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第2983号 2012年6月25日


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心不全ケア教本

眞茅 みゆき,池亀 俊美,加藤 尚子 編

《評 者》井上 智子(東京医歯大大学院教授・先端侵襲緩和ケア看護学)

「心不全ケア」へ看護からの篤いメッセージ

 いつの頃からであろうか,臨床看護や看護研究において「心不全」がキーワードとして台頭してくるようになった。心不全患者の背景として,重症者が多い,病態が多様で複雑である,入退院を繰り返す,生活指導と服薬管理が難しい,等々の現状と課題があり,一方で,“ケアとキュアの狭間にある”心不全ケアの特異性や挑戦のしがいから,多くの医療職,とりわけ看護職を引きつけていったためと受け止めている。

 そもそも「心不全」という概念もその病態も,知っているつもりではあった。看護基礎教育でも必須の学習内容である。ところがあらためて心不全を俯瞰すると,その病態は不整脈や先天性心疾患,弁膜症,虚血性心疾患,さらに治療法としては,薬物治療はもとより,ペースメーカ,IABP(大動脈内バルーンパンピング)や植込み型除細動器,VAD(補助人工心臓),そして心臓移植までもがその範囲に含まれる。今日の心不全は,ことほどさように複雑な背景を持ち,誠に手強い相手と言わざるを得ないのである。

 本書『心不全ケア教本』は,このような現状の中で“時宜を得た”そして“待ち望まれていた”一冊であると言えよう。編者はいずれもわが国の心不全看護を牽引する看護職であり,執筆者にも臨床の第一線で心不全看護を担うエキスパートが名を連ね,患者のセルフケア支援や生活支援など,極めて論理的に述べている。もちろん,多くの循環器専門医も最新の情報と治療経験を提供してくれている。しかし特筆すべきは,日本および海外における心不全の現状(第2章),心不全における一次予防(第3章),心不全に関する病態生理(第4章)といった,ケアを支える重要事項について,看護職が極めてクオリティ高く書き込んでいることである。これまでの類書では,病態生理,診断(アセスメント),そして治療については医師から教示され,それを受けて看護職が看護ケアを語るというスタイルが一般的であったように思う。しかし,本書はその慣例を打ち破り,基盤となる医学的知識(病態生理やアセスメントなど,治療についての言及も多数)についても看護職が語る。伝え聞くところによると,この構成は,ケア提供者の視点を大切にしたいという編者らのたっての願いであり,本書にかける意気込みの表れでもあるという。

 書名に「看護」の文字は含まれていない。このことは,前述の“ケアとキュアの狭間にある”心不全の特徴を踏まえたケアに対する看護からのメッセージであり,心不全ケアを引き受けていく覚悟の表明に見える。このような篤いメッセージの詰まった本書は「慢性心不全看護認定看護師」を筆頭に,心不全ケアをさらに学び実践したいと考える看護師や医療専門職の学習支援に大いに貢献するだろう。

 人は皆,等しく心不全で亡くなる。期間や程度の差こそあれ,「心不全ケア」は人の後半生の人生の質を左右し,その終焉において,すべての人が必要としているものなのである。

B5・頁400 定価4,830円(税5%込)MEDSI
http://www.medsi.co.jp/

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