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第2868号 2010年2月22日


MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


マーガレット・ニューマン
変容を生みだすナースの寄り添い
看護が創りだすちがい

マーガレット・ニューマン 著
遠藤 惠美子 監訳
ニューマン理論・研究・実践研究会 訳

《評 者》河 正子(NPO法人緩和ケアサポートグループ代表)

ニューマンの“深さ”に,心ざわめいて

 監訳者の遠藤先生の論文や著作,先生が看護を考える基盤とされているマーガレット・ニューマンの著書からはこれまでも多くの刺激をいただいてきた。私が学んできた健康や看護についての考え方とは異なる見方があることを教えられ,心がざわめいた。

 しかし,そのざわめきの本質をよく見極め消化しないうちに,また既存の概念でコントロールする日常に戻っていってしまう。「読んで理解することの限界かもしれない」と,言い訳しながら。実践を経ない理解は,身につかぬまま記憶の底で覚醒のときを待つことになる。

 本書は,ニューマン女史の2008年の著書の翻訳である。女史と訳者らは,ナースたちに新しいパラダイムへのシフトを再び熱く呼びかけている。その内容は「変容を生みだすナースの寄り添い」である。これは何度となく語られ,誰もが考えてきた看護の本質ではないか……,と思いつつページを繰れば,やはりまた心がざわめく。

 本書から私が学びつつあることを至らなさを承知で抄出してみる。「拡張する意識としての健康」という理論は,病や喪失などで望みがないとみえるどのような無秩序な状況にいる人も,もっとその人らしくなる過程,生きる意味を見いだす過程,他者や万物とつながり新たな秩序に至る過程の途上にあるのだということを主張している。この理論に調和する研究(実践)方法は,実験や観察データから帰納的に一般化して問題解決の道筋を見いだしていく方法ではない。人生における最も意味深い出来事や関係性に焦点を合わせて,研究者(実践者)の心を込めた寄り添いを受けて対話を重ねながら,研究参加者(クライアント)から「参加者(クライアント)――環境の相互依存的関係性」の潜在的パターンが開示され,研究者(実践者)とわかち合われ,洞察が生まれ,パターンが変容していく。その過程で変容するのは参加者(クライアント)だけではない。研究者(実践者)も変容する。この理論・研究・実践の幸福な融合を「看護プラクシス」という。看護プラクシスの要は変容を生み出す心からの寄り添いを提供することである。寄り添いは,単に傍に存在することではない。そこにある知は,ケア対象を客観的に把握することを超え,感覚的に調和し,共鳴しながら受容するというありようのものである。「他のすべてを横に置いて」「自分のすべての側面を活かしてクライアントと共にある」というような。

 この理解を実践に移せるかどうか,正直まだ自信はない。ただ,ここ数年来考え続けているスピリチュアルケアの本質は,「心を込めた寄り添い」につながると思っている。ケアする者は,無機的な観察者としてケア対象の深い苦悩を見つめることはできない。苦悩する人との関係性を持つことで,否応なく影響し合う存在になる。変容を目的とするのではなく,かかわり合い,共有する時間からのプレゼントのように,ケア対象にもケア提供者にも変容が与えられる。本書から受けるざわめきが,そこに至る扉を開く鍵であるように思う。

A5・頁180 定価2,730円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-00934-8

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