医学書院

検索
HOME週刊医学界新聞 > 第3230号 2017年07月03日



第3230号 2017年7月3日


Medical Library 書評・新刊案内


マイヤース腹部放射線診断学
発生学的・解剖学的アプローチ

太田 光泰,幡多 政治 監訳

《評 者》清田 雅智(飯塚病院総合診療科)

本書の価値に気付く医師が増えてほしい

命題「放射線科の専門書を,内科医や研修医がなぜ読む必要があるのか?」
 内科医でも研修医でも,救急と腫瘍の患者を診察するにあたり腹部CTを読む必要があるためと私なりに回答する。2年間の初期研修医時代に救急外来でCTを読めずに悩んだ経験は誰でもあると思う。私は3年次の後期研修時に放射線科を9か月研修し画像を自力で読めるよう研鑽していた。そのときの指導医から,腹部救急疾患の画像の専門書としてこの本の存在を教えられた。実際には,その後内科医として困った症例を調べるときに多く利用をしていた。例えば,第17章の内ヘルニアによる腸閉塞の症例などを診たときは,この本に匹敵する記述を見いだすことはできないという経験もしている。

 当院では,急性膵炎はなぜかcommon diseaseであった。後腹膜臓器である膵臓の炎症の波及を診る上で,後腹膜の解剖の理解は欠かせない。ZuckerkandlやGerotaが19世紀に解剖所見から得た後腹膜のFasciaの概念は,肉眼や顕微鏡では膜と膜の連続性を理解するのに限界があった。その薄い膜の間に実はスペースが存在している。肝臓,脾臓,骨盤腔への連続性があることは,CTガイド下に遺体に造影剤を注入してCT撮影するという手法が出るまで実証が困難だったのである。Cullen徴候(1918年)やGrey Turner徴候(1919年)がなぜ膵臓とは遠隔の部位に出ているのかも,1989年にMeyersらがCTで検証していた。このような解剖学的連続性の理解がなければ,例えば十二指腸穿孔の画像は理解できないであろう。

 一方,高齢化社会を反映して,がんもまたcommon diseaseになっている。がんを併発することも多くなっている時代で,Double cancerやTriple cancerもまれではないとされている。例えばリンパ節の腫大からがんのoriginを探るのに,がんの進展範囲を画像的に想像することで,これらの存在を知ることもできるだろう。臨床解剖学は,現場で使用されるCT解剖学での学びが重要だと感じている。実はこの本がこだわる,発生学や解剖学に立ち返り病態を理解するという姿勢は,1900年代から医師にとってなんら変わっていないのかもしれない。

 監訳者の一人,太田光泰先生(足柄上病院総合診療科担当部長)と,訳者の一人,吉江浩一郎先生(足柄上病院総合診療科部長)とは,2011年から毎年行っている講演で親交を深め,尊敬している総合診療医である。ある年の懇親会の席で,この本を翻訳されていると聞きわが耳を疑った。ひそかにこの本の価値を知る希少な内科医だと思っていた私であるが,他にもそのように思っている内科医がいたのだ! 序文を読み,その真意を理解し,ますます共感した次第である。この本は間違いなく名著である。私は,この本の価値に気付く医師が増えることを切に望んでいる一人である。

B5・頁400 定価:本体14,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02521-8


標準解剖学

坂井 建雄 著

《評 者》町田 志樹(臨床福祉専門学校・理学療法学)

今後の解剖学教育のスタンダードになっていく一冊

 医学の専門教育は人体の構造を学ぶ解剖学から始まる。その事実に異論を唱える者はいないだろう。当然,理学療法士の養成課程でも同様であり,現職者であれば誰もが一度はその習得に苦心した経験があるはずである。特に近年,学生からは「各部位の名称を覚えることができない」「運動器の位置関係を理解できない」という声をよく耳にする。また,理学療法士の養成課程で用いる解剖学書は養成校ごとに異なっており,スタンダードとして用いられている一冊は定まっていない印象を受ける。

 このたび,医学書院より『標準解剖学』が発刊された。本書の著者は順大大学院教授の坂井建雄先生である。この事実こそが,本書の第一の特徴と言えるだろう。坂井先生は日本の解剖学教育・研究の第一人者であり,これまで数多の解剖学書の執筆に携わっている。その執筆の領域は医療従事者やその学生を対象とした専門書のみならず,一般向け・子ども向けの書籍など,極めて多岐にわたっている。本書にはその知見が存分に生かされ,解剖学の初学者から現職者までが学ぶことのできる一冊に仕上がっている。

