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AO法骨折治療 Internal Fixators [英語版DVD-ROM付]
LCPとLISSによる内固定

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AO法骨折シリーズの1冊。外傷・骨折の領域で注目を集めているLCPやLISSといった従来の骨折治療とは異なる画期的な理論に基づいた内固定器(Internal Fixators)を取り上げ、その原理とともに具体的な治療症例を紹介する。AOシリーズならではの色彩豊かなシェーマと多くの症例写真などを駆使し、最新の内固定をわかりやすく解説するほか、付録のDVDでは動画も視聴できる。
Michael Wagner / Robert Frigg
監訳 田中 正
発行 2008年05月判型:A4頁:832
ISBN 978-4-260-00413-8
定価 41,800円 (本体38,000円+税)

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日本語版への序文

 Internal Fixators(内固定器)という言葉は,本邦ではあまりなじみがなく,なんとなく「内固定材」と同義語と思われる方もいるかもしれない.しかし,その語源は「体内に使用される創外固定器」,すなわち「創内固定器」であり,これが「内固定器」となったもので,いわゆるlocking plateの別称である.ではlocking plateは,そもそもなぜ誕生したのであろうか.
 1958年のAO創設とともに世界に浸透した圧迫プレート法は,術後早期の機能訓練を可能とし,骨折の治療成績を大きく向上させた.しかし,時として生物学的配慮を欠いた手術手技は骨・軟部組織の血行を阻害し,感染やプレート抜去後の再骨折などの問題を引き起こした.そこで,biological platingやMIPOという低侵襲手術手技が考案された.一方,プレート自体も骨の血行を障害することが明らかとなり,プレートデザインの研究が進み,LC-DCP,PC-Fix,そしてLISS(less invasive stabilizing system)を経て,最終的にLCP(locking compression plate)の開発に至っている.すなわち,locking plateは圧迫プレート法の欠点を改善するために研究され考案されたインプラントといえる.
 しかし,整形外科領域における機器やインプラントなどの技術革新は,さまざまな恩恵を与えると同時に,従来にない新たなピットフォールをもたらす可能性がある.Locking plateも同様であり,固定力の向上など多くの利点がある反面,ロッキングシステム特有の問題点も明らかとなってきている.したがって,その固定原理,手術手技はもとより,合併症回避の注意点,あるいは抜去困難時の対処法などに精通した上で,臨床に用いる必要がある.そのためにも,本書は骨折治療に取り組む整形外科医や救急外科医にとっての必読書といっても過言ではなく,必ずや日常臨床に役立てていただけるものと確信している.
 本書の特徴の1つは,AOが重視している成人教育の効果的教育手法である“case-based learning(症例を通して学ぶ勉強法)”を取り入れていることである.第1章から第4章は,骨接合術の基本からlocking plateの基礎,手技やピットフォールについて総論的に話を進めているが,第5章以降では世界各地の第一線で活躍している臨床家たちがさまざまな症例を提示し,それらを通していかにこのインプラントを活用するかを学ぶようになっている.この方法により,単に教科書的な記述を勉強するよりも,実践的で応用力がつく知識が得られるものと考えている.
 本年はAOにとって創立50周年の記念すべき年である.圧迫プレート法で骨折治療を大きく塗り替えてから半世紀,この間AOは研究,教育,開発とダイナミックに活動してきた.それらの集大成の1つとして登場した「Internal Fixator」の日本語版をこの記念すべき年に出版できることは,AO Japanのメンバーにとって望外の喜びであり,本書を皆さまの座右の書として愛用していただけることを願っている.

 2008年5月
 監訳者
 田中 正

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Concepts
1 背景と治療の原則
 1 骨接合
 2 骨折固定の概念
 3 プレート・スクリュー固定の力学的側面
 4 内固定器の開発
 5 プレート固定の方法とテクニック
 6 最小侵襲プレート固定法(MIPO)
 7 文献
2 手術的整復法
 1 整復の目的
 2 手術的整復の種類
 3 使用する器具と手技
 4 整復位の評価
 5 結論
 6 文献
3 LISSとLCPのテクニックと方法
 1 低侵襲固定システム(LISS)
 2 ロッキングコンプレッションプレート(LCP)
 3 文献
4 Pitfallsと合併症
 1 インプラント関連の問題
 2 技術的失敗
 3 リハビリテーション時のPitfallsおよび合併症
 4 さらに深く学ぶ方のために

Cases
5 肩甲帯
 5.1 鎖骨
 5.2 肩甲骨
6 上腕骨
 6.1 上腕骨,近位部
 6.2 上腕骨,骨幹部
 6.3 上腕骨,遠位部
7 橈骨および尺骨
 7.1 橈骨および尺骨,近位部
 7.2 橈骨および尺骨,骨幹部
 7.3 橈骨および尺骨,遠位部
8 骨盤輪および寛骨臼
 8.1 骨盤輪および寛骨臼
9 大腿骨
 9.1 大腿骨,近位部
 9.2 大腿骨,骨幹部
 9.3 大腿骨,遠位部
10 脛骨および腓骨
 10.1 脛骨および腓骨,近位部
 10.2 脛骨および腓骨,骨幹部
 10.3 脛骨および腓骨,遠位部
11踵骨
 11.1 踵骨

用語集
索引
DVD-ROM(英語版) 操作ガイド

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豊富なイラストで学ぶ骨折治療学のバイブル
書評者: 進藤 裕幸 (長崎大大学院教授・整形外科学)
 骨折治療学のバイブル的存在といえる『AO Manual of Fracture Management』シリーズの最新の出版書である“internal fixators(内固定器)”の日本語訳が上梓された。

