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第3320号 2019年4月29日


Medical Library 書評・新刊案内


シュロスバーグの臨床感染症学

岩田 健太郎 監訳

《評者》青木 眞(感染症コンサルタント)

現場の今を生きる専門家による価値ある大著

 一見,そのボリュームに圧倒されるが,すごみを感じるのは実は各章を丁寧に読み込んだときである。余計なことは書かれておらず,しかし臨床的に大切なことが満載である。「簡にして要を得たり」とはこの本なのだろう。評者も見開き2ページを消化するのに30分もかかることがあった。

 ある意味,網羅的な知識は誰でも書けるが,昔から変わらず現場で重要なこと,新しいが現場に大きなインパクトを与えるテクノロジーのみを抽出できるのは,その領域の「今」を生きている専門家しかいない。恐らく本書の価値は各章が,そのような「現場の今を生きる専門家」により分担されている点にある。今回は通り一遍の書評を書く代わりに,多くの優れた記述を紹介したい。

 1章(不明熱):p.4~6の表1.2(不明熱のカテゴリー別の病歴,診察所見の手掛かり)とp.7の表1.3(不明熱の非特異的検査)はわかりやすい。バイタルサインと共に,このような安価で日常的に用いられる非特異的検査の中に鍵となる情報が隠されているし臨床医の腕の見せどころである。

 18章(ブドウ球菌とレンサ球菌のトキシックショックおよび川崎病):p.105の本文より「免疫グロブリン静注療法の製剤はスーパー抗原毒素の中和能が(中略)製造ロットによっても違うことがある。そのため,最初の治療に反応が得られなかったケースでは,再治療で別の製剤を用いることを考慮してもよい」。

 29章(急性気管支炎と慢性呼吸器疾患の急性増悪):p.158の本文より「気管支喘息の急性増悪に対する現在の治療選択肢は限られており,近年,あまり進歩していない。(中略)抗菌薬は細菌感染症が疑われるまで投与しない」。

 34章(誤嚥性肺炎):p.187の本文より「嫌気性菌が誤嚥性肺炎の原因となっている頻度は低いという研究が最近報告されているが,嫌気培養をどのように行うかの妥当性ははっきりしておらず,(中略)嫌気性菌感染が真に成立している頻度が過少評価されているかどうかは謎のまま」。この記載は素晴らしい!

 59章(尿道炎と排尿障害):p.315の本文より「尿道炎の医学的な重要性は,疾患そのものの重症度ではなく,その潜在的合併症にある」。

 157章(結核):本疾患は主幹のシュロスバーグ先生のご専門であるが極めて簡略にまとめてある。それでも初学者にとって全身各部位の結核診断のアルゴリスムは,「結核を診断するということ」の概要を把握するのに極めて有用である。

 166章(レプトスピラ症):インフルエンザ様症状に加えて,出血性肺炎や房室ブロックなど臨床像が多彩であるが,その多彩さは基本的に毛細血管内皮障害を伴う「全身の血管炎」として把握すると理解しやすい。

 185章〔EBウイルス(EBV)と,その他の単核球症様症候群の原因〕:本書は地味ながらウイルスに関する章も極めて簡潔に,しかし臨床的なポイントが満載である。単純ヘルペスや水痘帯状疱疹ウイルスに比較して,何となくその臨床像を把握しにくいEBVとその代表的臨床像である単核球症様症候群がきれいに整理できる貴重な表が掲載されている。症例検討会に向いている伝染性単核球症の合併症の表もお薦め。

 偶然,評者と著者のシュロスバーグ先生とは13年と付き合いが長く,特に彼の専門領域である抗酸菌の症例では常に相談相手となっていただいているが,このシュロスバーグ先生をひと言で表現すれば大変な学者でありながら「現場の人」「臨床の人」である。組織も本も詰まるところ人であるが,シュロスバーグ先生が各分担執筆者を選んだ時点で本書の価値は約束されていた。そのことは本書の1章(不明熱)が米国でも恐らく絶滅危惧種的に珍しい臨床感染症医であるBurke A. Cunha医師らであることが雄弁に証明している。その翻訳を企画された岩田健太郎先生の慧眼にも敬意を表します。多くのベテランから初学者まで,多くの感染症に興味を持つ医療従事者にお薦めします。

A4変型・頁1252 定価:本体20,000円+税 MEDSi
http://www.medsi.co.jp

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