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第3301号 2018年12月10日


Medical Library 書評・新刊案内


《ジェネラリストBOOKS》
よくみる子どもの皮膚疾患
診療のポイント&保護者へのアドバイス

佐々木 りか子 編

《評者》横田 俊一郎(横田小児科医院院長)

外来診療の理念が伝わる写真豊富な一冊

 発疹は誰が見てもわかりますので,お子さんの身体をくまなく見ているお母さん方にとって,とても気になる症状の一つです。まずは「かかりつけの小児科で相談してみよう」ということになり,小児科外来では発疹を主訴に受診する患者さんがたいへん多いのですが,頭を悩ますことも少なくありません。視診という簡単な方法で全身的な疾患などさまざまな疾患を診断できるという点で,皮膚の診療は大変魅力的です。しかし,私たち小児科医には原因のわからない発疹も多く,そのようなときの神頼みで皮膚科医へ診察をお願いすることになります。しかし全てを紹介するわけにもいきませんので,少し勉強してみようと誰もが考えるのです。

 小児の皮膚疾患に関する教科書やアトラス,雑誌の特集などは今までにもたくさん出版されていて,きっと皆さんの本棚にも何冊かの本が並んでいると思います。しかし,なかなか「これ一冊あれば」という本に出合えていない医師が多いのではないでしょうか。そんな方にうってつけの一冊として紹介したいのが本書です。

 本書は皮膚科臨床の第一線にいる3人のベテラン女性医師が執筆しています。まず感心したのは全体の構成です。皮膚疾患については細かく分類されている教科書が多く,そこでまずつまずくことが多いのですが,本書は子どもの診療でよく遭遇する皮膚疾患を「スキンケア」「湿疹・皮膚炎」「感染症」「その他の皮膚疾患」「あざ・色素異常」と非常に単純で明快に項目立てしています。私たち小児科医が知りたいことを漏らさず,しかもわかりやすく分類されているのがまず気に入りました。

 そして,第1章は「保護者に伝えるスキンケア」です。皮膚の基本から始まって,保湿薬や日焼け止めの使い方,ステロイド外用薬の塗り方や投与量の目安がわかりやすく書かれています。ステロイド外用薬の安全な総使用量が書かれているのも役立ちます。第2章以降は疾患について書かれていますが,2~4ページ程度でまとめられたものが多くて大変読みやすく,初めに好発部位が描かれている図が掲載されています。そして「臨床のポイント」が冒頭の赤く囲まれた欄に記載されており,これを読むだけでも勉強になります。また,写真がとても見やすく,コンパクトな本の割にきれいなカラー写真が多いことが特徴の一つです。

 病態・治療法も簡潔にわかりやすく記載されていて,非常に読みやすいと感じます。また,何といっても最後に「保護者への説明のポイント」が書かれているのが外来診療をしている医師には魅力です。子どもの視点,保護者の視点から説明されており,本書を貫いている理念がここにあると感じます。

 診察机の上に置いていたら,私のクリニックを手伝い始めた小児科医の娘に「この本,いいね!」と危うく持っていかれそうになりました。子どもの皮膚疾患の診療に当たっている全ての医師にお薦めしたい一冊です。

A5・頁256 定価:本体4,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03620-7


脱・しくじりプレゼン
言いたいことを言うと伝わらない!

八幡 紕芦史 編著
竹本 文美,田中 雅美,福内 史子 著

《評者》飯原 弘二(九大大学院教授・脳神経外科学)

内容を理解し信頼してもらえるかはデリバリーの技術にかかっている

 医師の日常は,臨床カンファレンスから学会発表,研究成果発表会など,プレゼンの機会に事欠きません。若手の医師にとっては,初の全国学会での口演発表,中堅医師では,シンポジウムの発表,共催セミナーでの口演が当たると,大変うれしいものです。また公的研究費の獲得や公的なポストへの昇進など,プロフェッショナルとしてのキャリアをアップする上でもプレゼンの重要性に異を唱える人はいないと思います。しかし,いかに仕事内容が素晴らしくても,聴衆に効果的に伝える努力を私たちは十分しているでしょうか? 今から思いますと,私も若いころ,かなり独り善がりなプレゼンをしていたように思います。

 このたび医学書院から,医療者向けに『脱・しくじりプレゼン』が刊行されました。編著者は,名著『パーフェクトプレゼンテーション』(生産性出版,1995年)で有名な八幡紕芦史氏です。私自身,プレゼンの基本を八幡氏から学んだ一人です。本書は,多忙な臨床医や研究者向けに,プレゼンの極意を,マンガと丁寧なレクチャーでビジュアルに解説しています。効果的なプレゼンには,事前の情報収集と分析がまず必要なこと,聞き手に当事者意識を持たせることを示して,さまざまな場面での失敗の要因を分析しています。

