせて学習目標をどのように設定するのか,授業時間外の学習をどのように設計するのか,成績評価の基準と方法をどのように設計するのかなどの授業全体のマネジメントを検討しなければならないからです。
本書は,自身の授業をよりよくしたいと考える教員に向けて,授業設計,教育評価,授業改善の3つの視点から効果的な指針と具体例を提供するものです。実践に役立つように,さまざまな工夫を記し,看護教育の具体例を組み込みましたが,すべてを一度に授業に取り入れる必要はありません。まずは自分の授業で試してみたいと思う内容から少しずつ取り入れてください。そして,その効果を授業のなかで確認してください。このような試行錯誤をするなかで授業は改善されるものです。
本書の刊行にあたり,多くの方々からご協力をいただきました。青芝映美氏(河原医療大学校),吾郷美奈恵氏(島根県立大学),内村美子氏(九州医療センター附属福岡看護助産学校),岡多枝子氏(人間環境大学),片上貴久美氏(愛媛大学),川原千香子氏(愛知医科大学),齋藤希望氏(愛媛大学),白鳥さつき氏(愛知医科大学),新原将義氏(徳島大学),高橋平徳氏(愛媛大学),寺尾奈歩子氏(愛媛大学),豊場沢子氏(中京病院附属看護専門学校),内藤知佐子氏(京都大学医学部附属病院),成瀬尚志氏(長崎大学),野本ひさ氏(愛媛大学),増永悦子氏(一宮研伸大学),水戸優子氏(神奈川県立保健福祉大学),森千鶴氏(筑波大学),山下奈緒子氏(愛媛大学),横山千津子氏(松山看護専門学校)には,本書の草稿段階において貴重なアドバイスや各種資料を提供していただきました。また,宮崎裕子氏および野村夏奈氏(愛媛大学医学部看護学科学生)には,資料の作成や書式の統一などにご協力いただきました。そして,医学書院の藤居尚子氏,木下和治氏,大野学氏には,本書の企画のきっかけをいただいただけでなく,何度も松山まで足を運んでいただき,多岐にわたる有益なアドバイスを伺うことができました。この場をお借りして,ご協力いただいた皆さまに御礼申し上げます。
2018年2月
編者 中井俊樹・服部律子
目次
開く
「看護教育実践シリーズ」刊行にあたって
はじめに
本書の構成と使い方
第1部 授業設計の意義と方法
1章 授業設計とその意義を理解する
1 授業は設計から始まる
1 授業は段取り八分
2 授業設計を理解する
3 設計をシラバスで表現する
2 設計で授業の質が高まる
1 カリキュラムに沿った授業になる
2 学生にあった授業になる
3 目標,方法,評価が整合性をもつ
4 設計することで柔軟に対応できる
3 授業設計を明示する意義を理解する
1 学生の学習の指針になる
2 教員にとって意義がある
3 教育機関にとって意義がある
4 授業設計の方法と課題を理解する
1 授業設計の理論的背景を理解する
2 逆向きに設計する
3 教員の陥りやすい失敗を理解する
2章 授業の学習目標を設定する
1 学習目標を設定する意義を理解する
1 学習目標によって授業内容が決まる
2 学習目標は学生の指針となる
3 学習目標は学習意欲を向上させる
4 学習目標によって評価が可能になる
2 学習目標の種類を理解する
1 到達目標と方向目標を理解する
2 領域別の学習目標を理解する
3 認知領域の学習目標を理解する
4 情意領域の学習目標を理解する
5 精神運動領域の学習目標を理解する
3 学習目標を検討する
1 学習目標の設定には考慮すべき視点が多い
2 カリキュラムの視点から検討する
3 専門家の視点から検討する
4 学生の視点から検討する
4 学習目標を精選する
1 学習目標を列記する
2 優先順位をつける
3 実行可能かどうかを確認する
4 学習目標を適切な数に集約する
3章 学習活動を配列する
1 学習活動の順序を考える
1 スコープとシーケンスを理解する
2 望ましい学習活動の配列を理解する
2 学習内容を配列する
1 単元を取り入れる
2 課題分析で学習内容を構造化する
3 学習内容の配列を決める
3 必要な学習方法を特定する
1 学習目標に適した学習方法を理解する
2 学習方法を列記する
4 授業全体の計画を作成する
1 学習活動の流れをつくる
