AO法骨折治療[英語版Web付録付] 第3版
骨折治療の世界標準、10年ぶりの大改訂!
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AOの骨折治療に関する基本的な考え方や理念に加え、この10年で新たに蓄積された基礎研究のデータや新開発の治療法なども余さず収載。AOの原理に基づいた治療の実際までを、わかりやすい図や写真、動画教材などを用いて丁寧に解説する。世界中の術者に影響を与え続ける名著の改訂第3版。
原著 | Richard E. Buckley / Christopher G. Moran / Theerachai Apivatthakakul |
---|---|
日本語版総編集 | 田中 正 |
日本語版編集代表 | 澤口 毅 |
発行 | 2020年05月判型:A4頁:1016 |
ISBN | 978-4-260-03943-7 |
定価 | 44,000円 (本体40,000円+税) |
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- 序文
- 目次
- 書評
序文
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日本語版第3版への序/第3版への序/はじめに
日本語版第3版への序
「AO圧迫プレート法」で骨折治療の歴史を大きく塗り替えたAOは,1958年の創設以来60年余にわたり,研究,開発,教育等に対しダイナミックに活動し,今日の地位を築いてきました.特に教育面では,世界中で行われるAO コースで多くの人たちを教育し,それ以外にもさまざまな学習リソースを開発してきました.
“AO Principles of Fracture Management”は2000年に原書初版が出版され,整形外科医/外傷外科医にとってのバイブルともいえる存在になりました.しかしその後,ロッキングプレートが普及し,さらに最小侵襲手術(minimally invasive surgery)の概念が広まるにつれ改訂の必要性が叫ばれ,2007年に原書第2版が発刊されました.
それから10年,骨折治療,外傷治療の基本原則は変わらないものの,新たな生物学的,あるいは生体力学的な知見が増え,新しいテクノロジーの出現やこれらを応用した手術手技とAO Principlesの新たな適用が可能となり,それらの臨床経験が積み重ねられてきた結果,第2版から大幅な改訂がなされた“AO Principles of Fracture Management,3rd Edition”が出版されるに至りました.
そしてこのたび,待ちに待った日本語版『AO法骨折治療 第3版』が上梓される運びとなりました.第2版と同様に読みやすいテキスト,2,100を超える高画質イラストレーション,250以上の動画・アニメーションなどで大変理解しやすい形式となっており,また,要所要所の重要なポイントや最新の考え方をわかりやすくまとめ,強調しているので,これだけは覚えておかなければならないという要点を逃すことはありません.さらに,動画・アニメーションをはじめ,AO Surgery Reference,Webinar,Referenceなどについてはオンラインコンテンツにアクセス可能となっており,スマートデバイスなどで手軽に視聴できることは,インターネットが貴重な情報源となっている最近の世代にとって,非常に親しみやすく使いやすい教材であるといえます.
また,第2版にはなかった重要なトピックスが取り上げられているのも大きな特徴です.すなわちイメージを頻回に扱う整形外科医にとって知らなければならない放射線障害/防護,近年の超高齢社会にとって問題となってきている脆弱性骨折,人工関節周囲骨折,高齢者患者のケアなどについて新たに章を加えております.さらに,AO/OTA分類は2018年に改訂されていますが,本書ではそれらも反映されており,AOの治療原則に則った骨折治療の最新のゴールドスタンダードを学ぶのに最適な教科書であると確信しております.ぜひ,本書を座右の書として日常診療にお役立て頂きたいと願っております.
2020年4月
日本語版総編集
田中 正
第3版への序
スイスの一般外科医と整形外科医のグループが1958年にArbeitsgemeinschaft für Osteosynthesefragen(AO)を設立したとき,彼らは教育こそが整形外科外傷治療を成功させるための最も重要な鍵であると強調した.1960年にスイスのダボスで初めてのハンズオンコースが開催されたことにより新しい革命が始まり,これは医師の生涯教育における非常に有効なモデルとなった.1963年,Maurice E Müller氏,Martin Allgöwer氏,Hans Willenegger氏によって骨折に対する手術療法について初めてのAOの報告書がドイツ語で出版された.後に,骨折に対するさまざまな観血的固定法,骨切り術および関節固定術の手技的な発展がスイスのAOグループに受け入れられ採用された.これらは,1969年の『Manual of Internal Fixation』の初版で詳細に記述され,英語をはじめ,他の多くの言語に翻訳されて世界中の整形外科外傷外科医のための有数のガイドとなった.また,1977年と1992年に改訂版が発行され,1970年からの20年間,正しいAO手技の基準であり続けた.1977年,若く経験の浅い外科医であった筆者自身も,このマニュアルの助けを借りてAOの原則と手技について多くを学んだ.骨折に対する手術治療の段階的な指針を提供するこのマニュアルは,当時,整形外科の外傷教育の主要な情報源であった.
AOが設立されてから40年,骨折の手術治療が世界的に受け入れられるようになり,国際的な外科医/執筆者チームが『AO Principles of Fracture Management』の出版を手がけた.この本は骨接合術のマニュアルとして書かれたものではなく,最先端の手技を提供できるようにエビデンスにもとづいた総括的な提言を行う目的で執筆された.『AO Principles of Fracture Management』は,2000年の初版,2007年の第2版に続いて,その10年後に改訂・更新されたこの第3版の出版へとつながった.
