摂食嚥下障害学 第2版
言語聴覚臨床でますます需要の高まる摂食嚥下障害を基礎から学ぶ
もっと見る
言語聴覚士が対象にする成人・小児の摂食嚥下障害を網羅する。成人については従来の脳血管障害に加え、進行性疾患、認知症、癌、サルコペニアなど、小児領域では脳性麻痺などの運動障害に加え、自閉症スペクトラム児のいわゆる“食べたがらない子ども”などによる摂食嚥下障害への対応を解説する。養成校の学生に加え、臨床家にも役立つ教科書。リスク管理としての感染防御対策の項も新設。
*「標準言語聴覚障害学」は株式会社医学書院の登録商標です。
更新情報
-
正誤表を追加しました。
2022.10.04
-
正誤表を追加しました。
2022.06.08
-
正誤表を追加しました。
2021.11.25
-
正誤表を追加しました。
2021.04.22
-
正誤表を追加しました。
2021.03.04
- 編集者からのコメント
- 序文
- 目次
- 正誤表
編集者からのコメント
開く
摂食嚥下障害に関する研究・臨床は年々活性化し,かかわる言語聴覚士の数も増加し続けています。また言語聴覚士が対象とする摂食嚥下障害は,従来の脳血管障害中心から,進行性疾患,頭頸部癌,認知症,サルコペニアに伴うものなどに広がっています。また初版から手厚く解説している小児領域においても,自閉スペクトラム症児の偏食や,いわゆる“食べたがらない”子どもなども対象になってきました。これら近年の動向に対応し,それぞれの解説を充実させました。医療・介護の現場で直面する「食べること」に関する幅広い課題についても,新たに項を立てています。
序文
開く
第2版の序
標準言語聴覚障害学のシリーズとして摂食嚥下障害学が上梓されたのは2014年であった.その後約6年を経て第2版が刊行の運びとなった.この間,摂食嚥下障害に関する研究は年を追い活性化してきている.ちなみに2010年代の後半に発表された摂食嚥下障害に関する論文数は4,000本に迫る勢いで失語症の3.6倍,運動障害性構音障害の8.5倍に上る,また論文数も2010年代の前半と後半を比較してみると35%ほど増加している.
言語聴覚士の臨床の中でも摂食嚥下障害の分野はますます大きな比重を占めるに至っている.日本言語聴覚士協会の調査では,2020年現在,協会所属の言語聴覚士数が1万8千人に対して摂食嚥下障害に関わる言語聴覚士の数は1万4千名を超えている.
このような状況を受け,第2版では最新の知見を反映させるとともに,言語聴覚士の扱うさまざまなタイプの摂食嚥下障害に対し広く言及するよう心がけた.評価に関しては三次元CT,高解像度マノメトリーなど検査機器の進歩に伴う知見を加えた.言語聴覚士の行う臨床評価,訓練方法についても記述を改めた.
言語聴覚士が対象とする摂食嚥下障害の分野は,以前は脳血管障害による摂食嚥下障害が中心であったが,進行性疾患,頭頸部癌,認知症,サルコペニアに伴う摂食嚥下障害などより広い範囲の障害を対象とするようになっている.小児の分野でも脳性麻痺などの運動障害に起因する摂食嚥下障害にとどまらず,自閉スペクトラム症児の偏食やいわゆる“食べたがらない” 子供たちの問題など,その対象とする領域は広がりを増している.初版の編集方針としてこれらの障害に対しても取り上げるようにしたが,2版では近年の動向も踏まえより充実した内容とした.
言語聴覚士が医療・介護の現場で直面する,食べることに関する課題は医学的な問題にとどまらない.医療者側の判断と患者家族の希望,価値観との葛藤は臨床現場でしばしば経験するところである.このような臨床倫理の問題に関しても項を立て説明を加えた.
本書の企画,執筆は2020年を中心に行われたが,折しもCOVID-19が世界的に蔓延し医療現場は混乱の中にある.摂食嚥下障害の臨床にとってリスク管理としての感染防御は欠かすことのできない事項である.この点に関しても詳述し読者の便宜を図った.
執筆にあたっては日本における摂食嚥下障害リハビリテーションの導入,発展に寄与された先達の先生方から新進気鋭の先生方まで広くご協力をいただいた.この時期,日々の業務に加えCOVID-19の対応に翻弄される中,多大な労をお取りいただいたことに感謝申し上げたい.併せて,刊行にあたり滞りがちな編集を粘り強くご支援いただいた医学書院編集部の皆様に深謝申し上げる.
