PT臨床評価ガイド

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理学療法介入にあたり、評価は避けて通れない。本書は、若手理学療法士や理学療法学生に向けて、臨床の現場で求められている評価を漏れなく紹介するとともに、可能な限り実際の評価表を掲載している点もポイント。各評価について、その実施方法や注意点、結果の解釈や活用のしかたが簡潔な記載により容易に理解できる。また、初学者にとって特に必要となる、領域共通の評価も充実させた。臨床的視点でまとめられたPT関係者必携の1冊。

編集 畠 昌史 / 藤野 雄次 / 松田 雅弘 / 田屋 雅信
発行 2022年01月判型:A5頁:656
ISBN 978-4-260-04295-6
定価 6,820円 (本体6,200円+税)

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序――臨床現場をよく知るPTだからこそ,臨床で本当に使える理学療法評価の本を

 縁あって,書籍『そのとき理学療法士はこう考える』(医学書院,2017)の出版に携わらせていただきました.この本を手にとっていただいた皆さんより,「評価の部分をもっと詳しく知りたい」「やっぱり評価が大事だよね」「事例報告で使われている評価について説明してほしい」など,理学療法評価についての声を多く頂戴したことが本書を企画するきっかけとなりました.
 理学療法が,評価ナシで始まることはありません.
 物事において,何かを解決しようとするとき,その原因を追究することが1番の近道であるといえます.家電が動かなくなればどの部品が悪いか調べる,ケンカの仲直りをするときはなぜケンカをしたのか振り返るのと同じで,理学療法においても,対象者の主訴を聞き,評価することによって介入に繋げます.したがって,評価の重要性は言うまでもなく,「評価がないと始まらない」のです.
 本書の内容は,タイトルのとおり「臨床」を意識したものになっています.この1冊があればどんな理学療法場面でも対応できるように,あらゆる分野の評価を網羅しています.「臨床現場をよく知るPT だからこそ,臨床で本当に使える理学療法評価の本を提供したい」という思いのもと,いずれの項目も優れた臨床的視点を持った方々に執筆していただきました.そして,評価指標や評価方法のみではなく,解釈のヒントや臨床でどう活用するかまで理解できるように工夫しました.われわれのマインドが,これから臨床実習に出る理学療法学生,臨床現場に出たばかりの理学療法士,教育にあたっている理学療法士の方々に届き,実践の役に立つことを願っています.
 最後に,私は事あるごとに「周りの人に恵まれているな」と感じて理学療法士としての日々を送ってきましたが,本書に関わらせていただき,それを確信することとなりました.このような素晴らしい機会と出会いを与えてくださり,温かく支え続けて下さった医学書院の北條立人氏に心から感謝を申し上げます.まさに協働した仲間である,共同編集者の藤野雄次氏,松田雅弘氏,田屋雅信氏に改めて最大限の感謝を申し上げます.そして素晴らしい原稿を執筆してくださった皆様,池上総合病院,千川篠田整形外科,厚生連高岡病院の皆様,大学・大学院の恩師・同期・先輩・後輩,そして家族にこの場を借りて感謝を伝えたいと思います.いつも本当に,ありがとうございます.

 2021年11月
 編者を代表して
 畠 昌史

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イントロダクション
  ・理学療法における評価とは
  ・評価の流れ
  ・評価のタイミング
  ・理学療法評価項目
  ・評価の手法
  ・評価のまとめ(統合と解釈)
  ・評価の記録・報告
  ・評価のとらえかた
  ・評価の選択と組み立て

共通
  ・医療面接
  ・視診・触診
  ・意識障害
  ・関節可動域検査,関節弛緩性の検査
  ・筋力:MMT,HHDによる筋力検査,握力
  ・腱反射・病的反射
  ・筋緊張検査
  ・協調機能評価
  ・片麻痺機能検査:BRS
  ・脳神経検査
  ・感覚検査
  ・疼痛
  ・原始反射,姿勢反射
  ・バランス
  ・動作分析
  ・認知機能:HDS-R,MMSE
  ・ADL評価
  ・QOL評価:SF-36®,LSA
  ・転倒 
  ・アライメント(姿勢評価)
  ・栄養:SGA, CONUT, MNA
  ・形態測定
  ・バイタルサイン,フィジカルアセスメント
  ・画像の読影方法 ①運動器
  ・画像の読影方法 ②脳:CT・MRI
  ・画像の読影方法 ③胸部X線画像
  ・血液検査
  ・循環機能検査:心電図
  ・呼吸機能検査:肺機能検査

