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第3114号 2015年2月23日


【寄稿】

チーム医療を再考する
多職種連携の本質について,専門職性,組織化の観点から<

勝山 貴美子(横浜市立大学医学部看護学科教授・看護管理学)


 今日,ヒューマン・サービスを提供する多様な領域で,職種間相互の連携の推進は,その実践にとって不可欠な課題として取り組まれている。医療の高度・複雑化,国民のニーズの多様化,超高齢社会など医療環境の大きな変化は,一つの職種だけで提供される医療の限界をもたらし,より専門性の高い職種が専門分化せざるを得ない状況にある。しかし,当然のことながら,専門性の高い一専門職だけでは,こうした変化に対応する医療サービスを提供できるはずがなく,多くの職種が協働することを迫られるようになった。診療報酬の改定は,多くの医療チームを構築させ,多職種が共に仕事をする環境を整備したが,必ずしも成果を挙げているとは言いがたい。

 私は,10年ほど前から認定看護管理者研修で関連職種との連携についての講義をしているが,時々,連携を「分業」だけと誤解している受講生に遭遇する。病院だけではなく,地域包括ケアシステムのネットワーク型の連携が必要となる時代に,あるべき多職種連携についての論文1)を起点に連携の基本概念や専門職性,組織化の観点で再考したい。

協同から協働への転換を

 初めに,次のような臨床現場の事例について考えていただきたい。

●末期がんで緩和ケアを受けているAさん(80歳代)の退院支援の調整場面。Aさんは,一番安心できる自宅で過ごすことを希望するも,今後,痛みが強くなり身の回りのことができなくなったとき,家族の負担になるだろうとホスピス病棟への入院を選択した。

担当医師】緩和ケアに無頓着。痛みが強いと言われると貼用麻薬をどんどん増やす。
薬剤師】医師の処方が適切でないと思うが医師にアドバイスできず,Aさんには副作用の便秘についての指導にとどまっている。
担当看護師】AさんのQOLを最優先にしたいと思うが,強引な医師には何も言えず悩むも,何も行動を起こせていない。
MSW】担当医師が依頼。Aさんの自宅からは遠いが,一番早く入院できるホスピス病棟を探し,その病院に転院することを勧めた。

 Aさんに対する医療は,何を目標としているのか。かかわっている専門職は,専門職性を発揮したか。また,個々の専門職がかかわっている割には,誰が何をするのか役割が不明瞭で,情報の共有がなされていない一方通行の医療になっているのではないか。

 ヘルスケア領域における専門職間の「連携」は,「『二人以上』の『異なった専門職』が,『共通の目標達成』をするために行われる『プロセス』」2)と定義される。「連携」はcollaborationであり,「協働」とも訳され,cooperation(協同)とは異なる。cooperationは,同じ目標に向かって一方の組織が主体となり他方の組織が補助的に協力することであるが,collaborationは,合同で立案し事業を遂行する,「相互統制的な関係」3,4),と定義される。チーム医療推進会議5)では,連携は目的と情報を共有し,業務を分担しつつも,各職種の専門性を前提とし医療を提供すること,と再定義がなされ,今まで「協同」の色合いが濃かった定義に修正が加えられている。つまりAさんの事例では,多職種「連携」が成立していないといえる。

専門職間の壁を取り除くことが連携の第一歩に

 多職種連携は,複数の学問領域や個人の協力によって行われ,健康や病気を包括的な視点でとらえた,広範囲で質の高いケアの実践であるとして期待されている6,7)。しかし多職種間の連携は,必ずしも良好とはいえない。その要因には,価値観が異なること,アセスメント方法の違い,役割の曖昧さ,機能の未分化を含め,法や施策の問題,基本教育,倫理教育の職種間格差などがあるとされる。近年,薬剤師,栄養士などの医療チームへの参加の効果,緩和ケアチームとリエゾンチームのチーム間での連携の難しさなどが研究課題として増加しているが,一筋縄ではいかない課題が潜んでいるように思う。専門職の持つ自律性8)は独自の文化を構築9)し,時にコンフリクトの原因になることにも留意が必要である。

 専門職とは,独自の重要な社会的サービスを提供する人で,独自の知的技術と専門職としての自律性を持ち,倫理綱領,継続的学習,研究を実践していく職種であると定義される。看護職には,「看護者の倫理綱領」があり,そこには多職種と協働し,良質な医療を提供することが看護職の責務だと記述されている。各職能団体へのアンケート調査10)で看護職の役割拡大についての意見を求めたところ,看護職の判断,技術的能力に対する否定的な意見も多く含まれていた。各職種が自分野の専門職性のみを主張し,壁を作っているようにも受け取れる。

 では,効果的な連携を進めるために看護職は何をすべきか。自律性の高い専門職間の連携に向けた看護職の在り方として,職種の違いにのみ目を向けて壁を作ることではなく,看護師でなければできない専門職性とは何かを意識して言語化,情報共有をし,他の職種も同様に持つ専門職性を尊重し,重なり合う部分を意識した行動が求められる。

