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第3118号 2015年3月23日


第7回日本医療教授システム学会開催


 第7回日本医療教授システム学会が2015年3月5-6日,鈴木克明会長(熊本大大学院)のもと,「できる医療者に育つ/育てるしくみ――実践成果の見える化と共有」をテーマに開催された(会場=東京都文京区・東大本郷キャンパス)。本紙では,インストラクショナル・デザイン(以下,ID)の理論を基に医療教育への提言を行った会長講演と,IDにおいて特に重要な「目標を明確にする」とはどういうことかを参加者が体験するセッションの模様を報告する。

◆効率的・効果的・魅力的な研修づくりを

 「できる医療者とは現場で仕事ができるだけではなく,現場を変革できる人。変革の実現には,今の現場をどのようにしたいかを描くことが必要だ」。こう語った鈴木氏は,現場を変革するためには実践の成果を説得力のある形で示す必要があり,成果を示すには,目標を明確にすることが必要だと強調した。

鈴木克明会長
 氏は,授業設計理論の父として著名なガニエの9教授事象,メリルのID第一原理(5つ星の条件)を踏まえ,多くの研修の問題点は講義形式で研修を行っていることだと指摘した。研修の目標を決定するためには,研修を受ける学習者の学習の到達レベルをまず知る必要がある。学習は事前に学習者自らに行わせ,テストで習熟度を確認,その結果を基に有意味記憶になるよう工夫した教育を行う方法が有効だと解説した。有意味記憶になる教育とは何か。それは,現在の知識と結び付けられる教育であるとし,ARCSモデルを挙げて説明した。ARCSモデルとは教育工学者ケラーが提案したモデルで,学習者の学習意欲を「Attention(注意);おもしろそう」「Relevance(関連性);やりがいがありそう」「Confidence(自信);やればできそう」「Satisfaction(満足感);やってよかった」の4つの軸に整理したもの。研修が業務にどのように役に立つのかを示すことで自分自身の問題として意識され,魅力的な研修となるのだという。

 さらに,ARCSモデルは学習を支援する際に教育者が生かすだけでなく,学習者自身にも教え,自ら学習意欲のコントロールも行えるようにすることが重要だと提言。学習者を,教育・研修がなくても自らで学び続ける「学び手」として一人前にしていく必要があると締めくくった。

 「研修効果の見える研修目標の立案」を目標に開催された教育企画「新人看護職員研修を担当する方のためのワークショップ――新人看護職員研修をリ・デザインする」(ファシリテーター=済生会横浜市東部病院・山田紀昭氏,紙谷あゆ美氏,独協医大越谷病院・石井恵利佳氏)は,ワークショップそのものがIDのモデルを利用して設計された。

 グループワークを中心に行われた本企画では,参加者は事前に新人看護職員研修ガイドラインを読んだ上で,自施設の新人看護職員研修の現状と目標を持ち寄った。当日はファシリテーターから提示された研修事例の課題に個々に検討を加えた上で,客観的評価が難しいと考えられる学習目標についてグループ内で互いに指摘し合い,ファシリテーターも交えてブラッシュアップを図った。参加者からは「目標行動・評価条件・合格基準を明確にしないと効果がない研修になってしまうことに気付いた」という声が挙がるなど,効果的な目標の立案方法が共有された。