• HOME
  • 書籍
  • ロールプレイでやってみよう! 


ロールプレイでやってみよう!
患者さんの安心・安全のためのコミュニケーション演習ガイド [Web動画付]

もっと見る

本書は、会話を通して、患者さんや家族の思いを理解し、医療者として伝えなければならないことを伝える10の場面を設定し、ロールプレイ演習が行えるようにその方法を解説したものです。医療者が模擬患者に扮する場合の注意点にも言及しています。患者さんと医療者とのコミュニケーションを充実させるため、演習を行った後に、付録のweb動画でのロールプレイ例をご覧いただければ、より演習を進化させることができるでしょう。

高橋 敬子
発行 2021年12月判型:A5頁:104
ISBN 978-4-260-04865-1
定価 2,750円 (本体2,500円+税)

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 序文
  • 目次
  • 書評
  • 付録・特典

開く

はじめに

 医療機関を訪れる患者さんは,身体的,精神的に何らかの問題を抱えておられます。ですから,医療者が患者さんに向ける言葉や態度は,十分に配慮されたものでなくてはなりません。患者さんからさりげなく医療者に投げかける質問であっても,そこには不安や悩みが潜んでいる可能性が十分にあります。そんな時に患者さんや家族に寄り添える応対もまた医療の一環なのです。だからこそ医療者は,「患者さんと話す」ということについて,備えるべき知識や技術の1つとして学ばなくてはいけません。
 医療者にとっては悪気のない日常的な態度や言葉であっても,患者さんを深刻な気持ちに陥れ,無意識のうちに発生したコミュニケーションエラーや説明不足が,のちに重大な有害事象に至ってしまった案件に遭遇することがあります。患者-医療者間の関係性に障害が発生すれば,患者さんに安全な医療を提供する妨げになってしまいます。また昨今では,患者さんと対面形式で話すことが基本であった医療場面においても,電話やWebという何らかのツールを通じてコミュニケーションをとる機会が多くなり,医療者には一層のコミュニケーション力が求められるようになりました。
 本書は,患者さんに安心して医療を受けていただくために重要なコミュニケーション力を,対面やWebでの実践的なロールプレイ形式で学ぶための教材です。特別な人材や設備がなくても皆さんの施設ですぐにロールプレイ演習が始められるように解説をしています。従来のテキストのように,文字やイラストのみではなく,ロールプレイの雰囲気やイメージを受け取っていただくためにシナリオ集にロールプレイ動画を付けました。このシナリオの題材は,実際の医療現場で遭遇した患者さんやご家族の,さまざまな戸惑いの場面を組み合わせた架空のもので,それゆえに,読者の皆様も同じような場面を見聞きされたことがあるのではないかと思います。
 どうすれば患者さんが穏やかな気持ちで病気と向き合えるのか,ご家族にも安心いただけるのか,そして何よりも,すべての医療者がどのように対応すれば,よりよい医療の提供へとつながる環境を整えられるのかということを,医療者として患者さんと話す意味を考えながら読み進めていただきたく思います。
 卒前卒後を通じた医療者生涯教育や医療安全教育の教材としてご使用いただき,患者さんとともに豊かな気持ちで質の高い医療の提供を目指すことに役立てば嬉しく思います。

 高橋敬子

開く

はじめに

第1章 患者さんの安心・安全確保のために重要なコミュニケーション
 「あたりまえ」とは誰のあたりまえ?
  ・プロフェッショナルな「対応」は,医療者にも求められる
  ・医療者の「あたりまえ」は,患者さんの「あたりまえ」ではない
 医療における安心とは
  ・「 安心」は,患者さんだけが感じることではない
  ・医療者に囲まれた患者さんに安心してもらうためには
 安心・安全確保のためにロールプレイ演習を行う意義
  ・プロフェッショナルとしてのコミュニケーションには練習が必要
  ・医療機関で働くすべての人がコミュニケーションを学ぶにはロールプレイが最適