2 計画の実行可能性を高める
4章 シラバスを作成する
1 シラバスを理解する
1 シラバスの役割を理解する
2 2つのシラバスを区別する
3 シラバスで学習を促す
4 シラバスの記載項目を確認する
2 授業の目的と学習目標を明示する
1 授業の目的を記述する
2 学習目標を明確に示す
3 学習目標を点検する
3 成績評価の方針と方法を明示する
1 教育機関の方針を踏まえる
2 学習目標に沿った成績評価にする
3 方法,基準,配分などを示す
4 授業計画と支援方法を明示する
1 各回の学習の内容と方法を示す
2 授業時間外の学習活動を示す
3 教科書や教材を示す
4 受講ルールを示す
5 オフィスアワーを示す
5章 複数教員による授業を設計する
1 複数教員による授業の特徴
1 複数教員で教える機会は多い
2 複数教員で教える利点を理解する
3 複数教員で教える授業の4類型
4 一貫性や継続性が課題になる
2 複数教員で授業を設計する際の留意点
1 設計の原則は変わらない
2 協力し合える関係性が重要
3 打ち合わせで役割を明確にする
4 学生の学習状況を共有する
3 オムニバス授業における工夫
1 オムニバス授業に適した科目を理解する
2 オムニバス授業の調整役を務める
3 オムニバス授業に授業分担者として参加する
4 オムニバス授業の成績評価を行う
4 チーム授業における工夫
1 個別指導に適している
2 チーム授業の準備の留意点
3 チーム授業の課題と向き合う
第2部 教育評価の基本と方法
6章 教育評価の基本を理解する
1 評価の力を理解する
1 評価は重要だが難しい
2 難しいのには理由がある
3 評価は学習を変える
4 評価は授業を改善する
2 評価の構成要素と種類を理解する
1 5つの構成要素を理解する
2 目的別の評価を理解する
3 主体別の評価を理解する
4 基準別の評価を理解する
3 適切な評価方法を選択する
1 さまざまな評価方法を理解する
2 適切な評価方法を選ぶ
4 授業に評価を効果的に組み込む
1 学生の学習活動を促す
2 評価の方針を明確にする
3 日常的な評価を活用する
4 人が評価するバイアスを理解する
7章 筆記テストによって評価する
1 筆記テストを設計する
1 筆記テストの特徴を理解する
2 筆記テストの全体計画を立てる
2 客観テストを作成する
1 客観テストの特徴と種類を理解する
2 正誤法の問題を作成する
3 多肢選択法の問題を作成する
4 組み合わせ法の問題を作成する
5 並び替え法の問題を作成する
6 単純再生法の問題を作成する
7 完成法の問題を作成する
3 論述テストを作成する
1 論述テストの特徴を理解する
2 解答の自由度を検討する
3 論述テストの問題を作成する
4 論述テストの採点を工夫する
4 筆記テストの運営を工夫する
1 筆記テストに向けて学習させる
2 不正行為を防止する
3 学生にフィードバックを与える
4 結果から改善点を明らかにする
8章 実技テストによって評価する
1 実技テストによる評価の特徴を理解する
1 実技テストを理解する
2 看護技術の特徴を理解する
3 実技テストの課題を理解する
2 実技テストを設計する
1 技術到達目標を設定する
2 実技テストの内容を定める
3 実技テストの方法を定める
4 実技テストの制約や条件を考慮する
5 実技テストの実施要項をつくる
3 実技テストの評価基準を設定する
1 評価項目を設定する
2 評価基準を設定する
3 客観的な評価を目指す
4 実技テストの質を高める
1 学生の緊張に配慮する
2 思考のプロセスや判断の根拠も評価する
3 実技テストを振り返る
9章 学生の成果物によって評価する
1 成果物による評価の特徴を理解する
1 教育性の高い評価方法である
2 レポートは代表的な成果物
3 多様な成果物に目を向けよう
2 学習課題を与える
1 学習目標に応じて課題を検討する
2 成果物の評価基準を明確にする
3 明確に指示を与える
4 自分で考えないとできない課題にする
5 段階的に学習を進める
3 成果物を評価し結果を伝える
1 評価基準に沿って採点する
