AOマスターズケースコレクション
MINIMAX骨折治療
下肢・足関節・偽関節・骨移植
AOシリーズに新たな1冊。AO関連書籍の“症例編”
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あの『AO法骨折治療』に新たな1冊。本書はAO関連書籍のいわば“症例編”として、多数のX線写真やイラストなどを引用しながら、下肢の骨折治療を中心に解説していく。原著者の施設で25年にわたり実施された症例のスライド8万点から厳選し、出版された珠玉のケースコレクション。
著 | Bechard G. Weber |
---|---|
監訳 | 糸満 盛憲 |
訳者代表 | 田中 正 |
発行 | 2005年11月判型:A4頁:224 |
ISBN | 978-4-260-00168-7 |
定価 | 16,500円 (本体15,000円+税) |
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- 目次
- 書評
目次
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1 無菌的手技と感染のリスク
-従来の無菌法から無菌的閉鎖環境への発展
1 はじめに
2 空気伝播汚染,感染はどのようにして起こるのか
3 手術室の細菌数を減らすにはどうすればよいか
4 細菌学的検査
5 検出細菌の種類
6 無菌的閉鎖環境と抗生剤
7 1999-2000年の感染率
8 外科用清浄空気管理の30年
9 我々の使っている排気システム
10 “何も学ばず,すべてを忘れてしまう”
11 結論と要約
12 参考文献
2 成人における骨折治療のMINIMAXの原則
1 歴史,定義,論点
2 MINIMAXの原則を支える概念
3 AOの原則とMINIMAXの原則
4 症例―MINIMAX固定の実例
5 要約
6 参考文献
3 足関節損傷を含むおよび含まない下腿骨折
1 はじめに
2 下腿骨折の一般的な特徴と合併する足関節損傷
3 下腿骨折の分類
4 下腿骨折の治療
5 参考文献
4 下腿開放骨折
1 はじめに
2 汚染の予防
3 固定法
4 症例-下腿開放骨折とMINIMAX治療法
5 要約
6 参考文献
5 足関節とその近傍の損傷
1 はじめに
2 観血的整復内固定(ORIF)
3 特殊な症例
4 アキレス腱
5 急性,反復性足関節靱帯損傷
6 参考文献
6 偽関節の生体力学,分類および治療
1 はじめに
2 偽関節の生体力学的分類
3 生物学的活性に基づいた偽関節の治療
4 治療のための知識と治療成績
5 結論
6 参考文献
7 自家骨移植
1 はじめに
2 本章の目的
3 自家骨採取部位
4 移植部位の準備
5 症例
6 結論と要約
エピローグ
索引
-従来の無菌法から無菌的閉鎖環境への発展
1 はじめに
2 空気伝播汚染,感染はどのようにして起こるのか
3 手術室の細菌数を減らすにはどうすればよいか
4 細菌学的検査
5 検出細菌の種類
6 無菌的閉鎖環境と抗生剤
7 1999-2000年の感染率
8 外科用清浄空気管理の30年
9 我々の使っている排気システム
10 “何も学ばず,すべてを忘れてしまう”
11 結論と要約
12 参考文献
2 成人における骨折治療のMINIMAXの原則
1 歴史,定義,論点
2 MINIMAXの原則を支える概念
3 AOの原則とMINIMAXの原則
4 症例―MINIMAX固定の実例
5 要約
6 参考文献
3 足関節損傷を含むおよび含まない下腿骨折
1 はじめに
2 下腿骨折の一般的な特徴と合併する足関節損傷
3 下腿骨折の分類
4 下腿骨折の治療
5 参考文献
4 下腿開放骨折
1 はじめに
2 汚染の予防
3 固定法
4 症例-下腿開放骨折とMINIMAX治療法
5 要約
6 参考文献
5 足関節とその近傍の損傷
1 はじめに
2 観血的整復内固定(ORIF)
3 特殊な症例
4 アキレス腱
5 急性,反復性足関節靱帯損傷
6 参考文献
6 偽関節の生体力学,分類および治療
1 はじめに
2 偽関節の生体力学的分類