AO財団の使命は「“transforming surgery−changing lives”手術を変える─人生を変える」ことであり,『AO Principles of Fracture Management』の第3版を執筆するチームは,このテキストをとおして,その卓越性を受け継いでいる.医療分野で,これほど成功し,これほどの長期間にわたって活用される教科書が生まれることは珍しい.新しい知識,手術手技およびテクノロジーの拡大に伴い,第3版にはQRコードが埋め込まれており,読者が進化し続けるAOのオンライン教育コンテンツにアクセスできるようになっている.第3版は引き続き教育の主要な情報源であり,今後数年間にわたり,インターネットで急速に発展するさまざまな形式の電子メディアに学習者が接続できるよう工夫されている.
AO財団と世界中にいるAO surgeonを代表して,編集者,寄稿者,そして出版社に心から感謝したい.Richard E Buckley氏,Christopher G Moran氏,Theerachai Apivatthakakul氏のほか,Urs Ruetschi氏と彼のAO Education Instituteチームがこのような優れた本の執筆に尽力してくれたことに感謝する.本書は世界中のAOコースのシラバスとなり,『Manual of Internal Fixation』が筆者の世代に有益であったのと同様に,新しい世代のAO surgeonにとって,有益な知識を提供するものと確信している.
Suthorn Bavonratanavech(タイ王国)
AO 財団 元理事長(在任期間:2014~2016年)
はじめに
本書は骨折治療におけるAOの原則に関する書籍の第3版であり,2020年代に向かっているわれわれにとって,最後の印刷物となる可能性もある.というのもほとんどの外科医と学生にとってインターネットが主要な情報源に変わりつつあるからである.初版と第2版は大成功を収め,8つの言語に翻訳され,さまざまな賞を受賞した.これらの本は,世界中で開催される骨折の手術治療に関するコースのシラバスの原典となっている.第3版はこの成功したフォーマットにもとづいて構成されているが,単なる印刷物または電子書籍として提供されるだけではない.複数の学習リソースを統合し,学習者がAO Surgical Reference,教育ビデオ,ウェブキャスト,講義,手術手技のデモンストレーション,および主要な文献などに即座にアクセスできるよう,インターネット上の学習プラットフォームを提供するため,さらなる開発が続いている.
2007年の第2版発行以来,骨折手術は進化し続けている.ロッキングプレートの役割と機能がより明確になり,多くの種類のアナトミカルプレートが利用可能になり,ミニフラグメント用のインプラントの数と種類が大幅に増えた.最小侵襲手術の広範な使用は,骨折手術における軟部組織の重要性を強調し続けている.世界中の内戦や軍事紛争により,多発外傷患者の蘇生が大幅に進歩し,それに伴い骨折手術のタイミングとアプローチが改善された.これらの変化はすべて本書に反映されている.
すべての章は大幅に改訂され,新しいイラスト,アニメーション,動画を用いて書き直された.放射線画像や横断面像の使用増加については章を新設した.外科医はこれらの技術と自身および患者の放射線被曝のリスクを認識しなければならない.さらに,国際的な大規模無作為化比較試験が増えてきており,これを基盤とした骨折手術における確固たるエビデンスを提示するため,今回の出版にあたりすべての参考文献の総括的なレビューと更新が図られている.
高齢者人口は,世界の多くの地域で骨折外科医が直面する最大の課題の1つである.このような人口統計学的な変化によって,脆弱性骨折の指数関数的な増加が見込まれているため,今版では脆弱性骨折と老年整形外科ケアの章が含まれている.毎年世界中で290万件の関節置換術が行われており,これにより人工関節周囲骨折の数が大幅に増加している.増加傾向にあるこの臨床的問題についても,新たに追加した章で取り上げている.部位別の骨折に焦点をあてる本書の後半でも,膝関節脱臼に関する新しい章を含むよう見直しを行った.
編集者一同は,本書への貢献のみならず,世界中の手術教育におけるThomas Rüedi氏の貢献に特別な謝辞を記したい.彼はわれわれ全員にインスピレーションを与えてくれた.
骨折手術の基本原則は60年間変わっていないが,技術の進歩とともに生物学的知識と臨床的知識が増え,これらの原則の適用方法が変化した.骨折手術を成功させるには,これらの原則を十分に理解し,患者のケアのあらゆる段階で細心の注意を払う必要がある.本書が読者諸氏を導き,華々しい骨折手術のキャリアの基礎となることを願っている.
Richard E Buckley, MD, FRCSC
Christopher G Moran, MD, FRCS
Theerachai Apivatthakakul, MD
日本語版第3版への序
「AO圧迫プレート法」で骨折治療の歴史を大きく塗り替えたAOは,1958年の創設以来60年余にわたり,研究,開発,教育等に対しダイナミックに活動し,今日の地位を築いてきました.特に教育面では,世界中で行われるAO コースで多くの人たちを教育し,それ以外にもさまざまな学習リソースを開発してきました.
“AO Principles of Fracture Management”は2000年に原書初版が出版され,整形外科医/外傷外科医にとってのバイブルともいえる存在になりました.しかしその後,ロッキングプレートが普及し,さらに最小侵襲手術(minimally invasive surgery)の概念が広まるにつれ改訂の必要性が叫ばれ,2007年に原書第2版が発刊されました.
