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第3130号 2015年6月22日


【interview】

多職種チーム・看護外来で支える
心不全患者の療養支援

山部 さおり氏(三菱京都病院看護部 慢性心不全看護認定看護師)に聞く


 慢性心不全は,退院後1年以内の再入院率が3割前後ともいわれ,再入院を防ぐには入院早期からの退院支援・在宅療養支援がカギとなる。慢性心不全患者に,看護師はどのような介入ができるのか。慢性心不全認定看護師の山部さおり氏に,三菱京都病院における取り組みを聞いた。


――最初に,慢性心不全認定看護師として,どのような活動をしているのかを教えてください。

山部 認定看護師としての活動に専念しているのは週2日です。その日は病棟看護師としての日勤業務から外れて,外来で医師の診察の前後に患者さんとの看護面談をしたり,入院中の患者さんの困難症例に対する面談を個別に行ったりしています。面談は,セルフケアが十分に確立しておらず再入院率が高い退院早期の患者さんや,状態が安定しない患者さんが中心です。

――外来での看護面談を診察の前に行うか,後に行うかはどのように決めているのですか。

山部 私が事前に患者さんについての情報収集を行い,前回のカルテなども見ながら判断しています。前回の外来受診後の生活状況を確認し,その情報をもとに医師と連携できるようにしたい場合には診察前に,診察結果を受けて今後の方針を話したい場合には診察後に面談します。いずれの場合も,情報伝達が必要な点や面談で話す内容は医師とあらかじめ打ち合わせをしています。

「担当がいないからできない」では患者さんのためにならない

――外来での看護面談が必要な患者さんは,山部さんの認定看護師としての活動日に受診してもらっているのですか。

山部 できる限りそうしてもらっていますが,都合がつかない患者さんについては,外来看護師が面談しています。

 慢性心不全の認定看護師は,当院には私一人しかいないので,当院外来の心臓リハビリテーション指導士とも密に連携を取りつつ,一般の看護師でも対応できるよう,教育を行っています。私一人ががんばるというのではなく,看護師全員が患者さんとかかわりながら,一緒に支えていく体制を作りたいと考えています。

――心臓リハビリテーション指導士以外の他職種とはどのような連携をしていますか。

山部 当院では,看護師・理学療法士・薬剤師・栄養士が入った心臓リハビリテーションチームをつくっています。入院初期から,退院後を見据えて自宅内の段差に合わせたリハビリの目標を設定したり,自宅を意識した服薬管理をしたり。看護師だけではフォローできない部分がたくさんあります。患者さんの状態によって,どの職種が主体的にかかわるべきかも異なりますので,多職種連携は非常に重要です。

――チームカンファレンスは週に何回行っているのですか。

山部 循環器内科や心臓外科の医師を交えた心不全カンファレンスを週1回,コメディカルと看護師による心臓リハビリテーションカンファレンスは週2回,医師・コメディカル・看護師によるモーニングカンファレンスは週3回行って,サポートが必要な患者さんを絞り込み,治療プログラムを考えています 。私は,認定看護師として全体の取りまとめをしています。

心不全の患者さんが苦しまずに最期を迎えられるようにしたい

――山部さんが,認定看護師をめざしたきっかけは何だったのでしょうか。

山部 最初から資格取得をめざしていたわけではなく,心不全の緩和ケア・在宅療養支援に問題意識を持ったのがきっかけです。

 私は以前,腫瘍内科に所属して,がんの緩和ケア・在宅療養支援に取り組んでいました。その後,循環器病棟に異動してきてまず驚いたのが,それぞれの終末期患者さんの状態の違いです。循環器病棟には,点滴やチューブにつながれた状態のまま,苦しみながら亡くなっていく患者さんがたくさんいました。「なぜ心不全患者さんは,がん患者さんのように穏やかな最期を迎えることができないのだろう? 本人が住み慣れた場所でケアが受けられるシステムはないのだろうか?」と疑問を持ちました。それが今から9年前のことです。当時はまだ心不全の緩和ケア・在宅療養支援の必要性はあまり認識されていなかったので,医師を説得し,スタッフを巻き込んでいくには,何年もかかりました。

――どのように周囲を説得していったのでしょうか。

山部 「心不全の患者さんは苦しそうだよねぇ。医療者もつらいよねぇ」と,カンファレンスの前後や,雑談の合間など,折を見ては医師やスタッフに話し掛け続けました。そして,「困ってる」という返事が引き出せたら,「じゃあ一緒に何か方法を考えてみませんか」と持ち掛けた(笑)。