 デリバリーとは,まさに伝えるテクニックです。内容を聴衆に理解してもらい,さらに信頼してもらえるかは,このデリバリーの技術にかかっています。また,研究費の獲得や公的なポストへの昇進でのプレゼンでは,プレゼン後の質疑応答が,より大切になってきます。この質疑応答の成否は,深い意味では,プレゼンした内容が,いかにあなたの実体験に基づいているかにかかっています。

 本当に身についた知識や内容であれば,聴衆は本当に理解して共感してくれると思いますが,プレゼンの目的や聴衆はさまざまだと思います。本書は,さまざまな局面で,「しくじらない」ためのノウハウを満載しています。Practice makes perfect ! 皆さん,本書をひもときながら,ぜひ多くのプレゼンをしてください。その後本書を読み返すと,さらに大きな発見があると思います。

A5・頁192 定価:本体2,600円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03191-2


産婦人科ベッドサイドマニュアル 第7版

青野 敏博,苛原 稔 編

《評者》加藤 聖子(九大教授・婦人科学産科学)

臨床の問題から文献を調べ上げ,議論を重ねてまとめられた書

 青野敏博・苛原稔編『産婦人科ベッドサイドマニュアル 第7版』が刊行された。1991(平成3)年の初版より27年の間,研修医・実地臨床医に愛されてきたマニュアルである。評者自身は第5版より利用させていただいている。ちょうど良い大きさ・量であり,患者さんに説明するために知りたいこと・処方や処置をするために必要な知識が的確にまとめられており,10年以上評者の診療のよりどころとなっている。

 青野先生の「序文」,苛原先生の「第7版の刊行に寄せて」の内容を読むと,一冊の本が完成するまで,徳島大産科婦人科の教室員が,日頃の臨床現場から問題点を抽出し,資料・文献を調べ上げ,議論を重ねまとめるという姿勢を初版よりずっと貫かれており,まさに教室員の汗と努力の賜物である。

 この本は医療の進歩,変化に合わせて改訂されているので,われわれは最新の産婦人科医療の知識を得ることができる。第7版に新たに加えられたものとして,例えば,無侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)の広まりを受けて,「胎児染色体検査の適応と診断」が解説されている。また,最近のトピックである「女性アスリート診療の留意点」も取り上げられている。

 特に今回,評者が着目したのは「Side Memo」のコーナーである。周産期・内分泌・婦人科腫瘍・女性医学の最新の情報が簡潔にまとめられており,各分野の専門医試験にも十分役立つ内容である。

 この本の良さは手に取って,ページをめくってもらうとよくわかる。知っておきたい疾患の発症率やリスク発生率などの統計学的数値,診断のフローチャート,治療のレジメンなどが,視覚的に頭に入る構成になっている。

 産婦人科の基礎的知識を得たい初期研修医,産婦人科専門医試験を控えた後期研修医,各サブスペシャリティの専門医など,産婦人科医療に携わる全ての人にお薦めしたい本である。

B6変型・頁536 定価:本体6,600円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03455-5


膝MRI 第3版

新津 守 著

《評者》江原 茂(岩手医大教授・放射線医学)

質の高い画像がさらに増え,新たな章も加わった改訂版

 関節のMRIについて長年にわたって研究・教育の先頭に立たれてきた新津守先生のご著書である『膝MRI』の第3版が上梓された。われわれの本棚で活躍しているこの書籍の初版が出されたのが2002年であるが,その当時から16年の長いお付き合いになる。

 その初版は今でもわれわれの読影室の本棚に置いてあるが,2002年当時には膝のみならず関節のMRIを対象としたまとまった教科書はなく,十分な質・量の画像と簡潔な記述により日常診療や教育に簡便に使える教材は少なく,英語の教科書が1,2冊程度存在するだけだった。新津先生は持ち前の研究熱心さを発揮され,簡潔ながらも十分な記述の初版を仕上げられ,それは幅広く迎えられた。さらに2009年には内容を拡充した第2版を出され,そして今回の第3版はそれから9年が経ち,さらに拡充された内容になっている。ページ数では初版に倍する300ページ超となり,さらに相変わらずの質の高い豊富な画像と簡潔だが要点を押さえた記述から,従来の読者にも新しい読者にも期待を裏切らない内容をそろえている。

 MRIの技術はこの10年ほどの間にも着実に進歩し,3T装置の大幅な増加により高解像,高コントラストの画像が増え,骨・関節,特に膝関節の画像診断の非侵襲的で有利な診断技術として確立し,診療や教育の場面での高磁場装置の画像が多く使われるようになってきている。

