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AO法骨折治療 Foot and Ankle [英語版Web付録付]

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単純な症例から複雑なものまで、体系的に、かつ症例ベースで解説する。世界中の術者から集めた症例を用い、骨折や脱臼の治療、軟部組織損傷の管理などを順を追って丁寧に説明していく。また、1つの症例に対して1つのアプローチを紹介するにとどまらず、多様なテクニックを提示することで、想定されるあらゆる状況への対応力を培う。足と足関節の外傷にかかわる全ての医師に向けて編集された、新しいAOマニュアルがついに登場!

原著 Stefan Rammelt / Michael Swords / Mandeep S Dhillon / Andrew K Sands
監訳 田中 正
訳者代表 佐藤 徹
野田 知之 / 松村 福広 / 峰原 宏昌 / 宮本 俊之 / 松井 健太郎
発行 2023年05月判型:A4頁:664
ISBN 978-4-260-05062-3
定価 28,600円 (本体26,000円+税)

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日本語版の序/推薦の序/献辞/序/謝辞

日本語版の序

 1958年にスイスで誕生した骨折内固定法の研究グループAOは,活動目標の4本柱の一つに教育を掲げ,その一環としてさまざまなManualを発刊してきました.2019年,足の外科で有名なドイツのStefan Rammelt先生らにより“Manual of Fracture Management─Foot and Ankle”が出版され,このたびその日本語版「AO法骨折治療 Foot and Ankle」が発刊される運びとなりました.

 AOでは1990年代から臨床に則した知識を学習者本人が主役となり学んでいく“成人教育法(adult learning)”を重視し,“Case-based learning”の手法を用いてきました.今まで発刊されてきたいくつものManualと同様に,今回の“Foot and Ankle”もこの手法を取り入れ,症例を通して包括的な知識が学べるように工夫されています.また,各章にあるQRコードを読み取ることにより,簡単にオンラインの教材にアクセスし,関連した文献,Webinarsやwebcasts,Lectures,教育ビデオなどの生きた教材を参照することができ,Manualの内容以上のことが勉強できるようになっています.

 現在,整形外科医が扱う疾患は多岐にわたり,それぞれの専門性が進んでいますが,“足の外科”も一つの重要な専門分野となっています.しかし,足関節・足部外傷は日常頻度の高い外傷であり,足の外科専門医がすべてに対応できるわけではありません.すなわちこの外傷は,三次救急病院などで扱う多発外傷からクリニックなどを受診する単独損傷まで,どのような病院・診療所で働いていても遭遇する外傷で,研修医,一般整形外科医あるいは救急医が初療にあたることが現実であると思われます.しかも,荷重肢であることから,障害の残りやすい損傷としても要注意の外傷です.本書は臨床の第一線で働く先生方にとって,あるいは足の外科専門医にとって非常にわかりやすく,AOの治療原則に則った治療法の理解に大変役立つものと確信しております.ぜひ本書を座右の書として日常診療にお役立ていただきたいと願っています.

 本書の翻訳を分担してくださったAOTrauma Japanメンバーのご苦労,さらには理事長の佐藤徹先生には訳者代表として全体に目を通していただき,さまざまな貴重なアドバイスをいただきましたことに対して大変感謝しております.また最後になりましたが,本書の出版にあたり多大なご尽力を賜りました医学書院の皆さまに心から御礼申し上げます.