2 フィードバックを与える
4 成果物に対する評価の工夫
1 学生自身に評価させる
2 学生間で協力させる
3 グループの成果物を評価する
10章 評価基準を可視化する
1 評価基準を可視化する意義を理解する
1 学生の学習を方向づける
2 的確にフィードバックできる
3 教員間で評価基準を共有できる
4 評価結果に納得できる
2 チェックリストを作成する
1 チェックリストの特徴を理解する
2 チェックリストの作成方法を理解する
3 チェックリストに尺度を加える
4 多面的に評価する
3 ルーブリックを作成する
1 ルーブリックの特徴を理解する
2 ルーブリックの作成方法を理解する
3 ルーブリックを作成する際の工夫
第3部 授業改善の方法
11章 授業改善の方法を理解する
1 実践を通して授業を改善する
1 意図的に授業改善の機会をつくる
2 授業改善は教育評価の目的の1つ
3 授業改善には2つのアプローチがある
2 授業実践を振り返り改善する
1 授業改善にはモデルがある
2 授業改善につながるように振り返る
3 授業のなかで改善点を明らかにする
1 授業の途中で振り返る機会をつくる
2 学生の反応を確認する
3 学生の理解度を確認する
4 自分の授業を録音・録画する
5 参観者にアドバイスを求める
4 授業全体を評価し改善する
1 学生の試験結果を活用する
2 授業評価アンケートを活用する
5 自分自身の教育能力を向上させる
1 同僚教員と教育について議論する
2 ほかの教員の授業を見学する
3 各種研修の機会を活用する
4 自分の教育活動の実績を整理する
付録 授業に役立つ資料
1 初回配付用シラバスの例
2 授業評価アンケートのシートの例
3 ティーチングポートフォリオの例
4 用語集
文献
執筆者プロフィール
索引
はじめに
本書の構成と使い方
第1部 授業設計の意義と方法
1章 授業設計とその意義を理解する
1 授業は設計から始まる
1 授業は段取り八分
2 授業設計を理解する
3 設計をシラバスで表現する
2 設計で授業の質が高まる
1 カリキュラムに沿った授業になる
2 学生にあった授業になる
3 目標,方法,評価が整合性をもつ
4 設計することで柔軟に対応できる
3 授業設計を明示する意義を理解する
1 学生の学習の指針になる
2 教員にとって意義がある
3 教育機関にとって意義がある
4 授業設計の方法と課題を理解する
1 授業設計の理論的背景を理解する
2 逆向きに設計する
3 教員の陥りやすい失敗を理解する
2章 授業の学習目標を設定する
1 学習目標を設定する意義を理解する
1 学習目標によって授業内容が決まる
2 学習目標は学生の指針となる
3 学習目標は学習意欲を向上させる
4 学習目標によって評価が可能になる
2 学習目標の種類を理解する
1 到達目標と方向目標を理解する
2 領域別の学習目標を理解する
3 認知領域の学習目標を理解する
4 情意領域の学習目標を理解する
5 精神運動領域の学習目標を理解する
3 学習目標を検討する
1 学習目標の設定には考慮すべき視点が多い
2 カリキュラムの視点から検討する
3 専門家の視点から検討する
4 学生の視点から検討する
4 学習目標を精選する
1 学習目標を列記する
2 優先順位をつける
3 実行可能かどうかを確認する
4 学習目標を適切な数に集約する
3章 学習活動を配列する
1 学習活動の順序を考える
1 スコープとシーケンスを理解する
2 望ましい学習活動の配列を理解する
2 学習内容を配列する
1 単元を取り入れる
2 課題分析で学習内容を構造化する
3 学習内容の配列を決める
3 必要な学習方法を特定する
1 学習目標に適した学習方法を理解する
2 学習方法を列記する
4 授業全体の計画を作成する
1 学習活動の流れをつくる
2 計画の実行可能性を高める
4章 シラバスを作成する
1 シラバスを理解する
1 シラバスの役割を理解する
2 2つのシラバスを区別する
3 シラバスで学習を促す
4 シラバスの記載項目を確認する
2 授業の目的と学習目標を明示する
1 授業の目的を記述する
2 学習目標を明確に示す