3 生物学的活性に基づいた偽関節の治療
4 治療のための知識と治療成績
5 結論
6 参考文献
7 自家骨移植
1 はじめに
2 本章の目的
3 自家骨採取部位
4 移植部位の準備
5 症例
6 結論と要約
エピローグ
索引
書評
開く
外傷を学ぶ整形外科医へ
書評者: 佐藤 克巳 (東北労災病院・副院長)
MINIMAXとは聴きなれない言葉であるが,もともとは携帯用消火器の名称であり,最小の機器で最大の効果をあげることを意味している。スイスのSt. Gallen州立病院のWeber BGを中心とする外傷グループは,これを骨折治療の目標として掲げ,最小の侵襲で最大の効果を得るために独自の努力と工夫を積み重ねてきた。本書は,St. Gallen州立病院整形外科で25年間に行われた約12万5000例の手術症例の歴史である。これらの症例に基づき収集された約8000枚のスライドから選択されたX線像が華麗に提供されている。AOグループの教科書は見事な内容と配列に定評があるが,本書はその中でも特筆すべき美しさがあり,著者のWeber教授と監訳された糸満教授の並々ならぬ決意の程が窺える。外傷専門医のみでなくこれから外傷を学ぼうとする一般整形外科医にもぜひ読んでいただきたい好著である。以下,その内容について論評する。
1)無菌的手技と感染のリスク
わが国で骨折の手術を無菌手術室で行っている施設はあるだろうか。著者は,Charnley教授に触発され,空気感染を減少させるために垂直層流の無菌室を導入し,抗生物質に頼る感染予防の考えを戒めている。整形外科,外傷手術では骨,靱帯,軟骨,腱,インプラントを扱うので血行が乏しく感染への抵抗力が少ない。そのため術野の汚染は許されず,完全な無菌が必要と述べている。そして,感染防止のためのSt. Gallen州立病院での取り組みの歴史について述べ,無菌室の有用性を統計学的に証明し,無菌室を使用する際の消毒法,手術着の工夫,手術参加者の減少と時間の短縮についても言及している。その記述は精緻をきわめているが,わが国では外傷専門病院がないことを考えると採用されるまでにはまだ多くの時間を必要とすると思われる。
2)骨折治療のMINIMAXの原則
AOの原則は,観血的解剖学的整復,強固な安定した固定,血行温存,機能的後療法である。これらの原則は単純骨折と関節内骨折では,厳密に守られる必要があるが,粉砕骨折や軟部組織損傷を伴う骨折,多発骨折では同じ考えではいけない。そして,症例ごとの複雑さに応じた治療法を決定する必要があると述べている。MINIMAXの原則は強固な最大侵襲固定と最小侵襲固定の中間であり,血行を温存した生物学的固定である。現在流行している最小侵襲手術に対しては,観血的整復と良好な固定の法則から離れていく方向にあると警鐘を鳴らしている。著者が使用する固定材料は標準的な架橋プレート,圧迫プレート,リームド髄内釘,創外固定,ギプスなどであり,X線透視やナビゲーションは必要でなく観血的に整復を行っている。
3)下肢骨折の治療法
大腿骨骨折,下腿骨骨折,足関節骨折,足関節靱帯損傷,アキレス腱断裂,偽関節,骨移植法,脊椎の固定法について豊富な症例のスライドを駆使して供覧している。その治療はMINIMAXの原則に基づいている。血流を温存すること,解剖学的に骨折部を接近させること,骨折部を安定させることである。これらの1つが欠けると偽関節になりうる。偽関節は,骨折部の生物学的活性に基づいて治療計画を立てる。非感染性ならプレートによる強固な固定と骨移植,感染性ならデブリドマン,腐骨除去,創外固定と骨移植という古典的手技を貫いている。その結果のすばらしい成績をX線像にて見事に示している。
本書には最近のトレンドであるMIPO,イリザロフ法による脚延長,横止め髄内釘,ナビゲーションなどについての記載はない。むしろ警告を発しているように思える。しかし,これらは古典的手技での欠点を補う手法として編み出されてきたものであり,適切な手技によってより低侵襲に早期に種々の骨折を解決できる可能性を持っている。また,ロッキングプレートとMIPOを組み合わせた最小侵襲手術法などについて見解を聞いてみたいが,残念ながら著者は2002年に逝去された。最新の手法は,ここに記載された標準的手法を凌駕する成績を出すことが求められている。
