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第3351号 2019年12月16日


第39回日本看護科学学会開催


会長の石垣和子氏
 第39回日本看護科学学会学術集会(会長=石川県立看護大・石垣和子氏)が2019年11月30日~12月1日,「ヒトと人間(ひと)の科学を看護へ――時空を超える我々を知り,看護学を別次元へ発展させよう」をテーマに石川県立音楽堂,他(石川県金沢市)にて開催された。

 本紙では,150編を超える国際的な論文にかかわり,50億円以上の研究費を獲得してきた米イリノイ大看護学部教授のArdith Doorenbos氏と,日本から研究成果を長年世界に発信し続けている真田弘美氏(東京大大学院)が講師を務めた教育講演「看護研究と実践・教育の環境づくり」(座長=公立小松大・北岡和代氏,慶大・深堀浩樹氏)の模様を報告する。

日本の看護研究力の強化に向け,日米のトップランナーが講演

 「現代の複雑な健康問題には単一の学問分野からの研究アプローチは適していない」と切り出したのはDoorenbos氏。多種多様な学問分野から人材を登用する学際的なチームの立ち上げの重要性を述べ,包括的なケアの問題に対して研究する際は,看護師がチームの先導となり得る人材であるとの見解を示した。

 続けて氏は,日々の臨床研究デザインについても発想の転換をすべきだと訴えた。氏が推奨する実際的臨床試験(Pragmatic Clinical Trial;PCT)とは,研究成果を臨床に応用しやすくするよう試験デザインを日々の臨床条件に設定し,前向きに追跡調査をするというもの。PCTの長所として,①日常のケアを想定し,成功することを主眼に置く実用性,②研究対象者に幅を持たせることのできる組み入れやすさ,③研究に携わる全ての関係者に生まれる当事者意識,④臨床現場で役立つようデザインされた妥当性の高さの4点を挙げ,日本での積極的な導入と看護研究のさらなる推進を促した。

 真田氏は2016年に内閣府より発表された第5期科学技術基本計画に基づく超スマート社会の実現を話題に挙げ,医療福祉分野における今後の日本のストラテジーを示した。本計画では,ICTの活用によってサイバー空間とフィジカル空間(現実世界)とを融合し,年齢,性別,地域,言語を超越した生き生きと快適に暮らすことのできる社会がめざされている。少子超高齢社会を迎える日本では,健康寿命のさらなる延伸に向け,最新技術と共生しながら療養者が自立・自律して地域社会に生きられるよう,看護学以外の分野とも連携した看護のイノベーションが必要であると主張した。

 こうした変革を起こすため,氏は2017年に東大大学院の附属施設としてグローバルナーシングリサーチセンターを設立。AMED研究「アドバンストな看護技術を導入した在宅・介護施設療養者の摂食嚥下・排便を支える多職種連携システムの構築」では,人工知能を応用したエコーを用い,高齢者における便秘症状の客観的な評価に取り組む。一方で,最先端の技術であっても実践を想定した成果でなければ意味を成さないEvidence-Practice Gapの問題も生じ得ると指摘。研究と実践の橋渡しを見据えたチームサイエンスが必要だと会場に呼び掛けた。