それから10年,骨折治療,外傷治療の基本原則は変わらないものの,新たな生物学的,あるいは生体力学的な知見が増え,新しいテクノロジーの出現やこれらを応用した手術手技とAO Principlesの新たな適用が可能となり,それらの臨床経験が積み重ねられてきた結果,第2版から大幅な改訂がなされた“AO Principles of Fracture Management,3rd Edition”が出版されるに至りました.
そしてこのたび,待ちに待った日本語版『AO法骨折治療 第3版』が上梓される運びとなりました.第2版と同様に読みやすいテキスト,2,100を超える高画質イラストレーション,250以上の動画・アニメーションなどで大変理解しやすい形式となっており,また,要所要所の重要なポイントや最新の考え方をわかりやすくまとめ,強調しているので,これだけは覚えておかなければならないという要点を逃すことはありません.さらに,動画・アニメーションをはじめ,AO Surgery Reference,Webinar,Referenceなどについてはオンラインコンテンツにアクセス可能となっており,スマートデバイスなどで手軽に視聴できることは,インターネットが貴重な情報源となっている最近の世代にとって,非常に親しみやすく使いやすい教材であるといえます.
また,第2版にはなかった重要なトピックスが取り上げられているのも大きな特徴です.すなわちイメージを頻回に扱う整形外科医にとって知らなければならない放射線障害/防護,近年の超高齢社会にとって問題となってきている脆弱性骨折,人工関節周囲骨折,高齢者患者のケアなどについて新たに章を加えております.さらに,AO/OTA分類は2018年に改訂されていますが,本書ではそれらも反映されており,AOの治療原則に則った骨折治療の最新のゴールドスタンダードを学ぶのに最適な教科書であると確信しております.ぜひ,本書を座右の書として日常診療にお役立て頂きたいと願っております.
2020年4月
日本語版総編集
田中 正
第3版への序
スイスの一般外科医と整形外科医のグループが1958年にArbeitsgemeinschaft für Osteosynthesefragen(AO)を設立したとき,彼らは教育こそが整形外科外傷治療を成功させるための最も重要な鍵であると強調した.1960年にスイスのダボスで初めてのハンズオンコースが開催されたことにより新しい革命が始まり,これは医師の生涯教育における非常に有効なモデルとなった.1963年,Maurice E Müller氏,Martin Allgöwer氏,Hans Willenegger氏によって骨折に対する手術療法について初めてのAOの報告書がドイツ語で出版された.後に,骨折に対するさまざまな観血的固定法,骨切り術および関節固定術の手技的な発展がスイスのAOグループに受け入れられ採用された.これらは,1969年の『Manual of Internal Fixation』の初版で詳細に記述され,英語をはじめ,他の多くの言語に翻訳されて世界中の整形外科外傷外科医のための有数のガイドとなった.また,1977年と1992年に改訂版が発行され,1970年からの20年間,正しいAO手技の基準であり続けた.1977年,若く経験の浅い外科医であった筆者自身も,このマニュアルの助けを借りてAOの原則と手技について多くを学んだ.骨折に対する手術治療の段階的な指針を提供するこのマニュアルは,当時,整形外科の外傷教育の主要な情報源であった.
AOが設立されてから40年,骨折の手術治療が世界的に受け入れられるようになり,国際的な外科医/執筆者チームが『AO Principles of Fracture Management』の出版を手がけた.この本は骨接合術のマニュアルとして書かれたものではなく,最先端の手技を提供できるようにエビデンスにもとづいた総括的な提言を行う目的で執筆された.『AO Principles of Fracture Management』は,2000年の初版,2007年の第2版に続いて,その10年後に改訂・更新されたこの第3版の出版へとつながった.
AO財団の使命は「“transforming surgery−changing lives”手術を変える─人生を変える」ことであり,『AO Principles of Fracture Management』の第3版を執筆するチームは,このテキストをとおして,その卓越性を受け継いでいる.医療分野で,これほど成功し,これほどの長期間にわたって活用される教科書が生まれることは珍しい.新しい知識,手術手技およびテクノロジーの拡大に伴い,第3版にはQRコードが埋め込まれており,読者が進化し続けるAOのオンライン教育コンテンツにアクセスできるようになっている.第3版は引き続き教育の主要な情報源であり,今後数年間にわたり,インターネットで急速に発展するさまざまな形式の電子メディアに学習者が接続できるよう工夫されている.
AO財団と世界中にいるAO surgeonを代表して,編集者,寄稿者,そして出版社に心から感謝したい.Richard E Buckley氏,Christopher G Moran氏,Theerachai Apivatthakakul氏のほか,Urs Ruetschi氏と彼のAO Education Instituteチームがこのような優れた本の執筆に尽力してくれたことに感謝する.本書は世界中のAOコースのシラバスとなり,『Manual of Internal Fixation』が筆者の世代に有益であったのと同様に,新しい世代のAO surgeonにとって,有益な知識を提供するものと確信している.
