看護コミュニケーション 第2版
基礎から学ぶスキルとトレーニング
「生命」にかかわるコミュニケーションを学ぶ
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看護学生が専門職としてのコミュニケーションを学べる好評書が6年ぶりに改訂。ロールプレイ用のシナリオが新規になったほか、思いもよらなかったコロナ禍でのマスク着用とソーシャルディスタンスを保ちながらのケアなど、コミュニケーションの基本をおさえつつも今日的課題を追記した。15回の講義を想定した本書を活用すれば、演習や臨地実習で役立つ対応も学ぶことができる。
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- 序文
- 目次
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序文
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はじめに
2007(平成19)年の厚生労働省「看護基礎教育の充実に関する検討会報告書」においてコミュニケーション能力の強化が求められて,10年以上が経過しています。そして,2019年「看護基礎教育検討会報告書」(厚生労働省)においてもコミュニケーション強化に関して示されています。コミュニケーション技術は,看護教育において学習者が修得しなければならない重要な技術であることは誰もが承知していることです。しかし看護基礎教育においては,コミュニケーション技術の何を学び,何を教えれば良いかについては,コンセンサスが得られているとは言い難い現状があります。
看護師に求められるコミュニケーションは,看護の対象となる人や家族をケアするためには必須であり,また同時にヘルスケアチームの一員として,看護師間や他職種との連携においても必要不可欠です。知識だけではなく実践できる技術として修得することが望まれます。
そこで本書では,看護師に必要なコミュニケーションの知識と実践能力を修得するため,以下の3部で構成いたしました。
第1部「コミュニケーション論」では,看護を学ぶ初学者を対象に,コミュニケーションの基本的技術を解説しました。
第2部「看護におけるコミュニケーション」では,「看護の専門家として対人関係を築くために必要なコミュニケーション技法」として,看護の場面で必要となる関係構築の技法Interpersonal communication skillを,例をあげながら解説しました。その後,「看護の対象を生物心理社会モデルでとらえることができる看護面接技法」として,13のSTEPからなる看護面接のプロセスに沿って説明しています。ここでは,演習に使用できるシナリオ,振り返りについても盛り込みました。
第3部「高度なコミュニケーション」では,実際の看護の現場で遭遇することが予測されるコミュニケーション困難な状況での対応方法を解説するほか,多職種連携時のコミュニケーションの実際についても取り上げ,実習など臨床の場面をイメージできるようにしました。さらに,新型コロナウイルス感染症の状況にも対応できるよう,マスク着用やソーシャルディスタンス下のコミュニケーションも示しました。
また,本書では筆者なりに以下の点に配慮しました。
・科学的根拠に基づいて説明する
・一貫性がある
・理解しやすい
・学修(教育)が可能となるように,学修目標や確認テストを示す
・トレーニング方法やトレーニング用のシナリオを提示する
・具体的に例示して説明する
・さらに学修を発展することができるように参考論文や書籍を提示する
本書が看護学生や新人看護師にとって,コミュニケーションを基礎から学ぶためのガイドとして役立つことを願っています。
最後に,本書をまとめるにあたり,企画から完成までご尽力いただいた医学書院の近江友香氏,第2版で丁寧にご対応いただきました竹内亜祐子氏,北原拓也氏に心より感謝いたします。
2021年11月
著者 篠崎惠美子・藤井徹也
目次
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はじめに
本書の活用方法について
序章 なぜ看護師はコミュニケーションを学ぶのか
1 医療者のコミュニケーションが注目される背景
2 医療者のコミュニケーション
3 看護におけるコミュニケーションが必要な場面
確認テスト
第1部 コミュニケーション論
第1章 コミュニケーションとは何か
1 コミュニケーションとは
2 コミュニケーションの構成要素と成立過程
3 コミュニケーションの特徴
確認テスト
第2章 コミュニケーションの種類
1 言語的コミュニケーション
2 非言語的コミュニケーション
3 言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーション
確認テスト
第3章 コミュニケーションに影響するもの
1 コミュニケーションにおける4つの交流
2 コミュニケーションに影響する要因
3 マスク着用時のコミュニケーション
4 良好なコミュニケーションに必要なこと
確認テスト
第2部 看護におけるコミュニケーション
第4章 医療(看護)におけるコミュニケーション
1 看護におけるコミュニケーションとは
2 患者中心の看護面接
確認テスト
第5章 良好なコミュニケーションに必要な技法─質問技法─
1 コミュニケーションの場面を設定する(環境を整える)
2 聴くための技法:質問技法
確認テスト
第6章 積極的傾聴と共感
1 積極的傾聴とは
2 共感とは
3 積極的な傾聴と共感
4 看護学生にとっての共感とは
確認テスト
第7章 良好なコミュニケーションに必要な技法─関係構築の技法─
1 なぜ関係構築の技法が必要なのか
2 感情探索の技法
3 表出された感情に対応する技法
4 良好なコミュニケーションには促進の技法を統合して活用する
確認テスト
第8章 看護面接のプロセスの13 STEP
1 患者中心の面接
2 医療者中心の面接への移行
3 統合された看護面接
確認テスト
第9章 看護面接のトレーニング
1 コミュニケーションスキルトレーニングの方法
2 コミュニケーション評価の視点
3 模擬患者とのトレーニング
確認テスト
ロールプレイ用シナリオ
第3部 高度なコミュニケーション
第10章 高度なコミュニケーション─臨地実習で遭遇する事例をもとに─
1 臨地実習で看護学生が遭遇するコミュニケーション困難な状況
2 臨地実習で看護学生が遭遇するコミュニケーション強化が必要な状況
確認テスト
第11章 多職種連携とコミュニケーション
1 医療における多職種間のコミュニケーション
2 看護師間でのコミュニケーション
3 医師とのコミュニケーション
4 医療者間でのコミュニケーション
5 アサーティブなかかわり
確認テスト
第12章 患者家族とのコミュニケーション
1 患者と家族の関係
2 患者の家族とのコミュニケーション
確認テスト
第13章 新たな時代のコミュニケーション
1 ディスプレイを介したコミュニケーション
2 1対1以外のコミュニケーション
確認テスト
確認テスト 解答
索引
書評
開く
コミュニケーションの基本 見直してみませんか?
