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十二指腸腫瘍の内視鏡治療とマネジメント

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消化器内視鏡治療の最前線。十二指腸腫瘍の内視鏡治療手技のすべてを集約。第一人者たちによる、十二指腸腫瘍に対する内視鏡治療の決定版。実施可能なあらゆる手技を網羅。基本技術から、エキスパートならではのコツ、そして多彩な症例から治療手技の真髄を学ぶ。

編著 小山 恒男 / 矢作 直久
発行 2023年06月判型:B5頁:292
ISBN 978-4-260-04337-3
定価 12,100円 (本体11,000円+税)

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序説

 ESDが開発され25年以上が経過し、本邦のみならず、アジア、ヨーロッパ、北米、南米でもESDは確実に普及しつつある。しかし、十二指腸は固有筋層が薄いうえに、スコープの操作性が悪い。また、膵液胆汁の曝露による後出血や遅発性穿孔のリスクが高く、ESD困難部位の1つである。
 近年H.pylori感染率の低下とともに胃癌は減少傾向だが、十二指腸腫瘍は増加傾向にあり、その対策は急務である。欧米では分割EMR(EPMR)が主流だが、EPMRでは局所再発の危険が高く、局所再発時の再治療はさらにハードルが高くなる。一方、近年開発されたUnder water-EMRは水中での浮力を利用した新たな内視鏡摘除法で、15mm程度までの病変には有力な治療法である。
 全国の内視鏡医が日々工夫を凝らした結果、従来のEMRに加えCold Snare PolypectomyやUnder water-EMR、ESD、hybrid ESD、さらにはD-LECSと、様々な手技が開発報告されてきた。特に十二指腸におけるESDに関しては、手技的な難易度の高さと極端な偶発症リスクの高さから、一時は禁忌とまで言われたこともあったが、様々な工夫により比較的良好な治療成績が報告されるようになってきた。
 そこで、本書では、各摘除手技の第一人者に依頼し、手技の適応、基本技術、そしてコツに関して、具体的な症例を提示して解説していただくことにした。
 十二指腸腫瘍という難敵に立ち向かうためには、多くの武器を手に入れるだけではなく、それぞれの武器を使いこなす知識と技術を習得することが重要である。 本書が、明日からの診療に役立つことを祈念し序説とする。

 佐久医療センター内視鏡内科
 小山恒男
 慶應義塾大学病院腫瘍センター
 矢作直久

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序説

1章 実施体制と術前チェック
 1 内視鏡治療を前提とした十二指腸腫瘍の術前チェック
 2 十二指腸腫瘍の内視鏡治療を行うのに必要な実施体制(慶應義塾大学の例)
 3 十二指腸の内視鏡治療における麻酔法

2章 治療の基本
 1 Cold Polypectomy──Cold Snare Polypectomy:CSPとCold forceps polypectomy:CFP
 2 Cold Snare Polypectomy:CSP
 3 Under water-EMR:UEMR
 4 Under water-EMR──分割切除も含む
 5 Partial-injection UEMR:PI-UEMR
 6 Endoscopic Mucosal Resection:EMR
 7 Pocket-creation methodを用いたESD
 8 Water Pressure Method
 9 HookKnifeによるESD
 10 FlushKnifeによるESD
 11 ESD using the ClutchCutter:ESDCC
 12 S-O clipによるESD
 13  D-LECS──Duodenal-Laparoscopy and Endoscopy Cooperative Surgery
 14  EMR-O──Endoscopic Mucosal Resection with an Over-the-scope Clip

3章 マネジメントのコツ
 1 String Clip Suturing Method
 2 Over-The-Scope Clip(OTSC)縫縮
 3 Line-assisted complete closure(LACC)
 4 ポリグリコール酸(PGA)シートの貼付
 5 穿孔時の処置法・1
 6 穿孔時の処置法・2
 7 縫縮困難時の対応──ENBDとENPD