 2023年4月
 監訳者
 田中 正


推薦の序

 1958年に,スイスの一般外科医と整形外科医のグループがスイスのビールに集まり,骨折の内固定法を研究するために組織を設立した.これがAO(Arbeitsgemeinschaft für Osteosynthesefragen)の誕生である.当時,骨折の内固定という概念はよく知られてはいたものの,特に感染症をはじめとする多くの危険性と懸念のためほとんど推奨されていなかった.
 1907年に,ベルギーのブリュッセルでAlbin Lambotteが初期の包括的なマニュアル『L'Intervention Opératoire』を出版した.
 1949年に,ブリュッセル大学のRobert Danisは,『Théorie et pratique de l'ostéosynthèse』を出版した.彼は骨折の解剖学的整復の概念,安定した固定,一次的骨癒合(“soudure autogène”),損傷肢の早期可動運動を紹介した.DanisはAO創設者の1人であるMaurice E Müllerに大きな影響を与え,1958年のAO設立につながった.
 Müllerは,Danisが唱えた重要な原則をすぐに理解したが,その原則を適用するための適切な機器やインプラントがないことが障壁となった.AOの創設者たちは,スイスの2つの会社と密接に協力することによって,その原則を実現するためのインプラントシステムの開発を実現した.このAOシステムにより,安定した固定を達成し,早期運動と四肢の機能回復が可能となった.敗血症を抑制し,外傷を負った患者の救済治療の向上,材料工学の改良,手術中の軟部組織への対応改善など,AOの内固定法の原則を実現するタイミングは,まさにこのときであったといえる.
 筆者らは,トロントでわれわれの指導者から骨折の内固定法の訓練を受けたが,AOグループの創設者であり革新的開発者であるMüllerに会った後すぐにAOが果たしている役割の重要性を認識した.Tileは1965年にザンクトガレンで,Schatzkerは1966年にトロントでMüllerに会い,それに引き続き1967年にスイスのベルンの彼の下でリサーチフェローシップにて研修を行った.われわれとAOとの密接な協力関係は,北米で最も早い時期にAOコースを開催したこと,研究や書籍の出版として実を結び,Tile(1992~94年)とSchatzker(1998~2000年)はAO財団の理事長に就任した.
 教育は常にAOの柱であり,その成功が続くための鍵でもある.最初の出版物は,Müllerらによって1965年に出版された『Techniques of Internal Fixation of Fractures(骨折の内固定法のテクニック)』であり,その後,1969年に『The Manual of Internal Fixation of Fractures(骨折の内固定マニュアル)』が出版され,手技の詳細が説明された.
 患者の良好な成績を確実にするため,外科医はコースに参加するか,AOフェローシップに参加することでしか器械を手に入れることができなかった.初期の器具は基本的なもので,ほとんどの骨折はこれで対処できた.
 最初の10年間は,この原則は急進的とみなされ,そのため世界の多くの地域で異議を唱えられ,受け入れられなかった.しかし,よくトレーニングを受けた若い外科医らが患者の治療成績を発表したことにより,すぐに常識となった.
 外傷外科医の専門化に伴い,より専門的な器具やインプラントが必要となり,そのためにより詳細なマニュアル,たとえば『Manual of Fracture Management─Wrist』〔日本語版『AO法骨折治療――Wrist』(医学書院刊,2022年)〕や,足部・足関節外傷に重要な貢献をする今回の『Manual of Fracture Management─Foot and Ankle(日本語版『AO法骨折治療――Foot and Ankle』)が必要となった.脛骨遠位部,足関節,足部の外傷は,多発外傷や単独外傷によくみられ,持続する重大な障害の原因となることがあまりに多い.
 本書は,足部,足関節,脛骨遠位部の外傷を治療するすべての外科医にとって蔵書とするに値する.本書は症例にもとづいて構成されており,わかりやすくて非常によくまとまっている.各症例は,その特定の外傷に関する一般的に考慮すべきこと,観血的治療あるいは非観血的治療かの決定法,術前計画立案,手術アプローチ選択,危険性と合併症,代替テクニック,リハビリテーションについて論じている.本書は美しいイラストで描かれ,各症例の解説は読者にとって貴重であり,その分野に定評のある専門家が執筆した.644ページで最先端の事項までを含んでおり,骨折の手術治療を扱うすべての外科医にとって必須のマニュアルとなるであろう.
 本書は,1958年にAOグループが開始した教育プロセスの論理的な延長線上にあり,この重要な解剖学的領域における外傷患者の成績を改善するための教育の柱の重要性をさらに高めるものである.