書評者:徳永基与子(京都光華女子大学健康科学部看護学科 教授)
新型コロナウイルス感染症流行の収束が見えないなか,看護基礎教育の現場では学生が臨床実習に出られない状況が続いています。この状況に対応するべく遠隔教育が大きな進歩を見せる一方で,学生のコミュニケーション能力の育成が課題になっています。これを解決でき,学生だけでも学べる本を探した際に出会ったのが本書でした。
本書はコミュニケーションの知識・実践能力の修得を促進する構成となっています。第1部で看護の初学者を対象としたコミュニケーションの基本技術を解説し,第2部で看護場面における関係構築の技法を具体例をあげて解説,第3部では実際の臨床場面で遭遇する困難事例などを取り上げ,臨床場面のイメージ形成を促すように構成されています。手に取りやすいサイズのなかに基本知識から応用までが網羅されています。また今回の改訂の特徴として,新型コロナウイルスが蔓延する現状にも対応できる内容が含まれています。
本書が特に初学者である学生・新人看護師が活用しやすいと思った点は次のとおりです。
まず学習過程に沿った工夫があげられます。たとえば,章別に明示された学習目標によって習得内容がわかり,目標達成に向けた具体事例を用いた解説と確認テストで自分自身の理解度を確認できます。
次に「共感」という抽象概念を,学生の立場から具体的な表現で示していることです。臨床実習で応用可能な内容が記載されています。
より発展した学習を進めたい学生には,根拠となる論文や資料の明示がおおいに役立つことが期待できます。一方,新人看護師にとっては,コミュニケーションの基本を確認することができるほか,現場で起こる困難な事例への対応,コロナ禍でのコミュニケーション方法(マスクの着用やタブレット端末の活用など)も押さえることができます。また,教員には「第9章 看護面接のトレーニング」が看護教育の現場で学生に指導を行う際のヒントになります。トレーニングから評価の方法,さまざまな臨床場面のシナリオにより,具体的な活用法が明示されています。
このように,本書は読者自身の学習と授業の双方で活用できるでしょう。
私たちはコミュニケーションをふだん当たり前のように行っています。しかし,看護という特殊な場面のコミュニケーションにはトレーニングが必要です。本書を手に取り,あらためてコミュニケーションの基本を振り返ってみませんか。新たな時代のコミュニケーションを考えてみる機会になると思いますよ。
(「看護教育」63巻2号掲載)
看護コミュニケーションの新たな時代をバックアップ
書評者:安藤 かよ子(安城市医師会安城碧海看護専門学校顧問(前・副学校長))
スムーズな人間関係の構築は,日常生活を送る上で欠かせないものです。社会生活の変化によりコミュニケーションの方法は変化していきます。まさに,今,コロナ禍におけるマスク越しの会話で十分なコミュニケーションが難しくなっていることを皆さん実感されているのではないでしょうか。マスク越しのコミュニケーションの中で学生は教員に対して(1)目が笑っていない,(2)怖く感じる,(3)声が通らないので何を言われているかわからないし聞き返せない,といった理由から関係構築に弊害があると感じていることがあります。本書第2版では,そのような社会の変化,つまりコロナ禍の時代に合わせた内容も追加されました。マスク着用時の研究結果から,声のトーンや表情・距離の取り方などのポイントが記されており,ことわざで「目は口ほどに物を言う」と言われているように,マスク着用時のコミュニケーションのマイナス面ばかりでなくメリットも掲載されています。
初版は,共感・傾聴などの基本的な技術や具体的なコミュニケーション方法が図や絵などを用いて紹介されており,学生にとってわかりやすく学べる内容でした。また,各章の最後に「確認テスト」があることで,何が大切か言語の違いや使い方などがリフレクションできる内容になっていますが,第2版でもそれらが踏襲されています。コミュニケーションは,ケア提供者や患者の性格,その場の雰囲気などでかかわり方は異なりますが,自己表現を振り返るために役立つ「コミュニケーション評価の視点」や「臨床で活用できる事例」もたくさんありますので,学生にとって良い教本です。初版と同様に,「あなたなら何と答えますか?」など,Q&Aの事例や,ロールプレイ用のシナリオ,患者からの申し出の断り方など,すぐに活用できることが多く紹介されています。
今回新たに「第13章 新たな時代のコミュニケーション」が追加され,「ディスプレイを介したコミュニケーション」や「1対1以外のコミュニケーション」が紹介されています。特に最近導入する施設が増えつつある看護方式のPNS®(Partnership Nursing System)は,ぜひ注目して理解し身につけてもらいたい内容です。
この『看護コミュニケーション 基礎から学ぶスキルとトレーニング 第2版』は,看護学生だけでなく看護師にとっても人間関係構築の原点に立ち戻ることができますので,手元に置いておくことをお薦めします。触れてほしいコミュニケーションスキルが満載の魅力ある一冊となっています。