 また,各章が極めて正確かつ簡潔に記述されており,“最小限かつ最重要”に構成されている。この点は,解剖学の習得に苦心する学生たちの大きな一助となるだろう。

 本書の第二の特徴は,美術修士・医学博士の阿久津裕彦氏による美しい図譜である。本書の図譜は,阿久津氏が新たに作成したものである。芸術と解剖学の両者を知る阿久津氏の図譜の緻密さと正確さに,ぜひとも着目していただきたい。

 ここまで広い範囲を網羅し,多くの図譜を組み込み,かつ必要最小限にまとめられた解剖学書は他に類を見ない。「標準」の名のとおり,今後の解剖学教育のスタンダードになっていく一冊だと確信する。

 近年の学生は,文章を読むことを怠る傾向にある。しかしぜひ,学生諸君には坂井先生の素晴らしい文章に目を向けてほしい。その洗練された文章の奥に,われわれの臨床に役立つ大きなヒントが隠れているはずである。

B5・頁662 定価:本体9,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02473-0


《眼科臨床エキスパート》
眼形成手術
眼瞼から涙器まで

吉村 長久,後藤 浩,谷原 秀信 シリーズ編集
高比良 雅之,後藤 浩 編

《評 者》髙橋 寛二(関西医大主任教授・眼科学)

一般眼科医にも広くお薦めしたい名著

 《眼科臨床エキスパート》シリーズの最新巻として,『眼形成手術――眼瞼から涙器まで』が上梓された。このシリーズの中でも最も厚みがある,力の込もった眼形成の手術書の誕生である。

 眼科のさまざまな領域にあって,眼形成の領域は,整容面や視機能の改善はもとより,場合によっては悪性腫瘍を取り扱うことから,生命予後にも直結することもある重要な一領域である。その反面,「好きこそものの上手なれ」の領域であるとも言える。眼形成に携わっておられる先生方は,手術が大好きで,しかもご自分の手術に強いポリシー,すなわち「こだわり」と「こつ」を持って日頃手術に臨まれている。本書の執筆陣は45人に及ぶが,一般形成外科を専門としておられる専門家(形成外科医)は7人のみで,他は眼科の中にあって形成手術をサブスペシャリティとして熱心に勉強された上で活躍しておられる先生ばかりである。このような眼形成の専門家は,日本眼形成再建外科学会をはじめ,日本眼窩疾患シンポジウム,日本涙道・涙液学会,日本眼腫瘍学会などのさまざまな学会や研究会において,常に熱く語り合いながら,手術の考え方,手術適応や手技について切磋琢磨しておられる先生方が多く,誠に頭の下がる思いである。

 まず本書の特徴として,一般眼科医にとっても非常に丁寧でわかりやすい実践的な編集がなされていることが挙げられる。編者の一人である金沢大学の高比良雅之先生が眼形成手術の基本的な考え方,解剖,手技を解説されている第1章「総説」に始まり,第2章の「総論」では,眼瞼,眼窩,涙道の眼形成三大領域について,疾患の概説と手術に必要な解剖,初診時の外来診察(どう診てどう考えるか),診断・治療に必要な検査,手術の概説が列記されている。第3章の各論のパートに入ると,著者のポリシーを交えて各疾患に対する具体的な手術方法が写真やシェーマを多用して詳しく述べられている。第3章の各術式の記載の最後には,「一般眼科医へのアドバイス」というコラムがあり,一般眼科医が患者説明や眼形成専門医に患者を紹介する際に役立つひと言が記されている。

 本書を通読される一般眼科医や眼形成初心者の先生方には,まず「総説」で眼形成手術の精神と概念を学び,「総論」で手術が必要な疾患の正確な診断と治療方針がわかるようになっている。さらに,各論では実際にさまざまなレベルの術者に役立つ手術手順が,手に取るような細かい記載と視覚に訴える図譜で表されている。もちろん本書は,実際に多数の眼形成手術を行っておられる先生方にとっても,新しい手術への挑戦,各術式における手術前の細かい手技の再確認,そして目前に迫った手術のイメージトレーニングを行うためにも大いに役立つ専門的かつ辞書的な手術書でもある。

 なお本書では,眼瞼,眼窩,涙器の領域別に総論と各論を合わせると,眼瞼では約80ページ,眼窩では約140ページ,そして涙器では約90ページが割かれている。同じ事項についての記載が複数の著者から行われている箇所もあるが,これは,いくつもの教科書を合わせた「おトク」な教科書であると考えればよい。本書は,日頃眼形成手術に意欲的に取り組んでおられる先生方ばかりでなく,眼形成に興味のある初心者や一般眼科医にも広くお薦めしたい名著である。

B5・頁480 定価:本体18,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02811-0

関連書
    関連書はありません