――医師やスタッフの意識を徐々に変えていったわけですね。

山部 そうやって取り組む中で,認定看護師に慢性心不全分野ができるという情報を得たのです。認定資格を取れば,病棟だけでなく外来,さらには地域まで,患者さんの人生に寄り添う看護を実現できるかもしれない。そう思い認定看護師になることを決めました。

――認定資格を得るための勉強をする中で,山部さん自身が学んだことはありますか。

山部 新しい知識を得るというより,自分自身の患者さんへのかかわり方や見方の変化がありました。患者さんにはさまざまなバックグラウンドがあります。中には,医療者に反発している方もいるでしょう。そういった方々から,いかに「思い」を引き出し,看護につなげていくか。看護師は患者さんの現状から問題のある部分を探しがちですが,患者さんは病気になってからの長い経過の中で工夫した結果,今に至っています。できない部分を良くしていくだけでなく,できているところをさらに伸ばしていくという考え方が身についたように思います。

早期からの介入で意思決定を支援する

――がんと比べて,心不全ならではの緩和ケア・在宅療養支援の難しさを感じることはありますか。

山部 心不全の患者さんは,症状が改善すると,病気自体が完治したように錯覚しがちです。がんであれば,治療をしても完全に元の健康状態に戻るわけではないことを患者さんも認識していますが,心不全においてはそういった認識がまだ乏しい。そこが一番の課題だと感じています。だからこそ私は,患者さんが病状をしっかり理解し,自分で最期を決めるための患者教育,意思決定支援が早い段階から必要だと考えています。

――在宅療養支援は,まず意思決定支援から,ということですか。

山部 私は心不全の看護は全て療養支援につながっていると考えています。

 特に高齢患者さんの場合,退院後は通院治療だけではなく,介護も必要になります。訪問看護,介護,ヘルパー,デイサービスなど,退院後の生活を実現するための課題を入院中から看護師が検討し,ソーシャルワーカーにつなぐ必要があります。心不全は慢性期が長いので,重症の方もなるべく在宅で過ごせるよう,訪問看護などへの橋渡しも必要です。

――今後の展望を教えてください。

山部 昨年,訪問看護ステーションや地域包括支援センター,地域の医師などに声を掛けて,心不全の研究会を立ち上げました。一つの施設だけでは実現できない課題もたくさんありますので,将来的には地域で終末期を診られるシステムを作り上げたいです。

 また,慢性心不全看護認定看護師の認定が開始されたのは2012年からで,現在まだ184人しかいません。まだ手探りで実践を積み重ねている状態なので,「こうしたい」といっても思うように活動できていない認定看護師も少なくないと聞いています。「認定看護師の活躍でこんなに助かっている」という声を,他職種や他病院,患者さんに広めていけるよう,エビデンスを発信していきたいです。

――ありがとうございました。

■認定看護師の活躍で,患者に合わせたテーラーメイドのケアが実現

三木 真司氏(三菱京都病院病院長)

 山部さんが心不全の緩和ケア・在宅療養支援の必要性を院内で広めはじめた2008年当時,私も管理者として,循環器内科医として,とりわけ高齢の心不全患者の増加が,病院経営さらには医療経済全体に与える影響を問題視していました。さらには,予後の改善が見込めないような高齢の患者にも最期まで積極的な治療を施すことの意味に疑問を感じていました。

 現在では,山部さんを中心とした心臓リハビリテーションチームが入院時から患者家族にかかわり,患者ごとに必要なサポート,退院後の生活面を含めたケアをテーラーメイドで実践してくれることで,何度も入院を繰り返していた高齢心不全患者の再入院が減り,再入院した場合の在院日数も短くなりました。また看護外来を並行して行うことにより,私も内容の濃い外来診療ができますし,医師だけでは拾い上げられない小さな病状の変化にも気付いてもらえることが多々あります。

 ご家族とも関係をつくってきた認定看護師だからこそ,自宅での生活や,退院後の希望を聞き出しやすいのでしょう。早期からの緩和ケア・在宅療養支援によりQOLも上がり,残念ながら患者さんが亡くなられたときにも,「本人が望む最期を実現してくれてよかったです」と感謝してくださるご家族が多くなりました。

 慢性心不全の認定看護師外来を行う意義は患者にとっても病院にとっても非常に大きいと考えています。実践データを集積,発信していくことで慢性心不全看護認定看護師のかかわりの重要性が一層認識され,診療報酬等でも評価されることを期待します。

(了)


やまべ・さおり氏
1995年近畿高等看護専門学校卒。同年,三菱京都病院に入職。ICU,外来,腫瘍内科を経て,2006年より循環器病棟所属。12年より慢性心不全看護認定看護師。