リハビリテーション医学・医療コアテキスト 第2版
この1冊で、「活動を育む」リハビリテーション医学・医療とは何か、がわかる
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リハビリテーション医学・医療のコアを学ぶテキストの改訂版。多岐に渡るリハビリテーション医学・医療を、リハビリテーション診断・治療・支援の3つのポイントをもとに整理しわかりやすく解説。初版発刊から4年を経て、COVID-19やデジタルトランスフォーメーションなど新しい知識・概念も加え、さらに充実した教科書となった。リハビリテーション科医だけでなく、リハビリテーション医療チームを構成する専門職も必携。
シリーズ | リハビリテーション医学・医療 |
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監修 | 一般社団法人 日本リハビリテーション医学教育推進機構 / 公益社団法人 日本リハビリテーション医学会 |
総編集 | 久保 俊一 |
編集 | 角田 亘 / 佐浦 隆一 / 三上 靖夫 |
発行 | 2022年03月判型:B5頁:440 |
ISBN | 978-4-260-04959-7 |
定価 | 4,400円 (本体4,000円+税) |
更新情報
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2022.07.15
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- 目次
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序文
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はじめに
初版が出版されてから4年の月日が流れた.人口の高齢化は加速し,日本は超々高齢社会に突入しようとしている.
この間,リハビリテーション医学・医療の対象はさらに増加した.脳血管障害,運動器疾患(脊椎・脊髄を含む),脊髄損傷,神経・筋疾患,切断,小児疾患,リウマチ性疾患,循環器・呼吸器・腎臓・内分泌代謝疾患(内部障害),がん,摂食嚥下障害,聴覚・前庭・顔面神経・嗅覚・音声障害,スポーツ外傷・障害,周術期の身体機能障害の予防・回復,サルコペニア,ロコモティブシンドローム,フレイルなど,ほぼ全診療科に関係する疾患,障害,病態を扱う領域になっている.しかも,疾患,障害,病態は重複的,複合的に絡み合い,その発症や増悪に加齢が関与している場合も少なくない.そして,その診療の場は急性期病院,回復期リハビリテーション病棟・地域包括ケア病棟,施設・在宅などに広がっている.今やリハビリテーション医学・医療は,医学・医療・介護・福祉のインフラストラクチャといっても過言ではない.
日本リハビリテーション医学会では2017年度に,リハビリテーション医学を「活動を育む医学」と再定義している.すなわち,疾病・外傷で低下した身体的・精神的機能を回復させ,障害を克服するという従来の解釈の上に立って,ヒトの営みの基本である「活動」に着目し,その賦活化を図り,ADL(activities of daily living)・QOL(quality of life)をよりよくする過程がリハビリテーション医学の中心であるとする考え方を示している.
「日常での活動」としてあげられる,起き上がる,座る,立つ,歩く,手を使う,見る,聞く,話す,考える,服を着る,食事をする,排泄する,寝る,などが組み合わさり,掃除・洗濯・料理・買い物などの「家庭での活動」,就学・就労・スポーツ活動・地域活動などの「社会での活動」につながっていく.ICFにおける「参加」は,「社会での活動」に相当する.
リハビリテーション医学という学術的な裏づけのもとにエビデンスが蓄えられ,根拠のある質の高いリハビリテーション医療が実践される.リハビリテーション医療の中核がリハビリテーション診療であり,診断・治療・支援の3つのポイントがある.
急性期・回復期・生活期を通してヒトの活動に着目し,病歴,診察,評価,検査などから活動の現状を把握し,問題点を明らかにする.そして,活動の予後予測をする.これがリハビリテーション診断である.また,各種治療法を組み合わせ,リハビリテーション処方を作成して治療を行い,活動を最良にするのがリハビリテーション治療である.さらにリハビリテーション治療と並行して,環境調整や社会的資源の活用などにより活動を社会的に支援していくのがリハビリテーション支援である.
リハビリテーション医学・医療の専門家がリハビリテーション科医である.リハビリテーション診療において,リハビリテーション科医は的確なリハビリテーション診断のもと,適切なリハビリテーション治療やリハビリテーション支援を行わなければならない.その際,患者および家族にface to face でその効用と見通しを説明しながら患者の意欲と家族の協力を高める努力が欠かせない.また,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,義肢装具士,看護師,薬剤師,管理栄養士,公認心理師/臨床心理士,臨床検査技師,臨床工学技士,社会福祉士/医療ソーシャルワーカー,介護支援専門員/ケアマネジャー,介護福祉士,などの専門の職種,担当診療科の医師,歯科医,歯科衛生士,からなるリハビリテーション医療チームの要として,チーム内の意思疎通を図り,それぞれの医療機関の特性を踏まえて,医療資源をバランスよく差配する役目を担っている.
リハビリテーション医学・医療を修得するためには,まず,基本となる知識や技能を学ぶ必要があり,そのためのテキストが不可欠である.本書では,リハビリテーション医学・医療のコアの部分を臨床面を中心に取り上げ,カラーイラストを配置しながらわかりやすく記載している.幸いにして,2018年の初版発行以来,各所からよい評価をいただき,今回の改訂に至った.本改訂版においては4年間の進歩も踏まえ,その内容の充実に努めた.リハビリテーション診療の記述を増やし,新しい項目としてCOVID-19やデジタルトランスフォーメーションなどの最新のトピックスも収載している.
日本リハビリテーション医学教育推進機構と日本リハビリテーション医学会の監修のもと,編集および執筆をこの分野に精通した多くの先生方にお願いした.リハビリテーション科医ばかりでなく,医学生,研修医,各診療科の医師,歯科医,リハビリテーション医療チームを構成する専門の職種,行政職などに幅広く活用していただきたいテキストである.
本書が,リハビリテーション医学・医療の発展と普及に役立つことを心から願っている.