脳血管障害
  ・運動機能評価:FMA, SIAS
  ・筋緊張:体幹の筋緊張評価
  ・失調:SARA
  ・体幹機能・基本動作:TIS,TCT
  ・バランス:BESTest
  ・脳卒中の姿勢・動作分析:立ち上がり,歩行
  ・装具:装具の種類,装具の選定方法・適応,フィッティング
  ・高次脳機能障害
  ・嚥下機能
  ・脊髄損傷の機能的な評価
  ・脊髄損傷の予後予測
  ・褥瘡評価:DESIGN-R®2020

運動器障害
  ・運動器疾患における痛みの評価:問診・運動検査
  ・レッドフラッグ&イエローフラッグ
  ・エンドフィール
  ・整形外科的テスト
  ・切断
 部位・疾患別特異的機能障害・QOL
  ・頚部痛
  ・腰痛症
  ・変形性関節症(股関節・膝関節)
  ・足部・足関節
  ・上肢・肩
  ・関節リウマチ
  ・治療成績判定基準・機能評価法:JOAスコアなど

内部障害
 ICU
  ・ABCDEFバンドル
  ・人工呼吸器のパラメータ
  ・Medical Research Council(MRC) Score
  ・血液ガス
 循環器
  ・冠動脈造影検査
  ・右心カテーテル(RHC)
  ・心臓超音波検査(UCG)
  ・12誘導心電図
  ・CT検査:大血管疾患
  ・動脈硬化検査
  ・運動耐容能
  ・NYHAの心機能分類
  ・心理評価
  ・自己効力感(self efficacy)
 呼吸器
  ・重症度分類,病歴
  ・酸素療法
  ・呼吸筋力
  ・運動耐容能
  ・QOL:SGRQ, CRQ, CAT
 糖尿病
  ・糖尿病の評価
 神経筋疾患
  ・パーキンソン病
  ・筋萎縮性側索硬化症
  ・筋ジストロフィー
  ・脊髄小脳変性症
  ・多発性硬化症
  ・ギランバレー症候群
  ・重症筋無力症
 小児系疾患
  ・脳性麻痺
  ・二分脊椎
  ・ダウン症候群
 がん
  ・がん患者のパフォーマンス評価
  ・cFAS
  ・疼痛評価
  ・栄養評価
  ・血液検査の解釈
  ・ADL評価
  ・QOL評価
  ・心理評価
 高齢期
  ・ロコモティブシンドローム
  ・フレイル
  ・サルコペニア
  ・障害高齢者の日常生活自立度判定基準,認知症高齢者の日常生活自立度判定基準

評価法索引
索引

NOTE
 ・「BRS ○~○」という表記は適切か
 ・MCIとは
 ・なぜ胸部X線画像を確認しなければならないのか?
 ・血液検査の異常値
 ・MRC score実施の際の注意点
 ・冠動脈の狭窄率
 ・糖尿病の診断基準
 ・排尿障害ならびに感覚障害について
 ・ダウン症児の特徴
 ・ロコモ,フレイル,サルコペニア

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「生きた評価」を扱った若手PTにベストバイな参考書
書評者:生野 公貴(西大和リハビリテーション病院)

 「理学療法士は評価に始まり評価に終わる」。この言葉は,私が養成校の学生時代に教員の先生から事あるごとに聞かされた言葉である。当時はそれほど“評価”が重要なものと考えていなかったが,臨床実習に出ると,その考えは即座に打ち砕かれ,「評価に始まり評価に終わる」が理学療法とっていかに重要か痛感したことを鮮明に覚えている。

 理学療法評価における各種の検査測定項目は,この20年で大きく変化している。20年前の教科書を眺めてみると,そこにはアウトカム(帰結評価)という概念が乏しく,定性的な評価が数多く記載されていることに気付く。本書で取り上げられている項目は,普遍的な評価法に加えて,近年の研究結果に基づくアウトカム評価がよいあんばいで付け加えられており,必要最低限どころか高い水準で理学療法を実施するための評価がじゅうぶんそろっている。

 本書を読んだ第一の感想が“生きた評価”が使われているという点である。それは,執筆された先生方が臨床の最前線において高いレベルで理学療法を実践し,現場で活用されている評価を産地直送しているからであろうと想像する。疾患別の章では,病態評価に使われるもののほかに,疾患特異的QOLの評価項目が数多く取り入れられている。理学療法が何を目的に行うのかをICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)に準じて臨床思考を進めておられる先生方だからこそ,これらの評価を取り入れる重要性が強調されているのであろう。