3 学習目標を点検する
3 成績評価の方針と方法を明示する
1 教育機関の方針を踏まえる
2 学習目標に沿った成績評価にする
3 方法,基準,配分などを示す
4 授業計画と支援方法を明示する
1 各回の学習の内容と方法を示す
2 授業時間外の学習活動を示す
3 教科書や教材を示す
4 受講ルールを示す
5 オフィスアワーを示す
5章 複数教員による授業を設計する
1 複数教員による授業の特徴
1 複数教員で教える機会は多い
2 複数教員で教える利点を理解する
3 複数教員で教える授業の4類型
4 一貫性や継続性が課題になる
2 複数教員で授業を設計する際の留意点
1 設計の原則は変わらない
2 協力し合える関係性が重要
3 打ち合わせで役割を明確にする
4 学生の学習状況を共有する
3 オムニバス授業における工夫
1 オムニバス授業に適した科目を理解する
2 オムニバス授業の調整役を務める
3 オムニバス授業に授業分担者として参加する
4 オムニバス授業の成績評価を行う
4 チーム授業における工夫
1 個別指導に適している
2 チーム授業の準備の留意点
3 チーム授業の課題と向き合う
第2部 教育評価の基本と方法
6章 教育評価の基本を理解する
1 評価の力を理解する
1 評価は重要だが難しい
2 難しいのには理由がある
3 評価は学習を変える
4 評価は授業を改善する
2 評価の構成要素と種類を理解する
1 5つの構成要素を理解する
2 目的別の評価を理解する
3 主体別の評価を理解する
4 基準別の評価を理解する
3 適切な評価方法を選択する
1 さまざまな評価方法を理解する
2 適切な評価方法を選ぶ
4 授業に評価を効果的に組み込む
1 学生の学習活動を促す
2 評価の方針を明確にする
3 日常的な評価を活用する
4 人が評価するバイアスを理解する
7章 筆記テストによって評価する
1 筆記テストを設計する
1 筆記テストの特徴を理解する
2 筆記テストの全体計画を立てる
2 客観テストを作成する
1 客観テストの特徴と種類を理解する
2 正誤法の問題を作成する
3 多肢選択法の問題を作成する
4 組み合わせ法の問題を作成する
5 並び替え法の問題を作成する
6 単純再生法の問題を作成する
7 完成法の問題を作成する
3 論述テストを作成する
1 論述テストの特徴を理解する
2 解答の自由度を検討する
3 論述テストの問題を作成する
4 論述テストの採点を工夫する
4 筆記テストの運営を工夫する
1 筆記テストに向けて学習させる
2 不正行為を防止する
3 学生にフィードバックを与える
4 結果から改善点を明らかにする
8章 実技テストによって評価する
1 実技テストによる評価の特徴を理解する
1 実技テストを理解する
2 看護技術の特徴を理解する
3 実技テストの課題を理解する
2 実技テストを設計する
1 技術到達目標を設定する
2 実技テストの内容を定める
3 実技テストの方法を定める
4 実技テストの制約や条件を考慮する
5 実技テストの実施要項をつくる
3 実技テストの評価基準を設定する
1 評価項目を設定する
2 評価基準を設定する
3 客観的な評価を目指す
4 実技テストの質を高める
1 学生の緊張に配慮する
2 思考のプロセスや判断の根拠も評価する
3 実技テストを振り返る
9章 学生の成果物によって評価する
1 成果物による評価の特徴を理解する
1 教育性の高い評価方法である
2 レポートは代表的な成果物
3 多様な成果物に目を向けよう
2 学習課題を与える
1 学習目標に応じて課題を検討する
2 成果物の評価基準を明確にする
3 明確に指示を与える
4 自分で考えないとできない課題にする
5 段階的に学習を進める
3 成果物を評価し結果を伝える
1 評価基準に沿って採点する
2 フィードバックを与える
4 成果物に対する評価の工夫
1 学生自身に評価させる
2 学生間で協力させる
3 グループの成果物を評価する
10章 評価基準を可視化する
1 評価基準を可視化する意義を理解する
1 学生の学習を方向づける
2 的確にフィードバックできる