 今回の改訂の大きな特徴としては,先の版と同様かあるいはそれ以上に質の高いMRI画像が増えた点が挙げられる。さらに今回追加された内容の大きな点としては,関節軟骨描出の技術的側面とリウマチ疾患の章が加わったことであり,整形外科領域にとどまらず,リウマチ疾患の診断からさらにはMRIの技術的側面に至る各領域を含めた内容になっている。また人工膝関節置換術後のような技術的に難しい問題にも言及されているが,さらには最近の話題であるSegond骨折に関係したanterolateral ligamentと名付けられた靱帯,Hoffa病と呼ばれる定義の十分でない疾患群,AIMM(内側半月板の前十字靱帯への付着)やFOPE(傍骨端線部限局性骨髄浮腫)といった新しい概念など,経験ある診断医でないと扱いにくい項目まで網羅している。

 本書は関節のMRIの学習を始めたばかりの初学者・研修医から膝のMRIにある程度の経験のある診断医,さらには整形外科医からリウマチ医まで,膝関節の診断に関心のある方に必要な内容が十分に盛り込まれている。膝MRIの第3版は先の版と同様に幅広い読者層に推薦できる内容を備えている。

B5・頁336 定価:本体6,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03631-3


精神科ならではのファーストエイド
搬送時サマリー実例付

中村 創,三上 剛人 著

《評者》犬尾 英里子(都立松沢病院検査科医長/産業医・内科医)

精神科救急に携わる医師,研修医にも読んでほしい

 本を開き,息をのんだ。あまりにも写真がリアルだからだ。本書は,精神科に勤める看護師向けに書かれた精神科救急の本である。

 精神科では患者自身が行った自傷,縊首,飛び降り,異物の飲み込みなどの院内アクシデントに遭遇することがまれではない。そうしたアクシデント現場の第一発見者となるのは看護師が圧倒的に多い。そんなときに青ざめ立ち尽くしている暇はない。一方で医療処置や患者のメンタル対応を行い,一方で救命救急搬送の段取りを行い,警察へ連絡し,家族や行政へ連絡し,と多くの対応を直ちに判断し,行動をとっていかなければならない。

 第I部「いざというときの動き方」では,応急処置が必要となったケース26例が,リアルに再現した写真とともに解説されている。一つのケースにつき,それぞれ直ちに行わなければならない医療処置,医学的な解説,とっさの声掛け,望ましい態度,避けるべき言動が見開きで完結する構成だ。一目で全てが視野に入り,大事な所に視覚的に目が行くような本の作りになっている。

 第II部は「家族と看護師のフォロー」である。救急の現場では「救命」が第一になるため,関係者への心理的なフォローアップまではその場では十分かかわることができないことが多い。しかし本来,精神科救急で起きたショッキングなアクシデントが及ぼす心理的ストレスは深刻で,PTSDへつながり適切なフォローがなければ離職を考える人が出てもおかしくない。精神科病院の産業医である私の立場でも,この悩みをスタッフから聞く機会は多いので,必要性を強く感じる。

 第III部「搬送時サマリーの書き方」では,身体治療が必要となった患者を,精神科以外の病院へ搬送する際のサマリーの新方式が提案されている。「Firstサマリー」に病名,服薬情報,転送の理由となった状況,最終バイタル,搬送までに行った処置,キーパーソンを端的に記載する。続いてケアに必要となる情報は「Secondサマリー」に書き,追ってFAXで追伸すればよい,と提案されており,松沢病院のように身体合併症治療のできる精神科病院で患者を受け入れる側としては,確かにそうだとうなずくばかりだ。

 この本で精神科救急のアクシデントの状況を想定し,対応のシミュレーションを繰り返すことで,現実に遭遇した際に適切な行動がとれるであろう。新人看護師にとってアクシデント現場はあまりにもショッキングな場であろうが,本書を活用し,初心の志を打ち砕かれることなく,精神科医療チームの一員として成長してもらいたいと願わずにいられない。

 本書をめぐって松沢病院ではすでに看護師たちの勉強会が始まっているが,この本はぜひ救急医療に携わる医師,精神科医をめざす研修医にこそ読んでほしいと思う。松沢病院では病棟だけでなく,医局や図書館にも本書を入れた。精神科にかかわる全ての人に一読をお勧めしたい。

B5・頁168 定価:本体2,400円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03589-7


精神科医はそのときどう考えるか
ケースからひもとく診療のプロセス

兼本 浩祐 著

《評者》熊木 徹夫(あいち熊木クリニック院長)