Suthorn Bavonratanavech(タイ王国)
AO 財団 元理事長(在任期間:2014~2016年)
はじめに
本書は骨折治療におけるAOの原則に関する書籍の第3版であり,2020年代に向かっているわれわれにとって,最後の印刷物となる可能性もある.というのもほとんどの外科医と学生にとってインターネットが主要な情報源に変わりつつあるからである.初版と第2版は大成功を収め,8つの言語に翻訳され,さまざまな賞を受賞した.これらの本は,世界中で開催される骨折の手術治療に関するコースのシラバスの原典となっている.第3版はこの成功したフォーマットにもとづいて構成されているが,単なる印刷物または電子書籍として提供されるだけではない.複数の学習リソースを統合し,学習者がAO Surgical Reference,教育ビデオ,ウェブキャスト,講義,手術手技のデモンストレーション,および主要な文献などに即座にアクセスできるよう,インターネット上の学習プラットフォームを提供するため,さらなる開発が続いている.
2007年の第2版発行以来,骨折手術は進化し続けている.ロッキングプレートの役割と機能がより明確になり,多くの種類のアナトミカルプレートが利用可能になり,ミニフラグメント用のインプラントの数と種類が大幅に増えた.最小侵襲手術の広範な使用は,骨折手術における軟部組織の重要性を強調し続けている.世界中の内戦や軍事紛争により,多発外傷患者の蘇生が大幅に進歩し,それに伴い骨折手術のタイミングとアプローチが改善された.これらの変化はすべて本書に反映されている.
すべての章は大幅に改訂され,新しいイラスト,アニメーション,動画を用いて書き直された.放射線画像や横断面像の使用増加については章を新設した.外科医はこれらの技術と自身および患者の放射線被曝のリスクを認識しなければならない.さらに,国際的な大規模無作為化比較試験が増えてきており,これを基盤とした骨折手術における確固たるエビデンスを提示するため,今回の出版にあたりすべての参考文献の総括的なレビューと更新が図られている.
高齢者人口は,世界の多くの地域で骨折外科医が直面する最大の課題の1つである.このような人口統計学的な変化によって,脆弱性骨折の指数関数的な増加が見込まれているため,今版では脆弱性骨折と老年整形外科ケアの章が含まれている.毎年世界中で290万件の関節置換術が行われており,これにより人工関節周囲骨折の数が大幅に増加している.増加傾向にあるこの臨床的問題についても,新たに追加した章で取り上げている.部位別の骨折に焦点をあてる本書の後半でも,膝関節脱臼に関する新しい章を含むよう見直しを行った.
編集者一同は,本書への貢献のみならず,世界中の手術教育におけるThomas Rüedi氏の貢献に特別な謝辞を記したい.彼はわれわれ全員にインスピレーションを与えてくれた.
骨折手術の基本原則は60年間変わっていないが,技術の進歩とともに生物学的知識と臨床的知識が増え,これらの原則の適用方法が変化した.骨折手術を成功させるには,これらの原則を十分に理解し,患者のケアのあらゆる段階で細心の注意を払う必要がある.本書が読者諸氏を導き,華々しい骨折手術のキャリアの基礎となることを願っている.
Richard E Buckley, MD, FRCSC
Christopher G Moran, MD, FRCS
Theerachai Apivatthakakul, MD
目次
開く
【1】Principles
1 AOの哲学と基礎
1.1 AOの哲学と変革
1.2 骨折治癒過程の生物学と生体力学
1.3 インプラントとバイオテクノロジー
1.4 骨折の分類
1.5 軟部組織損傷:病態生理,評価,分類
2 治療方針と計画
2.1 患者と損傷:外傷外科における治療方針決定
2.2 骨幹部骨折:原則
2.3 関節内骨折:原則
2.4 術前計画
3 整復,進入法,固定手技
3.1.1 外科的整復
3.1.2 手術進入路と術中における軟部組織の取り扱い
3.1.3 最小侵襲骨接合術
3.2.1 スクリュー
3.2.2 プレート
3.2.3 テンションバンドの原理
3.3.1 髄内釘法
3.3.2 架橋プレート
3.3.3 創外固定法
3.3.4 ロッキングプレート
4 骨折における諸問題
4.1 多発外傷:病態生理,優先順位および治療
4.2 開放骨折
4.3 軟部組織欠損:治療原則
4.4 小児の骨折
4.5 抗菌薬の予防的投与
4.6 血栓塞栓症の予防
4.7 術後管理:全般的事項
4.8 脆弱性骨折と老年整形外科ケア
4.9 画像検査と放射線の危険性
5 合併症
5.1 変形癒合
5.2 非感染性偽関節
5.3 急性感染
5.4 慢性感染と感染性偽関節
【2】Specific fractures
6 部位別治療法
6.1.1 肩甲骨
6.1.2 鎖骨
6.2.1 上腕骨:近位部
6.2.2 上腕骨:骨幹部
6.2.3 上腕骨:遠位部
6.3.1 前腕骨近位部と肘関節複合損傷
6.3.2 前腕骨骨幹部骨折
6.3.3 橈骨遠位部と手関節
6.3.4 手
6.4 骨盤輪
6.5 寛骨臼
6.6.1 大腿骨:近位部
6.6.2 大腿骨:骨幹部(転子下骨折を含む)
6.6.3 大腿骨:遠位部
6.6.4 人工関節周囲骨折
6.7.1 膝蓋骨
6.7.2 膝関節脱臼
6.8.1 脛骨:近位部
6.8.2 脛骨:骨幹部
6.8.3 脛骨:遠位関節内(ピロン)
6.9 果部
6.10.1 後足部(踵骨と距骨)
6.10.2 中足部,前足部
用語集
索引
ギリシャ・数字・欧文索引
和文索引