4章 ケースで学ぶ治療とマネジメントのコツ
 Case.1 十二指腸微小病変に対してCold Snare Polypectomyを施行した2症例
 Case.2 NETをEMR-Lによって治療した症例
 Case.3 十二指腸球部NET G1にLECSを施行した症例
 Case.4 粘膜下腫瘍様の形態を呈した隆起性病変にWater Pressure MethodによるESDを施行した症例
 Case.5 球部の半周を超える大型病変をESDで切除した症例
 Case.6 幽門輪に進展する隆起性病変に対し全層切除+腹腔鏡縫合した症例
 Case.7 家族性大腸腺腫症の十二指腸病変をCold Snare Polypectomyによって治療した症例
 Case.8 Kerckring襞の向こうに隠れそうな症例
 Case.9 傍乳頭憩室に進展した病変に対して部分局注+UEMRが有効であった症例
 Case.10 口側に糸付きクリップをかけるとうまくいく症例
 Case.11 膵側病変に対するD-LECSを施行した症例
 Case.12 3cm程度の病変に対してESDで治療した症例
 Case.13 2/3周を超えるような病変に対してWater Pressure Methodを施行した症例
 Case.14 5cmを超えるような平坦病変の症例
 Case.15 Liftingがうまくいかない症例
 Case.16 Vater乳頭近傍に存在する十二指腸腫瘍に対するESDの症例
 Case.17 Vater乳頭近傍の病変に対して膵胆管ステントが有用であった症例
 Case.18 家族性大腸腺腫症(FAP)の十二指腸病変をCSPによって治療した症例
 Case.19 水平部の前壁でスコープ操作性の悪い症例
 Case.20 下十二指腸角外側の大きな病変に対するpiecemeal Under water-EMRによって治療した症例
 Case.21 ESD+漿膜筋層縫合によるD-LECSによって治療した症例
 Case.22 バルーン内視鏡を用いたESDによって治療した症例
 Case.23 水平部にかかり、肛門側に届きにくいが腹部圧迫で近づいた症例
 Case.24 大型の粘膜欠損部をOTSCによって縫縮した症例
 Case.25 Vater乳頭に接した病変を複数の手技の併用により治療した症例
 Case.26 部分縫縮後にENBPDチューブを挿入した症例

5章 ハッとした症例
 Case.1 SDA裏に隠れていた副乳頭を巻き込んでいた症例
 Case.2 小病変をCold forceps polypectomyしたところ重症急性膵炎を起こした症例
 Case.3 Over-The-Scope Clip(OTSC)により救済しえた動脈性出血を伴う医原性十二指腸穿孔の症例
 Case.4 遅発性穿孔に対して、ENBDとENPDを挿入し改善が得られた症例
 Case.5 EMR-OによってR0切除できた5mmのSM癌の症例
 Case.6 PGAシートを貼付するも閉鎖が得られなかった十二指腸ESD穿孔症例
 Case.7 遅発性穿孔を来した症例
 Case.8 クリップ縫縮にもかかわらず、遅発性穿孔を来した十二指腸ESDの症例

索引

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十二指腸腫瘍にとって今必要とされるタイムリーな指南書
書評者:山本 博徳(自治医大主任教授・内科学/教授・消化器内科学)

 この度小山恒男先生,矢作直久先生による『十二指腸腫瘍の内視鏡治療とマネジメント』が出版された。非常にタイムリーな,今必要とされる指南書である。25年前にわれわれがESDを始めたのは,低侵襲で臓器温存のできる内視鏡治療の確実性を高め,適応を広げたいと考えたからである。適応を広げると本来リンパ節郭清を必要とする外科手術の適応病変にまで踏み込む可能性も出てくるため,詳細な病理診断によりリンパ節転移のリスクを詳しく知りたく,一括摘除にこだわったという経緯がある。

 近年十二指腸腫瘍が脚光を浴びている。十二指腸は,解剖学的に特殊な臓器である。食道,胃,大腸では,標準的な治療として手技も確立したESDではあるが,十二指腸においては極めて技術的にも困難であり,リスクも高い。穿孔等の偶発症を起こすと膵液が後腹膜に漏れることにより,致死的な問題に進展するリスクも高い。一方で,十二指腸の解剖学的な特殊性のため,手術的治療においても高度な技術が要求され,リスク,侵襲の大きな手術となってしまう。

