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第2932号 2011年6月13日


女性外科医のキャリアと子育て


 厚労省成育医療研究「女性医療従事者の支援に関する研究」研究班によるシンポジウム「外科医としての私の歩み」(座長=女子医大総合研究所・竹宮孝子氏)が4月23日,女子医大病院(東京都新宿区)で開催され,母であり外科医である女性医師3名が,自身の経験を語った。

シンポジウムのもよう
 乳腺外科医の川瀬和美氏(慈恵医大)は,三井記念病院初の女性外科レジデント,帆船日本丸での船医などの経歴を持つ。氏は米国への研究留学時,結婚後も外科で働く女性医師や,家庭を大切にする男性医師の姿を目にして結婚・出産を決めたこと,出産後,家族ぐるみで臨床留学したことなどを述懐した。帰国後は学会や大学での女性医師支援に取り組むかたわら,第二子の出産も経験。チャレンジ精神で人生を歩んできたと明かした。

 同じく乳腺外科医の明石定子氏(国立がん研究センター中央病院)は,がん専門病院でのキャリアアップについて語った。氏は外科スタッフとして臨床・教育や研究に注力しつつ,卒後12年目で出産。飛び込みの救急患者がいない,緊急呼び出しが少ないなどがん専門病院の特徴が,子育てではメリットとなったという。キャリアを積んでからの出産には,勤務時間を調整しやすいなど利点がある一方,育児を手伝う親の高齢化などデメリットもあると指摘。家族の協力や第三者による家事・育児支援の積極的利用,職場の理解が,仕事と育児の両立には必要と提言した。

 児玉ひとみ氏(石心会狭山病院)は,外科専門医など3つの専門医資格を育児と両立して取得した経験から,「臨床にブランクを空けないこと」がポイントと指摘。"常に患者のそばにいる"ことが,患者への責任を果たすことだとする従来の価値観は,子育て中の女性外科医には大きな障壁となる。バランスよく育児と仕事を両立できるよう,労働条件の明確化,勤務形態の柔軟化のほか,"愛情を時間でなく質で考える"など当事者が目線を変える必要性も訴えた。さらに院内保育の設置,子育てと外科診療を両立できる乳腺内分泌外科の立ち上げなど自身の活動を紹介,子育てをしながら外科を続けることを「大きな充実感の得られる仕事が2つある」と例えた。

 また同日,野原理子氏(女子医大)より,同大女性医師・研究者支援センターが中心となって推進する「女子医大ファミリーサポート」の報告もあった。本システムは,育児や家事・介護の援助を求める同大の医療従事者(依頼会員)と,主に地域住民から募った援助提供者(提供会員)を仲介するもの。大学が独自にシステムを構築して近郊地域から提供会員を集めることで,支援を求めるニーズにより応えやすくなるという。既に30名ほどの提供会員が約30時間の保育講習を修了。双方のマッチングを経てシステムが稼動を始めており,今後の展開が期待される。