2022年2月
一般社団法人 日本リハビリテーション医学教育推進機構 理事長
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会 理事長
久保 俊一
目次
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I. 総論
総論1 リハビリテーション医学・医療総論
1 リハビリテーション医学・医療の意義 ─活動を育む医学─
2 わが国におけるリハビリテーション医学・医療の現状
3 機能を回復する,障害を克服するとは
4 「活動を育む」とは
5 急性期・回復期・生活期のリハビリテーション医学・医療の考え方
6 リハビリテーション医学・医療における専門の職種との連携
7 リハビリテーション医学・医療の歴史
総論2 リハビリテーション医学に必要な基礎科学
1 臨床解剖学
2 臨床生理学
3 骨格筋の解剖と生理
4 バイオメカニクス
総論3 急性期・回復期・生活期のリハビリテーション医学・医療
1 急性期
2 回復期
3 生活期
4 通所リハビリテーション
5 訪問リハビリテーション
6 地域包括ケアシステム
総論4 リハビリテーション診療
1 リハビリテーション診療の概要
2 リハビリテーション診断
3 リハビリテーション治療
4 リハビリテーション支援
II. 各論
各論1 脳血管障害・頭部外傷(外傷性脳損傷)
1 脳神経系の解剖と生理
2 脳血管障害
3 頭部外傷(外傷性脳損傷)
4 高次脳機能障害
5 脳腫瘍,水頭症など
各論2 運動器疾患
1 運動器とは
2 長管骨,関節,脊椎の構造
3 運動器におけるリハビリテーション診療のポイント
4 肩関節の疾患・外傷
5 肘関節の疾患・外傷
6 手関節・三角線維軟骨複合体(TFCC)損傷・手の疾患・外傷
7 上肢の絞扼性神経障害
8 股関節の疾患・外傷
9 膝関節の疾患・外傷
10 足関節・足部の疾患・外傷
11 脊椎疾患
12 脊柱変形
各論3 脊髄損傷
1 外傷性脊髄損傷,馬尾損傷
各論4 神経・筋疾患
1 Parkinson病
2 筋萎縮性側索硬化症
3 脊髄小脳変性症
4 多発性硬化症
5 Guillain-Barré症候群と慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー
6 筋ジストロフィー
7 炎症性筋疾患(皮膚筋炎,免疫介在性壊死性ミオパチー,抗ARS 抗体症候群,封入体筋炎)
8 ポリオ・ポストポリオ症候群
9 ニューロパチー
各論5 切断
1 切断総論
2 上肢切断
3 下肢切断
各論6 小児疾患
1 小児疾患に対するリハビリテーション診療
2 脳性麻痺,二分脊椎
3 小児の運動器疾患
4 発達障害
各論7 リウマチ性疾患
1 関節リウマチに対するリハビリテーション診療
各論8 循環器疾患
1 循環器の解剖と生理
2 循環器疾患のリハビリテーション診療
3 (急性)心筋梗塞
4 心不全
5 心大血管疾患
6 末梢動脈疾患
各論9 呼吸器疾患
1 呼吸器の解剖と生理
2 呼吸器疾患のリハビリテーション診療
3 肺炎
4 慢性閉塞性肺疾患
5 間質性肺炎
各論10 腎疾患
1 腎臓の解剖と生理
2 慢性腎臓病
各論11 内分泌代謝性疾患
1 糖尿病
2 肥満症
3 メタボリックシンドローム
各論12 がん
1 がんに対するリハビリテーション診療
2 がんの周術期
3 がんの化学・放射線療法におけるリハビリテーション診療
4 緩和ケア
5 転移性がん
各論13 摂食嚥下障害
1 摂食嚥下障害に対するリハビリテーション診療
各論14 聴覚障害・前庭障害・顔面神経障害・嗅覚障害・音声障害
1 聴覚障害
2 前庭障害
3 顔面神経障害
4 嗅覚障害
5 音声障害
各論15 スポーツ障害・外傷
1 スポーツ障害・外傷に対するリハビリテーション診療
各論16 骨粗鬆症
1 骨粗鬆症に対するリハビリテーション診療
各論17 サルコペニア・ロコモティブシンドローム・フレイル
1 サルコペニア
2 ロコモティブシンドローム
3 フレイル
4 サルコペニア・ロコモ・フレイルの包含関係
5 リハビリテーション診療のポイント
各論18 認知症,精神疾患
1 認知症
2 精神疾患
各論19 集中治療室におけるリハビリテーション診療
1 集中治療室におけるリハビリテーション診療
各論20 リハビリテーション診療における栄養管理
1 栄養管理のポイント
2 栄養管理の実際
各論21 その他の重要事項
1 慢性疼痛(異常知覚を含む)
2 起立性低血圧
3 転倒予防
4 不動による合併症(廃用症候群)
5 褥瘡
6 熱傷,浮腫,皮膚腫瘍
III. 展望・社会貢献
展望1 リハビリテーション医療の展開
1 痙縮治療〔ボツリヌス療法・ITB(髄腔内バクロフェン投与)療法〕
2 漢方とリハビリテーション診療
3 電気刺激療法
4 非侵襲的脳神経刺激
5 CI 療法
6 ロボット
7 再生医療
8 Brain Machine Interface(BMI)
9 ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)
10 COVID-19のリハビリテーション診療
11 リハビリテーション医学のデジタルトランスフォーメーション
展望2 社会貢献
1 パラスポーツ(障がい者スポーツ)
2 大規模災害支援
便覧 リハビリテーション医学・医療便覧
1 用語解説
2 リハビリテーション診療における評価法・検査法
3 関節可動域表示ならびに測定法(日本整形外科学会,日本足の外科学会,日本リハビリテーション医学会制定)
索引
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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。