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安全に施行するためのESDテクニック[Web動画付]

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内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、早期がんにおける早期の病変に対する標準治療として確立されている。本書はまず「総論」で、成熟期に入ったESDについて、現状での問題点の数々を指摘し、その解決策を提示。さらに「臓器別各論」では、初心者の読者も意識したテクニックの基本から、日々ESDを実践している消化器内科医にも役立つ、最新の治療手技、注意点、コツなどについても供覧する。

編集 宮澤 光男 / 大西 俊介
発行 2022年04月判型:B5頁:176
ISBN 978-4-260-04861-3
定価 9,350円 (本体8,500円+税)

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推薦のことば

 このたび,宮澤光男先生と大西俊介先生の企画・編集のもとに,この領域における経験が豊富で全国的にトップリーダーである執筆者の協力を得て『安全に施行するためのESDテクニック』が医学書院より上梓の運びとなった.まことに同慶の至りである.
 ESDの手技が開発されて以来,すでに20年以上になるが,私自身がESDに関する単行本を初めて編集して刊行したのは,2007年3月である.2006年3月に胃病変に対する保険収載が認められたことを契機に,安全で確実なESDを普及させることを目的としていた.その後,胃に続いて,食道,大腸,十二指腸すべての領域でESDが保険収載されるに至った.臓器ごとのESD/EMRガイドラインも整備されてきて,ESDは,一般的な内視鏡切除手技として広く普及している.早期癌に対する標準治療として確立してきた一方で,①一括完全切除率を上げる,②穿孔・出血・狭窄の合併症率を減らすなど,より精度を上げていくという課題があるなか,それらに対する解決策が求められている.
 本書では,「総論」として,周術期管理,合併症に対する対処法,抗血栓薬の取り扱い,高周波手術装置の設定,ESD後の狭窄予防などが解説されている.「臓器別各論」では,咽頭,食道,胃,十二指腸,大腸に分けて,適応・現状と課題,標準的なESD,困難症例,合併症対策が概説されている.特に初学者も意識したテクニックの基本から,日々ESDを実践している専門医の先生にも役立つ,最新の治療手技,注意点,コツなどが図やシェーマを多用してわかりすく説明されていることが特筆される.後半の「ESDに役立つ知識」では,各種内視鏡の特徴,各種フード・ナイフ・クリップ・止血鉗子の特徴,局注剤の効果的な打ちかた,視野確保の工夫,トラクションデバイスの効果的な使いかた,止血のコツ,穿孔時の対応など,実践で必要な手技とコツが明快に記載されている.
 本書の大きな特徴は,「臓器別各論」ならびに「ESDに役立つ知識」のなかで,それぞれの手技のポイントとコツについて多数の動画をWeb 収載し,読者にQRコードで供覧していることであり,従来のESDの書籍では得られなかった情報をこれらの動画で見て学ぶことができる点にある.

 本書は,ESDを始めようとする初学者から,日々実践している専門医の先生,さらに教育指導にあたっておられる指導医の先生にとって,即,役に立つ充実した内容が満載されており,是非とも座右に具えていただき,適宜参照していただきたいと願っている.

 2022年3月
 WEO(世界内視鏡学会)President
 日本消化器内視鏡学会 特別顧問(前理事長)
 東京慈恵会医科大学名誉教授
 田尻久雄


序――ESDを安全に施行するために

 近年,早期消化管癌の治療法として,内視鏡的粘膜下層剝離術(endoscopic submucosal dissection:ESD)が低侵襲性と機能温存を期待され急速に進歩を遂げてきている.その進歩は加速度的であり,従来,メスを用いた外科的な手術でのみ施行されてきた早期癌の治療が,すべて内視鏡的に変換されようとしている.一方,この治療法において絶対的に担保しなければならないことは,安全性と確実性である.この観点に鑑みると,「最初から外科的手術であったらこのような経過にはならなかったのに」と内視鏡的治療の発展速度が了承不可と推察されるような,大きな合併症の報告例も散見される.発展段階にある治療法が,最大限の安全性を担保しながら発展スピードを上げるためには,理論に裏打ちされた安全,確実な手技が必要である.安全,確実なESDが施行可能となるように,『安全に施行するためのESDテクニック』を編集した.

