第34回日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会開催
2017.03.27
第34回日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会開催
前田耕太郎会長 |
本紙では,「排尿自立指導料」が2016年度の診療報酬改定で保険収載されたことを受けて企画された教育セミナー「これから変わる排尿ケア!!――排尿自立指導の取り組み」(司会=名大大学院・後藤百万氏,JA長野厚生連小諸厚生総合病院・齋藤由香氏)の模様を紹介する。
排尿自立指導は,尿路感染を防止しADLを増進する
超高齢社会を迎えている日本では日常生活自立支援にも力を注ぐ必要がある。排尿自立指導料の保険収載に尽力した一人である真田弘美氏(東大大学院)は,排尿自立指導による尿道留置カテーテルの早期抜去は,尿路感染を防止し,抗菌薬使用量減少に寄与するだけでなく,ADLの保持・増進,スムーズな在宅復帰にも貢献すると期待を示した。さらに,保険収載継続のためにエビデンスを蓄積していくことの重要性を強調。「排尿自立指導に関する診療の計画書」を適切に作成し,成功・失敗事例共に点数によってアウトカムを示し,評価すべきとの意見を表明した。
コンチネンス医学講座の井川靖彦氏(東大大学院)は,尿道留置カテーテルの適応基準や病態から予測される抜去後の下部尿路症状を解説。神経因性下部尿路機能障害の障害部位は,①脳幹部(橋)より上位中枢,②脳幹部(橋),③仙髄より上位の脊髄,④仙髄または末梢神経に分けられる。比較的安全にコントロールできるのは①であり,随意的な排尿は障害されるが上部尿路障害発症はまれだという。一方,②~④は上部尿路障害が起きやすい。特に③は排尿筋外尿道括約筋協調不全を伴う排尿筋過活動を示すため高圧蓄尿・高圧排尿となりやすく,最も危険だと注意を促した。
日本初の排泄看護学修士課程を昨年開設した山梨大大学院で准教授を務める谷口珠実氏は,看護実践の要点を概説した。病棟看護師は,排尿日誌と残尿測定,問診を組み合わせたアセスメントを行い,介入すべき患者を抽出,排尿ケアチームが立案した包括的ケアを実施する。排尿ケアチームは,下部尿路障害の評価,自立に向けた包括的ケア計画の立案・実施,実施後の定期的なフォローを行う。現場においては包括的ケアを実施する病棟看護師と排尿ケアチームの連携が重要だと指摘した。
今年2月から算定が開始された杏林大病院で皮膚・排泄ケア認定看護師として活躍する平山千登勢氏は,体制構築までの取り組みの実際を紹介した。排泄ケアチーム設置やマニュアル作成,院内研修実施といった施設基準の取得以外にも,予想外の問題が生じたという。排尿日誌による排尿状態の正確な把握,残尿測定などの課題を例示した上で,説明会・勉強会の定期的な開催や取りこぼしなく算定を得るための記録システムの稼働といった今後の展望を述べた。さらに,算定に向けて取り組む全ての病院にかかわることとして,取り組みの評価が行えるよう,開始前のデータをまとめておく必要性に言及した。
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