医学界新聞

寄稿

2015.11.23



【寄稿】

ストーマ造設患者のための施設間連携
継続ケアと療養環境調整を行う急性期病院の取り組み

高木 良重(医療法人福西会福西会病院/がん看護専門看護師,皮膚・排泄ケア認定看護師)


 急性期病院での在院日数短縮に伴い,手術を受けた病院で継続して支援を受けることができず,複数の医療機関や施設でケアや指導を受けるストーマ造設患者が近年増えてきた。ストーマ造設患者のための施設間連携に当たって,これまで患者を送り出す側の工夫は多く紹介されているが,受け入れ側の取り組みの紹介は少なかった。そこで今回,患者受け入れ側として当院の取り組みと現状を紹介したい。

ストーマ造設患者の転院受け入れで生じる問題

 当院は福岡市南西部に位置する,一般病床198床の急性期病院である。地域の二次救急医療の基幹病院としての役割を果たすとともに,大規模病院からの転院患者も受け入れており,回復期病院や自宅などの療養先に送り出す役割も担っている。

 当院に転院してくるストーマ造設患者は,大規模病院で手術を受けた後の方が多い。転院元の病院から当院への依頼内容はストーマおよび創傷の継続ケアの実施やストーマセルフケア指導が主であり,転院時には看護サマリーとして文書による情報提供が行われている。一般状態の情報に加えて,ストーマ局所の状態やケア内容に関する情報が記載されており,転院の受け手として,当院の病棟看護師はその情報を頼りに患者へのケアを行う。

 しかし,電子化や看護の基準化に伴い,情報は画一的になりがちであり,与えられた情報ではストーマケアがどのように行われてきたのかがわからないこともある。時として,情報と実際のストーマ状態が異なっているなど,患者への継続したケアの実践が困難となるケースはどの施設の看護師でも経験しているのではないだろうか。

 転院元の病院がさまざまな工夫をしていても,マンパワーや入院期間の問題で情報が十分ではないケースは生じ得る。転院元病院での主な入院目的は疾患の治療・手術であり,ストーマケアのみに注力することはできない。しかし,このような問題は,患者との信頼関係確立に支障を来しかねず,転院の目的であるストーマケアの確立や皮膚トラブルの改善の遅れにもつながる。

 受け入れ側である当院も急性期病院であり,入院期間は限られている。約2週間で患者を送り出せるようにするためにも,継続ケア・療養環境調整をスムーズにするための取り組みが必要と考えた。

フォーカスグループインタビューによる問題抽出と改善

 まず,他院からストーマ患者を受け入れる中で感じる困難を整理し,解決に向けた取り組みを導き出すこととした。方法は,当院の外科病棟看護師たちを対象としたフォーカスグループインタビュー()を用いた。インタビューの内容は「これまでに他院から転院してきたストーマ患者とかかわった際に感じたこと」「連携に当たりどのように取り組むとよいのか」の2点であった。語られた言葉から施設間連携に関する内容を抽出し,それがどのような意味を持っているのか分析した。

抽出された問題点
 看護師が感じていた困難は以下のとおり。主に,「ストーマの状態」「セルフケアの習得状況」「患者の心理状態」といった,継続ケアを進める上で必要な情報が不足している点が課題であるとわかった。

・ 自分の病棟で行っているケアの内容や指導の進め方と転院元の病院での方法の違いに戸惑う
・ 装具名やケア項目しか書かれていないなど,ストーマケアに関する情報が抽象的である
・ 記載内容と実際のストーマの状態が
...

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