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誤嚥予防,食事のためのポジショニングPOTTプログラム[Web動画付]

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食事の際の適切な姿勢を整えるポジショニングについて解説する1冊。POTTプログラム〔ポジショニングで(PO)食べるよろこびを(T)伝える(T)プログラム〕は食事の際の適切なポジショニングをとりやすくするために開発された技術。その技術は7つのポイントに分かれており、実践しやすく、それによって食事姿勢が整えやすくなり好循環を生みだします。そのコンセプト、技術をわかりやすく解説しています。

編集 迫田 綾子 / 北出 貴則 / 竹市 美加
発行 2023年02月判型:B5頁:192
ISBN 978-4-260-04322-9
定価 2,750円 (本体2,500円+税)

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  • 付録Web動画
  • 序文
  • 目次
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付録として、本書で解説しているPOTTプログラムの技術、一連の動きをより理解していただくためにWeb動画が付いています。本書に記載されたIDとPASSを入力してください。

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まえがき

 私たちには希望があります。それは,全ての人が食べるよろこびを享受できる社会の実現です。私たちには夢があります。その社会の実現のために,POTT(ぽっと)プログラムを通して食べるよろこびを伝え,支え合うことです。本書は,その希望や夢を持つ多くの実践者によって執筆されました。

 誤嚥を防ぐ食事時のポジショニング教育モデルの開発から10年余,新型コロナウイルス感染症の大波をかいくぐり,「POTTプログラム」の冠付き書籍を出版できました。POTT(ぽっと)とは,「ポジショニングで(PO)食べるよろこびを(T)伝える(T)」の愛称で,誰もが気軽に呼び実践できるようにと願いを込めました。POTTプログラムは技術と教育方法で構成されており,研究や実践から導き出した新たな臨床知であり,ケア技術です。そのゴールは,誤嚥予防や食事の自立支援を通じ,最終的には「食べるよろこび」をとおしてQOLの向上を目指すことです。
 上記の開発,研究過程では,食事姿勢にかかわるニーズや環境アセスメントから,看護理論や先行研究を参考にして教育モデル(POTTプログラム)を構築するに至りました。POTTプログラムの理論枠組は,ヘルスプロモーションの総合モデルであるプリシード・プロシードモデルで,個人や小集団,地域全体の保健行動を推進するために活用できます。
 看護や介護現場では,POTTプログラムに出会ったことで,「多忙でポジショニングはできない」という意識から転じ,「忙しいけどやる!」「ポジショニングなくして食支援は始まらない」と言い切る頼もしい人が増えてきました。そういった成功体験は,ケアするよろこびとなり,相互成長につながっています。そして,ポジショニング後の対象者の笑顔は,ケアする者の至福の瞬間になっています。

 本書は,POTTプログラムの「心を技」となる基盤を紹介し,教育や臨床現場で活用できる,わかりやすいテキストをめざしました。
 第1章は,POTTプログラムの概要,ポジショニング(姿勢調整)の前提である摂食嚥下に関連する基礎知識を紹介しています。チーム活動では,本章の共通理解が実践力向上や定着の鍵になります。
 第2章は,POTTプログラムの技術を解説しています。具体的には,ベッド上および車いすでのポジショニング技術です。各スキルには,写真,手順,根拠等を記しています。動画では標準的なスキルをイメージでき,摂食嚥下障害のある人に対する安全で安楽なポジショニングやトレーニングに活用できます。
 第3章は,病院,施設でのPOTTプログラム実践例です。生活の場の違いはあるものの,食事ケアの基本としてポジショニングの有効性が示されています。
 第4章は,POTTプログラムを伝える,拡げる方法を取りあげています。基礎から体験的に学ぶ環境づくりやリーダー育成という伝承方法について,学ぶことと教えるという視点で紹介しています。
 付章は,POTTプログラムに用いる用具の紹介です。食事環境を整えることは,食べるよろこびをさらに向上させます。ベッドおよび車いすの構造評価から,用具の開発や工夫の最新情報まで紹介しています。

 超高齢社会の進行で,摂食嚥下障害のある人が700万人に近づくなか,摂食嚥下障害の治療やリハビリテーションは急速に発展してきました。しかし,生活の中での誤嚥予防やポジショニングは,やっとスタートラインに着いた状態です。2018年,私たちの夢や希望を実現するために「POTTプロジェクト」を立ち上げ,一刻も早く伝承したいと思い,POTT研修会やセミナーを実施してきましたが,食事ケアにかかわる人のレジュネスに違いがありました。そこで,基礎知識や実践方法を本書から汲み取っていただければと考えました。POTTプログラムが,本書を開いてくださった人の礎や希望になれば幸いです。
 POTTプログラム開発や実践の中で,これまでに多くのご支援やご協力をいただいてきました。改めて深く感謝申し上げます。また出版に当たり,たゆみない努力を重ねてくださった医学書院吉田拓也氏に厚くお礼を申し上げます。