3 教員間で評価基準を共有できる
4 評価結果に納得できる
2 チェックリストを作成する
1 チェックリストの特徴を理解する
2 チェックリストの作成方法を理解する
3 チェックリストに尺度を加える
4 多面的に評価する
3 ルーブリックを作成する
1 ルーブリックの特徴を理解する
2 ルーブリックの作成方法を理解する
3 ルーブリックを作成する際の工夫
第3部 授業改善の方法
11章 授業改善の方法を理解する
1 実践を通して授業を改善する
1 意図的に授業改善の機会をつくる
2 授業改善は教育評価の目的の1つ
3 授業改善には2つのアプローチがある
2 授業実践を振り返り改善する
1 授業改善にはモデルがある
2 授業改善につながるように振り返る
3 授業のなかで改善点を明らかにする
1 授業の途中で振り返る機会をつくる
2 学生の反応を確認する
3 学生の理解度を確認する
4 自分の授業を録音・録画する
5 参観者にアドバイスを求める
4 授業全体を評価し改善する
1 学生の試験結果を活用する
2 授業評価アンケートを活用する
5 自分自身の教育能力を向上させる
1 同僚教員と教育について議論する
2 ほかの教員の授業を見学する
3 各種研修の機会を活用する
4 自分の教育活動の実績を整理する
付録 授業に役立つ資料
1 初回配付用シラバスの例
2 授業評価アンケートのシートの例
3 ティーチングポートフォリオの例
4 用語集
文献
執筆者プロフィール
索引
書評
開く
高等教育にふさわしい授業の準備に役立つ実用書
書評者: 前田 和子 (千葉科学大看護学科学科長)
看護教育を担う教員や臨床指導者,院内研修担当者の中には,雑誌の記事や看護教育関連の報告書,研修・講演などで出てくる,「シラバス」「インストラクショナルデザイン」「アクティブラーニング」「ポートフォリオ」「ルーブリック」「ティーチングポートフォリオ」などといった目新しい,耳慣れない用語に,いったい何のことか,授業や研修にどう生かせというのか,と戸惑った経験を持つ方が多いのではないでしょうか。本書はそのような看護教育に関心の高い方々の期待に応える待望の書です。
看護系の専門学校や大学で行われている看護教育(大学院教育を含む)は高等学校以上を卒業した学生を対象に行われる教育であるため,「高等教育」に位置付けられています。近年,わが国でも高等教育の改革が叫ばれて,あらゆる学問(専門)分野で「教育の質」を公的に評価するシステムが確立されつつあります。そのために教育現場では,授業や成績評価の方法などの改善の動きが急激に活発になりました。その結果,冒頭で紹介したカタカナの用語,つまり新しい教育学の用語が次々に紹介されるようになりました。
本書は,看護教育実践シリーズ全5巻中の第2巻で,シリーズの編者でもある愛媛大教育・学生支援機構の中井俊樹氏が,奈良学園大看護学科の服部律子氏とともに編集にあたり,6人の教育学の専門家と3人の看護教育者が執筆しています。このような教育学者と看護教育者の協力により,難しい教育学の用語や概念がわかりやすく説明され,それぞれの実例や資料が多数掲載されています。
また,本書は授業設計,教育評価,授業改善の3部から構成されています。第1部ではシラバスの作成に欠かせない学習目標(到達目標と方向目標)の設定から学習活動の配列,学習方法の選び方,複数教員による授業設計までが記されています。第2部では教育評価の基本と,筆記テスト(客観テストや論述テスト),実技テストなどさまざまな試験の作成方法,レポートなど成果物による評価と評価基準の可視化が紹介され,第3部では授業改善の方法について述べています。
本書は,看護教育を担当する読者が高等教育にふさわしい授業を実際に準備するのに役立つ実用書になっていますが,私が考える本書の最も有用な活用方法は,教育現場だけではなく,職員研修が欠かせない臨床現場でも,組織単位で行うFD(職員の能力開発を目的とした研修)の教科書とすることです。そして,1回だけの講演形式ではなく,「授業や研修の評価基準を作成してみよう」などのテーマで複数回のグループワークを実施し,発表し討議することを提案します。これにより,教員や職員の教育に関する知識を更新するだけでなく,組織としての教育力も必ず高まることでしょう。
