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第3021号 2013年4月1日


Medical Library 書評・新刊案内


IPMN/MCN国際診療ガイドライン
2012年版 〈日本語版・解説〉

国際膵臓学会ワーキンググループ [代表:田中雅夫] 著
田中 雅夫 訳・解説

《評 者》真口 宏介(手稲渓仁会病院消化器病センター長)

「現状での世界的な考え方」を整理し共通の討論の場を呈示した新版

 “International Consensus Guidelines 2012 for the Management of IPMN and MCN of the Pancreas. Pancreatology. 2012 ; 12 (3) : 183-97.”の日本語翻訳版が出版された。2006年の最初の国際診療ガイドラインの発行から6年での改訂である。

 医学の進歩は目覚ましく,数年の間にいくつもの新知見が報告され,理解が進むにつれてガイドラインの改訂が繰り返し必要であることは言うまでもない。しかしながら,国内だけでも意見を集約することが難しい中,診療状況や意見の異なる海外の医師たちと英語で討論し,まとめあげる作業は容易ではない。その作業を短い期間で完成させた著者の田中雅夫教授には心から敬意を表する。さらに,英語論文化されてからすぐに日本語翻訳版を出版された素早さには,ただただ驚くばかりである。

 今回の改訂ポイントについては,本書の「表1 推奨の一覧」にまとめられている。

 注目点は,主膵管型(MD)IPMNを広く拾い上げるために主膵管拡張を5 mmまで下げ,5-9 mmを“worrisome feature”,10 mm以上を“high-risk stigmata”に分けたこと,分枝型(BD)IPMNにも“worrisome feature”と“high-risk stigmata”の2段階を推奨し,従来の切除適応であった3 cmを超えても“high-risk stigmata”が見られない場合には経過観察してよいとしたこと,などが挙がる。悪性度の高いMD-IPMNを切除適応とし,悪性度の低いBD-IPMNの切除適応を控えめとしたものである。

 一方,病理学的な“悪性”の定義を世界的に統一するために上皮内癌を高度異型とし浸潤癌に限るとしたため,わが国での非浸潤癌を“悪性”に分類できなくなる可能性が出てきた。さらに,欧米で積極的に施行されているEUS-FNAについても言及したため,FNA後の播種の危険性の増加も懸念される。やはり,わが国での考え方と世界的な考え方には「まだ幾分の距離がある」と言わざるを得ない。

 また,「要旨;著者からのメッセージ」の中で,IPMNに関する報告は増加したとはいえエビデンスレベルは高くなく,科学的根拠に基づいたものというよりは,まだコンセンサスガイドラインとするのが適当と述べられている。

 今回の改訂は,定義,分類,切除適応など「現状での世界的な考え方」を整理した内容と受け取ることができるが,本ガイドラインを一つの基準として共通の用語,定義にて討論できることになる意義は極めて大きい。さらにわれわれに対し,エビデンスレベルの高い研究の実施,特に前向きでの多数例の検討の必要性も伝えている。

 IPMNを発信し,世界で最も症例数の多いわが国にて共通の認識を持つことは重要であり,多くの医師に熟読いただきたく,ここに推薦する。

B5・頁96 定価4,200円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-01671-1

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