標準組織学 各論 第6版
かたちの意味と機能を学べる組織学の決定版テキスト各論編,充実の改訂第6版
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読んで面白く、わかりやすい教科書として絶大な支持を獲得している『標準組織学』。本書は、脈管系から神経系まで臓器ごとに解説した「各論」編の改訂第6版。著者渾身の美麗な組織写真やイラストが読者を圧倒。実習に役立つHE染色などの光顕写真を多数追加し、ますますビジュアルを強化。分子レベル、遺伝子レベルの新知見もカバーし、人体の構造と機能に沿って「生きた組織学」を楽しく学べる、組織学の決定版!
● | 『標準医学シリーズ 医学書院eテキスト版』は「基礎セット」「臨床セット」「基礎+臨床セット」のいずれかをお選びいただくセット商品です。 |
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序文
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第6版 序
5年ぶりにこの『標準組織学 各論』を改訂することになった。医学領域での学問の進歩は急速であるが,組織学は医学の基盤をつくる学問のひとつである。このことを念頭に置きながら,形態学の信条を忘れることなく今回も改訂を行なった。形態学の信条とは,「私たち形態学者は,自分の目で見たものしか信じない。これは信条であり,先輩からたたきこまれた習性でもある。」というものである。オンラインのバーチャル授業が増えるなか,目で見て経験することを大切にする教科書が医学生の拠り所になることを期待している。
おおまかな括りかたをすれば,この本の原著者(藤田尚男,藤田恒夫,ともに故人)は,電顕観察が華やかなころに活躍した研究者であった。そのあらわれとして,本書の旧版で用いた図には電顕写真がかなり多かった。一方,われわれ改訂者をふくむ次の世代の研究者は,組織化学,遺伝子解析が盛んな時期に育ってきた。そういった背景にあって,この第6版では組織化学の図を増やし,あわせて実習の助けになる光顕レベルの図を充実させるべく努力を重ね,分子レベルや遺伝子レベルの知見についてもできるかぎり追加した。こういった内容の変化は,医学生にとっては好ましいことであると信じている。
図の総数は,本書がアトラス的に使用されることを考慮して増加させた(71枚の増加)。基本であるヘマトキシリン-エオジン染色標本も,できるかぎり増やした。ヒトを中心とした図を用いる努力をしてきたが,組織化学・電顕ではどうしても動物を用いざるをえなかった。
他書にはあまり見かけない点として,サイズの小さな文字で記された小活字の部分が本文の随所に混在していることがある。通常サイズの部分よりは重要ではなく,補足的要素を含んでいると理解してほしい。また,以前より本書で使われていた「つけはなし(漢字や平仮名が続く場合など,意味がとりやすいように文字の間に狭い空きスペースをもうけること。この文の後半を参照)」は,読みやすくする工夫であるが,一般に なじみが薄いこともあり,今版では できるかぎり減らした。
総論と同時にこれだけのボリュームのある本を少人数で改訂するのはわれわれの力量を超えており,くじけそうになったこともある。そういうなか,貴重な写真を提供していただき,アドバイスをいただいたことは,大きな励ましになった。ここに御礼を申しあげる。とくに,章単位でご協力いただいた方々のお名前をあげさせていただく(敬称略)。
口腔と歯(大峡 淳),男性生殖器(仲田浩規),女性生殖器(小林純子),皮膚(氏家英之),神経系(寺島俊雄)
また,前版と同様に,医学書院 医学書籍編集部の中 嘉子氏と制作部の富岡信貴氏にこの第6版改訂を担当してもらったことは,大きな安心につながった。こころから感謝したい。
2022年1月
改訂者ら
目次
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序章 各論の構成
1章 脈管系
毛細血管
動脈
静脈
動静脈吻合
心臓
リンパ管
2章 リンパ性器官
リンパ浸潤とクリプトパッチ
リンパ小節
リンパ節
扁桃
胸腺
3章 脾臓と骨髄
脾臓
骨髄
4章 口腔と歯