第2章 ロールプレイ演習に欠かせない模擬患者とシナリオ
 模擬患者になるために知っておくこと
  ・学習目標を理解する
  ・ロールプレイ演習中の学習者への配慮
  ・ロールプレイ演習後の学習者へのわかりやすい評価
  ・あなたが模擬患者になった時に困らないために
 シナリオの題材と作成
  ・患者さんが戸惑いがちな状況をシナリオに取り上げる
  ・ロールプレイ演習を成功させるためのシナリオの工夫
 演習がうまくいくために準備すること
  ・運営役割分担
  ・グループ構成と役割分担
  ・スケジュール
 Webでもできるロールプレイ演習

第3章 実際のシナリオと映像の解説
 シナリオと映像の使い方
  ・最初から動画を見ず,まずはやってみてください
  ・「SPの背景と気持ち」をもとに,自分として演じてください
  ・SP評価表
 シナリオ① 造影CT検査を受けることに不安のある患者
  運営側,学習者共通資料
  運営側資料
  column 事務員からのメッセージ
 シナリオ② ジェネリック医薬品へ変更することに悩む患者
  運営側,学習者共通資料
  運営側資料
 シナリオ③ 患者への面会制限に対して困惑する家族
  運営側,学習者共通資料
  運営側資料
  column 看護師からのメッセージ
 シナリオ④ 転医の提案に落ち込む患者
  運営側,学習者共通資料
  運営側資料
 シナリオ⑤ 外来と入院時で担当者が異なることに戸惑う患者
  運営側,学習者共通資料
  運営側資料
 シナリオ⑥ 高度な医療への期待に反し有害事象が生じた患者
  運営側,学習者共通資料
  運営側資料
  column 理学療法士からのメッセージ
 シナリオ⑦ よくある手術を受けた患者に生じた術中の急変に戸惑う家族
  運営側,学習者共通資料
  運営側資料
  column 看護師からのメッセージ
 シナリオ⑧ 輸血療法に対する患者の意思
  運営側,学習者共通資料
  運営側資料
 シナリオ⑨ Living Willに対する患者と家族の意思
  運営側,学習者共通資料
  運営側資料
  column 医師からのメッセージ
 シナリオ⑩ 病院職員の身だしなみと態度に対する患者の思い
  運営側,学習者共通資料
  運営側資料
  column 模擬患者からのメッセージ

おわりに
協力者

開く

患者さんへの対応をロールプレイで学べる最良の手引き
書評者:内藤 知佐子(愛媛大病院総合臨床研修センター)

 『ロールプレイでやってみよう!』という本書,思わず,「はーい!」と返事をしたくなるようなタイトルですが,これまで私たちが手にしてきたロールプレイの書籍とはまったく違います。中心となるのは,明日からでもロールプレイを実践できるように,患者さんが戸惑いやすい10の場面を取り上げ作成されたシナリオです。さらに,効果的な演習につながるように,“模擬患者になるために知っておくこと”や“シナリオの題材と作成”“演習がうまくいくために準備すること”などが丁寧に解説されており,看護職はもちろん全職種で学べるように問いや目標が設定されているため活用しやすくなっています。

 さらに,うれしいのは動画が付いていることです。各シナリオの動画のみならず,昨今のコロナウイルスによる事情を鑑みてWEB研修を開催する際の動画も付いています。どのように受講者に対して説明をしたりコメントを返したりすればよいのか,指導側のヒントが得られる教材となっています。ちなみに,各動画はあくまでもイメージであり,最初から動画は見ずにまずはやってみることを著者である高橋敬子先生は勧めています。ですが,答えを求めるのは最近の若者だけでなく,実は私たち管理者や教員も同じ。先に見てイメージづくりとして活用することで,私たちもより安心して演習に臨むことができそうです。各シナリオの設定は,非常にシンプルでわかりやすい内容となっています。ロールプレイのシナリオとなると,つい凝った大作を作りがちですが,経験ある医療者であれば案外シンプルなシナリオでもうまくいくもの。もしも,初心者や学生対象であっても,ロールプレイを実施した後で動画を一緒に視聴して,自分たちとの違いや共通点を尋ねてみるとさまざまな気付きが得られそうです。