1 AOの哲学と基礎
1.1 AOの哲学と変革
1.2 骨折治癒過程の生物学と生体力学
1.3 インプラントとバイオテクノロジー
1.4 骨折の分類
1.5 軟部組織損傷:病態生理,評価,分類
2 治療方針と計画
2.1 患者と損傷:外傷外科における治療方針決定
2.2 骨幹部骨折:原則
2.3 関節内骨折:原則
2.4 術前計画
3 整復,進入法,固定手技
3.1.1 外科的整復
3.1.2 手術進入路と術中における軟部組織の取り扱い
3.1.3 最小侵襲骨接合術
3.2.1 スクリュー
3.2.2 プレート
3.2.3 テンションバンドの原理
3.3.1 髄内釘法
3.3.2 架橋プレート
3.3.3 創外固定法
3.3.4 ロッキングプレート
4 骨折における諸問題
4.1 多発外傷:病態生理,優先順位および治療
4.2 開放骨折
4.3 軟部組織欠損:治療原則
4.4 小児の骨折
4.5 抗菌薬の予防的投与
4.6 血栓塞栓症の予防
4.7 術後管理:全般的事項
4.8 脆弱性骨折と老年整形外科ケア
4.9 画像検査と放射線の危険性
5 合併症
5.1 変形癒合
5.2 非感染性偽関節
5.3 急性感染
5.4 慢性感染と感染性偽関節
【2】Specific fractures
6 部位別治療法
6.1.1 肩甲骨
6.1.2 鎖骨
6.2.1 上腕骨:近位部
6.2.2 上腕骨:骨幹部
6.2.3 上腕骨:遠位部
6.3.1 前腕骨近位部と肘関節複合損傷
6.3.2 前腕骨骨幹部骨折
6.3.3 橈骨遠位部と手関節
6.3.4 手
6.4 骨盤輪
6.5 寛骨臼
6.6.1 大腿骨:近位部
6.6.2 大腿骨:骨幹部(転子下骨折を含む)
6.6.3 大腿骨:遠位部
6.6.4 人工関節周囲骨折
6.7.1 膝蓋骨
6.7.2 膝関節脱臼
6.8.1 脛骨:近位部
6.8.2 脛骨:骨幹部
6.8.3 脛骨:遠位関節内(ピロン)
6.9 果部
6.10.1 後足部(踵骨と距骨)
6.10.2 中足部,前足部
用語集
索引
ギリシャ・数字・欧文索引
和文索引
書評
開く
AOが提示する時代のニーズに沿った斬新な“改訂版”
書評者: 大鳥 精司 (千葉大大学院教授・整形外科学)
AO法は骨折治療に携わる多くの医師に多大なる恩恵をもたらしてきました。1958年の創設以来60年以上にわたり,研究,臨床,教育に貢献してきました。『AO Principles of Fracture Management』は2000年に原書初版が出版され,その後さまざまな改良が加えられ2007年に原書第2版,それから10年を経て第3版が発刊されました。このたび,日本語版総編集の田中正先生,日本語版編集代表の澤口毅先生らを中心に待望の日本語版『AO法骨折治療 第3版』が完成いたしました。1016ページからなる大作です。
第3版は“AOの哲学”を踏襲しつつ,この10年で蓄積された新たな知見や新開発のデバイスによる手術など,情報が大幅に更新されています。骨折治癒の原理,インプラントのバイオテクノロジーから,術前計画,一般的な固定方法の原理,さらには軟部組織や感染,小児特有の問題点などの提示,合併症などが記載されております。各論として,各部位の骨折に対応したマネジメントがきめ細かく述べられております。全体的な印象として,鮮明な画像所見,イラストレーションも程よい大きさと立体感,実際の外傷の状態も,臨場感があり,大変素晴らしい構成となっています。専門性の高い医師から初心者に対する,事細やかな配慮がなされております。
今回新たに加えられた項目は,「人工関節周囲骨折」「膝関節脱臼」「脆弱性骨折と老年整形外科ケア」「画像検査と放射線の危険性」などであり,時代のニーズに沿った構成になっています。本文中には,“黄色囲み”が採用され,AOが重要と考えるポイントが目立つように提示されています。引用文献では古典的文献とレビュー文献の色分けがなされており,Webコンテンツで参考文献にアクセスすると,一部文献はPubmedなどにリンクが貼られています。
斬新な試みとして,章タイトル部分に掲載されているQRコードをスマートデバイスなどで読み込むと,AOが提供する動画やさまざまな補足的コンテンツ(講義動画)にアクセスできます。本書の「動画」記載からビデオが再生でき,それ以外にもAOが収集した貴重な症例やレクチャーの動画なども視聴することが可能となっています。第2版まではDVDにこれらのコンテンツが収められていましたが,第3版からQRコードを介したWeb配信となり,AOが提供する情報は日々,更新されます。これらはスマートデバイスで気軽に視聴でき,インターネット世代の若手医師には非常に親しみやすくなっています。
最後になりますが,田中先生,澤口先生を中心とした翻訳,作成にご尽力された先生方に深く御礼申し上げますとともに,本書が,多くの読者に裨益し,わが国において骨折治療が適切,安全に行われ,良好な成績をもたらすことを期待しております。
座右の書にすべき「骨折治療のバイブル」
書評者: 帖佐 悦男 (宮崎大教授・整形外科)
骨折は,小児から高齢者まで全ての年代にわたる疾患で,整形外科医や外傷学を志す医師にとって最初に遭遇する分野であり,また最も奥行きの深い分野の一つです。超高齢社会を迎え,脆弱性骨折をはじめ骨折治療のニーズはますます高まり,さらに子どもの運動器の健康が損なわれ,以前は経験することがなかった骨折に遭遇することもあります。
◆AO(Arbeitsgemeinschaft für Osteosynthesefragen)法との出合い