「授業のいろは」としての道しるべとなり得る書(雑誌『看護教育』より)
書評者: 古都 昌子 (札幌市立大学看護学部)
看護学教育にかかわる教員にとって,活き活きと学生が学び,学習効果が実感できる授業設計や,適切な教育評価は,教育の醍醐味でもあり,命題ともいえます。「わくわく感が学習エンジンとなる授業」「ライブのような活き活き感を学生と共有できる授業」をめざしている教員は,私だけではないと思います。
今まで看護学教育課程,教育方法,教育評価などについて学んだ知識は,私の脳裏に点在していました。そんななか,本書を読んでみると,知識や理論が整理され,まさに今,教員として,科目の教育実践のスタートラインに立った感覚で「統合」されていく実感がありました。「読みながらわくわく感が生まれる」と同時に教員として,「腑に落ちる感覚」を体感しながら,教育実践のプロセスを思い描きました。
たとえば,「授業設計における逆向き設計」として「到達すべき目標は何か」「評価(どのように到達を確認するのか)」「方法(どのように到達するのか)」のていねいな教育的な問いが明示されています。目標─方法─評価ではなく,到達の確認があってこそ,方法論が決まるのです。また,「最も重要なのは人を育てることです」の一文には,評価におけるいちばん大切な,原点となる考え方が明示されています。以前,梶田叡一先生に教育評価を学んだときの,氷山の一角しか見えないなかで評価する怖さ,大切さ,評価のための評価にならない考え方を再確認することができました。そして,教育学の知識と理論に支えられたKeywordが教員の思考過程に自然に溶け込んで,結合され,「わくわく感」や「腑に落ちる感覚」につながると思えました。
この本を読んで想起した場所があります。日光市にある「いろは坂」です。この本は,看護学教育の教員が,教授活動を新たに始めるとき,自分なりの取り組みを見つめ直すとき,そして,授業の進め方や評価に困惑するとき,多様な状況にある教員への看護教育実践における「授業のいろは」としての道しるべとなり得ます。「いろは坂」は,「いろは」に留まらず,「~あさきゆめみし ゑひもせす(ん)」まで,上りの道と下りの道で,それぞれの景観を変えながら,坂道を上り下りしていきます。一面に教育学,もう一面に看護学をしっかりと見すえながら,学問のスキルミックスによるていねいな説明が,読者をより充実した教授活動へと誘なうでしょう。
「学び合う」という言葉は大好きな言葉の1つです。教員が授業設計を行い,科目運営を進めながら,その過程を楽しみ,学生と学び合えるように,確かな知識と理論を勇気に変えて,授業方法の工夫や発展的な活用につながる一冊との出会いに感謝しています。
(『看護教育』2018年6月号掲載)
書評者: 前田 和子 (千葉科学大看護学科学科長)
看護教育を担う教員や臨床指導者,院内研修担当者の中には,雑誌の記事や看護教育関連の報告書,研修・講演などで出てくる,「シラバス」「インストラクショナルデザイン」「アクティブラーニング」「ポートフォリオ」「ルーブリック」「ティーチングポートフォリオ」などといった目新しい,耳慣れない用語に,いったい何のことか,授業や研修にどう生かせというのか,と戸惑った経験を持つ方が多いのではないでしょうか。本書はそのような看護教育に関心の高い方々の期待に応える待望の書です。
看護系の専門学校や大学で行われている看護教育(大学院教育を含む)は高等学校以上を卒業した学生を対象に行われる教育であるため,「高等教育」に位置付けられています。近年,わが国でも高等教育の改革が叫ばれて,あらゆる学問(専門)分野で「教育の質」を公的に評価するシステムが確立されつつあります。そのために教育現場では,授業や成績評価の方法などの改善の動きが急激に活発になりました。その結果,冒頭で紹介したカタカナの用語,つまり新しい教育学の用語が次々に紹介されるようになりました。