書評者: 佐藤 克巳 (東北労災病院・副院長)
MINIMAXとは聴きなれない言葉であるが,もともとは携帯用消火器の名称であり,最小の機器で最大の効果をあげることを意味している。スイスのSt. Gallen州立病院のWeber BGを中心とする外傷グループは,これを骨折治療の目標として掲げ,最小の侵襲で最大の効果を得るために独自の努力と工夫を積み重ねてきた。本書は,St. Gallen州立病院整形外科で25年間に行われた約12万5000例の手術症例の歴史である。これらの症例に基づき収集された約8000枚のスライドから選択されたX線像が華麗に提供されている。AOグループの教科書は見事な内容と配列に定評があるが,本書はその中でも特筆すべき美しさがあり,著者のWeber教授と監訳された糸満教授の並々ならぬ決意の程が窺える。外傷専門医のみでなくこれから外傷を学ぼうとする一般整形外科医にもぜひ読んでいただきたい好著である。以下,その内容について論評する。
1)無菌的手技と感染のリスク
わが国で骨折の手術を無菌手術室で行っている施設はあるだろうか。著者は,Charnley教授に触発され,空気感染を減少させるために垂直層流の無菌室を導入し,抗生物質に頼る感染予防の考えを戒めている。整形外科,外傷手術では骨,靱帯,軟骨,腱,インプラントを扱うので血行が乏しく感染への抵抗力が少ない。そのため術野の汚染は許されず,完全な無菌が必要と述べている。そして,感染防止のためのSt. Gallen州立病院での取り組みの歴史について述べ,無菌室の有用性を統計学的に証明し,無菌室を使用する際の消毒法,手術着の工夫,手術参加者の減少と時間の短縮についても言及している。その記述は精緻をきわめているが,わが国では外傷専門病院がないことを考えると採用されるまでにはまだ多くの時間を必要とすると思われる。
2)骨折治療のMINIMAXの原則
AOの原則は,観血的解剖学的整復,強固な安定した固定,血行温存,機能的後療法である。これらの原則は単純骨折と関節内骨折では,厳密に守られる必要があるが,粉砕骨折や軟部組織損傷を伴う骨折,多発骨折では同じ考えではいけない。そして,症例ごとの複雑さに応じた治療法を決定する必要があると述べている。MINIMAXの原則は強固な最大侵襲固定と最小侵襲固定の中間であり,血行を温存した生物学的固定である。現在流行している最小侵襲手術に対しては,観血的整復と良好な固定の法則から離れていく方向にあると警鐘を鳴らしている。著者が使用する固定材料は標準的な架橋プレート,圧迫プレート,リームド髄内釘,創外固定,ギプスなどであり,X線透視やナビゲーションは必要でなく観血的に整復を行っている。
3)下肢骨折の治療法
大腿骨骨折,下腿骨骨折,足関節骨折,足関節靱帯損傷,アキレス腱断裂,偽関節,骨移植法,脊椎の固定法について豊富な症例のスライドを駆使して供覧している。その治療はMINIMAXの原則に基づいている。血流を温存すること,解剖学的に骨折部を接近させること,骨折部を安定させることである。これらの1つが欠けると偽関節になりうる。偽関節は,骨折部の生物学的活性に基づいて治療計画を立てる。非感染性ならプレートによる強固な固定と骨移植,感染性ならデブリドマン,腐骨除去,創外固定と骨移植という古典的手技を貫いている。その結果のすばらしい成績をX線像にて見事に示している。
本書には最近のトレンドであるMIPO,イリザロフ法による脚延長,横止め髄内釘,ナビゲーションなどについての記載はない。むしろ警告を発しているように思える。しかし,これらは古典的手技での欠点を補う手法として編み出されてきたものであり,適切な手技によってより低侵襲に早期に種々の骨折を解決できる可能性を持っている。また,ロッキングプレートとMIPOを組み合わせた最小侵襲手術法などについて見解を聞いてみたいが,残念ながら著者は2002年に逝去された。最新の手法は,ここに記載された標準的手法を凌駕する成績を出すことが求められている。