 Marvin Tile
 Joseph Schatzker


献辞

 本書を,われわれAOの先生方と同僚に捧げる.
 長年にわたり,われわれは足部と足関節の外傷のよりよい治療につながるAOテクニックを議論し,改良してきた.われわれは,AOのイベント,コース,委員会に時間,知識,熱意を捧げてくれる世界中の熟練した多くの外科医と働くことができ,幸運だった.そのすべてを列挙しようとすると,必ず漏れが出る.幸いなことに,彼らのうち何人かは,彼らの症例やアイディアを本書に提供することに同意してくれた.
 特に,今日の足部・足関節のAOワールドを具現化した2人の人物に本書を捧げ,その思いを本書の随所で読者に感じていただきたい.
 Hans Zwipp氏は,AOの理念をヨーロッパをはじめ,世界中に広めることに貢献した人物である.彼は友人であり,指導者であり,真のAOのリーダーであった.
 われわれはSigvard T Hansen Jr.氏に特別な感謝の意を表する.彼は,AOの強固な内固定法の原理を足に適用したパイオニアであった.彼は,足部と足関節の外傷に対する機能的で構造的な救済と,損傷後の再建を行うことに尽力した.彼は皆の真の友人であり,AOの旗のもとに世界中からわれわれ全員を集めてくれた.


 人間の足は,ユニークで繊細な構造をしている.系統的には,運動器システムのなかで最も若い部分であり,隔世遺伝形質の影響を受ける可能性がある.足関節は,立つ,歩く,走る,跳ぶなどの動作において,脚の垂直方向の力を水平方向や凹凸のある地面に対して変換する役割を担っており,足と切り離すことはできない.生理的な軸方向のアライメントからのわずかなずれや,体重を支える関節の踏み外しが,患者に深刻な影響を及ぼす可能性があることは明らかである.したがって,アライメント,関節適合性,安定性を回復させることは,足部と足関節の外傷の治療において最も重要である.
 かつて,足部や足関節の大きな損傷を受けた人は,生産性のある社会人人生は「終わった」とみなされた時期があった.また,多発外傷患者では,生命にかかわる傷害の治療後に,最も障害が長期化するのは足部や足関節の損傷であることが示されている.しかし,足部・足関節の骨折は,合併する損傷や,微妙ではあるが障害をもたらしうる損傷の徴候に対する知識不足のため,多くの患者で見逃されている.
 足部・足関節の手術は,この数十年の間に大きく進歩した.変形した足をまっすぐ地面につけるために,ギプス包帯,牽引,ピンニング,それらの後の装具を用いた従来の治療は,早期の解剖学的整復と強固な内固定にとってかわられた.これにより,足部や足関節の損傷後の機能を最大限に引き出す機能的術後管理が可能となった.マイクロサージャリー技術を利用したさまざまな有茎皮弁や遊離皮弁は,たとえば重篤な軟部組織損傷を伴う開放骨折や脱臼の治療選択肢を大きく広げた.しかし,技術的に手術可能であるからといって,すべての症例に対して,施しうる手術をすべて行うという誘惑に駆られてはならない.患者の機能的要求や併存疾患を考慮し,個々の患者にとって最良の結果を得るために,まず患者全体の評価を始める.
 診断技術は格段に進歩したが,十分な臨床評価と単純X線像における正しい投影法と所見に対する知識が診断の基本であり,患者の足に触れる前にMRI撮影することはよい方法とはいえない.
 本書は,足部と足関節における広範囲の骨折,脱臼,軟部組織損傷の評価と管理について,段階的なアプローチを示している.手術手技と同様に,近年進化してきたAOの教育・学習の原理にもとづき,脛骨ピロン骨折から足趾までの損傷の評価と治療を,症例ベースで解説する.
 本書が,世界中の患者がよりよい治療を受け,より機能的な生活を取り戻すための一助となることを希望する.また,掲載された症例や解決策が議論を促し,患者管理および手術手技のさらなる向上につながることを心から願っている.これこそが,本書の執筆陣が掲げるAOスピリットの真の反映といえる.

