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第3356号 2020年1月27日


看護師に求められる薬剤の知識とは
第40回日本臨床薬理学会の話題から


 第40回日本臨床薬理学会学術総会(会長=獨協医大・下田和孝氏)が2019年12月4~6日,京王プラザホテル(東京都新宿区)にて,「臨床薬理学の輝ける明日を求めて」をテーマに開催された。本紙では,シンポジウム「看護師に必要とされる実践的与薬学とは」(座長=宮崎大・柳田俊彦氏,九州大大学院・笹栗俊之氏)の模様を紹介する。

看護師のための臨床薬理学教育の構築を

 日本における大学進学率は上昇の一途をたどる一方で,18歳人口の減少により進学者数は減少している。「学生獲得には各大学がこれまで以上に魅力をアピールしなければならない」。文科省で看護教育専門官を務める杉田由加里氏はこう述べ,本シンポジウムの前段として看護学教育現場の動向を概説した。氏は,近年の看護系大学数の変化に言及し,公立校は2年に1校,私立校では1年に約10校のペースで増加してきたことを会場に示した。各大学は2017年に文科省が作成した「看護学教育モデル・コア・カリキュラム」を参照することを前提としながらも,「各大学がめざすオリジナル性を有する人材を生み出すためのカリキュラムづくりに取り組んでもらいたい」との考えを示した。

 千葉大大学院の斉藤しのぶ氏は,看護基盤実習を毎年担当している経験から,看護学生の実習姿勢について現状を述べた。氏は,看護学生は投与薬剤に関する作用・副作用を学習してきているものの,実際に投与後の変化を観察できない,あるいはなぜその現象を観察しなければならないのかを説明できないことがしばしばあると指摘。薬物の作用が身体状態にどのような影響を及ぼすかをイメージするための専門的な学修が求められると主張した。

 訪問看護師に向けた臨床薬理学教育を行う松田明子氏 (奈良医大)は,在宅で薬物療法を受ける高齢者の特徴として,①多疾患の併存があること,②身体機能が低下していること,③症状が非典型になりやすいこと,④介護者の有無など患者の社会的因子が予後に影響しやすいことを念頭に置く必要があると主張した。また,教授方法の検討では,実践で間違いやすい薬剤や事故を抽出し,その対策を医療安全の観点から検討することが必要であると述べた。その上で訪問時の観察では,利用者の症状と薬剤開始時期を紐付けた観察や,介護状況を適切に把握し,服薬アドヒアランスの低下に関連する要因を注視しておくことが重要だと強調した。

 看護師は与薬に関する高度な知識,判断が求められるものの,体系化された学習方法がほとんど存在せず,与薬の責任を一手に背負わされる現状にあるという。そこで,次に登壇した柳田氏は,「看護師には看護師のための臨床薬理学教育が必要」と切り出した。を用いて各職種の役割を説明し,患者と直接接する機会の多い看護師に特に求められるスキルとして,「患者からの薬剤に関する日常的な質問に答えられること」を挙げた。そうしたスキルを養うために氏は,薬剤添付文書から看護師向けに与薬のエッセンスを抜粋した「与薬のしおり」を作成中であり,「臨床現場での応用に向け,取り組みを進めている」と現状を語った。

 各職種における臨床薬理学の知識体系
職種によって必要な臨床薬理学の知識は異なる。「看護職は患者にとって,薬物治療の最後の砦であり,薬物治療に関する看護職の理解が高まれば,医療もさらに向上する」と柳田氏は語る。