口腔
歯
唾液腺
咽頭
5章 食道と胃腸
食道
胃
小腸
大腸
6章 肝臓と膵臓
肝臓
膵臓
7章 呼吸器系
鼻腔と副鼻腔
咽頭
喉頭
気管
肺
8章 泌尿器系
腎臓
腎盤と尿管
膀胱
尿道
9章 胃腸膵内分泌系
内分泌系の概要
胃腸膵(GEP)内分泌系
消化管の内分泌
ランゲルハンス島(膵島)
10章 下垂体と松果体
下垂体
松果体
11章 甲状腺と上皮小体
甲状腺
上皮小体(副甲状腺)
12章 副腎とパラガングリオン
副腎
パラガングリオン
13章 男性生殖器
精巣
精路とその付属腺
陰茎
14章 女性生殖器
卵巣
卵管
子宮
胎盤と𦜝帯
腟
外陰部
15章 皮膚
表皮
真皮
皮下組織
角質器
皮膚の腺
皮膚の脈管と神経
16章 視覚器
眼球線維膜
眼球血管膜
眼球神経膜
眼球の内容物
眼球の血管と神経
眼球付属器(副眼器)
17章 平衡聴覚器
外耳
中耳
内耳
18章 味覚器と嗅覚器
味覚器
嗅覚器
19章 大脳
終脳(大脳半球)
間脳
20章 脳幹,小脳,脊髄
中脳
橋
延髄
小脳
脊髄
21章 末梢神経,髄膜,脳室
末梢神経
髄膜と脳室
和文索引
欧文索引
人名索引
書評
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美しい形態像から始める組織学学習の第一歩
書評者:内山 安男(順大老人性疾患病態・治療研究センターセンター長)
藤田・藤田の『標準組織学』は,総論と各論からなる大冊です。教科書は,その時点で科学的に事実と認められている事象を基に書き上げることが必要です。これを徹底すると,教科書ほどつまらない読み物はありません。しかし,個人で書き上げる教科書は,事実に基づく記載に独自の味付けをすることで面白くなると考えられます。今や故人となられた藤田恒夫先生と藤田尚男先生の手による『標準組織学』は,その典型であると思います。
藤田恒夫先生が本書第4版の執筆時,岩永敏彦先生に多くを依頼されていたことを記憶しています。版を重ねるごとに,岩永先生の免疫組織細胞化学の技が随所にちりばめられるようになりました。岩永先生は,藤田恒夫先生の下で,免疫染色を武器に消化管をはじめさまざまな領域のペプチドホルモン産生細胞(脳腸ペプチドホルモン)の研究を進めてきました。その後,独立して北大に移り,獣医学部,医学部と経験され,第5版で『標準組織学』の改訂者になられています。本書はフォローしている論文の数だけでも膨大です。この5~7年間で,新たに加える事項と切り捨てる事項を調べるだけでも大変な作業です。藤田恒夫先生は科学者であるとともに文筆家でもあり,非常にたくさんの本を世に出されました。岩永先生も形態関連の本を出版されていますが,筆まめな先生でないと,この大著を仕上げるのは至難の業かもしれません。
第6版の改訂では章構成はほぼ変わりませんが,内容は,かなり踏み込んで手を入れられています。岩永先生は総論の序で,「形態を主にした研究はdescriptive(記述的)で物事の本質に迫ることができず,mechanistic(メカニズムを解明するもの)な研究より低くみられる傾向にある。しかし,現象や形態像を正確に記述することこそが医学の基本である」という趣旨のことを述べられています。本書の電子顕微鏡像,光学顕微鏡像,免疫組織細胞化学的染色像は,どれをとっても美しい像ばかりです。これは科学的な思考力を要求される若き学徒にとって,重要な刷り込みになります。美しい形態を見ると,細胞の中の小器官が何かを語りかけてくれるような,そんな感覚にとらわれます。これが組織学学習の第一歩であると思います。
第6版では,共著者の方々の特徴も十分に反映されています。読みやすい,わかりやすい,さらに高度な内容も含む教科書を一人で作り上げることは,不可能に近い話です。本書も,総論では岩永ひろみ先生,小林純子先生が,各論では渡部剛先生が共に改訂者となっています。そして諸所で素晴らしい仲間の手による章もあり,内容をより豊かにしています。
本書は,組織形態学に分子細胞生物学的要素を随所に取り込んだ教科書です。若い学生が本書を読み込むことで,形態科学の歴史的な背景を知ることができ,読み物としても一級品です。学部学生のみならず,院生や若き研究者にとっても手元に置いておきたい教科書の一つです。