1993年にスイス(ベルン大:Reinhold Ganz教授)に留学している際,ダボスのAOコースへの参加,AO法の理論やlimited contact dynamic compression plate(LC-DCP)の研究などを見学させていただく機会がありました。そのとき骨折治療における生物学的治癒過程(骨膜性血行の重要性)と生体力学をはじめ骨折治療に関する新たな考え方を目の当たりにして,まさに「目からうろこが落ちる」経験をしました。このことは私にとって新鮮な気持ちで骨折治療の基本を学習でき,その後の臨床にも生かすことができています。
◆進化するAO法
そのAO理論の集大成(gold standard legacy)である『AO Principles of Fracture Management』の初版が2000年,2007年に第2版が発刊され,その後もAOの骨折治療の考え方・手術法は進化を続けています。その代表が,locking plate,MIO(minimally invasive osteosynthesis)であり,骨折治療における軟部組織の重要性が強調されています。また,骨折手術におけるアプローチ法や手術時期,放射線被曝や脆弱性骨折などが議論され,それらをまとめた第3版が2017年に発刊されました。待ちに待った日本語版として今回の本書が発刊されています。
◆本書をなぜ手に取ってほしいのか
全般をとおして,大変理解しやすいイラスト,画像や写真が多用され,これまでのオンライン教育に加え,QRコードが表記され簡単に動画などを視聴でき,読者は理解を深めやすくなっています。
構成は,以前と同様のPrinciples,Specific fractures,Appendixからなっており,第1章のAOの哲学と基礎では,AOのビジョン,使命,構造が明確化され,最も基本となるAOの当初の原則と確立された現在の原則が記載されています。また,インプラントとバイオテクノロジーの項が集約化され,インプラントの感染感受性について解説されています。骨折の分類に関しては,分類が術中の情報収集が完了してから完成することや改訂プロセスが明記されComprehensive Classification of Fractures(CCF)の原則に基づきAO/OTA分類も簡素化されています。複雑(complex)と多骨片(multifragmentary)は,混乱を招いたことから多骨片に統一されました。軟部組織の分類も大変理解しやすくなっています。
第2章の治療方針と計画は,これまで以上に術前計画と治療方針の重要性や手術時期について各論とリンクさせ説明されています。
第3章の整復,進入法,固定手技は,大幅に改訂され,手術進入路と術中における軟部組織の取り扱いの重要性が強調され,骨折治療に革命をもたらしたlocking plateを用いて,MIPOやスクリューのハイブリッド使用など十分な術前計画の基に実施することで最善の骨折治療が行えると述べています。
第4章では,超高齢社会となり多くの脆弱性骨折に遭遇することから老年整形外科ケアを含め多くの誌面が割かれています。
第6章の部位別治療では,それぞれの部位が刷新され,増加の一途をたどり治療に難渋する人工関節周囲骨折や時に遭遇する膝関節脱臼が別項として,詳細に記載されています。
◆最後に
約2年間という短期間に大幅に改訂された英語版を日本語版にわかりやすく翻訳された日本語版総編集者の田中正先生をはじめ担当者の方々に対し,敬意を表すとともに御礼申し上げます。
本書は,外傷学を志したり専門にされたりしている全ての医師にとって,運動器外傷の病態・治療に関し基本から最新の知識を習得するための最良の書ですので,日常診療の傍らに置かれ,読者の皆さま方の臨床に即役立つものと確信します。
骨折治療の必読バイブル
書評者: 中島 康晴 (九大教授・整形外科学)
このたび,田中正先生と澤口毅先生の編集による日本語版『AO法骨折治療 第3版』が上梓された。われわれにとって読みやすい日本語版を世に出していただいた両氏,および翻訳・編集に携わられた皆さんにまず敬意を表したい。
AOグループ(Arbeitsgemeinshaft für Osteosynthesesfragen)は,1958年にスイスにおいて少人数で設立され,現在では外科的・科学的財団として発展している。AO Foundationは骨折治療学における臨床的・基礎的研究のメッカとして有名で,さらに教育面ではAOコースを世界中で展開している。本書“AO Principles of Fracture Management”はそのAOグループが総力を挙げて完成した骨折治療マニュアルであり,2000年に初版が発行され,2003年には日本語訳『AO法骨折治療』が出版された。私も整形外科医の端くれとして,本書を通して骨折治療のいろいろなことを学ばせていただいた。骨折の手術の前には必ずといってよいほどひもといた座右の書である。日本語版第2版は2010年に出されているので,今回の改訂は約10年ぶりということになる。まさに待ちに待った改訂である。
本書の魅力の1つは豊富な写真やイラストであろう。視線に合わせた三次元的なイラストやCT,MRIのような断面図のイラストを用いて,読者が骨折の形態,周囲の解剖,そしてAOの治療原則(principle)を理解しやすいように工夫されている。テキストも長過ぎず,覚えておくべき重要な点は色を変えて強調されている点も,メリハリが効いていて読みやすい。加えて各章のQRコードから250以上もの動画にアクセスできるようになっており,インターネット時代の世代にも使い勝手のよい工夫がなされている。
