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第3012号 2013年1月28日


第32回 日本看護科学学会開催


 第32回日本看護科学学会(会長=慶大・太田喜久子氏)が,2012年11月30日-12月1日,東京国際フォーラム(東京都千代田区)にて,「日本再生のとき,看護学の真価を問う」をテーマに開催された。本紙では,地域に根ざした医療活動の実践例から地域医療の今後が議論されたシンポジウム「地域再生への挑戦」(座長=日赤看護大・高田早苗氏)のもようを紹介する。


生活を支える医療を地域に

シンポジウムのもよう
 人口2600人の福井県おおい町名田庄地区で,地域医療に携わって20年目となる医師の中村伸一氏(おおい町国保名田庄診療所)は,自身のこれまでの活動を「地域を支えていたつもりが,実は地域から支えられてきた」と振り返った。氏は,赴任直後から地域の絆の強さを感じたという。この地区では,家族のつながりが強く3-4世帯の同居も珍しくない。「家で死にたい」と感じる住民が9割以上で,家族もそれを支えたいという希望がある。実際,名田庄地区の在宅死亡率は42%(全国平均は11-12%)と非常に高い。「そんな地域の絆は,私に対しても同じでした」と,氏は自らが地域の人々から助けられた経験,掛けられた温かい言葉を紹介。地域住民との“双方向性の絆”があるから,この地域を離れられないと語った。

 秋山正子氏(ケアーズ白十字訪問看護ステーション)は,20年間に及ぶ都市部での訪問看護活動から,質の高いEnd of Life Careを実践するためには,急性期医療と連携した地域ネットワークと,早期からの予防的な取り組みが重要と言及した。今後増加していく高齢者を看取るためには,在宅医療を推進し,訪問看護師が調整役となって医師やケアマネジャーなど介護職と連携することが必要だ。また,急性期病院に勤める看護師が在宅医療を経験することで,退院調整に積極的になった事例も報告。医師にもこうした機会が必要と訴えた。これからの高齢者への予防的なケアについては,市民に向けた啓発活動が重要と述べ,自身が運営している「暮らしの保健室」を紹介した。ここでは,地域住民の暮らしや健康,医療,介護などの相談を受けたり,病院と地域診療所との橋渡しなどを行っている。氏は,こうした取り組みを通して高齢者の健康不安が解消されれば,医療機関が高齢者にとっての安心基盤になると説明。「治す医療よりも生活を支える医療こそが,今後の地域医療には必要」と締めくくった。

医療が地域の絆に貢献する

 最後に登壇した自治医大の春山早苗氏は,離島や山村過疎地域で保健師として取り組んだ活動を報告した。医療資源・介護資源ともに充実しているとは言えない地域において重要となるのが,予防活動だ。氏は,地域の健康診断や健康相談の活動などを,地域ごとの実態に即して見直すことによって,集落を中心とした介護予防活動を展開。生活基盤としての地域の特徴をよく把握して,価値観を尊重することで住民同士の結び付きを活かせるような保健アプローチが重要だったという。「健康は誰もが関心のあること。それを通して住民がひとつになれるような仕掛けを作ることが,地域の保健師に求められている」と結んだ。

 討議では,中村氏が「地域医療とは,単に地域で医療を行うことではなく,医療を通じて地域の絆に貢献すること」と言及。秋山氏からは地域住民の話をよく聴くことの重要性,春山氏からは地域文化に柔軟に対応した保健活動の促進が訴えられた。