 コロナウイルスによる影響が続き,実習を十分に経験できていない新人が入職する時代となりました。現場の指導者からは,「患者とも私たちともコミュニケーションが取れない」というメッセージを,よく耳にします。新人自身も,例年以上に実習経験不足である自分に不安を抱きながら入職をしてきます。従来通りの指導では,立ち行かなくなることが予測されます。本書の中で高橋先生は,「医療における安心は,患者さんだけが感じることではない」と説明し,まずは医療者自身が職場で心理的安全性を得ることの重要性を説明しています。そして,ロールプレイ演習は「やり直し」が利く教育方法であることを伝えています。過去は変えられませんが,未来は変えられます。不足している経験は,ロールプレイで補い安心につなげていきましょう。今だからこそ,医療に携わる多くの方に手に取ってほしいお薦めの一冊です。


医療者の「あたりまえ」が患者・家族にはそうでない(雑誌『看護管理』より)
書評者:大﨑 千恵子(昭和大学保健医療学部看護学科 准教授/昭和大学統括看護部 看護次長)

 私たち看護職者は,あらゆる場面で患者さんに最も近い存在です。対人援助職として「相手の立場に立ち,共感的に理解する」ことを基本に,日常業務に従事しています。しかし,このようなコミュニケーションの基本を分かってはいても,時に患者さんや家族との対話がうまくいかず,苦い思いをした方もいらっしゃるのではないでしょうか。医療者にだけ分かる表現は,安心につながることもあれば,心配や不安を助長させ,誤解に発展することもあります。

省察を通して「あたりまえ」を変えるきっかけに 
 本書は,医療機関で働く全ての人に向けた,コミュニケーション訓練を目的とした実践的なロールプレイ集です。兵庫医科大学病院で全ての医療者を対象に行われている研修内容を紹介しています。模擬患者によるロールプレイングを通して,患者さんの安心や安全がいかに私たちのコミュニケーションに裏付けられているかを省察できるように構成され,患者さんが戸惑いがちな状況がシナリオに落とし込まれています。このような対話の場面を振り返ることで,「あれ? おや?」っと気づき,参加者との討議を通して自分の傾向を確認し,行動を変えていく手助けとなります。

 本書で紹介されている10の場面に共通していることは,医療者にとっての「あたりまえ」「おきまり」が患者さんや家族にとっては困惑や不安になりうるということです。例えば,あるシナリオでは,救急搬送された患者さんへの面会制限に困惑する家族との対話を切り取っています。医療者が最善の方法として実施している判断(ここでは面会制限)を,時に家族は「最悪のこと」として受け止めます。臨床現場での患者さんや家族との対話は,数分単位のやりとりの繰り返しです。しかし,短い時間の出来事であるからこそ,そこで信頼を得るか,不安を助長させるかは,私たちのコミュニケーション次第です。

安心・安全のためのコミュニケーションが「できる」
 コミュニケーション技術は,その名の通り「技術」であり,自然に身に付くものではありません。厚生労働省による「新人看護職員研修ガイドライン」では,コミュニケーションは看護技術を支える要素として位置付けられています。技術の修得には意図的な練習を繰り返すことが必要です。特にコミュニケーションでは,目に見えない相手の気持ちを取り扱うという難しさがあります。職場で教育指導に携わる多くの看護管理者の方は,「知っている」だけでは「できる」に至らないことを実感されていると思います。

 本書は,臨床の医療職を対象に,安心・安全のためのコミュニケーションが「できる」ようになるための演習ガイドです。演習を企画するための準備や模擬患者の育成,シナリオの作成方法までが丁寧に説明されています。付録としてシナリオごとにWeb動画が付いていますが,これはイメージを伝えるためであり,施設の状況に合わせながら演習を実施できるところが特徴です。また,対面での演習が難しい昨今の事情を踏まえて,Web会議システムを利用した方法も紹介されています。コンパクトなサイズですが,内容は至れり尽くせりで,全ての臨床看護職者に一度は手に取ってほしい書籍です。

 最後に著者の言葉を紹介します。

 「模擬患者とともに学習するロールプレイ演習は,手技をスキルスラボで修練することと同じ意義がある」

(『看護管理』2022年4月号掲載)

開く

●付録web動画

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。