 本書は,安全に,確実にESDが施行可能となるように,ESD関連の機器使用法を含めた包括的総論と実際の手技的解説の各論に分けて編集した.現状,ESDの周術期においては,「出血,穿孔,狭窄」が安全性という観点において問題となっている.そこで,総論として,ESD施行後の安全性確保の理論的部分を包括的にご執筆いただいた.各論においては,消化器内視鏡分野において多数の症例を経験しているエキスパートの先生方に,安全に施行するための手技,コツ,および注意点を中心に,動画を含めてご執筆いただいた.

 今般の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がもたらした厳しい医療情勢にもかかわらず,執筆をご快諾頂いた先生方に深謝する.また,本書の出版に種々ご援助いただいた医学書院の大橋尚彦氏に感謝の意を表す.

 本書で,読者がESDを安全,確実に施行するポイントを知り,その技術を身につけ,ESDがさらに安全,確実に完遂される一助となれば編者らの望外の喜びである.

 2022年3月
 宮澤光男
 大西俊介

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I章 総論
  ESDの現状とこれから
  ESDの周術期管理
  ESDの合併症に対する対処法
  抗血栓薬の取り扱い
  高周波手術装置の設定
  間葉系幹細胞によるESD後の狭窄予防
  細胞シートを利用した食道ESD後の狭窄予防
  生体吸収性シートを利用した内視鏡的粘膜剝離面の狭窄予防
  ESDを応用した新規治療

Ⅱ章 臓器別各論
 1 咽頭
  咽頭腫瘍に対するESDの適応・現状と課題
  咽頭ESDの実際
 2 食道
  食道腫瘍に対するESDの適応・現状と課題
  標準的な食道ESD
  食道ESD後狭窄の予防法
  食道ESD後狭窄予防に対する展望
 3 胃
  胃癌に対するESDの適応・現状と課題
  標準的な胃ESD
  胃ESDの困難症例――穹窿部大彎側病変
  全層切除の適応と今後の可能性
 4 十二指腸
  十二指腸ESDの適応・現状と課題
  十二指腸ESDの実際
  ESD 後の偶発症対策――あらゆる内視鏡的縫縮法を習得しよう
 5 大腸
  大腸腫瘍に対するESDの適応・現状と課題
  標準的な大腸ESD
  大腸ESDの困難症例
  ESD後の合併症対策

Ⅲ章 ESDに役立つ知識
  各種内視鏡の特徴――適切なスコープ選択
  各種フード,ナイフの特徴
  各種クリップ,止血鉗子の特徴
  局注剤の効果的な打ちかた
  粘膜下層への効率的な潜り込みかた
  視野確保の工夫――送気・吸引を使いこなそう
  トラクションデバイスの効果的な使いかた
  止血のコツ
  穿孔時の対応

索引

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自身のESDと対比することで確実で安全なESDにつなげてほしい
書評者:和田 亮一(亀田総合病院附属幕張クリニック・院長)

 ESDは日本で開発された早期がんの画期的な治療手技である。

 この治療が始まったころの2003年,長野県の佐久総合病院で,ESDライブデモンストレーションが行われ,全国から内視鏡医が集まったことが懐かしく思い出される。あれから20年が過ぎ,その手技は飛躍的に進歩し普及した。当時,やや困難例とされた病変の治療が平易になった一方,より難度の高い病変にも,リスクの高い十二指腸にも,基礎疾患や高齢化などで背景の複雑な患者にも適応され,ESDは多様化・複雑化した。ESDが開発されて四半世紀,その進歩の恩恵は大きいがESDを確実に安全に行うことは容易ではない。

 本書は「総論」,「臓器別各論」,「ESDに役立つ知識」の3つの章で構成されている。さらにそれぞれが安全に施行するための独立したテーマから成り,安全を多角的に深く考えることが意図されている。

 「総論」ではESDの周術期管理,合併症の対処法,抗血栓薬,高周波手術装置の設定など治療に欠くことのできないテーマが丁寧に解説されている。リスクを招かないためには用意周到さと,偶発症が起こったときの判断力,チーム力が必要となる。それを支える知識や考え方が包括的に織り込まれている。ぜひ,お役立ていただきたい。またESDから全層切除への応用や,間葉系幹細胞や各種シートを利用した術後狭窄予防に関する編者らの研究は新たな可能性を感じさせる。