 編集者一同


謝辞

 『Manual of Fracture Management─Foot and Ankle』の制作と出版は,多くの貢献者の献身と支援なくしては不可能であっただろう.
 さまざまな教育委員会やワーキンググループで時間を割いてくれたAO外科医,症例記録や画像をボランティアで提供してくれた多くの同僚,われわれの医療現場のスタッフ,AOTraumaやAO Education Instituteのチームの方々すべてに,この価値ある出版物の発刊に協力してくれたことを感謝する.
 多くの方々に感謝するが,特に以下の方々に対し謝意を表したい.
・ この教育機会の重要性と意義を認識し,この出版物の発刊を承認してくださったAOTrauma Education Commissionの皆さま.
・ 指導と専門知識,そして本書を準備し可能な限り最高の出版物にするための豊富なリソースとスタッフを提供してくださったAO Education InstituteのUrs Rüetschi氏とRobin Greene氏.
・ 多忙なスケジュールのなか,章を執筆してくれた世界中の多くの著名な同僚たち.
・ 本書の序をご執筆いただいたMarvin Tile氏,Joseph Schatzker氏.
・ 本書のプロジェクトを成功裏に計画・管理し,制作過程を通して指導,サポート,専門知識を提供してくれたJecca Reichmuth氏.
・ プロフェッショナルなサポートを提供してくれた出版部門のマネージャーであるCarl Lau氏.
・ 本書の優れたレイアウトを担当したグラフィックデザイナーのRoman Kellenberger氏.
・ すばらしいイラストを描いてくれたMarcel Erismann氏.
・ そして最後に,本書のプロジェクトの結実をもたらしたAO財団のさまざまな活動(コース,委員会,タスクフォース)への関与に対し,筆者らを励まし,絶え間なくサポートしてくれたわれわれの家族にも感謝する.彼らの理解なしには,このプロジェクトは実現しなかったであろう.

 Stefan Rammelt
 Michael Swords
 Mandeep S Dhillon
 Andrew K Sands

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日本語版の序
推薦の序
献辞

謝辞
オンライン教育コンテンツについて
編集・執筆者一覧
略語一覧

1 序論
  1 足部・足関節手術における一般的注意事項

2 脛骨遠位部
  2 脛骨遠位部/ピロン骨折
 1節 関節内骨折を伴う骨幹端骨折
  2.1 脛骨天蓋に及ぶ脛骨骨幹部骨折──プレート固定
  2.2 関節面を含む骨幹端骨折
  2.3 部分関節内骨折──プレート固定
  2.4 天蓋に及ぶ脛骨骨幹部骨折──髄内釘固定
 2節 複雑な関節内骨折
  2.5 内側プレートとスクリュー固定
  2.6 前外側プレート固定と内側支持固定
  2.7 前方プレート固定
  2.8 ピロンの段階的治療(後方より前方へ)
 3節 軟部組織損傷を伴う複雑な関節内骨折
  2.9 足部コンパートメント症候群を合併したピロン骨折
  2.10 遊離組織移植による被覆