 2023年1月吉日
 日本赤十字広島看護大学名誉教授
 POTTプロジェクト代表
 迫田綾子

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まえがき
本書のWeb動画について

第1章 POTTプログラム,食事姿勢,誤嚥の基礎知識
  POTTプログラムの概要
  食事姿勢と誤嚥の基礎知識

第2章 POTTプログラムの技術
  ポジショニングの進め方
  ベッド上ポジショニング(基本)リクライニング位30~45度――POTTスキル1~7の方法とポイント,根拠
  ベッド上ポジショニング(基本)リクライニング位60度――POTTスキル1~7の方法とポイント,根拠
  ベッド上ポジショニング(応用)状態別のポジショニング――円背,四肢麻痺,耐久性低下等
  車いすのポジショニング(基本)――POTTスキル1~7の方法とポイント,根拠
  車いすのポジショニング(応用)――状態別の車いすポジショニング
  ポジショニング別食事介助スキル・段階的食形態変更

第3章 病院,施設でのPOTTプログラムの実践――食べるよろこびを伝える
  早期経口摂取につなぐための 急性期病院におけるPOTTプログラムの実践
  回復期リハビリテーション病院における実践――自分で食べるためのリハビリテーションとPOTTプログラム
  医療療養型病棟における実践――少しでも自分で食事ができる
  地域包括ケア病棟における実践――皆で食べるよろこびを感じるためのPOTTプログラム
  精神科病院における実践――認知症高齢者に対する食支援とPOTT
  在宅におけるPOTTプログラムの実践――認知症夫婦の日常を支える食支援

第4章 POTTプログラムを伝える,拡げる
  POTTプログラムを伝える教育
  病院・施設における教育――全看護師へのPOTTプログラムの技術伝承を目指して
  病院・施設における教育――新人教育で取り組むPOTTプログラム
  病院・施設における教育――現任教育へのPOTTプログラム導入
  病院・施設における教育――ケアリンピックでポジショニング技術を拡げる
  病院・施設における教育――看護基礎教育におけるPOTTプログラム

付章 POTTプログラムに関する用具,工夫
  ベッド,車いすの知識
  その他の物品
  POTTプログラムで用いる用品
  食形態の工夫――学会分類2021と他分類の対応

索引

POTTコラム
  回復期病棟でのPOTTプログラムの即時効果
  精神科でPOTTプログラムを継続したことで見えてきたこと
  患者体験が広げるケアの輪
  多職種に浸透したポジショニングの重要性
  POTTプログラム導入を通して,患者の回復過程と食べるよろこびを共有する
  看護学生のPOTTプログラムの実践により,食べるよろこびを取り戻す
  佐渡からの手紙――学生に伝えたい看護の実践知

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ポジショニングの基本と心と技をつなぐ1冊
書評者:田中 靖代(ナーシングホーム気の里・代表)

 このほど、たんぽぽ色の表紙の書籍が届いた。なんとも温かく、優しい風が吹き上がるような印象だ。子どもの頃に見た図鑑では、「たんぽぽの花びらに見える1枚1枚が1つの花であり、その数だけ種が付いている。根っこは、1メートル以上も長く張ることもある」とあった。そして、寒い冬を過ぎ、春になると昨年よりもいっぱいになって登場する。
 連想したたんぽぽの広がりが、希望に満ちた看護・介護の未来と重なるように感じながら書籍を手に取った。

●読み取れる編著者のダイナミックな思い
 「ポジショニング」と言えば、褥瘡治療としても知られている。ポジショニングによる除圧やずれからの解放、栄養状態の改善等によって、褥瘡の治癒、患者のQOL向上につなげる。このケアのプロセスは、生理機能を整え、安楽性を求め続けるものである。
 食や誤嚥予防のための「ポジショニング」にも同様のケアのプロセスがある。ただ、誤嚥を防ぐためには呼吸や意識状態、リラックスした体位や環境、食事の形態、介助者の手技等、さまざまな要因を考慮しなければならず、ポジショニングだけでは解決できないが、おそらく本書の狙いはそんな平面的なことではなさそうだ。
 本書には、内容の柱である食に関わるポジショニングの基本とそこに向き合う人の心(姿勢)と技を確立させたい迫田氏らのダイナミックな思いが潜む。まるで「看護はこういうものよ」と奥深さを伝えつつ、私たち読者にエールを送ってくれているようだ。
 そして、すでに先を歩くPOTTプロジェクトにかかわる執筆者らが実践によってエールを支えている。私は、引き込まれるように書籍と向き合った。