精神科医のレーゾンデートルを問う,卓抜な臨床実践書

 かつて,兼本浩祐先生の診療を目の当たりにした衝撃を忘れることができない。一体,どのように表現すればそれが伝わるだろうか。少々無理やりではあるが,野球に置き換えてみよう。私は先生から,希代の名手,広島東洋カープの菊池涼介二塁手を思い浮かべる。ともかく尋常ではない広すぎる守備範囲(外因・内因・心因問わず,どのような領域も治療の射程に収めている),どんな時も神業的なグラブさばき(難治,もしくはかかわりの難しい患者さんであっても,的確な治療的アプローチが行える),絶体絶命のヒットコースをリカバーしアウトにしてしまう(ほとんどの精神科医にとりどうしようもない場合でも,何とか結果が出せる)。これを単に天才とするなら,話が早い。しかしずっと,そう単純ではない気がしていた。本書を読み解くことで,今更ながら「ああ,そうだったのか」と気付かされた。以下に,本書の特質を列記する。

着眼の独自性・抜きん出た洞察・兼本精神医学体系の説得力
 本書のどの細部を取り出しても,ステレオタイプでおざなりな表現は見いだせない。徹底的に考え尽くされ選ばれた表現は,緩い思考を許さないが,頭を絞ればこれまで行き着いたことのない臨床の深みに達せられる。かといって,無意味に晦渋ではぐらかすようなところがない。よくある精神科術語も,先生にかかれば全く新しい意味が付帯され,独特の精神医学体系が立ち上がる。そして,それらはいずれも大変魅力的なものだ。

臨床体験の圧倒的な質・量
 それぞれの症例が,まるで眼前に立ち現れたかのようなリアリティで迫ってくる。たとえ外因を論じる場合であっても,必ずそこに“人間”が描かれている。これはできそうでいて,なかなかできることではない。これは先生が,どんな状況でも症例を単純化するため要素還元的に思考していないことの証しである。そして,「症例は細部にこそ魂が宿る」という含意があるはずである。

 また,32の症例の配置が絶妙である。私は,本書のような症例配置が成されているものを,かつて見たことがない。全く独特なのだが,それぞれが置き換え不可能なまでに,すっぽりそこにはまっている。私は「この症例を示して,先生は何を言おうとしているのか」予想しながら,読み進めた。驚きの展開の連続。「なるほど,そうくるか」「次はこのような症例が置かれているはず」。しかし,こちらの予想をたびたび裏切り,思いがけない洞察に導かれていく。それはしびれるような知的快楽であった。

 見渡すとやはり,先生が獲得されてきた臨床体験の質・量のすごさを再確認する結果となった。

精神科医の自意識についてのシャープな分析
 「精神科臨床には立ち技・寝技がある」という卓見に始まり,精神科医の自意識についての洞察,精神科医のレーゾンデートル(存在価値)についての言及など,覚醒した精神科医としての思考が隅々まで浸透している。これは先生が,常々自らに治療的陶酔を許さず,ご自分の来し方を顧みてこられたからに他ならない。これはハリー・スタック・サリヴァンが言うところの「参与観察者としての精神科医」の実践が体現されたものである。

後輩精神科医への温かさ・教育者としての熱意
 精神科医が抱きがちな思考傾向・示しがちなシンパシィ・陥りがちなジレンマなど,「よくぞここまで」というところまで,理解が示されている。そしてどのような精神科医に対しても,向けられるまなざしが温かい。そしてそれは,精神科医のみならず,研修医・コメディカル,そしてユーザー・家族にまで及んでいる(それ故誰が読んでもフレンドリーであり,建設的な治療に結び付く本なのだ,と言える)。

 また本書は,「精神科医としての職能をどうやって陶冶してゆくべきか」という提言書とも読み取れ,極めて優れた臨床教育の書である。言うまでもないが,精神科医の職能のための安直なマニュアルは存在せず,伝承自体困難である。それは暗黙知の要素があまりに濃いからである。しかし本書では,その伝承への取り組みが果敢に行われている。そしてそれが,ある理想的なかたちで達成されているように感じる。そう,先生は「名選手のみならず,名コーチ・名監督」なのだ。本書は初学者のみに役立つのではない。ベテランにもお薦めできる。読み手のレベルに応じて,開ける景色が変わり,獲得できる臨床スキルが変遷していく,そのような本だからだ。

 実際にご覧いただくとわかるが,心理や技の綾に触れた魅力的表現が,全編に横溢している。先生の思惑通り,最初から読み進め,論の展開・症例の連なりの妙を楽しむ読み方が一番お薦めではあるが,最初に目次を総覧し,琴線に触れたワードのあるところから入っていくのも悪くない。

 個人的には,これほど読み進めるのに胸躍らせたのは,久しぶりのことだ。

A5・頁182 定価:本体3,400円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03612-2

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