時代の変遷とともに疾患構成も変化している。田中先生も序文で触れられているように,超高齢社会では骨粗鬆症に起因する骨折が多発し,世界中で大きな社会的問題となっている。加えて,高齢者の多くは合併症があり,筋力も低下しているため,術後のリハビリテーションを含めたケアも欠かすことのできない重要な点である。本書では「脆弱性骨折と老年整形外科ケア」として独立した章として詳述されている。また,イメージを使用する機会の多い分野でもあり,放射線被曝のリスクは決して少なくない。その点は「画像検査と放射線の危険性」として述べられており,放射線被曝を最小化する実際的な注意点についてわかりやすく記載されている。
本書は1016ページに及ぶ大書であるが,決して教科書のような隅から隅までの長い記述ではない。むしろ,記述は簡潔で,実践的で効果的に骨折治療の実際を学ぶことができる書籍である。すでに多く骨折治療を経験された先生にも,今から経験を積もうとする若い整形外科医に対しても,必読のバイブルとして自信を持って推薦したい。
書評者: 大鳥 精司 (千葉大大学院教授・整形外科学)
AO法は骨折治療に携わる多くの医師に多大なる恩恵をもたらしてきました。1958年の創設以来60年以上にわたり,研究,臨床,教育に貢献してきました。『AO Principles of Fracture Management』は2000年に原書初版が出版され,その後さまざまな改良が加えられ2007年に原書第2版,それから10年を経て第3版が発刊されました。このたび,日本語版総編集の田中正先生,日本語版編集代表の澤口毅先生らを中心に待望の日本語版『AO法骨折治療 第3版』が完成いたしました。1016ページからなる大作です。
第3版は“AOの哲学”を踏襲しつつ,この10年で蓄積された新たな知見や新開発のデバイスによる手術など,情報が大幅に更新されています。骨折治癒の原理,インプラントのバイオテクノロジーから,術前計画,一般的な固定方法の原理,さらには軟部組織や感染,小児特有の問題点などの提示,合併症などが記載されております。各論として,各部位の骨折に対応したマネジメントがきめ細かく述べられております。全体的な印象として,鮮明な画像所見,イラストレーションも程よい大きさと立体感,実際の外傷の状態も,臨場感があり,大変素晴らしい構成となっています。専門性の高い医師から初心者に対する,事細やかな配慮がなされております。
今回新たに加えられた項目は,「人工関節周囲骨折」「膝関節脱臼」「脆弱性骨折と老年整形外科ケア」「画像検査と放射線の危険性」などであり,時代のニーズに沿った構成になっています。本文中には,“黄色囲み”が採用され,AOが重要と考えるポイントが目立つように提示されています。引用文献では古典的文献とレビュー文献の色分けがなされており,Webコンテンツで参考文献にアクセスすると,一部文献はPubmedなどにリンクが貼られています。
斬新な試みとして,章タイトル部分に掲載されているQRコードをスマートデバイスなどで読み込むと,AOが提供する動画やさまざまな補足的コンテンツ(講義動画)にアクセスできます。本書の「動画」記載からビデオが再生でき,それ以外にもAOが収集した貴重な症例やレクチャーの動画なども視聴することが可能となっています。第2版まではDVDにこれらのコンテンツが収められていましたが,第3版からQRコードを介したWeb配信となり,AOが提供する情報は日々,更新されます。これらはスマートデバイスで気軽に視聴でき,インターネット世代の若手医師には非常に親しみやすくなっています。
最後になりますが,田中先生,澤口先生を中心とした翻訳,作成にご尽力された先生方に深く御礼申し上げますとともに,本書が,多くの読者に裨益し,わが国において骨折治療が適切,安全に行われ,良好な成績をもたらすことを期待しております。
座右の書にすべき「骨折治療のバイブル」
書評者: 帖佐 悦男 (宮崎大教授・整形外科)
骨折は,小児から高齢者まで全ての年代にわたる疾患で,整形外科医や外傷学を志す医師にとって最初に遭遇する分野であり,また最も奥行きの深い分野の一つです。超高齢社会を迎え,脆弱性骨折をはじめ骨折治療のニーズはますます高まり,さらに子どもの運動器の健康が損なわれ,以前は経験することがなかった骨折に遭遇することもあります。
◆AO(Arbeitsgemeinschaft für Osteosynthesefragen)法との出合い
1993年にスイス(ベルン大:Reinhold Ganz教授)に留学している際,ダボスのAOコースへの参加,AO法の理論やlimited contact dynamic compression plate(LC-DCP)の研究などを見学させていただく機会がありました。そのとき骨折治療における生物学的治癒過程(骨膜性血行の重要性)と生体力学をはじめ骨折治療に関する新たな考え方を目の当たりにして,まさに「目からうろこが落ちる」経験をしました。このことは私にとって新鮮な気持ちで骨折治療の基本を学習でき,その後の臨床にも生かすことができています。
◆進化するAO法
そのAO理論の集大成(gold standard legacy)である『AO Principles of Fracture Management』の初版が2000年,2007年に第2版が発刊され,その後もAOの骨折治療の考え方・手術法は進化を続けています。その代表が,locking plate,MIO(minimally invasive osteosynthesis)であり,骨折治療における軟部組織の重要性が強調されています。また,骨折手術におけるアプローチ法や手術時期,放射線被曝や脆弱性骨折などが議論され,それらをまとめた第3版が2017年に発刊されました。待ちに待った日本語版として今回の本書が発刊されています。