3 果部
  3 果部骨折
 1節 脛腓靱帯結合の安定した果部骨折
  3.1 脛腓靱帯結合レベルでの腓骨遠位部骨折(Weber B)
  3.2 内果横骨折を伴う脛腓靱帯結合レベルの両果骨折(Weber B)
  3.3 内果垂直骨折と関節嵌入を伴う脛腓靱帯結合より遠位での腓骨骨折(Weber A)
 2節 脛腓靱帯結合の破綻した果部骨折
  3.4 脛腓靱帯結合が破綻した両果骨折
  3.5 脛腓靱帯結合が破綻した高位腓骨骨折(Maisonneuve)
  3.6 脛腓靱帯結合が破綻した三果骨折
 3節 部分的関節嵌入を伴う果部骨折
  3.7 脛骨後縁の嵌入を伴う足関節三果骨折
  3.8 脛骨後縁の嵌入を伴い腓骨が固定された脱臼骨折(Bosworth)
  3.9 脛骨前縁骨折(Chaput)を伴う骨粗鬆症性三果骨折

4 踵骨
  4 踵骨骨折
 1節 周辺部の骨折
  4.1 関節外骨折(鴨嘴)
  4.2 内側結節骨折
  4.3 載距突起骨折
 2節 中央部の骨折
  4.4 単純関節内骨折(Sanders 2)──最小侵襲スクリュー固定
  4.5 関節内転位骨折──足根洞アプローチ
  4.6 複雑関節内骨折(Sanders 3/4)──拡大アプローチ
  4.7 踵骨脱臼骨折

5 距骨
  5 距骨骨折および脱臼
 1節 周辺部の骨折
  5.1 距骨ドーム骨軟骨骨折
  5.2 距骨外側突起骨折
  5.3 距骨後突起骨折
 2節 中央部の骨折
  5.4 転位した距骨頚部骨折(Hawkins 2)
  5.5 転位した距骨体部骨折(Marti 3/4)
  5.6 体部の脱臼を伴った距骨頚部骨折(Hawkins 3)
 3節 脱臼
  5.7 距骨下関節内側脱臼
  5.8 距骨下関節外側脱臼
  5.9 距骨周囲脱臼

6 中足部
  6 中足部損傷
 1節 Chopart関節損傷
  6.1 距骨頭骨折
  6.2 踵骨前方突起骨折
  6.3 舟状骨骨折
  6.4 立方骨ナッツクラッカー骨折
  6.5 軟部組織損傷を伴ったChopart関節脱臼
 2節 足根中足関節,足根間関節損傷(Lisfranc)
  6.6 足根中足関節損傷──経皮的整復および固定
  6.7 足根中足関節損傷──観血的整復内固定
  6.8 コンパートメント症候群を伴う足根中足関節損傷
  6.9 足根中足関節/足根間関節複雑損傷

7 中足骨
  7 中足骨骨折
 1節 第1中足骨骨折
  7.1 中足骨頭骨折
  7.2 第1中足骨骨幹部単純骨折
  7.3 第1中足骨骨幹部粉砕骨折
  7.4 関節内に及ぶ第1中足骨近位部骨折
 2節 第2~4中足骨骨折
  7.5 中足骨頚部多発骨折──K-ワイヤ固定
  7.6 中足骨頚部多発骨折──プレート固定
  7.7 中足骨骨幹部多発骨折
  7.8 中央部の中足骨基部関節内骨折
 3節 第5中足骨基部骨折
  7.9 第5中足骨基部骨折(Zone 1)
  7.10 第5中足骨基部骨折(Zone 2)

8 足趾と種子骨
  8 足趾・種子骨の骨折と脱臼
 1節 母趾の骨折
  8.1 母趾の基節骨骨幹部骨折
  8.2 母趾の基節骨両顆骨折
 2節 第2~5趾の骨折と脱臼
  8.3 第2~5趾の骨折
  8.4 第2~5趾の脱臼
 3節 種子骨の骨折
  8.5 種子骨骨折

付録
 AO/OTA骨折・脱臼分類(抜粋)
 OTA開放骨折分類(OTA-OFC)
 開放骨折のGustilo-Anderson分類

索引

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この本は今すぐ買うべし! その理由(わけ)は?
書評者:山口 智志(千葉大大学院国際学術研究院准教授/千葉大大学院整形外科学)

