看護教育へようこそ 第2版

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看護を教える人のための定番入門書2022年度の第5次看護基礎教育カリキュラム改正に対応しました。地域医療を取り巻く環境が大きく変化するなか、看護教育課程、評価、教育方法について、これからの社会が求める能力の育成に必要な内容を取り上げました。地域共生社会をささえる新時代の看護職を送り出すため、学びの場で精選された実践の知恵をあなたに贈ります。

池西 靜江 / 石束 佳子
発行 2021年05月判型:B5頁:232
ISBN 978-4-260-04652-7
定価 3,300円 (本体3,000円+税)

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第2版 まえがき

 看護基礎教育を担う教員を応援したいと思い,本書の第1版を刊行して6年が経つ.
 その2015年当時,団塊の世代がすべて後期高齢者になる「2025年問題」が世上で盛んに取り上げられていた.国は,医療提供体制の改革が必要と「医療介護総合確保推進法」を制定し,地域における質の高い医療の確保にむけての整備を進めていた時期である.現在に続く「地域包括ケアシステム」の始まりである.その年の4月には,看護師等養成所の指定・監督権限が都道府県に委譲され,看護教育行政のこれからの方向性として,「地域」の役割の強化が現場レベルで求められるようになり始めたころであった.
 その後の年月で医療機能の分化が進展し,都道府県による地域医療構想の策定が行われるなど,医療を取り巻く環境は大きく変化した.こうした社会の変化に対応すべく,看護基礎教育も,保健師助産師看護師学校養成所指定規則及び看護師等養成所の運営に関する指導ガイドラインの第5次改正が行われた.地域包括ケアシステム,そして地域共生社会の推進にむけて,看護基礎教育の場の学びとしては,従来まで在宅療養者とその家族を対象とした「在宅看護論」として科目設定されていたのが,ケア対象や活動の場の拡大をめざし,「地域・在宅看護論」と名称変更した.

 そして令和の時代にあって,これから先の5年10年は,2019年末から世界を席巻している新型コロナウイルス感染症の拡大も影響し,地域医療を取り巻く環境は加速度的に大きく変化すると思われる.生産年齢人口の減少に伴い,医療保険・介護保険などの共助による公的サービスは,形を変えていく必要がある.同時に自助,互助に力を入れていかなければ,人生100年時代に突入するこれからの社会を維持・発展させていくことはできない.
 「人は理想を失ったときに老いる」とはサミュエル・ウルマンの言葉であるが,人々が理想を見失うことなく生き抜くために,生涯現役に近づける健康寿命の延伸をめざすために,看護職の役割は大きい.その役割を担える次代の看護職の養成を行うことが,これからの看護基礎教育にかかわる教員の使命であると筆者は考えている.

 2017(平成29)年に厚生労働省がとりまとめた「保健医療2035提言書」では,「2035年までに予測される需要の増加・多様化・グローバル化,技術革新に対応できるような保健医療におけるパラダイムシフトが必要である」としている.5年後,10年後,さらにその先の地域医療を担う看護職養成にも大きな変化が求められる.2022(令和4)年のカリキュラム改正を好機と捉え,地域に必要とされる看護基礎教育はどうあるべきかを一から考え直し,経験的な教育だけにとらわれず,新たな教育内容,方法を創造していかなければならない.
 本書の第2版は,こうした未来への変化をも踏まえ,教員の皆さまが,現在まさに向き合われている現場での実践の参考になれば,という思いで内容を増補して改訂させていただいた.特に,看護教育課程および評価,そして,新たな教育方法について,これからの社会が求める能力を育成するのに必要と思われる内容や方法を中心に取り上げている.第1版から担当の編集部の青木大祐さんと,今版から制作部柳沢耕平さんに,本書をさらによいもの,読みやすいものにするために大きな力添えをいただいた.心よりお礼を申し上げたい.

 筆者たちは,看護基礎教育の実務に戸惑う教員を応援したいという一心である.
 今,教育現場にいる教員の仲間たちが,これからも教員であり続けられるように,という,第1版からずっと変わらない願いを込めて,執筆させていただいた.