◆本書をなぜ手に取ってほしいのか
全般をとおして,大変理解しやすいイラスト,画像や写真が多用され,これまでのオンライン教育に加え,QRコードが表記され簡単に動画などを視聴でき,読者は理解を深めやすくなっています。
構成は,以前と同様のPrinciples,Specific fractures,Appendixからなっており,第1章のAOの哲学と基礎では,AOのビジョン,使命,構造が明確化され,最も基本となるAOの当初の原則と確立された現在の原則が記載されています。また,インプラントとバイオテクノロジーの項が集約化され,インプラントの感染感受性について解説されています。骨折の分類に関しては,分類が術中の情報収集が完了してから完成することや改訂プロセスが明記されComprehensive Classification of Fractures(CCF)の原則に基づきAO/OTA分類も簡素化されています。複雑(complex)と多骨片(multifragmentary)は,混乱を招いたことから多骨片に統一されました。軟部組織の分類も大変理解しやすくなっています。
第2章の治療方針と計画は,これまで以上に術前計画と治療方針の重要性や手術時期について各論とリンクさせ説明されています。
第3章の整復,進入法,固定手技は,大幅に改訂され,手術進入路と術中における軟部組織の取り扱いの重要性が強調され,骨折治療に革命をもたらしたlocking plateを用いて,MIPOやスクリューのハイブリッド使用など十分な術前計画の基に実施することで最善の骨折治療が行えると述べています。
第4章では,超高齢社会となり多くの脆弱性骨折に遭遇することから老年整形外科ケアを含め多くの誌面が割かれています。
第6章の部位別治療では,それぞれの部位が刷新され,増加の一途をたどり治療に難渋する人工関節周囲骨折や時に遭遇する膝関節脱臼が別項として,詳細に記載されています。
◆最後に
約2年間という短期間に大幅に改訂された英語版を日本語版にわかりやすく翻訳された日本語版総編集者の田中正先生をはじめ担当者の方々に対し,敬意を表すとともに御礼申し上げます。
本書は,外傷学を志したり専門にされたりしている全ての医師にとって,運動器外傷の病態・治療に関し基本から最新の知識を習得するための最良の書ですので,日常診療の傍らに置かれ,読者の皆さま方の臨床に即役立つものと確信します。
骨折治療の必読バイブル
書評者: 中島 康晴 (九大教授・整形外科学)
このたび,田中正先生と澤口毅先生の編集による日本語版『AO法骨折治療 第3版』が上梓された。われわれにとって読みやすい日本語版を世に出していただいた両氏,および翻訳・編集に携わられた皆さんにまず敬意を表したい。
AOグループ(Arbeitsgemeinshaft für Osteosynthesesfragen)は,1958年にスイスにおいて少人数で設立され,現在では外科的・科学的財団として発展している。AO Foundationは骨折治療学における臨床的・基礎的研究のメッカとして有名で,さらに教育面ではAOコースを世界中で展開している。本書“AO Principles of Fracture Management”はそのAOグループが総力を挙げて完成した骨折治療マニュアルであり,2000年に初版が発行され,2003年には日本語訳『AO法骨折治療』が出版された。私も整形外科医の端くれとして,本書を通して骨折治療のいろいろなことを学ばせていただいた。骨折の手術の前には必ずといってよいほどひもといた座右の書である。日本語版第2版は2010年に出されているので,今回の改訂は約10年ぶりということになる。まさに待ちに待った改訂である。
本書の魅力の1つは豊富な写真やイラストであろう。視線に合わせた三次元的なイラストやCT,MRIのような断面図のイラストを用いて,読者が骨折の形態,周囲の解剖,そしてAOの治療原則(principle)を理解しやすいように工夫されている。テキストも長過ぎず,覚えておくべき重要な点は色を変えて強調されている点も,メリハリが効いていて読みやすい。加えて各章のQRコードから250以上もの動画にアクセスできるようになっており,インターネット時代の世代にも使い勝手のよい工夫がなされている。
時代の変遷とともに疾患構成も変化している。田中先生も序文で触れられているように,超高齢社会では骨粗鬆症に起因する骨折が多発し,世界中で大きな社会的問題となっている。加えて,高齢者の多くは合併症があり,筋力も低下しているため,術後のリハビリテーションを含めたケアも欠かすことのできない重要な点である。本書では「脆弱性骨折と老年整形外科ケア」として独立した章として詳述されている。また,イメージを使用する機会の多い分野でもあり,放射線被曝のリスクは決して少なくない。その点は「画像検査と放射線の危険性」として述べられており,放射線被曝を最小化する実際的な注意点についてわかりやすく記載されている。
本書は1016ページに及ぶ大書であるが,決して教科書のような隅から隅までの長い記述ではない。むしろ,記述は簡潔で,実践的で効果的に骨折治療の実際を学ぶことができる書籍である。すでに多く骨折治療を経験された先生にも,今から経験を積もうとする若い整形外科医に対しても,必読のバイブルとして自信を持って推薦したい。