 一読した感想は,「今すぐ買うべし!」である。本書は,待望の足部・足関節骨折の手術治療に特化したテキストである。これから骨折治療を学ぶ後期研修医から指導医,足の外科の診療,研究に携わるエキスパートなど,経験によらずあらゆる整形外科医,外傷医にとって必携の書と断言できる。

 足部・足関節骨折の手術は専門性が高く,治療法を学ぶ上でいくつかの問題がある。まず,足部・足関節は多くの関節から成る複合体である。例えば,足関節骨折とリスフラン関節骨折ではまったく異なる評価,治療戦略が必要である。しかし,ベテランの医師であっても全ての部位の骨折治療を経験することは容易ではない。経験がない骨折では,アプローチすらわからないことも少なくない。加えて,足部・足関節骨折の手術は決して簡単ではない。足関節果部骨折は,骨折手術の入門編として後期研修医が執刀することも多い。しかし,十分な整復が得られず短期間で変形性関節症に至る症例も少なからず存在する。

 本書を手元に置いておくことで,われわれが臨床で抱えるこれらの問題は解決される。本書は,脛骨遠位部から趾骨骨折まで,比較的まれな骨折を含めて全範囲の骨折を網羅している。どのような骨折に遭遇したときも,必ず治療のヒントになる情報を提供してくれる。また,膨大な症例とイラスト,X線画像,手術写真を用いて術前計画から手術手技,術後管理まで一貫した形式で論じている。必要なときに素早く情報にアクセスすることができ,かつ理論と実践のギャップを埋める実用的なガイドとして非常に有用である。さらに本書は,現時点での治療のスタンダード,すなわち最良の治療を網羅している。例えば,踵骨骨折では拡大L字切開から足根洞アプローチ,経皮手術まで多様な術式を網羅しているため,足部・足関節を専門に治療する評者にとっても多くの学びがある。

 術中に陥りやすいピットフォールとその回避方法,代替テクニックを詳細に解説しているのも,本書の特徴である。例えば,見落としがちな骨折面に嵌入した小骨片の対処法,整復困難例での次の一手などを具体的,明快に提示している。術後レントゲン写真を見て,「こうすれば良かった……」と後悔し,眠れぬ夜を過ごすことは誰しも経験することである。本書を熟読することにより,偉大な先人の経験を自分のものとして手術に臨むことができる。

 本書は,足部・足関節骨折管理の技術をまったく新しいレベルに引き上げてくれる。患者を助けるとともに,日々の治療に悩む医師の安眠を助ける名著である。評者も,整形外科医としてのキャリアの中で,今後も何十,何百回と本書を開くであろう。


足・足関節の外傷を網羅的に学べる一冊!
書評者:田中 康仁(奈良医大教授・整形外科)

 「こんな本が欲しかった」と考えるのは私だけではないと思います。AO Traumaによるエビデンスに基づいた治療体系は,骨折治療のスタンダードであることに異論のある方はあまりいないのではないでしょうか。足・足関節は外傷の好発部位であり,今回この部位に特化した教科書の日本語訳が出版されました。外傷を治療する整形外科医にとり,必携の書であると考えます。

 本書の最大の特徴は,各項が症例提示を基本として編集されていることです。各章は脛骨遠位部から始まり,果部,踵骨,距骨,中足部,中足骨,最後は足趾と種子骨まであり,各章でははじめにそれぞれの部位の骨折が概説され,その後,59例ものありとあらゆる骨折の実例が網羅されています。それぞれの症例では術前計画,手術室のセットアップ,手術法,ピットフォールと合併症,代替テクニック,術後管理とリハビリテーションについて,具体的に詳細に記載されています。

 私が感銘を受けたのは,術前計画の項に手書きの作図が載っており,プレートの選択方法まで,詳細に記載されていることです。例えば複数のプレート固定を併用する場合は,ストレス集中による新たな骨折の発生を避けるために,それぞれのプレートの近位端が骨幹部の異なるレベルになるよう考慮する必要があることなど,エビデンスに裏打ちされたノウハウがそれぞれの症例について,惜しげもなくつまびらかにされています。