本書は,看護教育実践シリーズ全5巻中の第2巻で,シリーズの編者でもある愛媛大教育・学生支援機構の中井俊樹氏が,奈良学園大看護学科の服部律子氏とともに編集にあたり,6人の教育学の専門家と3人の看護教育者が執筆しています。このような教育学者と看護教育者の協力により,難しい教育学の用語や概念がわかりやすく説明され,それぞれの実例や資料が多数掲載されています。
また,本書は授業設計,教育評価,授業改善の3部から構成されています。第1部ではシラバスの作成に欠かせない学習目標(到達目標と方向目標)の設定から学習活動の配列,学習方法の選び方,複数教員による授業設計までが記されています。第2部では教育評価の基本と,筆記テスト(客観テストや論述テスト),実技テストなどさまざまな試験の作成方法,レポートなど成果物による評価と評価基準の可視化が紹介され,第3部では授業改善の方法について述べています。
本書は,看護教育を担当する読者が高等教育にふさわしい授業を実際に準備するのに役立つ実用書になっていますが,私が考える本書の最も有用な活用方法は,教育現場だけではなく,職員研修が欠かせない臨床現場でも,組織単位で行うFD(職員の能力開発を目的とした研修)の教科書とすることです。そして,1回だけの講演形式ではなく,「授業や研修の評価基準を作成してみよう」などのテーマで複数回のグループワークを実施し,発表し討議することを提案します。これにより,教員や職員の教育に関する知識を更新するだけでなく,組織としての教育力も必ず高まることでしょう。
「授業のいろは」としての道しるべとなり得る書(雑誌『看護教育』より)
書評者: 古都 昌子 (札幌市立大学看護学部)
看護学教育にかかわる教員にとって,活き活きと学生が学び,学習効果が実感できる授業設計や,適切な教育評価は,教育の醍醐味でもあり,命題ともいえます。「わくわく感が学習エンジンとなる授業」「ライブのような活き活き感を学生と共有できる授業」をめざしている教員は,私だけではないと思います。
今まで看護学教育課程,教育方法,教育評価などについて学んだ知識は,私の脳裏に点在していました。そんななか,本書を読んでみると,知識や理論が整理され,まさに今,教員として,科目の教育実践のスタートラインに立った感覚で「統合」されていく実感がありました。「読みながらわくわく感が生まれる」と同時に教員として,「腑に落ちる感覚」を体感しながら,教育実践のプロセスを思い描きました。
たとえば,「授業設計における逆向き設計」として「到達すべき目標は何か」「評価(どのように到達を確認するのか)」「方法(どのように到達するのか)」のていねいな教育的な問いが明示されています。目標─方法─評価ではなく,到達の確認があってこそ,方法論が決まるのです。また,「最も重要なのは人を育てることです」の一文には,評価におけるいちばん大切な,原点となる考え方が明示されています。以前,梶田叡一先生に教育評価を学んだときの,氷山の一角しか見えないなかで評価する怖さ,大切さ,評価のための評価にならない考え方を再確認することができました。そして,教育学の知識と理論に支えられたKeywordが教員の思考過程に自然に溶け込んで,結合され,「わくわく感」や「腑に落ちる感覚」につながると思えました。
この本を読んで想起した場所があります。日光市にある「いろは坂」です。この本は,看護学教育の教員が,教授活動を新たに始めるとき,自分なりの取り組みを見つめ直すとき,そして,授業の進め方や評価に困惑するとき,多様な状況にある教員への看護教育実践における「授業のいろは」としての道しるべとなり得ます。「いろは坂」は,「いろは」に留まらず,「~あさきゆめみし ゑひもせす(ん)」まで,上りの道と下りの道で,それぞれの景観を変えながら,坂道を上り下りしていきます。一面に教育学,もう一面に看護学をしっかりと見すえながら,学問のスキルミックスによるていねいな説明が,読者をより充実した教授活動へと誘なうでしょう。
「学び合う」という言葉は大好きな言葉の1つです。教員が授業設計を行い,科目運営を進めながら,その過程を楽しみ,学生と学び合えるように,確かな知識と理論を勇気に変えて,授業方法の工夫や発展的な活用につながる一冊との出会いに感謝しています。
(『看護教育』2018年6月号掲載)