2020年12月
編集
椎名英貴
倉智雅子
目次
開く
第1章 摂食嚥下機能とその障害
1 発達と成熟
A 摂食嚥下機能の発達と成熟
B 正常な嚥下
2 加齢
A 加齢に伴う変化
第2章 摂食嚥下障害の分類
1 小児の摂食嚥下障害
A 小児摂食嚥下障害とは
B 脳性麻痺に伴う摂食嚥下障害
C 小児後天性脳損傷に伴う摂食嚥下障害
D 先天性疾患に伴う嚥下障害
E 自閉スペクトラム症と摂食
F 器質性障害(口唇・口蓋裂)に伴う摂食嚥下障害
G 食物拒否と回避・制限性食物摂取症
2 成人の摂食嚥下障害
A はじめに
B 運動障害に伴う摂食嚥下障害
C 悪性腫瘍に伴う摂食・嚥下障害
D 高次脳機能障害,認知症に伴う摂食嚥下障害
E 加齢に伴う摂食嚥下障害-サルコペニア,フレイルとの関係
F その他
第3章 摂食嚥下障害によくみられる合併症
1 小児の合併症とリスク管理
A はじめに
B 呼吸器系の問題
C 消化器系の問題
D てんかん,薬物の影響
2 成人の合併症とリスク管理
A はじめに
B 誤嚥性肺炎・窒息・気管切開
C 低栄養,脱水,非経口栄養
3 言語聴覚士に求められる感染症対策
第4章 言語聴覚士の役割とチームアプローチ
A 言語聴覚士の基本的な役割
B 言語聴覚士と倫理
C チームアプローチ
第5章 評価・スクリーニング・検査
1 小児の摂食嚥下障害の評価
A 小児評価の概要と流れ
B 情報の収集
C 臨床的評価
D 機器を使用した検査
E 情報の統合と計画の立案
2 成人の摂食嚥下障害の評価
A 評価の流れ
B 情報収集・問診
C 観察・臨床評価
D スクリーニングテスト
E 臨床評価
3 嚥下造影
A 嚥下造影とは
B 嚥下造影の重要性
C 嚥下造影の実際
D 嚥下造影の読影
E 誤嚥や残留などの異常所見をみたとき
F 主な疾患に対する留意点
4 嚥下内視鏡検査
A VEの観察ポイント
B フードテスト・着色水テスト
C VEの長所と短所
5 その他の検査
A はじめに
B 嚥下CT
C マノメトリー
D 筋電図
E 超音波
6 情報の統合 臨床推論と介入計画の立案
A 摂食嚥下障害の有無
B 摂食嚥下障害の詳細な病態把握
C 摂食嚥下障害の重症度
D 摂食嚥下障害の予後予測
E 摂食嚥下障害の訓練適応
F 摂食嚥下障害に関するリスクマネジメント
G ICFに基づく問題整理と介入計画立案
第6章 小児の摂食嚥下訓練
1 小児摂食嚥下リハビリテーションの概要
A 小児摂食嚥下障害の特性
2 言語聴覚士による摂食嚥下リハビリテーション
A 姿勢へのアプローチ
B 食物形態へのアプローチ
C 摂食嚥下機能へのアプローチ
D 家族支援
E 年代別の課題と対応
3 言語聴覚士の介入 疾患別
A 脳性麻痺および類似疾患
B 先天性疾患に伴う嚥下障害
C 自閉スペクトラム症に伴う摂食嚥下障害
D 口唇・口蓋裂に伴う摂食嚥下障害
E 食物拒否に対する対応
第7章 成人の治療・訓練
1 成人分野の概要
2 言語聴覚士の介入
A 間接訓練と直接訓練
B 脳血管障害
C 神経筋疾患
D 器質性疾患
E 加齢・廃用・認知症など
第8章 摂食嚥下障害リハビリテーション
1 小児の嚥下障害リハビリテーションの課題と展望
A 歴史
B 今後の展望
2 成人の摂食嚥下リハビリテーションの課題と展望
A 嚥下リハビリテーションのこれまで
B 今後の課題
参考図書
索引
正誤表
開く
本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。
更新情報
-
正誤表を追加しました。
2022.10.04
-
正誤表を追加しました。
2022.06.08
-
正誤表を追加しました。
2021.11.25
-
正誤表を追加しました。
2021.04.22
-
正誤表を追加しました。
2021.03.04