 手術法に関してはステップバイステップで注意点を交えながらわかりやすく提示されており,術中写真も豊富に使用されているために同様の症例がきたときのイメージトレーニングが非常にやりやすいと感じました。代替テクニックも明示されており,読者は自身が治療しなければならない症例に当てはめて治療法を選択することができるのも嬉しいと思います。また,合併症の項も充実しており,骨折に併存している皮膚や軟部組織,靭帯損傷などに対する対処法についても,具体的に述べられており,初心者でもわかりやすく,経験豊富な外傷医の治療方法を学ぶことができます。後療法に関しては抜糸や荷重の時期,果ては社会復帰までのタイムテーブルが示されています。さらに,抜釘に関しても触れられており,診療に直結する知識が満載されています。

 本の最後には骨折の各種分類方法まで載せられており,本書一冊あれば足・足関節に関する外傷の全てを学ぶことができると考えます。


読者の期待をはるかに超える書。骨折治療の進化を実感
書評者:高尾 昌人(重城病院CARIFAS足の外科センター所長)

 AOは1958年にスイスで誕生した骨折内固定法の研究グループである。AOは創設以降飛躍的な発展を遂げ,現在そのイノベーションは,基礎研究,製品開発,臨床検証,評価など多岐にわたり,骨折の外科的治療における革新者の役割を果たし続けている。教育においては世界中で870を超える教育イベントを提供しており,本書はその一環として2019年に出版された『Manual of Fracture Management―Foot and Ankle』の日本語版としてAO Trauma Japan顧問の田中正先生の監訳の下2023年5月に医学書院から発行された。AO Trauma Japan理事長の佐藤徹先生およびAO Trauma Japanの精鋭たちによる日本語訳は,原著の内容を全て漏らすことなく正確かつわかりやすい表現で記されている。評者自身,本書の理解しやすい構成もあり一気に最後まで読破することができた。そして読後には,多くの先人たちにより積み上げられてきたAO法の奥深さと,足関節・足部骨折治療の進化に感銘を受けた。

 本書では術前の手書きの計画書や多くの図および写真が採用され,実際に骨折の治療を行っているかのような臨場感にあふれている。全ての外科的治療法にはピットフォールと合併症,代替テクニックおよび術後管理とリハビリテーションが詳細に記載されており,すぐに臨床に役立つ構成になっている。監訳者の田中先生も述べられているように,本書は足関節・足部のあらゆる骨折に対する治療法についてCase-based learningの手法を用いて書かれており,症例をとおして包括的な知識を学ぶことができるように工夫されている。また,各章の始めにあるQRコードを読み込むことにより関連した文献,WebinarやWebcast,Lectures,教育ビデオなどのオンラインの教材に簡単にアクセスできる,読者にとって期待をはるかに上回るパフォーマンスを有する書である。

 評者は,2001年にJOSSM/KOSSM/GOTSトラベリングフェローとしてバーゼルを訪れた際に,AOの創始者の1人であるMaurice E Müller先生と夕食をご一緒させていただく幸運を得た。Müller先生との会話において,先生のAOに対する思いいれや骨折治療を進化させるという情熱に圧倒された記憶がある。余談ではあるが,Müller先生は親日家でもあり,初めて日本を訪れた際の思い出をメモ帳に絵を描きながら楽しそうにお話しされていたのが思い出される。そうした先人の熱い思いを礎に,足関節・足部骨折治療の世界的権威であるStefan Rammelt先生を中心としたトップランナーたちによって『Manual of Fracture Management―Foot and Ankle』は執筆された。その日本語版である『AO法骨折治療 Foot and Ankle』は,整形外科医だけでなく,足関節・足部の骨折治療に携わる全ての医療人にとって必読の書である。

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