 「臓器別各論」では,咽頭・食道・胃・十二指腸・大腸のESDの実際と手技の基本・コツ・戦略,合併症の予防と対応が実践的にわかりやすく執筆されている。それぞれの臓器で手技や合併症の起こりやすさは少しずつ違う。一つひとつの操作はおろそかにできない。経験豊富なエキスパートの思考が技術に反映されている。手技がシェーマで解説され動画で供覧できるので理解しやすい。それぞれの臓器で標準的な治療,困難な症例,出血や穿孔の予防,穿孔したときの対応の手順と操作が丁寧に解説されている。難しい症例の提示もあり,ESDは内視鏡医の挑戦の歴史だと感じさせられる。

 「ESDに役立つ知識」では,まずスコープとESDを支える小道具たちに焦点を当てている。フード,ナイフ,デバイス,クリップ,止血鉗子などもそれぞれ工夫・開発され,その特徴と使い方が紹介されている。また,ESDの成否を左右するのは,内視鏡の基本操作であることが触れられている。有効な局注,粘膜下層への潜り込み,空気量の調節,最後に止血のコツと穿孔時の対応で結ばれている。

 今日,無事に終えた治療であっても,全ての工程がベストであったかを見直すことは欠かせない。本書をめくり,自身のESDと対比することで確実で安全なESDにつながることを願ってやまない。


初学者から専門医,指導医にも役立つ内容が充実
書評者:中本 安成(福井大教授・消化器内科)

 世界初のESDが,現・静岡がんセンター副院長の小野裕之先生らにより施行されたのは1998年のことである。以来20有余年が経過した2022年4月,ESDの過去,現在,未来が凝縮された本書『安全に施行するためのESDテクニック[Web動画付]』が刊行された。

 ESDのベネフィットはその低侵襲性にある。最大の安全を保証し,最高の治療効果をめざすものであり,本書のタイトルはESDの本質をあらためて読者に問いかけているといえる。序文において宮澤光男先生と大西俊介先生は,正しく理論に裏打ちされた安全,確実なESDが施行可能となるように,本書を企画・編集したと述懐しており,そのための普遍的かつ具体的なメインテーマとして,「出血,穿孔,狭窄」への対応を挙げている。

 本書は上記のテーマをバックボーンとし,「I章 総論」,「II章 臓器別各論」,「III章 ESDに役立つ知識」の3章より構成される。「総論」では,ESDの歴史と将来への展望,そして術者に求められる,周術期管理や抗血栓薬の取り扱い,高周波装置の設定などの基本的な知識が,執筆陣の哲学とともに網羅されている。ESDの術者は全人的な視野を持ち,基礎疾患やリスクを適切に評価し,医療現場のチームリーダーとして他職種と連携することの重要性が説かれているのである。また,間葉系幹細胞や細胞シート,生体吸収性シートを用いたESD後の狭窄予防や,内視鏡的全層切除術(EFTR)も含めた新規治療について紹介しており,生体医工学のカッティング・エッジとしてのESDにも焦点を当てている。

 「臓器別各論」と「ESDに役立つ知識」では,おのおのの臓器(咽頭,食道,胃,十二指腸,大腸)や,出血,穿孔などの治療局面について,基本的なアプローチ法や困難事例に対する対処法が,写真や動画とともに詳述されている。「臓器別各論」においては,各臓器の解剖学的特性や,ESDにおけるエビデンスの蓄積期間を反映し,適応拡大や全層切除,縫縮など,臓器によるアンメットニーズの微妙な相違が浮き彫りとなっているのも興味深い。また,「ESDに役立つ知識」において,スコープや各種デバイスの特徴,効果的な局注法や粘膜下層への潜り込み方,トラクションデバイスの使用法などが解説されている。各項とも具体的な場面が提示されているため初学者は参考にしやすい一方,経験を積んだ医師ならばその内容を他の局面で応用することは十分に可能であろう。

 冒頭の推薦文で田尻久雄先生が述べられている通り,本書は初学者から専門医,さらに指導医にとっても直ちに役立つ内容が充実しており,ESDの基準点かつ最高到達点を示しているといえる。読者諸氏が本書を精読し,I章での後藤田卓志先生の結語のごとく,ESDの概念を超えた,全く新しい治療法を創造することに期待しつつ,ここに自信を持って本書をお薦めする。

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