 また,総ページ数656ページという本書のボリュームにも圧倒される。その中でも,理学療法の共通項目には約250ページも費やされている。理学療法が疾患別に存在するものではなく,その障害に対して評価し,介入を考える職種であることが体現されているといえる。もし,私が学生で,600ページもある評価を全て頭に入れておかないといけないと思うと気が滅入るだろうが,現実問題として必要になるので「頑張って勉強してください」としか言いようがない。ただし細かい評価手法まで完璧に暗記しておく必要はなく,必要なときに本書を片手に正確に実施すればよい。本書は臨床実習に出る学生や新人理学療法士にベストバイな参考書であろう。

 学生や新人療法士には,本書をバイブルとして,どのように自分自身で評価を体系化するかが重要であるとアドバイスしたい。ただ単に評価項目を満遍なく実施することで“評価”が終わるわけではない。評価項目を取捨選択し,解釈し,仮説を構築し,介入を行い,再度評価し結果を再考する,というプロセスを常に回し続けなければいけない。このプロセスの精度と効率が上がることが,いわゆる臨床力の向上である。私は「理学療法士は評価に始まり評価に終わる」という言葉の意味は,このプロセスの習熟した最終形態と理解している。評価も生き物であり,この20年で普遍的な評価項目が変化してきたように,研究成果によって今後も日々更新されるはずである。まずは本書で理学療法評価における“State of the art”を学んだ上で,さらに個々で発展されることを願う。


知りたいことに手が届く内容で,臨床で本当に使える書
書評者:椿 淳裕(新潟医療福祉大教授・理学療法学)

 2022年1月下旬,データ処理に関する書籍を探しに大型書店へ。理学療法のコーナーに,表紙を向けて陳列されていた書籍が目に留まる。帯には「評価がないと始まらない」。「!!」。迷わず手が伸び,表紙をめくる。
 まずは編者を確認。略歴を含めて,安心感が大きい。発行日は2022年1月15日。つい最近出版されたばかりの書籍を手に取ることができたことに,一人高揚。執筆者に目を移す。さらに安心感を覚える。恩師の教えによれば「書籍の善しあしは目次でわかる」。間違いない。ページをめくる。イラストや写真が豊富。加えて,評価結果の解釈やピットフォールなどの説明も丁寧。所持しておくべき本であることを確信。

 以上が本書のファーストインプレッションです。「評価がないと始まらない」。これまで私に指導してくださった多くの方が,共通しておっしゃっていたことです。序文にもその重要性が述べられています。評価に関する書籍はこれまでにも多く出版されています。それらと異なる点として,イントロダクションにおいて評価の意義や方法など丁寧に解説されていること,疾患によらず共通して行われる機会の多い項目が最初に整理されていることです。また本書の大きな特徴として,それぞれの評価項目について「キホン」「方法」「注意点」だけでなく,「どう活用するか」まで説明がなされていることが挙げられます。さらに掲載されている評価項目も,従来行われている評価はもちろん,各領域でホットな項目についても網羅されています。加えて,他の書籍では評価法の名称のみが挙げられることも少なくない中,実際に使用する評価スケールが豊富に掲載されており,まさに「知りたかったことに手が届く」内容です。ページ数は,編集をされた先生方の「臨床で本当に使える」ことへの熱意の表れと感じます。レイアウトについても,イラストや写真が多いだけでなく,適切な箇所に適切なサイズで配置されており,本文とのバランスも絶妙です。編集の先生方のわかりやすさへのこだわりと拝察します。

 これらを総合しますと,理学療法士の養成校で勉学に励む学生はもちろんのこと,臨床の場に出て間もない理学療法士や異なる領域に配属された理学療法士,ライフイベントなどでしばらく臨床から離れた後に復帰する理学療法士などにとっても,まず確認すべき書籍であるといえます。折しも,公益社団法人日本理学療法士協会が監修した『理学療法ガイドライン 第2版』(医学書院)が2021年10月に出版されました。エビデンスに基づく理学療法を実践するにも,評価がないと始まりません。ガイドラインを有効に活用するためにも,ガイドライン本の隣に本書を置くことをお薦めします。


評価の臨床的な意義を再認識できる読みやすいガイド本
書評者:對馬 栄輝(弘前大大学院教授・総合リハビリテーション科学)

 理学療法における評価は,障害の把握,治療方針,目標設定のために行う。理学療法を行う上での基盤となるものである。正しい知識をもとに,適切な技術で評価を行う必要がある。いまさら述べるべきことでもなく周知されてはいるだろうが,意外に十分達せられていない自分に気付くことが多い。