 わが国においてAO(Arbeitsgemeinshaft fur Osteosynthesesfragen)の存在を知らない整形外科医は存在しないであろうが,AO Foundationは骨折治療学における基礎医学的研究や骨折治療用device研究開発のメッカとしてつとに有名である。この機関の重要な機能として,その出版部の業績は骨折治療学において幾多の成書を生み出しており歴史的評価に値しよう。

 1958年にAOグループが発足し,AO Manualシリーズは1963年に出版された『Interfragmentaly Compression(骨片間圧迫)』として強固なORIF(観血的整復内固定術)法を世に知らしめた初版に始まる。1969年に出版された『AO Manual of Internal Fixation』は,生物学的骨折治癒機序の理論的解明と機械工学理論に基づいたAO法骨折治療の基本原理を明示し,かつ実践的な手術手技を分かりやすく解説したもので,まさに骨折治療学のバイブルとしての礎が築かれた。

 私がAOシリーズを直接手にしたのは,1977年に発行となった改訂版原書(ドイツ語版)が英訳改訂された『Manual of Internal Fixation』(1979年版)であった。いかにもゲルマン系民族らしい論理性を重視した内容でありながら,豊富なイラストが収載され,当時の教科書の類にはみられなかった斬新さに感嘆したことを思い出す。

 近年AO Foundation出版部門からは毎年3冊程度の本が出版されており,本原著は2006年5月に,Locking Compression PlateとLess Invasive Stabilization System(LISS)による“内固定器(Internal Fixators)”の基本理念と実践法を解説した最初の包括的教科書である。本書の構成は11章からなり,前半4章は歴史的背景に基づいて理論的に変遷する骨折治療学への基本理念が総論的に解説されている。後半の7章では,国際的レベルで活躍中の整形外科医による110を超える症例を基にLCP,LISSの適応となる全身の骨折を網羅し,各症例ごとに明快なイラストによる図示とX線写真が必要十分に盛り込まれて,術前計画,進入法,整復と固定,リハビリテーションに至るまで丁重かつ簡潔に解説されている。さらに“手術のコツ(Pearls)と陥穽(Pitfalls)”まで網羅されている。骨折治療の初級者から上級者までの幅広い対象を目指しているAO Foundation出版部の良質なプロ意識がくみ取れる。

 いみじくも監訳者である田中正博士が序文で特筆しているように,本書は「単に教科書的記述ではなく,実践的で臨床応用力を効率的に滋養できる整形外科医の座右の書」とすべきものである。21世紀初頭における骨折治療学のバイブルとして本書を推薦する次第である。
新しいプレート固定の正しい理解のために
書評者: 松下 隆 (帝京大教授・整形外科)
 私が内固定よりも創外固定を好んで使っていると誤解し,このようなプレート固定に関する教科書の書評を書くことを意外に思われる方がおられるかもしれない。骨折の治療法の優劣は最終的な機能予後と治癒期間との総合評価でなされるべきであり,そのような観点で治療法を選択すると内固定を行う症例の方が圧倒的に多い。

 私が医師になった1975年頃は,AOプレートを用いて強固に圧迫固定し仮骨を作らないで骨癒合を得るprimary bone healingが最良と信じられていた時代である。primary bone healingに何の疑問も持たずAOの教科書を一所懸命読んで勉強した自分が恥ずかしいが,AOの教科書の力学に基づいた明快な解説は,骨折の内固定法の基本を理解するのにとても役に立った。

 その後,抜釘後の再骨折の多さから過度に強固な圧迫固定によるprimary bone healingは理想の骨癒合過程ではないことが明らかになったが,これはAOの理論と製品とによって真に強固な固定が実現されて初めて分かったことであり,AOの功績は極めて大きい。その後さらに,過剰な剥離による血行阻害やプレート直下の骨粗鬆化,ストレスシールディングなどの問題も明らかになり,「生物学的骨接合」が重要視されるようになった。このようにプレート固定法に関して常に先頭を走ってきたAOが近年になってlocking plateという全く新しいプレート固定の概念を打ち出してきた。

 locking plateは形状が既存のplateと似ているためにこれまでのplateの延長上にあると思っておられる方があれば,是非考えを改めていただきたい。locking plateはplateとscrewとの間のangular stabilityによって固定するものであり,これまでのplate固定がplateをscrewによって骨に圧着しplateと骨との間の摩擦力によって固定していたのとは全く固定の理論が異なる。固定の理論は既存のプレートより創外固定に近く,創外固定に対して創内固定ともいうべき固定具である。本体が体内にあるので,骨と本体との距離が近くピンが皮膚を貫いていないという特徴があり,力学的観点からも感染予防の観点からも患者のコンプライアンスの観点からも創外固定より有利である。

 昔のAOの教科書はSpringer社から出版されていたが,1991年の“Manual of Internal Fixation”の第3版を最後に途絶えていた。その後出版社がThieme社に代わり,“AO principle”をはじめHand,Spineなどの骨折治療教科書が作られ,日本のAOファカルティーの翻訳による日本語版が医学書院から次々と出版されてきた。本書“Internal Fixators”も一連のAO教科書の1つである。

 新しい知識を身に付けようとするとどうしても英語の文献に頼らざるを得ない。しかし一般的には英語の分厚い教科書を読破するのはなかなか大変である。先に述べたようにlocking plateは従来のプレートとは全く異なった内固定具である。正しい固定理論を理解しないまま使用するとその特長を生かせないだけでなく,従来のプレート固定より悪い結果を招く可能性がある。本書が翻訳されたのを機に,骨折の治療に当たっているすべての整形外科医がこの教科書を読み,locking plateを正しく理解してから使用してくださることを祈って,推薦の言葉としたい。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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