組織設計の5つの基本変数とは

 自律性の高い専門職間の連携の鍵は,組織化の視点11)である。組織化とは,組織の目標を明確にした上で,組織設計の5つの基本変数に基づく調整を行うことである。その5つとは,(1)組織における仕事の分担,役割の明確化(分業関係),(2)指揮命令関係(権限関係),(3)どのような役割同士を結び付けてグループ化するか(部門化),(4)役割間の情報伝達(伝達と協議の関係),(5)仕事の進め方に関する規則や規定(ルール化)であり,これらを含んだ体制の整備が必要だという。ただし,患者に提供するサービスによって柔軟に対応できなければならない。

 リーダーシップ理論12)でも,組織化は「体制づくり」として説明される。多職種連携のためには,組織構造の設計をしなければならないのである。Aさんの事例を,組織設計の5つの基本変数で分析してみると,役割が不明確であり,役割間での情報伝達の方法(伝達と協議の関係)が成立していない。患者の希望,QOLを考慮し,どの職種がどのようにかかわるべきか,その方向性を決め,Aさんの反応や情報を電子カルテに記載,共有し,カンファレンス実施のルールなどの組織化がなされると効果的な連携が生まれるのではないだろうか。

ネットワーク型連携の志向へ

 地域包括ケアの時代に何を考えるべきか。それは,自助,互助,共助,公助の考えに基づいた住まいと住まい方を基本とした生活と医療,介護,福祉の連携である。Aさんの事例のような小さな連携の問題より,もっと広いネットワーク型の連携になる。この連携の中心に住民の自助の意識がなければならず,病気になった人だけに焦点を当てているだけでは十分ではない。2014年に改正された医療法第6条に,「国民は良質かつ適切な医療の効率的な提供に資するよう,医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携の重要性についての理解を深め……」と,国民を含めての連携の必要性が盛り込まれた。これを,医療者はどう考えるか。どこで,誰がそれを伝えるのか。その役割も医療者は負っているのである。本来の意味での,患者を含めた連携を再度考える時期に来ているのだ。

 現任教育も同様である。従来の看護師教育から発想の転換が必要になる。地域の住民の生活はどのようなものか,目で見て,肌で感じ,何が連携として必要かを考えないと,これからの連携は成り立たない。また,「2025年問題」を超高齢社会の問題としてとらえる議論はなされているが,2025年には,若い世代の負担も大きくなる。支える側は,その準備ができているのだろうか。

 NPO法人ささえあい医療人権センターCOMLは,子どもの自助を促進するための試みとして「いのちとからだの10か条」13)を作成し,無料配布を開始した。これは,子どものうちから自身のことを知り,人に伝えることのできる,まさに自助を学習する上で意義のある取り組みである。

 新たな連携を模索するこの時代,一方通行の連携は限界を迎えたといえよう。地域ごとに検討すべき内容は異なるが,連携の基本的な考え方とネットワーク型の連携の意味は押さえておきたい。

参考文献
1)勝山貴美子.看護職のチーム医療における協働意識と自律性――歴史的背景と調査結果からの考察.医学哲学 医学倫理.2014;32:33-42.
2)松岡千代.ヘルスケア領域における専門職連携――ソーシャルワークの視点からの理論的整理.社会福祉学.2000;40(2):17-38.
3)関田一彦,他.協同学習の定義と関連用語の整理.協同と教育.2005;1:10-7.
4)堀田哲一郎.組織間関係における概念定義に関する考察――「調整」・「協同」・「協働」の差異を中心に.広島大学教育学部紀要 第一部(教育学).1998;47:121-6.
5)厚労省「第4回チーム医療推進会議」議事次第.2011.
6)上原鳴夫.チーム医療と医療ケアの質の向上.日本クリニカルパス学会誌.2000;3(1):25.
7)碑田里香.患者中心のチーム医療をコーディネートするために(2)――福祉・医療・保健のネットワークの視点から.消化器外科NURSING.2001;6(7):622-8.
8)A.M. Carr-Saunders, et al. The Professions. Clarendon Press;1933. 399-400.
9)田尾雅夫.ヒューマン・サービスの組織――医療・保健・福祉における経営管理.法律文化社;1995.p 75.
10)厚労省「看護業務実態調査に関するアンケート調査」結果.2010.
11)伊丹敬之,他.ゼミナール 経営学入門 第3版.日本経済新聞出版社;2003.p 262.
12)田尾雅夫.組織の心理学.有斐閣ブックス;1993.pp 170-1.
13)子どもの「いのちとからだの10か条」.COML会報誌.2014;292:8-9.


勝山貴美子氏
2007年名大大学院医学系研究科医療管理情報学修了(博士:医学)。01年より名大助手,04年から大阪府立看護大助教授,大阪府立大准教授を経て,11年より現職。専門は看護管理学。医療者と患者のコミュニケーションの在り方,多職種連携に関する研究を行っている。日本医療・病院管理学会評議員,日本医学哲学・倫理学会理事も務める。