医学界新聞

連載

2019.10.28



未来の看護を彩る

国際的・学際的な領域で活躍する著者が,日々の出来事の中から看護学の発展に向けたヒントを探ります。

[DAY 4]TICAD7

新福 洋子(京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻家族看護学講座准教授)


前回よりつづく

 第7回アフリカ開発会議(TICAD7)が8月28~30日にパシフィコ横浜(横浜市)で開催されました。開発パートナー諸国や国際機関,民間セクター,NGOからの参加者や,42人の首脳級を含むアフリカ53か国が出席し,総勢1万人以上が参加した巨大なイベントです。私はアフリカで助産ケアの改善を目的とした研究をしているので,自身の研究を広く知ってもらうべく,外務省の公式イベントに研究室としてブースを出しました。

 こうした会議で近年謳われているのは産官学連携です。大学の立場で外国の医療実践を変える取り組みを行う際には,各国政府や開発援助機関,民間企業・団体との連携が非常に大切になります。私のブースは,株式会社京都科学やレキオ・パワー・テクノロジー株式会社,神奈川胎児エコー研究会,台湾の台児診所の協力を受けた,日本・台湾・タンザニアの3か国をつなぐオンラインエコー技術研修の実践について報告しました。これは胎児エコーの専門家の少ないタンザニアにおいて,ICTを活用して日本と台湾の専門家からエコーの知識と技術を学ぶ機会を提供したものでした。

 当日は展示した妊婦さんのお腹のモデルに驚いて立ち止まった各国の大臣や大使,外交官が,何の事業なのか質問してくれました。特にタンザニアの外務省職員の方々が,研究教育事業としてのこうした取り組みに関心を持ってくださり,「タンザニアでこんな素敵な研修をしてくれてありがとう」と言っていただけたことをうれしく思いました。

 経産省が主催したブースには多数の民間企業や団体が出展していました。非常ににぎやかで参加者が多く,6年前に参加した時より多くの日本企業・団体がアフリカへ関心を持ち,進出していると感じました。

 ブースの近くでは各団体が主催するイベントも開催され,私は国際協力NGOジョイセフが国連人口基金,国際家族計画連盟と共催したセッション「女性の健康と権利が最優先――アフリカにおけるUHC達成に向けて」に参加しました。当セッションは,セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)とユニバーサル・ヘルス・ガバレッジ(UHC)との関連性が議論されました。UHCとは,誰もが良質な医療サービスを必要なときに負担可能な費用で享受できることをめざすものです。特にボツワナ外務国際協力大臣の「世界で起きているSRHRの問題を自分事にとらえてもらうことが何よりも大事」というメッセージが心に響きました。トーゴのチェリタさんという20代の女性がピアエデュケーターとして同じ壇上で議論していたことも,現場の意見を聞くとの考えを反映した象徴的なイベントだと感じました。

 私は共同研究を開始したキャスタリア株式会社が主宰するケニアの教育関連のイベントに登壇し,新たに進めている助産師教育アプリの開発について話しました。コンピテンシー教育が始まったケニアでは,JICAと連携した人材育成が期待されています。保健人材育成においても,まず基礎的な学問を身につける初等教育は非常に重要であるため,教育業界の方々とも連携していきたいと思いました。

 こうした流れの中で研究をどう展開すべきなのか,新たな発想を得る機会にもなり,励ましも多くいただきました。アフリカの研究にかかわる日本人が今後増え,研究のさらなる発展への期待も抱きました。次回は3年後にアフリカで開催されるとのことで,私もどのようなかかわりができるか,今から楽しみにしています。

TICAD7で出展したブースの様子(一番右が著者)

つづく

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