 そういう意味では,内視鏡治療で完遂できればメリットも大きいと言える。十二指腸の内視鏡治療はリスクとベネフィットの両方が大きい手技であると言えるが,それ故その特徴をよく知り,理解し,適切な治療法の選択は非常に重要となる。安易に手を出して取り返しのつかないような合併症を引き起こすことのないように本書を通じて理解を深めていただきたい。

 本書は,十二指腸における内視鏡治療の特殊性,実施に必要な体制,術前チェックの実際,麻酔法,ESDのみならず,cold snare polypectomy,under water-EMR,EMR,LECSも含めた各種治療法の解説とコツに加えて切除後の縫縮や縫縮困難時の対応など治療後の偶発症予防法,また,偶発症発生時の対応法まで詳しく解説されている。そして後半では実際の症例を通じてマネジメントのコツを学べるように豊富な症例が提示されている。これから十二指腸腫瘍の内視鏡治療を始めようとする先生方,十二指腸腫瘍の内視鏡治療をより安全確実に行っていこうと考えている先生方にお薦めの一冊である。ぜひ役立ててほしい。


十二指腸腫瘍内視鏡治療のバイブル
書評者:田中 信治(JA尾道総合病院病院長/広島大名誉教授)

 食道・胃のESDが一般化し,やや遅れて大腸ESDもほぼ一般化しており,現在は海外での展開が進みつつある。一方で,近年増加傾向にある十二指腸腫瘍の治療が発展しつつある。十二指腸は固有筋層が非常に薄いこと,Brunner腺が存在すること,スコープの操作性が不良であること,膵液や胆汁の存在によって後出血や穿孔のリスクが高く,また,緊急手術になると膵頭十二指腸切除など侵襲が大きくなる可能性も高く,その対応が大きな課題であった。しかし,近年の学会や研究会でのさまざまな報告や意見交換を聞いていると,内視鏡医学の進歩が確実にこれらの課題を克服しつつあるなと感じていた。

 今回,小山恒男先生,矢作直久先生の編著書として,本邦屈指のエキスパートたちにより『十二指腸腫瘍の内視鏡治療とマネジメント』が医学書院から発刊された。今回実際に拝見して大変感銘を受けた。本書では,総論で十二指腸,十二指腸腫瘍の特性と起こり得る偶発症から,術前の病変の評価,状況の評価,それに応じたスコープや使用デバイス,治療手技の選択などについて詳述されており,胆膵内視鏡医や外科医との連携・協力体制などチーム医療の重要性も強調されている。さらに,円滑な治療のための鎮静や麻酔に関する解説も加えられている。十二指腸の内視鏡治療は,偶発症によって致死的病態になる可能性があるため,これらを正しく理解することは極めて重要である。

 本書は美しい内視鏡画像をふんだんに駆使し,従来のEMRに加えて,Cold polypectomy,Under water-EMR,ESD,Hybrid ESD,OTSCによる全層切除,さらにはD-LECSも加えて,その基本とコツが簡潔に詳述されており,トラクションをはじめとするさまざまな細かい工夫や各デバイスの特徴と使用法も手の内を隠すことなくしっかりと記述されている。また,偶発症予防法対策や穿孔部の縫縮術などもしっかりと盛り込まれている。そして,本書の最大の特徴として,34例ものさまざまなケーススタディの項が設けられており,深い実践的なトレーニングができるように構成されている。

 本書はこの領域に携わる医師にとってまさにバイブルといえる教科書であり,十二指腸腫瘍の内視鏡治療に携わる医師は必読の書である。本書によって十二指腸腫瘍の内視鏡治療が安全かつ効率的に行われていくことが期待される。最後に,このような素晴らしいトレーニング書を企画し発刊してくださった小山先生,矢作先生に敬意を表したい。

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