●多様な技術の示唆に富んだ1冊
 私が出会ったジャパン・コーマ・スケール(JCS)の意識レベル3桁の患者も座位でのポジショニングを実践すると開眼し、摂食嚥下の先行期の課題を改善できた。これも書籍に記された実践の効果だ。
 方法は簡単で、書籍の通りに真似すればよい。本書の内容は簡潔で分かりやすく、さらにきれいな写真が満載で動画も付いているため、実践しやすいのである。
 やや大判のバスタオルで脊椎や肢位を支え、足裏もクッション等に接地して安定した。この姿勢ならば、食べられそうだ。この「驚きの技」は、患者に思いをかけ続けるからこそ生まれるものである。本書には、そういった技を引き出し、多様に活用するための示唆が多くある。
 ちなみに文章はおおらかに配置されており、余白のスペースに読者の質問やコメントも添えられる。この作業が書籍と読者を一体化させ、「私のオリジナル書籍」になっていくようで楽しい。
 とにかく、すごすぎる1冊だ。

(「訪問看護と介護」 Vol.28 No.5 掲載)


「食べるよろこびを伝え,支え合う」を実現する1冊
書評者:川嶋 みどり(日本赤十字看護大名誉教授)

 人間の食事は生命の維持やエネルギー源になるばかりか,美味しく楽しく食べることで幸福感や充実感さえ得られ,飲食を媒介にして親睦や相互交流を深めてきた。また,古くから家庭でも病院でも,病人の食事は療養の基本とされ重要な位置を占めてきた。終末期であってもスプーン1杯のスープが生きる力に通じるように,衰弱している病人が少量でも何かを食べることで意欲が増し回復に向かうことは,私の看護師現役時代に少なからず経験したことである。だが,輸液,非経口的栄養摂取法の発達,簡便な胃瘻造設,NST加算などの診療報酬による誘導,加えて分業や病院給食の外部化に伴い,患者の食事の世話への看護師の関心も次第に薄れてきた印象がある。

 一方,高齢化のもとで70歳以上の高齢者の肺炎の7割以上が誤嚥性肺炎であるという厚生労働省のデータなどがあることから,摂食嚥下障害者への対応については看護・介護面でも注意喚起が促されてきた。そのため誤嚥性肺炎の予防策としては,口腔ケア,口中に含む食事量の管理,食事姿勢の調整などが知られているものの,食事中に1回むせただけで経口摂取を禁じ,経管栄養に切り替えて食べる楽しみを奪う現状もある。

 上記のような背景のもとでも,「口から食べることの意味」を尊重し「何とかして食べてほしい,安全に嚥下してほしい」思いを抱いている看護師の存在も無視できない。そのような思いを掬い上げ,組織化し具体化するために立ち上げられたのが,本書編集者らによるPOTT【ポジショニングで(PO)食べるよろこびを(T)伝える(T)】プロジェクトである。誤嚥を予防し食事の自立を通して豊かな食生活をめざし,技術と教育方法のプログラムを構成した。その核をポジショニングに特化した契機は,POTTプロジェクト代表で本書の編者の迫田綾子氏が受講した摂食・嚥下障害看護認定看護師教育課程の演習(2009)にあった。同時に「誤嚥を予防する食事時のポジショニング教育モデルの構築」研究〔科学研究費助成事業.基盤研究(C),2009〕から得た臨床知を踏まえて,数年以上にわたってプログラムの効果検証研究を重ねながら普及研修の基盤を整えた。以来,その活動は全国各地に飛び,POTTプログラムの心と技の伝承を受けた看護師らの数も相当数に及んでいるという。

 そのプログラムは,ベッド上および車いすポジショニング,食前,食事中,食後の姿勢調整と食事介助の実際で,本書はその多彩な組み合わせのバリエーションに沿いながら,ビジュアルな展開によって初心者にも理解可能な内容になっている。今後,本技術を広く高齢者ケアに活用するためには介護分野に普及させる必要があり,ベッド上ではなく通常の食卓での椅座位におけるポジショニングの記述が必須の課題であろう。

 ともあれ,全身状態,姿勢保持能力,摂食嚥下機能の総合アセスメントにより,無理のない合理的なポジショニングを決定・保持し,ケアする人もされる人も「食べるよろこびを伝え,支え合う」。その結果,受け手のQOLと支援者の次なるケアへのモチベーションを高めることはいうまでもない。ぜひ一読をお勧めする。

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