 2021年3月
 池西靜江
 石束佳子

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第2版 まえがき
第1版 まえがき

1 看護教育とは――そのやりがい
 A 学生の変化からみる看護教育のやりがい
 B 教員自身の変化からみる看護教育のやりがい
 C 多様に広がる看護教育のやりがい

2 看護学校とは――そのおもしろさ
 A 学生たちを「看護師にする場」であり,1人の学生が「看護師になる場」である
 B “手塩にかける教育”を実現する場である
 C 日本版デュアルシステムを実現する場である
 D 小さな職場のよさ・強みがある場である

3 これからの看護基礎教育
 A 教えたい看護の専門性――「生活」・「生命」を守ること
 B 専門性を追求し,看護実践能力を育成する教育の内容と方法
 C 「生涯ゆるがないもの,それが基礎」

4 看護教員の心得
 A 看護教員の「心得十か条」

5 看護教員としてのキャリア発達
 A 看護師養成所の専任教員になる資格
 B キャリア発達の道筋
 C キャリア発達を支えるもの

6 看護教員の業務
 A 看護師養成所の専任教員の業務
 B 年次担当の役割

7 学生とのつきあい方と距離感
 A 一定の距離を保ってつきあう
 B 倫理原則に従ったつきあい方をする
 C 学生があこがれるロールモデルを示す

8 困った学生――こんな場合どうする?
 A シングルマザーは増加の一途
 B LGBTの学生――マイノリティとの共存
 C 学校内での盗難
 D SNS利用上の注意点
 E 自我の未成熟な学生
 F 障害をもつ学生

9 「主体的・対話的な深い学び」につなげる教育方法
 A PBLテュートリアル教育
 B TBL(team based learning):チーム基盤型学習法
 C 協同学習
 D 反転授業
 E 遠隔授業

10 授業場面で困ること――こんな場合どうする?
 A 看護の心が伝わらず,困った授業場面
 B 発問意図と違う回答に戸惑う授業場面
 C グループワークをうまく進められず戸惑う授業場面
 D 視聴覚教材で居眠りする学生に戸惑う授業場面
 E アフターコロナ時代の新しい課題と対応

11 授業力を磨く――研究授業の実践と評価
 A 研究授業とは何か――その要件
 B 研究授業で授業力を磨くために
 C 研究授業の効果
 D 研究授業の実際

12 技術教育を考える
 A 看護師教育の技術項目と卒業時の到達度
 B 技術教育の現状と課題
 C 技術教育の教育方法
 D パトリシア・ベナーの教え

13 臨地実習の効果的な指導法
 A 臨地実習の意義
 B 臨地実習の特徴――目標の二重構造とその指導
 C 変化する臨地実習とその指導
 D 臨床判断能力を育成する指導方法

14 看護教育課程を理解する
 A 教育課程理解のための基礎知識
 B 看護教育課程について
 C 今求められる看護基礎教育
 D 看護教育課程編成のプロセス
 E カリキュラムマップの種類
 F カリキュラムデザインの理解
 G 看護教育課程の評価
 H 領域横断科目の導入

15 教育評価の悩みに答える
 A 教育評価とは何か
 B 評価の妥当性と信頼性
 C 教育評価の種類
 D 評価規準・評価基準とルーブリック
 E 評価方法(用具・ツール)
 F 看護教育に積極的に導入したい評価方法
 G 看護実践能力を評価するOSCE

16 教科外活動の運営と課題
 A ホームルーム活動
 B 学校行事および研修など
 C 学生自治会活動
 D 教科外活動の課題と神髄

17 国家試験対策をどう考え,進めるか
 A 慌てる学生のための対策
 B 国家試験対策で必要な事項

18 対談――2人の40年を振り返る
 A なぜ,どうして教員の道に
 B 教員を辞めたいと思ったとき
 C 看護教員になってよかった
 D 教員同士の関係性のなかで
 E コミュニケーションが苦手な学生とのかかわり
 F なぜ看護の専門学校なのか
 G 養成所の管理者になって思うこと
 H その先の夢