 本書は,各評価の基本を述べた共通事項,また障害・疾患別の脳血管障害,脊髄損傷,運動器障害,内部障害,神経筋疾患,小児系疾患,がん,高齢期に章分けされている。章ごとに各障害・疾患の代表的な機能障害,能力障害に関する評価項目が並べられ,それぞれ評価の基本,評価方法,注意点,どう活用するか,の要素に分けて述べられている。

 評価の基本は,評価法の紹介だけではなく,引用文献をもとに簡単な歴史的背景も述べられている。評価方法については,より臨床的に解説されており,実際の理学療法場面で役立つはずである。また,注意点は,評価する際のポイントやアドバイス的な内容も盛り込まれ,かといって分量が多いわけではなく,無駄を省いた簡潔なカラーの紙面で,非常に読みやすく,眺めるだけでも好感が持てる。

 感心した点の一つに,評価項目ごとに「どう活用するか」という要素が設けられていることが挙げられる。評価の臨床的な意義について述べられており,いわば評価の手順書とは異なった構成になっている。

 私も古い人間の部類に足を踏み入れており,「昔はこんな評価法はなかったよな……何だろうこれ?」と思ってしまうようなさまざまな略語の評価法が散見されるようになった。評価法は数え上げればきりはないだろうが,私が見る限り,ここまで主要な評価法を解説している書籍は,近年では珍しいと思う。そして,つい読み入ってしまったほど,読みやすく,かつわかりやすい。いわば“教科書”のような堅苦しさが感じられないのである。

 A5判のコンパクトな本書は,学生であれば臨床実習に携帯してもよいだろう。臨床に出て間もない新人であれば,臨床実践のヒントとして役立つはずである。仮にベテランと呼ばれる年代であっても,復習の意味で読む価値はある。まだ知らないことも多い。

 ぜひ手に取って,あらためて評価の意義を感じ取っていただきたい一冊である。


知りたいことに手が届く内容で,臨床で本当に使える書
書評者:椿 淳裕(新潟医療福祉大教授・理学療法学)

 2022年1月下旬,データ処理に関する書籍を探しに大型書店へ。理学療法のコーナーに,表紙を向けて陳列されていた書籍が目に留まる。帯には「評価がないと始まらない」。「!!」。迷わず手が伸び,表紙をめくる。
 まずは編者を確認。略歴を含めて,安心感が大きい。発行日は2022年1月15日。つい最近出版されたばかりの書籍を手に取ることができたことに,一人高揚。執筆者に目を移す。さらに安心感を覚える。恩師の教えによれば「書籍の善しあしは目次でわかる」。間違いない。ページをめくる。イラストや写真が豊富。加えて,評価結果の解釈やピットフォールなどの説明も丁寧。所持しておくべき本であることを確信。

 以上が本書のファーストインプレッションです。「評価がないと始まらない」。これまで私に指導してくださった多くの方が,共通しておっしゃっていたことです。序文にもその重要性が述べられています。評価に関する書籍はこれまでにも多く出版されています。それらと異なる点として,イントロダクションにおいて評価の意義や方法など丁寧に解説されていること,疾患によらず共通して行われる機会の多い項目が最初に整理されていることです。また本書の大きな特徴として,それぞれの評価項目について「キホン」「方法」「注意点」だけでなく,「どう活用するか」まで説明がなされていることが挙げられます。さらに掲載されている評価項目も,従来行われている評価はもちろん,各領域でホットな項目についても網羅されています。加えて,他の書籍では評価法の名称のみが挙げられることも少なくない中,実際に使用する評価スケールが豊富に掲載されており,まさに「知りたかったことに手が届く」内容です。ページ数は,編集をされた先生方の「臨床で本当に使える」ことへの熱意の表れと感じます。レイアウトについても,イラストや写真が多いだけでなく,適切な箇所に適切なサイズで配置されており,本文とのバランスも絶妙です。編集の先生方のわかりやすさへのこだわりと拝察します。

 これらを総合しますと,理学療法士の養成校で勉学に励む学生はもちろんのこと,臨床の場に出て間もない理学療法士や異なる領域に配属された理学療法士,ライフイベントなどでしばらく臨床から離れた後に復帰する理学療法士などにとっても,まず確認すべき書籍であるといえます。折しも,公益社団法人日本理学療法士協会が監修した『理学療法ガイドライン 第2版』(医学書院)が2021年10月に出版されました。エビデンスに基づく理学療法を実践するにも,評価がないと始まりません。ガイドラインを有効に活用するためにも,ガイドライン本の隣に本書を置くことをお薦めします。