あとがき
索引

Column コラム
 ・百年を思うものは人を育てよ
 ・当たり前のことばかり
 ・書籍からの学びは,成長によって変化する
 ・キャリア発達:精神看護学研究会の思い出
 ・対人距離について
 ・学生と看護スペシャリストとの出会い
 ・宣誓の日を迎えるにあたって
 ・egoとself
 ・コロナ禍で活気のない学生
 ・LTD 話し合い学習法
 ・「めんどうくさい」と言う学生Aさん
 ・質問しても答えない学生のために
 ・鹿児島での入院患者体験
 ・指導ガイドライン別表13–2について
 ・ボウダラ――実習での教員の存在
 ・看護学原論の学生レポート
 ・電子カルテ「もどき」のこと
 ・「看護基礎教育検討会」に参加して思うこと
 ・指導教員による評価の違い
 ・学内演習で学生が選ぶ行動
 ・臨地実習評価とルーブリック
 ・教職員が魅せたスタンツ
 ・地域貢献をめざす教科外活動
 ・国試前に慌てる学生たち

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ベテランから若手に贈る,教育現場の経験知の精粋
書評者:波多野 文子(広島県看護教員養成講習会専任教員)

 かかわることの種類が多すぎて,どうしたらいいかわからなくなる……。新たに看護教員として着任した人の多くが,いざ仕事始めに当たって漏らす嘆きである。かくいう私もそうだった。授業と実習指導はもちろん,学生相談,教育課程の編成や運営,国家試験対策,学校行事などなど。それらがそれぞれ看護教育にどういう意味があって,教員としてどうかかわっていけばいいのか。30年以上前にさかのぼる私の場合は,業務の合間に先輩のベテラン教員に細かく教えてもらいながら前進することができた。しかし,現代はそうもいかない。働き方改革で「無駄な時間を省く」という職場環境では,ゆっくり話をする機会もなく,聞きたいことがあってもパソコンに向かっている先輩教員には声がかけにくい。その上,このコロナ禍である。

 そんな若い看護教員に初版以来,本書が頼りになる。看護教員として働く上で必要な多くの形式知と,長年,看護教育の第一線で活躍する著者が,その貴重な経験を後輩に伝えるために言語化しようとした試みが第2版でさらに精選され,詰まっている。

 例えば「臨地実習の評価」では,患者や実習の場の状況など変数が多く,信頼性を担保した評価がしにくい。そこで著者らはパフォーマンス評価で用いるルーブリックの作成を試みるが,目標分析から入ると看護の実践の全体が見えにくくなるという過去の経験を思い出し,そこから再度学習をし直し,臨地実習で使えるルーブリックの作成方法の提案に至った過程が実際的に記されている。

 また,新カリキュラムで提唱されている「臨床判断」や「アクティブラーニング」についても同様である。著者が数々の書物や資料を基に授業を構成して実施し,その結果からさらに工夫を重ねた具体例が,「私案」として紹介されている。

 そして,脇注が優しい。本文中の用語や理論が解説されたり,本文の記述の基になる文献や著者の思い出が紹介されていたりする。p.20の三上満氏のエピソードは,初版時から掲載されている大好きな挿話である。この注だけを拾い読みしても多くの知識が得られるし,看護教育への興味が刺激される。まさに優秀なベテラン教員からの若手教員へのアドバイスの集大成である。その語り口は決して高圧的でも,押しつけでもない。「こう考えたら看護教育に生かせるのではないか」という著者たちの「私案」となっている。明快な解でなくこの形式なのは,教員として後輩である読者への絶対的な指示ではないという意図だと私は思う。多様な考え方を認めた上での提案なのだ。著者のもつ貴重なノウハウを惜しげもなく提供した上で,「私はこう考えてこうしたので,さぁ皆さんも取り組んでみてください。そして自分なりのやり方を見つけてください。あなた自身の経験知を作ってください」といった若手教員への励ましなのだ。

 その他,今回の版では時代に合わせて大幅に加筆・修正がされている。看護教育に関わる人たちには(初版を持っている人も買い替えて),ぜひ手元に置いて,折に触れて開いてほしい本である。

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